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第三章
第九十九話 装備の重要性
しおりを挟む雑然とした室内で唯一整理されている武具の数々を眺める。
別室にあるらしい素材置き場ほど整理整頓されているわけではないが、武具以外の物が納められている棚や床と比べればマシなほうだ。
そんな散らかっている作業部屋の一角を巨大なモンスターの死体が占めていた。
生前からすれば見る影も無いほどにボロボロな状態のこのモンスターは、先日の〈堕天の回廊〉で起きた異常暴走の折に倒した徘徊主〈浮動晶騎の大天使〉だ。
討伐後に俺が気を失ったことにより、収納系スキル【堕天の蔵】の効果によって自動的に収納されていた。
一度状態を確認するついでに、このボスモンスターの素材で何かアイテムが作れないかと思い、退院後すぐに久坂マモルの工房へと直行した。
「どうですか? 何か作れそうですか?」
「んー、質を問わないなら作ろうと思えば色々作れるかな?」
はじめ摩天楼ダンジョンのボスモンスターであるフロータルナイトの死体を見せた時のはしゃぎっぷりは落ち着いたようで、いつも通りの間延びした声が返ってきた。
「質を問うなら?」
「天使系の素材は難しいからね。コレ単体なら装身具ぐらいが限界だと思うよ。他の素材も用意すればそれと同じセット装備が作れるかもね?」
マモルが指差した先には、彼が入院中の俺のお見舞いに来てくれた際に修理を頼んでおいた〈祝福の銀殻騎士〉セットがあった。
修理は済んでおり、フロータルナイトとの一戦で損耗の激しかった防具が新品のようになっている。
「コレより上ですか?」
「たぶんね」
「つまり伝説級?」
「ハハハハハッ! 僕がいかに凄腕でも伝説級の製作は難しいだろうね」
絶対に無理とは思っていないらしく、その瞳には確かな自信が垣間見える。
回帰前のマモルは伝説級のアイテムを自作できる域にまでは達していなかったが、今世のマモルはどうだろうか?
回帰前のマモルの腕前をしっかりと把握しているわけではないので比較は出来ないが、これまでに製作を依頼した防具の完成度を思うと、俺もつい期待してしまう。
「では挑戦してみてください。金が足りなかったら言ってください。可能な限りは出しますので」
「えっ、本当かい!?」
「自分の装備のためなら金に糸目は付けませんよ」
今回のボス戦でも装備の重要性というものを強く実感していた。
マモルに作ってもらった〈祝福の銀殻騎士〉セットの能力が無ければ、もしかすると死んでいたかもしれない。
「では、新たな防具と装身具の製作をお願いしますね」
「任せてくれ。そういえば、ネットニュースで見たんだけど、このボスを倒して伝説級の剣がドロップしたらしいね」
「しましたね」
「み、見せてくれないか! 見せてもらえれば今後のアイテム製作に活かせると思うんだ!」
「……」
フロータルナイト討伐後のボス宝箱から得たということにしている〈堕天剣バラキエル〉の実際の出所は、俺の異能【万物変換】の〈システム〉によるクエスト報酬だ。
普通なら分からないだろうが、職人系覚醒者の中でも上澄みの存在であるマモルには気付かれる可能性がある。
これまでのマモルの人間性を考えると問題ない気もするが、心情的にはあまり見せたくないのが正直な気持ちだ。
特に、伝説級のマジックアイテムまで生み出すほどの力だということが露見するのは出来るだけ避けた方がいいだろう。
「この後予定があるので……」
「1時間、いや、30分だけでいいから頼む!!」
「うーん」
「じゃ、じゃあ、あそこに並んでいる武具の中から好きなのを1つタダでやると言ったらどうだ?」
マモルの視線の先を追うと、そこは先ほど俺が眺めていた武具が陳列されている場所だった。
「叙事級もあるようですが?」
「伝説級をじっくりと見れるなら惜しくはない」
「……それならまぁ、構いませんよ」
頭の中で損得勘定を済ませると、【堕天の蔵】の収納空間から一振りの黒剣を取り出した。
○堕天剣バラキエル
等級:伝説級。
とあるダンジョンで産出された長剣型マジックアイテム。
認められた者にしか扱えない。
・【雷聖剣煌】……破壊的な雷属性と聖なる光属性を宿したオーラを剣身より発する。属性を分けて使用することも可能。
・【雷皇天身】……紫電を纏い身体能力を強化する。また、使用者次第では身に纏う雷を防具や翼などへと変化させることが可能。
・【堕天ノ雷霆】……使用者は黒紫色の雷霆を生成し、自由自在に支配する。
・【堕天使の祝福・雷】……光属性と闇属性に対する耐性(大)を獲得。また、雷属性の無効化と強化(大)を獲得する。
工房内に叙事級以下のマジックアイテムが多数あるからこそ如実に理解できる。
やはり、伝説級のマジックアイテムは存在感からして格下のアイテムとは違うな。
ギラギラとした眼差しでバラキエルを凝視するマモルに恐る恐る黒剣を手渡す。
マモルは言語化できない声を上げると、バラキエルと何かの小道具を掲げて近くの作業台へと駆けて行った。
「約束通り30分だけですからねー」
聞こえていないだろうが、形だけそう告げておく。
もし延長を願い出るようなら追加でマジックアイテムを貰うとしよう。
修理の済んでいる〈祝福の銀殻騎士〉セットを回収すると、武具が置かれている場所へと移動する。
「さて、色々と目移りしてしまうが、どれを貰おうかな?」
陳列されているマジックアイテムを一つ一つ手に取り、〈システム〉の力を使ってその詳細を確認していった。
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