アポカリプスな時代はマイペースな俺に合っていたらしい

黒城白爵

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第一章

第五十話 美食家、悪食家 後編

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 グルメへと振り下ろしたグレイヴの一撃がスタジオの床を斬り裂く。
 此方の攻撃を避けたグルメは、俺の懐へ入り込むと口の生えた右手で脇腹へと掌底を放ってきた。
 掌打の一撃が金属化した身体を貫いたが、致命傷ではないので間髪入れずグルメへとグレイヴを振るう。
 その反撃を後方へと跳躍して回避したグルメが、まだ余裕が見える表情のまま口を開いてくる。


「それはキミの異能の特性かな? それとも回復系の能力でもあるのかい?」

「……さて、どうだろうな」


 掌底を食らった脇腹には拳よりも一回り小さい風穴が空いていた。
 風穴のサイズとその周りにできた罅割れ具合からして、この風穴は掌の口による攻撃の結果で、罅割れ自体は掌底の打撃が齎したダメージだろう。
 掌の口の攻撃は直線上に放たれる類いのようで、攻撃を受けた角度もあって脇腹から背中へと貫通していた。
 打撃が罅割れで済んでいることから、この黒化金属の身体の防御力が役に立っていないわけではない。
 だが、掌の口による謎の攻撃ーーたぶん〈捕食〉だろうけどーーの前では意味が無いようだ。

 トンネルの如く掘削された風穴は塞がりつつある。
 〈錬金鎧〉の謎金属生成能力と、〈再生〉による肉体再生能力の組み合わせなので、グルメからの問いに正直に答えるならば、両方ともと言うべきだろうな。


「それはそうと、そっちの腕は大丈夫か?」

「えっ」


 俺の言葉の直後、掌底に使われた右腕が両断されて床に落ちていった。
 先ほどの反撃の際に〈衝撃刃〉を瞬間的に放っていたため実は当たっていたのだが、鋭すぎたのか腕が落ちるまで時間差があったようだ。

 右腕が斬られていたことに驚いて生まれた隙を突くべく、再びグルメとの距離を詰める。
 浮かべていた余裕の表情を消したグルメが再び跳躍して後退する。
 ただ後退するだけでなく、トカゲのような尻尾の先で斬り落とされた右腕を器用に拾っていた。
 あの精密さは第三の手と認識しておいたほうが良さそうだな。
 〈闘牛本能〉で超強化された身体能力を下地に、〈強蹴〉と〈突進〉を発動させて加速した移動速度はかなり速い。
 先ほどよりも彼我の距離が近いため、グルメはすぐにグレイヴの間合いに入ったが、その極僅かな間に拾った右腕を切断面に押し付け、元通りに動くまでに回復させていた。


「フンッ!」

「ハァッ!」


 繋がったばかりの右腕と無事な左腕の両方に生えていた鱗が、硬質感のある輝きを放つ別の鱗へと変わる。
 その硬質な鱗への変化は瞬く間に指先にまで及ぶと、〈黒化〉したグレイヴの剣刃と鱗化した手刀がぶつかりあい火花を散らした。
 金属同士がぶつかったような高音を何度も立てながら、互いに攻撃を仕掛け続けては相手の攻撃を防いでいく。

 度々、手刀状態を解いて両手で掌底ーー捕食掌底と名付けようーーを放ってくるが、一度食らっていて警戒しているので早々当たらない。
 だが、長柄武器であるグレイヴと徒手空拳では最適な間合いは異なり、今の至近距離での接近戦で有利なのは、言うまでもなくグルメの方だ。
 幸いにもと言ってもいいのか、鱗化手刀は黒化グレイヴを一撃で破壊できるほどの破壊力はなく、黒化グレイヴは〈錬金鎧〉の謎金属生成能力で瞬時に修復可能だ。
 唯一有効打になり得る捕食掌底に関しては、掌の口のサイズ自体が小さいことと、全身金属鎧化形態の非生物染みた不死性からして、急所にでも当たらない限りは少々被弾したところで問題なく戦闘を続行することができている。

 つまり、気をつけるべきは頭部への捕食掌底ぐらいだろう。
 心臓部も急所だろうが、今の金属体では血は流れていないし脈拍もないので、何となく大丈夫な気がする。
 まぁ、それでも出来る限り被弾は避けるが……。


「格闘技の経験でも?」

「キミこそ薙刀の経験が?」

「実戦による経験の積み重ねだよッ!」

「同じく」


 全く、人外な見た目といい、少々の負傷は即時に回復する点といい、共通点が多くて泣けてくるな。
 
 
 
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