66 / 76
第二章
第六十六話 適材適所だから逃げ出せない
しおりを挟む◆◇◆◇◆◇
「ーーふぅ。はい。これで大人しくなったはずですよ」
拘束したウサギ系ボスモンスターの頭に触れていた中年男性がそう告げるように、ボスモンスターから感じられていた敵意や殺意といったモノが消えていた。
「初めてみましたが、本当に凄い能力ですね、大臣」
「効果を発揮するまで時間は掛かりますけどね。役に立てたなら良かったですよ」
目の隈が凄い顔に笑みを浮かべている中年男性の名前は〈神凪悟〉。
彼が新都エリアの中枢である臨時政府の主導者だ。
〈不眠〉という能力を取得してしまうほどのワーカホリックではあるが、穏やかな人柄と確かな政務能力などを下地に発揮されるリーダーシップによって、今日まで新都エリアを率いている。
世界変革前は政府で働いていたが、その性格などもあって殆ど名前は知られていなかった。
当然、大臣職でもなかったが、この新都エリアでは皆を導いた実績もあって、敬意を含めて〈大臣〉という二つ名で呼ばれている。
そんな超重要人物が新都エリアの外に出てきているのは、人柄や性格による影響が窺える異能〈精神平定〉を使ってボスモンスターを大人しくさせるためだ。
普段は自らの精神を安定させて業務効率を向上するために使っているが、今回はその力をボスモンスターに使っていた。
自分自身に使う場合はすぐに効果を発揮するが、他人やモンスターに使う場合は直接触れる必要がある上に時間がかかるという欠点がある。
なので、今の俺みたいに誰かが相手を拘束している必要があるわけだ。
「もう拘束は解いていいんですか?」
「うーん……いえ、拘束を解くのは後回しにしましょう。〈未来予測〉によると、拘束したままだとストレスが溜まってマズいことになるようなので、今のうちに眠らせておきましょう」
神凪大臣の二つ目の異能〈未来予測〉は、見聞きした情報を元に起こり得る結果を予測する能力だ。
集めた情報が多ければ多いほど確度の高い未来を予測できるため、神凪大臣は臨時政府に集まる凡ゆる情報に出来るだけ目を通している。
この異能のおかげで新都エリアという存在があるとも言える。
〈未来予測〉と〈不眠〉の能力が原因で彼の目の隈は消えることがないが、本人も本望のようなので頑張ってもらうしかない。
「大臣、あとは我々がやっておきますので」
「早く新都エリアへ」
「というか休んでください」
慕われているのもあるんだろうが、今にも倒れそうな見た目なせいで周りが非常に過保護だ。
今回は通常業務外の仕事なので普段以上に周りが心配しているようだ。
「大丈夫ですよ。〈不眠〉の能力のおかげで寝なくても十全に力を発揮できますから。ですから、ボスモンスターが眠るのを見てから帰りますよ」
「眠らなくても体力は減るんですから、さっさと戻りますよ。移動中だけでも寝てください」
笑えないことを笑顔で言っている神凪大臣が、護衛兼秘書である女性超人に強制的に引き摺られていく。
「まだ読む書類があるんだーー」
「〈不眠〉を切ってから寝てください。初期の頃とは違うんですから大丈夫です。いいですね?」
「うーん……まぁ、今は人も集まってるし移動中ぐらいは寝てもいいかな。分かったよ」
防弾仕様の車に無理矢理乗せられて去って神凪大臣を皆で見送る。
秘書以外の護衛の超人達がバイクに乗って大臣専用車に並走していくのも見送ってから、全員が各々の作業に戻った。
「大臣さん、今日もパンダでしたネ」
「あの人はずっとパンダよ」
「目の隈だけじゃなくて肌も白いからな……」
ザ・不健康な外見の神凪大臣が今日もいつも通りであったことを話しながら、大人しくなったウサギ系ボスモンスターを運んでいく。
予め作った仮設の飼育小屋に運んでから、睡眠能力持ちの女性超人がボスモンスターを眠らせた。
神凪大臣が〈精神平定〉でボスモンスターを大人しくさせる前は、精神が荒ぶりすぎていて全く効果がなかったが今はあっさりと眠った。
相手の精神状態に関係なく眠らせられたら強力な能力なんだがな。
ボスモンスターが眠る〈魔化金属〉製のドーム型飼育小屋の重厚な扉を閉じると、その周りを直通通路以外は迎撃能力付きの〈神秘金属〉で取り囲んだ。
「では、直通通路の警備はよろしくお願いしますね」
「「「「了解しました!」」」」
銃火器装備二名とグレイヴ型マジックアイテム〈ラーミナ壱式〉装備二名の超人四名が警備につく直通通路は、ボスモンスターへの餌やりなどで使用する。
あとは定期的な精神管理作業の際にも使用する通路でもある。
全てをメルクリウスで囲めば完璧だが、餌やりなどの際に毎回俺が同行しなければならなくなるため、このような形になった。
「それにしても、黄色ゲートが思ったより新都エリアに近かったのは運が良かったよな」
「そうね。新都エリアをこの辺りまで拡張するのは大変だけど、人もいるし重機並かそれ以上の能力持ちもいるから今年中には終わると思うわ。マインも忙しくなるわよ」
「……ま、メシのためなら仕方ないか」
デカウサギ肉が安定供給されるようになったら、新都エリアの生活環境も良くなるだろう。
食料問題の解決だけでなく、デカウサギ達の処理を非超人や低位超人達にやらせて超人化を進ませることもできる。
そうすれば人材不足の問題も解決できるはずだ。
将来的に俺の負担が減り、自由時間が増えるならばやらざるを得ないだろう。
〈地形操作〉などの作業向けな能力を持っていることを嘆きつつ、黄色ゲート出現地点である廃墟を呑み込むようにメルクリウスを動かし、ゲートの管理がしやすいように廃墟の取り壊しを行うのだった。
10
あなたにおすすめの小説
ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた
ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。
今の所、170話近くあります。
(修正していないものは1600です)
シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~
尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。
だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。
全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。
勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。
そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。
エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。
これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。
…その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。
妹とは血の繋がりであろうか?
妹とは魂の繋がりである。
兄とは何か?
妹を護る存在である。
かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!
現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!
おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。
ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。
過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。
ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。
世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。
やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。
至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!
枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕
タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】
3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!
日本国 召喚獣管理省 関東庁 召喚獣総合事案即応科。
wakaba1890
ファンタジー
召喚獣。
それは向こう側とされる所から、10歳を迎えた日本人の子供の下に召喚されるモンスターのことである。
初代天皇・神武天皇が日本を建国した際に書かれた絵画には彼は金鵄と呼ばれる金色に輝く鵄(とび)と契約したのが原初となっている。
そして、縄文、弥生、古墳、飛鳥、平安、戦国時代から近代から今に至るまで、時代を動かしてきた人物の側には確かに召喚獣は介在していた。
また、奇妙な事に、日本国に限り、齢10歳を迎えた日本在住の日本人にのみ体のどこかから多種多様な紋章が発現し、当人が念じると任意の場所から召喚陣が現れ、人ならざるモンスターを召喚される。
そして、彼らモンスターは主人である当人や心を許した者に対して忠実であった。
そのため、古来の日本から、彼ら召喚獣は農耕、治水、土木、科学技術、エネルギー、政治、経済、金融、戦争など国家の基盤となる柱から、ありとあらゆる分野において、今日に至るまで日本国とアジアの繁栄に寄与してきた。
そして、建国から今まで、国益の基盤たる彼ら数万種類以上をも及ぶ召喚獣を取り締まり管理し、2600年以上と脈々と受け継がれてきた名誉ある国家職がーーーーー国家召喚獣管理官である。
やがて神Sランクとなる無能召喚士の黙示録~追放された僕は唯一無二の最強スキルを覚醒。つきましては、反撃ついでに世界も救えたらいいなと~
きょろ
ファンタジー
♢簡単あらすじ
追放された召喚士が唯一無二の最強スキルでざまぁ、無双、青春、成り上がりをして全てを手に入れる物語。
♢長めあらすじ
100年前、突如出現した“ダンジョンとアーティファクト”によってこの世界は一変する。
ダンジョンはモンスターが溢れ返る危険な場所であると同時に、人々は天まで聳えるダンジョンへの探求心とダンジョンで得られる装備…アーティファクトに未知なる夢を見たのだ。
ダンジョン攻略は何時しか人々の当たり前となり、更にそれを生業とする「ハンター」という職業が誕生した。
主人公のアーサーもそんなハンターに憧れる少年。
しかし彼が授かった『召喚士』スキルは最弱のスライムすら召喚出来ない無能スキル。そしてそのスキルのせいで彼はギルドを追放された。
しかし。その無能スキルは無能スキルではない。
それは誰も知る事のない、アーサーだけが世界で唯一“アーティファクトを召喚出来る”という最強の召喚スキルであった。
ここから覚醒したアーサーの無双反撃が始まる――。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる