アポカリプスな時代はマイペースな俺に合っていたらしい

黒城白爵

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第二章

第六十六話 適材適所だから逃げ出せない

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 ◆◇◆◇◆◇


「ーーふぅ。はい。これで大人しくなったはずですよ」


 拘束したウサギ系ボスモンスターの頭に触れていた中年男性がそう告げるように、ボスモンスターから感じられていた敵意や殺意といったモノが消えていた。


「初めてみましたが、本当に凄い能力ですね、大臣」

「効果を発揮するまで時間は掛かりますけどね。役に立てたなら良かったですよ」


 目の隈が凄い顔に笑みを浮かべている中年男性の名前は〈神凪悟かんなぎさとる〉。
 彼が新都エリアの中枢である臨時政府の主導者だ。
 〈不眠〉という能力を取得してしまうほどのワーカホリックではあるが、穏やかな人柄と確かな政務能力などを下地に発揮されるリーダーシップによって、今日まで新都エリアを率いている。
 世界変革前は政府で働いていたが、その性格などもあって殆ど名前は知られていなかった。
 当然、大臣職でもなかったが、この新都エリアでは皆を導いた実績もあって、敬意を含めて〈大臣〉という二つ名で呼ばれている。

 そんな超重要人物が新都エリアの外に出てきているのは、人柄や性格による影響が窺える異能〈精神平定〉を使ってボスモンスターを大人しくさせるためだ。
 普段は自らの精神を安定させて業務効率を向上するために使っているが、今回はその力をボスモンスターに使っていた。
 自分自身に使う場合はすぐに効果を発揮するが、他人やモンスターに使う場合は直接触れる必要がある上に時間がかかるという欠点がある。
 なので、今の俺みたいに誰かが相手を拘束している必要があるわけだ。


「もう拘束は解いていいんですか?」

「うーん……いえ、拘束を解くのは後回しにしましょう。〈未来予測〉によると、拘束したままだとストレスが溜まってマズいことになるようなので、今のうちに眠らせておきましょう」


 神凪大臣の二つ目の異能〈未来予測〉は、見聞きした情報を元に起こり得る結果を予測する能力だ。
 集めた情報が多ければ多いほど確度の高い未来を予測できるため、神凪大臣は臨時政府に集まる凡ゆる情報に出来るだけ目を通している。
 この異能のおかげで新都エリアという存在があるとも言える。
 〈未来予測〉と〈不眠〉の能力が原因で彼の目の隈は消えることがないが、本人も本望のようなので頑張ってもらうしかない。


「大臣、あとは我々がやっておきますので」

「早く新都エリアへ」

「というか休んでください」


 慕われているのもあるんだろうが、今にも倒れそうな見た目なせいで周りが非常に過保護だ。
 今回は通常業務外の仕事なので普段以上に周りが心配しているようだ。


「大丈夫ですよ。〈不眠〉の能力のおかげで寝なくても十全に力を発揮できますから。ですから、ボスモンスターが眠るのを見てから帰りますよ」

「眠らなくても体力は減るんですから、さっさと戻りますよ。移動中だけでも寝てください」


 笑えないことを笑顔で言っている神凪大臣が、護衛兼秘書である女性超人に強制的に引き摺られていく。


「まだ読む書類があるんだーー」

「〈不眠〉を切ってから寝てください。初期の頃とは違うんですから大丈夫です。いいですね?」

「うーん……まぁ、今は人も集まってるし移動中ぐらいは寝てもいいかな。分かったよ」


 防弾仕様の車に無理矢理乗せられて去って神凪大臣を皆で見送る。
 秘書以外の護衛の超人達がバイクに乗って大臣専用車に並走していくのも見送ってから、全員が各々の作業に戻った。


「大臣さん、今日もパンダでしたネ」

「あの人はずっとパンダよ」

「目の隈だけじゃなくて肌も白いからな……」


 ザ・不健康な外見の神凪大臣が今日もいつも通りであったことを話しながら、大人しくなったウサギ系ボスモンスターを運んでいく。
 予め作った仮設の飼育小屋に運んでから、睡眠能力持ちの女性超人がボスモンスターを眠らせた。
 神凪大臣が〈精神平定〉でボスモンスターを大人しくさせる前は、精神が荒ぶりすぎていて全く効果がなかったが今はあっさりと眠った。
 相手の精神状態に関係なく眠らせられたら強力な能力なんだがな。

 ボスモンスターが眠る〈魔化金属アマルガム〉製のドーム型飼育小屋の重厚な扉を閉じると、その周りを直通通路以外は迎撃能力付きの〈神秘金属メルクリウス〉で取り囲んだ。


「では、直通通路の警備はよろしくお願いしますね」

「「「「了解しました!」」」」


 銃火器装備二名とグレイヴ型マジックアイテム〈ラーミナ壱式〉装備二名の超人四名が警備につく直通通路は、ボスモンスターへの餌やりなどで使用する。
 あとは定期的な精神管理作業の際にも使用する通路でもある。
 全てをメルクリウスで囲めば完璧だが、餌やりなどの際に毎回俺が同行しなければならなくなるため、このような形になった。
 

「それにしても、黄色ゲートが思ったより新都エリアに近かったのは運が良かったよな」

「そうね。新都エリアをこの辺りまで拡張するのは大変だけど、人もいるし重機並かそれ以上の能力持ちもいるから今年中には終わると思うわ。マインも忙しくなるわよ」

「……ま、メシのためなら仕方ないか」


 デカウサギ肉が安定供給されるようになったら、新都エリアの生活環境も良くなるだろう。
 食料問題の解決だけでなく、デカウサギ達の処理を非超人や低位超人達にやらせて超人化を進ませることもできる。
 そうすれば人材不足の問題も解決できるはずだ。
 将来的に俺の負担が減り、自由時間が増えるならばやらざるを得ないだろう。

 〈地形操作〉などの作業向けな能力を持っていることを嘆きつつ、黄色ゲート出現地点である廃墟を呑み込むようにメルクリウスを動かし、ゲートの管理がしやすいように廃墟の取り壊しを行うのだった。


 
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