アポカリプスな時代はマイペースな俺に合っていたらしい

黒城白爵

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第一章

第三十四話 欲望の優先順位は人それぞれ

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 ◆◇◆◇◆◇


 地図アプリによると本来なら片道二時間弱かかるらしい距離を冷凍トラックで走り抜けた。
 世界変革前ではその程度の時間で到着できる道のりだったが、モンスターや人が引き起こした騒動によって道中の道は混沌としており、アプリに表示されている以上の時間がかかった。


「……クリムゾンブルを探す前に昼メシ食べていいかな?」

「勿論デス。いっぱい能力を使ってましたから、お兄さんが干物になってマスシ」

「俺は干物じゃないぞ……」

「ハイ、アーン」


 助手席に座るソフィアからの何度目かになる応急処置という名の肉串アタックを素直に口で受け止め咀嚼する。
 やはり美味い。


「お弁当も私が食べさせてあげますネ」

「いや、普通に自分で食べるけど」

「お兄さんは長距離運転でお疲れでしょうから、この私が食べさせてあげマス!」

「丁寧に言い直しても自分で食べるからな」

「お兄さんは頑固デス。ソッチの方も金属デス。奥手デス。チキンデス」

「おい、意味が変わってるぞ」

「事実デス」


 不穏な言葉を漏らすソフィアの相手をしつつ、昼食を摂るのに良いスポットを探す。
 行きに時間が掛かりはしたが、朝一に家を出発したおかげで今の時刻は十一時を過ぎたばかり。
 帰りに同じ道を通れば、整備が済んでいる分だけ行きの時よりも早く帰ることができるだろう。
 行きは三時間ほどだったから、帰りは二時間ちょっとぐらいかな。
 となると、十二時まで昼メシに時間を費やしても約四時間ぐらいは牛肉狩りの時間が取れそうだ。


「後はクリムゾンブルが見つかりさえすれば楽勝なんだがな……」


 ソフィアに餌付けをされながら冷凍トラックを走らせ、安全に昼食を摂れそうな場所を探す。
 今のところエンカウントしていないが、モンスターの襲撃に対処できるように見晴らしがいい場所がいいだろう。
 一緒にクリムゾンブルの捜索もしながら市内を彷徨っていると、ザ・田舎なイメージの田園地帯が見えてきた。


「街中よりかはアッチの方が牛とかがいるイメージあるよな」

「ネット情報では出現場所は街中ですケド、確かにイメージは向こうの方があってマス」

「常に街中にいるとも限らないしな。取り敢えず、あの辺りが見通せる土手でメシを食べようか」

「そうしまショウ」


 目的の土手に到着すると車から降りて、「愛妻弁当デス!」と言うソフィアの妄言を聞き流しながら昼食をいただく。
 地面に敷いたシートの上で二人で昼食を食べること暫く。
 食材の在庫とカロリーの都合上からおかずの殆どがモンスター肉の弁当を食べ終えると、食休みをしながら田園地帯を眺める。


「双眼鏡でも持ってくればよかったな」

「〈超感覚〉で視力を強化とかできないんデスカ?」

「できるけど、双眼鏡の方が遠くまで見えるんだよ」

「双眼鏡の方が上なんデス?」

「視力を強化しても自前では二キロぐらいだからな。たぶん双眼鏡の方が上だ」


 最後に検証したのはソフィアと会う前だから、もしかすると今なら更に距離は伸びてるかもしれないけどな。


「あと、集中力を使うから単純に疲れる」

「ナルホド。でも今は使わなきゃダメですヨ」

「ですよねー」

「集中して疲れたら膝枕をしてあげマス」

「その時は頼むわー」

「お兄さんがデレタッ!?」


 明らかに適当に答えた俺の発言に驚愕しているソフィアを無視して、身体を休めた状態のまま視力を強化する。
 家から持ってきたアイスを食べながら、目の前に広がる景色を端から端まで見渡していく。


「お、いたぞ。たぶんアレだ」


 いつのまにか背後に回り込んだソフィアに肩を掴まれたタイミングで、かなり遠くに紅い体色の牛の群れを見つけた。


「ところで、何をしようとしてたんだ?」

「膝枕デス」

「そんなにしたいか」

「膝枕って恋人感がありますから憧れマス」

「個人差はあるだろ」

「少なくとも私はそうデス」

「だろうな。ほら、少し距離があるから後片付けをしてから近くまで移動するぞ」


 食欲よりは性欲、もとい食い気よりは色気なソフィアを急かしてからトラックに乗り込んだ。


 
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