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第三章
第百一話 再び紅果の森へ
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退院した翌日。
実利を兼ねたリハビリのため、以前にも潜った資源ダンジョン〈紅果の森〉にやってきた。
回帰後間もない頃にソロで挑んだのとは違い、今回はパーティーメンバーであるリリアとマリヤも同行している。
「すごく鬱蒼としたダンジョンですね」
「モンスターが隠れられる遮蔽物が多いから奇襲には気を付ける必要がありますね」
この資源ダンジョンに挑戦するのは2人共初めてらしく、ダンジョンエリアに入場して早々に周囲に広がっている草木を見渡していた。
そんな美女2人を含めた俺達3人を見ている他の覚醒者達からの視線は気にも留めていない。
ダンジョンに入る前からこんな状況だったが、俺が入院している間に慣れてしまったらしい。
病院という物理的な壁のおかげで守られていた俺とは異なり、2人は多くの人々に付き纏われていたそうだ。
その理由についてだが、摩天楼ダンジョンの異常暴走の解決に尽力したのも理由の一つだが、それ以上にこの異常暴走を経て、パーティーのリーダーである俺が王級覚醒者にランクアップしたのが1番の理由らしい。
入院中で面会謝絶の俺からは話が聞けないから、パーティーメンバーの2人に人が殺到したんだとか。
どれだけの人に根掘り葉掘り尋ねられたかは知らないが、この好奇の視線に対するスルースキルの高さから何となく察せられた。
「……そろそろ行こうか」
「分かりました」
「了解です」
森林フィールドを見渡していた2人を促してダンジョンの奥へと進む。
今回のダンジョンアタックは、10日に及ぶ入院生活で鈍った身体のリハビリではあるが、実際のところ言うほど鈍ってはいない。
個人差はあるものの、王級に至った覚醒者の肉体や戦闘感覚は、10日程度の休養で鈍ったりはしない。
まぁ、それでも王級に至ったのは回帰後が初めてなのと、休養中ダンジョンに挑んでいない彼女達の慣らしも兼ねてこのダンジョンを選んだ。
「ん、えいッ! このあたりのモンスターは弱いですね」
「まだ浅い場所だからな。奥に進むに連れて強くなっていくはずだから油断はするなよ」
「はーい」
襲い掛かってきたアリ系モンスターの攻撃を盾で軽く受け止め、反撃の一撃で倒したマリヤが肩透かしを食ったかのような反応をしていた。
〈紅果の森〉に出るアリ系モンスターは、純戦士系の上級覚醒者であるマリヤにとっては張り合いのない相手だろう。
ただの一撃で倒せるほどに体力も低いので、俺やリリアが追撃を仕掛けるまでもなく終わってしまう。
これなら敢えて盾で受け止めるまでもないかもしれないな。
「盾の損耗もタダじゃないし、暫くは弱いモンスターが続くから、開幕一番でリリアの魔法で倒していくか?」
「そうですね。ダンジョンに入ってから使った支援魔法で消費した分の魔力も回復して余ってますし、そうさせてもらっていいでしょうか?」
「ああ、任せた」
「分かりました。もし撃ち漏らした時はよろしくね、マリヤ」
「うん、その時は任せて」
道中の戦闘方針が決まると、リリアが無属性攻撃魔法『魔法の矢』を行使する。
魔法の発動地点である魔法陣から魔力構造体の矢は射出せず、魔法陣の展開を維持したまま引き連れていく。
「発動待機もできるようになったんだな」
「休養期間中にそういう魔法技術があると知りまして、試しにやってみたら出来ました」
「……ん? もしかして今初めてやったのか?」
「はい、そうですけど、何かおかしかったですか?」
「いや、流石だなぁ、と思っただけだよ」
「ありがとうございます!」
魔法の発動待機技術って高等技術だった気がするんだけどな……流石はクラス〈魔女〉と言うべきか。
俺と出会った頃は、次のランクアップで魔法使いの道に進まないようメイスをブンブン振り回して戦士を目指していたとは、今となっては想像できないな。
それからアリ系モンスターが姿を現す度に、発動待機状態の魔法陣から『魔法の矢』が放たれ、モンスターを駆逐していった。
魔力が全回復する度にリリアの周囲に発動待機状態の魔法陣が増えていく。
1つだけならまだしも、複数個の魔法陣の発動待機状態の維持とか、回帰前の未来の世界においても普通ではないレベルの超高等技術だ。
涼しげな表情で多数の魔法陣を展開し維持し続けているリリアに、俺は軽く引いていた。
無自覚のリリア本人は勿論、マリヤも純戦士系であるためリリアがやっていることが分かっていない。
「魔法陣がいっぱい浮かんで綺麗だね」
「魔法陣の中身は物騒だけどね」
「確かに!」
モンスターが支配する森の中で呑気な会話を交わす2人だが、モンスターが出現すると即座に盾を構え、攻撃魔法を放って倒していた。
緊張し過ぎるよりはいいか、と考え、リリアが使用している魔法技術の高さについては何も言わないことにした。
「……いやぁ、頼もしいね」
「頑張って私達も王級を目指します!」
「目指すはメンバー全員の王級へのランクアップですよ、リーダー!」
「それは、物凄く贅沢なパーティーになりそうだな。まぁ、そう意味では今回の標的は狙いどころか」
資源ダンジョン〈紅果の森〉。
その名を示す紅色の果実の確保を目指して、歩みを止めることなくダンジョンの奥へと進んでいった。
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