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第一章
第三十話 慣れって怖いという話
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世界変革日から四ヶ月が経ち、夏真っ只中な季節になっている。
例年通りならば、気温の上昇による猛暑に苦しんでいたが、今年は暑さ以外の理由でも外出を控えたくなる環境になっていた。
「腐敗が凄いデスネ……」
「臭いも酷そうだよな……」
「お兄さんが予備のガスマスクを確保してくれてて良かったデス」
「俺もここまで重宝することになるとは思わなかったよ」
俺達の目の前では、気温が上がったことで身体に纏う死肉の腐敗が進んだ死体が闊歩する景色が広がっていた。
俺達の素直な感想の通り、見ただけで腐敗の進み具合と悪臭ぶりが分かる光景だった。
動く死体モンスターであるゾンビも例外ではなく、以前とは違った意味で近寄り難い雰囲気を放っている。
「最早、ゾンビじゃなくて骸骨に近いから〈スケルトン〉と呼ぶべきか?」
「見た目が変わってますケド、身体強化や獲得できる能力は変わらないんでしょうカ?」
「どうだろうな。仮に変わっていても底辺だろうけど」
「そうですよネ。検証するほど興味は湧きまセン」
「だよなー。まぁ、邪魔してくるのだけ倒せば変化の有無は分かるだろう」
純ゾンビ時よりも歩く速さが速いスケルトンが近付いてきていたので、足元の瓦礫を蹴り飛ばして粉砕する。
蹴った瓦礫は一番近くのスケルトンを粉砕しただけに留まらず、離れていたところに屯していた数体のスケルトンをも粉砕していた。
「んー、デカウサギの乱獲で得た〈強蹴〉は地味に使えるな」
「脚力の身体強化だけじゃなかったのは驚きましたよネ」
「獲得確率がかなり低いのか、乱獲レベルで大量に倒さないと得られないのかの条件があるのかもな」
ここ最近は、二人で一日一体消費するぐらいにはデカウサギの肉を食べていたので、その消費ペースに相応しい数のデカウサギを狩りまくった。
その最中、俺とソフィアは強力な蹴りを繰り出せる能力〈強蹴〉を獲得した。
基本的な使い方は蹴り攻撃だが、今のように物を蹴り飛ばすのに使ったり、大きくジャンプするのにも使えるという中々汎用性の高い能力だ。
能力系統としては必殺技系の能力になるのだろうか?
「さて、まずはここか」
「ハイ。店内にはモンスターも人もいないみたいですカラ、チョット行ってきますネ。お兄さんはどうしますカ?」
「飲料水や菓子の方を見てるよ」
「分かりましタ」
「あ、医薬品を見終わったら適当にトイレットペーパーと箱ティッシュを確保しておいてくれ」
「ハーイ」
今日の外出の目的地はドラッグストアだ。
ソフィアが行きたいというので同行したが、紙類のストックが減っていたのでちょうど良かった。
入り口の方で分かれると、店内の奥の方へと移動する。
空いている空間が目立つ菓子や飲料コーナーの棚から、まだ残っている商品を回収して背中のリュックサックに入れていく。
ここのドラッグストアはモンスターの攻撃のせいか停電しており、冷蔵冷凍コーナーの消費期限長めの商品が夏の暑さで全滅していた。
「冷食も駄目かー」
暑いからアイスを食べたかったのだが、どれもこれもドロドロだった。
暑さでぬるくなっていたスポーツドリンクを飲みながら店内を見て回っていると、ソフィアが合流してきた。
「お兄さん、まだ他のところに寄ってもいいデスカ?」
「目的のは無かったか?」
ソフィアが手に持っているトイレットペーパーと箱ティッシュを受け取りながら尋ねる。
なんとなく詳しく聞くのは憚られたため雑に聞いてみた。
「ゴッソリありませんでしタ。やっぱり考えることは皆同じデスネー」
「病院とかは機能してないだろうから、自然とそうなるか。こんな時代になって改めてドラッグストアの有り難みが分かるな」
「全くデス」
「ふむ。近くの別の店はちょっと距離があるな。ティッシュとか載せたいし、適当に車を調達しよう」
「そうしまショウ」
店を出て比較的無事な状態の事故車両を探す。
放置された事故車両ならば、大抵の場合は鍵は付けたままなので、そのまま動かすことができる。
使い捨ての移動手段や運搬手段が欲しい時によく活用している方法だ。
この四ヶ月ほどで学んだことの一つだが、我ながら今の環境に慣れたものだと深く思う。
両手に荷物を持ったまま、事故車両の近くにいたスケルトンを蹴飛ばしてから運転席を覗き込む。
いきなり鍵付きだったのは運が良い。
エンジンもかかり、ガソリンもメーター上では四つあるので十分だろう。
調達した物資を詰めたリュックサックや箱ティッシュなどを後ろに放ると、周りを警戒していたソフィアを助手席に乗せて車を発進させた。
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