72 / 76
第二章
第七十二話 偶には自分自身を褒めてあげよう
しおりを挟む◆◇◆◇◆◇
「ーーグォオオオオッ!!」
「うるさっ」
「グボラッ!?」
扉を突き破って襲い掛かってきた虎頭男を裏拳で撃退する。
虎頭男が出てきた部屋を覗き込むと、どうやら食事中だったようでナニカの肉や骨が散乱していた。
「グッ、やるじゃねぇか」
「なんだ、まだ生きてるのか。その見た目は伊達じゃないんだな」
〈暗龍治焼武琉〉の拠点の中央に聳え立つ建造物は、敢えて例えるならば違法増築を繰り返したビル、またはマンションだった。
外観的にはタワーとでも言うべき建造物内ではアンタッチャブルの超人達が待ち受けており、一撃では倒れなかった目の前の虎頭男もその一人だ。
「クックックッ。不意打ちで俺をやれなかったことを後悔するんだな」
「いや、不意打ちしたのはオマエなんだが」
「行くゼぇッ!!」
虎っぽい両手の爪を伸ばして虎頭男が斬りかかってくる。
金属を引っ掻く不快音がした直後、何かが折れた音がした。
「……へっ?」
「だから聞けよ」
今度は力を込めてから頭部を殴りつけると、返事を聞く前に虎頭が爆散してしまった。
「ツッコミが強すぎたか……まぁいいや」
もう一度虎頭男の部屋を覗き込んで生存者がいないことを確認してから先に進む。
回廊の規模のわりには部屋の数は少ないようで、次に確認する扉まで少し歩く必要があった。
「虎男を倒すとはやるじゃネーか」
「だが奴は此処の守衛でしかない」
「俺達本隊の足元にすら及ばない弱者よ」
十メートルほど歩いたところで次の敵が出現した。
ザ・雑魚テイストなセリフを吐きながら登場した角が生えた狼っぽい頭の三人衆の背後には、奴隷階級を示す黒い線が首に刻まれた四つん這いで歩かされている女性達の姿が見えた。
黒い線が見えたのは一人だけだが、状況的に他の女性達も同じ奴隷階級だろう。
「全身金属化とは随分と高い変質率みたいだが、俺達三人も変質率は高いんだゼ?」
「見ての通りな!」
「見るからに硬そうだが、俺達の力の前では無力だ」
角狼頭男三人衆の牙と爪から分泌された液体が地面に落ちると、床が白煙を上げながら溶け出した。
背後の女性達の怯えっぷりからして日常的に使い慣れている溶解液なのだろう。
まぁ、だから何だというのが正直な感想だが。
「そうなるといいな」
特に警戒することなく彼らに向かって歩いていく。
俺の態度が予想外だったのか三人衆は一瞬だけ狼狽えていたが、すぐに立ち直って襲い掛かってきた。
「「「ウォオオオオオッ!!」」」
異口同音の雄叫びを上げながら三人衆が溶解液付きの爪を振り抜いてくる。
付着した溶解液が潤滑油になって滑ったからか、三人衆の爪が折れることはなかった。
引っ掻かれた部分から白煙が上がるが、体感的には体表を軽く擦った程度のダメージしかない。
それでもこの〈神秘金属〉製の身体を傷付けたのは事実なので、三人衆が自信を持つのも無理もないかもしれない。
俺みたいな異能でもなければ、多くの超人にとっては致命傷になるだろうな。
未だに期待したほどのダメージがなかったことに気付いていない三人衆の内の二人の首を両手で掴み上げ、残る一人の首を尻尾で締め上げた。
尻尾操作は慣れていないので、尻尾で捕まえた一人は力加減を間違えてそのまま引きちぎってしまった。
「ぐ、グヘッ!?」
「な、何故、無事なん、だ?」
「何故って言われてもな。まぁ……単純に力の差?」
「ぐぞったれ……」
「この先にいる奴らの情報を聞きたいんだが」
「な、ながまはう、売らねぇッ」
「そっか。じゃあな」
掴み上げていた首を握り潰して角狼頭男二人を始末する。
一連の様子を見ていた奴隷達が凄く怯えているのが見えた。
「……簡単に要件だけ告げるが、俺と二人の仲間は君達を助けるつもりだ。だが、他にもまだ敵がいるから、助け出すのは最後に纏めてになる。だから全てが終わるまでこの中に入っていてくれ。頑丈だから安全だ」
メルクリウス製のコンテナを作りだすと、その中に奴隷達を半強制に放り込んでから封鎖した。
小さな穴は空けているから窒息死することもないだろう。
こうして助けた奴隷階級の者達を保護していけば、この先の超人達との戦いに巻き込まれて死ぬことはあるまい。
我ながらナイスアイディアだと自画自賛しつつ先に進んでいった。
12
あなたにおすすめの小説
ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた
ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。
今の所、170話近くあります。
(修正していないものは1600です)
シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~
尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。
だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。
全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。
勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。
そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。
エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。
これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。
…その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。
妹とは血の繋がりであろうか?
妹とは魂の繋がりである。
兄とは何か?
妹を護る存在である。
かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!
現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!
おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。
ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。
過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。
ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。
世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。
やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。
至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~
仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。
ダンジョン菌にまみれた、様々なクエストが提示されるこの現実世界で、【クエスト簡略化】スキルを手にした俺は最強のスレイヤーを目指す
名無し
ファンタジー
ダンジョン菌が人間や物をダンジョン化させてしまう世界。ワクチンを打てば誰もがスレイヤーになる権利を与えられ、強化用のクエストを受けられるようになる。
しかし、ワクチン接種で稀に発生する、最初から能力の高いエリート種でなければクエストの攻略は難しく、一般人の佐嶋康介はスレイヤーになることを諦めていたが、仕事の帰りにコンビニエンスストアに立ち寄ったことで運命が変わることになる。
異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!
枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕
タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】
3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる