アポカリプスな時代はマイペースな俺に合っていたらしい

黒城白爵

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第二章

第六十三話 平穏なひとときも悪くない

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 ◆◇◆◇◆◇


 上層部にとっては新都の発展に繋がる可能性を秘めた物であり、研究所の研究員達にとっては過労死へと確実に突き進む各種モンスター素材を手に入れた大樹モンスター戦から数日後。
 新都の自宅である高級ホテルの最上階、その一室にある広いベッドの上で惰眠を貪っていた。
 その平穏な空間へ侵入者がやってきた。


「はぁ、まだ寝てたのね」

「……シオンか。当たり前のように寝室に入ってくるんだな」

「私も此処に住んでるんだし、減るもんじゃないでしょう」

「俺の一人の時間が減る。あと個々で使っている部屋は別だろ」

「ソフィアは?」


 俺からの非難の声をスルーしたシオンが室内を見渡しながらソフィアの所在を尋ねてきた。
 いくら同じ家に住んでいるとはいえ、俺の寝室にいるわけがないだろうに。


「……」

「ちょっと起きなさいって。もうお昼よ?」


 二度寝を試みようとしていたらシオンにカーテンを開けられた。
 差し込む強烈な日の光を受けて、大樹モンスターから手に入れた〈光合成〉が半自動的に発動してしまう。
 能力を解除する間も無く、太陽光を浴びた身体が活力を生み出していく。
 消耗した体力と魔力を回復する際には大変役に立つ能力だが、この二つは今は全く消耗していないため活力のみが回復する。
 溢れる活力によって強制的に眠気が晴れたのを嘆きつつ、せめてもの抵抗にベッドの上を転がり、〈光合成〉を解除してから日が差し込んでくる窓へと背を向けた。


「仕方ないわね……」

「ぐへっ」


 そんな一言の後にシオンが取った行動は、俺の両足を引っ張りベッドの上から引き摺り下ろすというものだった。
 Bランク超人の女性ならば、成人男性を力尽くで引き摺っていくのは容易いだろう。
 ベッドから落ちた時に身体だけでなく頭も打ったが、Aランク超人である俺にダメージを与えるほどではない。
 それでも落ちた衝撃で肺の中の空気が吐き出され、僅かに残っていた眠気も消え去ってしまった。
 眠気は晴れても起きるのが面倒な気持ちは晴れていないため、そのままシオンにされるがまま引き摺られていく。

 腰の辺りから〈錬金竜〉で生み出した〈神秘金属メルクリウス〉を背中に纏わせ、更にそれを流動させることで床の上を移動しやすくする。
 俺の身体は無傷でも家の床が傷付くかもしれないからやってみたが、これを使えば寝転がったまま移動できそうだな……いや、流石にそれは堕落し過ぎか。


「二人とも何をやってるんデス?」

「あら、ソフィア。もしかして走ってきてたの?」

「ハイ。魔力が増えたせいで、カロリーを消費するまで魔力を使い切ることがなくなったじゃないですカ。だからダイエットのために走ってきたんデス」


 床に寝そべったまま顔を動かすと、そこにはランニングウェアに身を包んだソフィアがいた。
 どれほど走ってきたかは知らないが、Bランク超人の彼女が汗をかくほどなので、ちょっとしたマラソンレベルかもしれない。


「シオンさんは、お兄さんを起こしてたんですカ?」

「そうよ。私が起こさなかった今日もまだ寝てたわよ」


 やっと安心できる環境を手に入れたんだから、仕事が無い時は一日中ダラダラしてもいいはずだ。
 新都エリアに住まう殆どの者達が自分に出来ることを一生懸命頑張っている中、一人自宅で惰眠を貪るなんて今の世界ではかなりの贅沢だろう。
 

「……なんだか、休みの日なのに寝てばかりでデートに連れて行ってくれない彼氏を、家まで起こしにきて無理矢理外へと連れ出す世話焼きの彼女、みたいな構図デスネ」

「随分と具体的ね」

「最近読んだマンガで見たばかりでしたカラ。そういえば、今から昼食ですカ?」

「ええ。ちょうどソフィアを探してたのよ。お昼はもう食べた?」

「まだデス!」

「それなら汗を流したら外に食べに行かない? 最近新都に合流した人が開いたカレー店があるのよ」

「具材はモンスター肉だけですよね?」

「ええ。野菜は高価過ぎて入ってないけど、それでも結構美味しいそうよ。マインも起きたから、汗を流したら三人で行きましょう」

「勿論デス! それじゃあ、さっそく汗を流してきますネ」


 去っていくソフィアを見送ってから起き上がると、凝り固まった身体を解すために軽くストレッチを行う。


「さて、俺も着替えるか」

「やっと動く気になったみたいね」

「おかげさまでな」


 あと数歩の距離まで近付いていた自室に入ると、新都の外から持ち込んだタンスの中を漁り、これまた外から回収してきた服ーー回収時は未使用であるーーを適当に手に取る。


「やっぱり適当に選んでたわね」

「……変じゃないだろ?」


 寝室の時と同じく、当然のように部屋に入ってきたシオンへの苦情の言葉を飲み込むと、代わりの言葉を吐き出した。


「変ではないけど良くもないのよ。私が選んであげる」


 俺の返事を聞かずにタンスだけでなくクローゼットの中身まで漁り出した。
 まぁ、服のセンスに自信があるわけではないので好きにさせるか。
 脳裏で先ほどのソフィアの発言を思い出しながら、シオンが服を選び終わるのを大人しく待った。


 
 
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