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第一章
第十六話 遅い、遅すぎるぞ!
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「ーーこんなところかな?」
ホームセンターで調達した資材を使った作業が終了した。
最上階の住まいであるペントハウスからマンションの中層辺りまでの壁面に金属棒を設置する作業だ。
ペントハウスから立体駐車場までのショートカット案。
それはこの金属棒を伝って一気に下まで降るという、我ながら頭の悪い発想だと思う。
この身体能力ならばイケると判断し設置したのだが、思っていたよりもイイ感じになった。
イメージとしては消防とかの緊急出動時の滑り棒だな。
昔映像かなんかで見たものを参考にしたが、アレって今も残ってるのかね?
さっそく実践してみたところ、止まるタイミングを見誤り危うく地上に落下しかけた。
幸い咄嗟にマンションの壁を蹴って立体駐車場の屋上へとギリギリ飛び移れたが、非常に心臓に悪い体験だった……。
ジェットコースター中に安全装置が外れた気分だ……まぁ、そんな経験はないんだが。
取り敢えず狙いは良かったので、滑り棒の一番下端には落下防止の横棒でも作っておくとしよう。
なお、急落下時に発生する滑り棒との摩擦熱については、〈金属腕〉状態で下りるため問題はなかった。
全ての作業が終わると、やっと車内の物資搬入作業を始められた。
エレベーターを使ってペントハウスに持って上がり、滑り棒で一気に下りて、タイミングをみて壁を蹴って跳躍し立体駐車場に飛び移り、また物資を持ってエレベーターで上がることの繰り返しだ。
三十分と掛からず全ての物資を運び終えれたので、やっと一息つける。
「流石にもう真っ暗だな……バイクを回収しに行くは明日でいいか」
適当な冷食を温めて食べると、その日はシャワーを浴びてから寝た。
今日は仕方ないが、せっかくだから他人の家のベッドを使うよりも新品の方が良いな。
明日は寝具も見にも行くとしよう。
そして翌朝。
昨夜に引き続きレンジで冷食をチンすると、リモコンでデカい液晶テレビを点けてチャンネルを操作する。
前の住まいであるマンションにいた時は、生き残っている国内のチャンネルは二つぐらいしかなかったが、この家のテレビは海外のニュース番組も見ることができ、チャンネル数は倍以上に増えた。
英語はほぼ分からないが、どうやら海外でも臨時政府が立ち上がり復興に向けて動き出していることが分かった。
国内チャンネルでは臨時政府の話は出てなかったので、生き延びているテレビ局に接触し存在をアピールできるほどの力はまだ無いのだろう。
「臨時政府の公表前に仲間入りすれば影響力を持てるかもしれないが……悩むな」
朝食を済ませると、地図アプリで近くの家具屋の場所を調べてから外出の準備をする。
今日は寝具を調達してバイクを回収した後、軽くオフィス街を回ってみるとしよう。
マンションの敷地内を出ると、彷徨うゾンビ達を置き去りにして家具屋に直行した。
サイズ的にも寝心地的にも良いベッドがあったので、新品を持ち上げたまま速攻で帰宅する。
滑り棒で地上に降りると、再度地上を疾走し、昨日行ったホームセンター前に停めておいたバイクをベッド同様に持ち上げ、これまた同じ様に速攻で帰宅した。
ただ、ベッドの時とは違い、当たり前だがバイクは地上に置いた。
立体駐車場の傍にバイクを停めると、代わりに寝具店に向かう前に敷地内の草藪のところに隠しておいた自作グレイヴを手に取った。
「よし。これで所用は済んだしオフィス街に行くとするか」
マンションの敷地内を歩いていき、運転席の辺りに血糊の痕が残るオープンカーに乗車する。
乾いた血糊を適当に剥がしてから、屋根を開けたままにして助手席に小型リュックサックを置いてからグレイヴを立て掛けた。
助手席にあった車の鍵を回収してからエンジンをかける。
幸いにも燃料は満タンのようだ。
「こんな形でオープンカーに乗ることになるなんてな」
途中で乗り捨てる可能性がある移動手段にオープンカーを選んでしまったが、他の移動手段ではグレイヴをすぐ手に取れる位置に置けないのだから仕方ない。
少しズレていた口元を覆うタイプのガスマスクの位置を微調整してから、オフィス街に向けてオープンカーを走らせた。
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