万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵

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第一章

第一話 後悔と回帰

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「──俺もここまでか」


 倒壊したビルの瓦礫に埋もれ、全身から血を流しながら自分の終わりを察していた。
 振り返れば、俺の人生は碌なもんじゃなかったな。
 一部の人類のみが目覚める魔力を扱える新人類〈覚醒者〉。
 その覚醒者の中でも更に選ばれた者の証である〈異能〉に目覚めたっていうのに、俺は勝者にはなれなかった。
 いや、正しくは自分が勝者側である自覚がなかったことか。
 時代に適応せずに普通に生きようとした結果、自分が持つ異能について詳しく知ろうとするのを止め、他の勝者達よりもスタートダッシュが大きく出遅れてしまった。
 

「……ちゃんと成長していたら、こんな奴も簡単に倒せていたかもしれないな」


 俺とは違いスタートダッシュを決められた覚醒者達を大量に喰らった西洋の竜のような見た目のモンスターを見上げながら、そんなIFもしもを考えてしまう。
 自分の異能の真価を知った時には、既に世界は一部の高位覚醒者達が支配していた。
 覚醒者が成長するのに必要な環境も、普通に生活するのに必要な様々なモノも彼らに独占されているような状況だった。
 出遅れた俺は奴らの所為で成長できず、強い異能を有していながらも成長する機会を奪われたことで底辺覚醒者として過ごすことを強いられていた。

 底辺覚醒者なんて高位覚醒者がモンスターと戦う際の使い捨ての駒みたいなものだ。
 今回もこれまでの戦いと同様に奴隷のような扱いを受けるのだと思っていたが、そんな俺よりも先に奴らの方がくたばった。


「ザマァ……ま、俺の運もここまでか」


 眼前の竜の口内に魔力が集まっていく。
 竜タイプのモンスターがよく使う竜の息吹ブレスという攻撃だ。
 高位覚醒者ですら消し炭にする攻撃の矛先を向けられており、俺が生き残ることは万に一つもない。
 底辺覚醒者にできることなど、大人しく死を待つことだけだ。


「……ふざけんな」


 成長できる環境があれば、こんな風に死ぬことはなかっただろう。
 新しい時代に適応していれば、雑魚覚醒者共にデカい顔をさせることもなかっただろう。
 自分の異能の真価をもっと早く認識していれば、俺の人生は180度変わっていただろう。
 覚醒者として正しく生きていれば、目の前のモンスターなんかに殺されることはなかっただろう。


「もう一度人生をやり直せるなら、オマエ達を必ずぶっ倒してやるッ!」


 苦し紛れの負け犬の遠吠えであることを自覚しながら、俺を苦しめた全ての存在に宣戦布告すると、灼熱のブレスの中に呑み込まれていった。




──異能所持者の強い意思を確認しました。
──異能所持者のこれまでの経験を変換し、現在の意識と記憶、異能を覚醒時点へと送ります。
──過去への回帰に成功しました。
──回帰成功の経験により、異能【変換コンバート】が異能【万物変換コンバート】へと変化しました。


 ◆◇◆◇◆◇


「──いつまで寝てんだッ! 死にたくなかったら早く起きやがれッ!」


 モンスターのブレスに呑み込まれたのに耳障りな声が聞こえてきた。
 直前に脳裏に浮かんだメッセージも含めて、一体何が起きたんだ……。


「ここは……」


 目を開けると、そこは薄暗い路地裏だった。
 先ほどまでいた竜タイプのモンスターの姿はなく、代わりに矮小な魔力を漂わせるチンピラみたいな格好をした3人の覚醒者が目の前にいた。


「おい、クロヤ。金がねーってどういうことだぁ?」

「モンスターから町を守っている覚醒者である俺達への感謝の気持ちが足りねーみたいだな」

「覚醒者の俺達には金が必要なのに金を用意していないとは。町が滅んだらお前の所為だぞ」


 コイツら、見覚えがあると思えば、昔俺の地元で幅を利かせていた覚醒者達か。
 モンスターとの戦いにも殆ど参加していない上に、主に一般人を脅して金を奪っていた奴らだ。
 最終的には一般人や覚醒者を殺し過ぎて、その遺族に報復されて死んだんだったか。
 その頃には中堅ほどの実力を付けていたが、今の時点では底辺レベルの実力しかないようだ。
 コイツらは俺の高校時代のクラスメイトで、殆ど話したこともない間柄だったが、ちょっとしたことで目を付けられるようになり、金を強請られる関係になってしまっていた。


「そういえば、覚醒したのはこの時だったっけ」


 体内に宿る微小な魔力から今の俺が覚醒して間もないことが分かった。
 それに加えて、モンスターのブレスに呑み込まれた直後のメッセージと現在の状況から、今の俺は過去に回帰しているのだと思われる。
 時系列的には今から10年以上も後になって俺の異能【変換コンバート】のチートっぷりが分かったが、過去への回帰まで出来るとは、どうやらまだ理解が足りなかったらしい。
 そんな風に自嘲していると、突然目の前に半透明の板が出現した。


○クエスト『チンピラ覚醒者達を倒せ』
 悪意を以て攻撃を仕掛けてきた3人のチンピラ覚醒者を倒してください。
 討伐数によって報酬が変化します。
⚫︎全て討伐
→倒した対象が持つ力の一部が異能所持者に変換されます。
・スキル【威圧】
・スキル【強拳】
・スキル【幸運】
⚫︎一部討伐、または不殺
→倒した対象が持つ力の一部が異能所持者に変換されます。
・【威圧】【強拳】【幸運】の3種のスキルからランダム変換。(抹殺した場合)
・能力値ポイント+1~3


 ……なんだこりゃ?
 初めてみるモノが目の前に浮かんでいる。
 ゲームとかでありそうなクエストという表示といい、長年様々な能力を見てきた俺でもこんなモノは初めてだ。


「おいッ! 何さっきから無視してやがんだッ!」

「……俺以外には見えてないのか」

「ああん? 一体何を言ってやがる」

「頭がおかしくなったみたいだな」

「もう一度打てば治るんじゃないか?」

「それはいいな。さっそく確かめてみるか」


 ニヤニヤと笑いながらチンピラAが近付いてくる。
 名前はぼんやりと覚えているが、こんな奴らはそれぞれチンピラA、チンピラB、チンピラCで十分だろう。
 油断しまくっているチンピラAを見ながら、奴から見えない位置にある手の指先に魔力を集めた。


「オラッ!!」


 チンピラAが繰り出してきたテレフォンパンチを躱わすと、チンピラAの喉元を指先に形成した魔力の刃を突き刺した。


「が、かふっ!?」

「目障りで、耳障りなんだよ、チンピラA君」


 チンピラAの喉に突き刺した指を引き抜くと、その血濡れた指先の魔力刃を構成する魔力に対して、【変換コンバート】から【万物変換コンバート】へと変化した異能の力を行使した。


──異能【万物変換コンバート】を発動します。
──魔力属性を〈無〉から〈雷〉へと変換します。
──魔力属性の変換に成功しました。
──第0層【経験変換ノ理コンバート・システム】は解放済みです。
──第1層【魔生変換】は解放済みです。
──第2層【彼我変換】が解放されました。
──第3層【属性変換】が解放されました。


 無属性の魔力から雷属性の魔力へと変換された魔力刃をチンピラBへと射出する。
 雷の魔力刃がチンピラBの身体に突き刺さった瞬間、解放された電撃が奴を襲う。


「ギャアアッ!?」


 覚醒して間もない俺の力では即死に至らないだろう。
 そう判断すると、チンピラBとの距離を詰めて再び生成した魔力刃でその首を掻っ切った。


「て、テメェ! か、覚醒したのか!?」


 あっという間に仲間2人がやられたことで、残るチンピラCが俺の覚醒に気付いたようだ。
 挑発するように手招きすると、チンピラCは腰の後ろからナイフを取り出してきた。


「不意打ちで2人をやったからって調子に乗るなよ! こちとら伊達に覚醒者として経験を積んでねぇんだよ!」

「そうかい。俺は覚醒者歴10年を超えているんだがな」

「は?」


 間抜け面を晒すチンピラCの目の前で、地面に倒れたチンピラBの懐を漁ってみる。
 すると、チンピラCが持つナイフとデザインは違うがチンピラBの懐からもナイフが見つかった。


「喰らえッ!」


 振り下ろしてきたチンピラCのナイフの一撃を紙一重で避けると、すれ違い様に彼の腹部へとナイフを突き出した。


「がっ、はっ!?」

「ほら。これもプレゼントだ」

「ゴフッ」


 痛みに硬直するチンピラCの手からナイフを奪い取り、そのナイフも彼の首筋に突き入れてトドメを刺した。
 それから、まだギリギリ生きていたチンピラAにも追加の魔力刃で息の根を止めた。


── クエスト『チンピラ覚醒者達を倒せ』が達成されました。
──達成報酬としてスキル【威圧】、スキル【強拳】、スキル【幸運】を獲得しました。
──素晴らしい技量を示しました。
──特別報酬:各種能力値+3


 おお。まさか本当に獲得できるとはな。
 おそらく、このゲームみたいな表示は、異能【万物変換コンバート】に含まれている第0層【経験変換ノ理コンバート・システム】によるモノだろう。
 回帰前の異能【変換コンバート】の時にはなかったことからも、異能【万物変換コンバート】に変化した際に追加された力であることは明らかだ。


「敵の力の一部を条件付きで俺に変換してくれる能力、ってところか? この力があればより一層強くなれそうだ」


 チンピラ達の死体から戦利品を漁る。
 昔過ぎて正確な額は覚えていないが、コイツらには少なくない額の金を脅し取られてきたのだ。
 コイツらの命は未来でコイツらに殺される人々の命を救うのと、これまでに殺された人達の弔いなので、俺個人への報酬にはなり得ない。
 クエスト報酬は俺の異能によるモノなので別枠である。
 そういうわけで、使えそうな物を粗方頂戴すると、出来る限りの証拠隠滅をしてから人気の無い路地裏を後にした。

 
 
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