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第一章
第二十六話 因縁の相手
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【財宝探知】で発見できる限りのミスリル鉱石を採掘してから洞窟を後にする。
前世では『毎月のようにミスリルを掘り尽くし』とかテレビで報道されていたから、おそらくこのダンジョンにおける資源が再生成されるインターバルは約1ヶ月なのだと思われる。
正確な期間を知るためにも、先ずは半月後にまた来る予定だ。
エリアボスに関しては1週間で復活するようなので、必然的にまた倒すことになるだろう。
「グラトニアもいるし、今度はもっと早く進むことが出来そうだな」
「GEGE」
洞窟の外に出ると、洞窟の出入り口近くを彷徨いていた岩ゴブリンを生きたまま〈捕喰ノ牙〉に食べさせる。
生きたまま捕喰させても体力と魔力が回復することを確かめてからグラトニアを解除した。
「さて、そろそろ帰る、ん? なんだ、あの人集りは?」
ダンジョンの外に出るためにゲートに近付くと、そこには多くの覚醒者達が集まっていた。
何か問題でも起こったのだろうか?
近くにいる適当な人に話を聞いてみた。
「ちょっといいか。ここで何かあったのか?」
「んん? ああ、何でも大企業のお偉いさんがダンジョン攻略のためにやってくるみたいでな。それを一目見ようと集まった奴らと、お偉いさんのために部下達が道を確保している所為で外に出れないでいる奴らで混雑してるんだよ」
大企業のお偉いさんが〈枯れた山脈〉に挑む、だと?
それを聞いて思い出したのは、今日ここに入った際に見かけた、山を登っていく大手ギルドの一団の姿だ。
あのギルドは確か、とある大企業の支援を受けていたはず……まさかな。
「お、入って来たみたいだな」
「あれは……」
ゲートを潜って覚醒者の一団がダンジョンに入って来た。
その一団の中心にいる40代ほどの男が、件のお偉いさんで間違いない。
順風満帆な人生と自社の好調な業績といった数々の自信に裏付けされた傲慢そうな顔付きは、何度見ても腹が立つ。
顔付きを裏切らない驕り高ぶった性格であるため、他人が自分に従うのは当然という姿勢を部下の前で隠すことは殆どない。
その癖に世間体は気にするので、テレビやマスコミの前では善良な社長を演じており、一般人もその姿を信じていた。
今この場に集まっている奴らの大半も同じように騙されているのだろう。
「……また会ったな。金峰ゴウキ」
金峰ホールディングス社長である金峰ゴウキは、前世で因縁のある相手だった。
数々の契約や負債で俺を配下として縛り付けた上で成果を搾取し、実力はあっても底辺覚醒者の地位に甘んじざるを得なくした元凶の1人でもある。
前世では金峰ゴウキの世間での評判に騙されて、金峰ホールディングスが支援しているとある中規模ギルドに入団した。
そこから能力を買われて金峰ゴウキ直下の探索者にスカウトされたのだが、実質的には使い勝手の良い奴隷のような扱いだった。
最終的には、ダンジョン内で俺を殿にして撤退先で現れた新手のモンスターに襲われて金峰ゴウキは死に、そのおかげで俺は解放された。
奴に対して直接やり返すことが出来なかったのが心残りではあったが、まさかこうして邂逅するとは思わなかったな。
「相変わらず外面は良いな」
にこやかな笑みを浮かべながらゲート付近に集まった覚醒者達に向けて手を挙げてから、金峰ゴウキは配下の探索者達と共に山を登っていった。
契約している大手ギルドが事前に露払いしているだろうから、奴は消耗なく万全の状態で攻略を進めることができる。
呪いでもかけてやりたいが、残念ながら今の俺にそんな力は無い。
いくらダンジョンやモンスター、覚醒者という一昔前では考えられないファンタジーな要素が溢れているとはいえ、この世界が現代社会であることに変わりはない。
悔しいが、私的な報復活動を行なうことで損をするのは俺の方だ。
報復するなら治外法権たるダンジョンの中で正体を隠した上でやるしかないが、奴の周りには凄腕の覚醒者達が護衛としてついている。
等級的には今の俺と同じ上級覚醒者だが、向こうは数が多いため成功率は低いだろう。
確か、金峰ゴウキの覚醒者等級は現時点ではまだ〈王級〉の1つ前である〈上級〉だったはずなので、やるなら今のうちなのだが、流石に無理そうだ。
「まぁ、殺したらそれで終わりだからな。出来れば長く苦しんで欲しい。あるいは奴が未来で得るはずだったモノを奪うとかかな」
やっとゲートを使えるようになって周りが騒めき立つ中、今世での金峰ゴウキの扱いについて検討する。
やはり俺の利も考えると、本来奴が得るはずだったモノを横から掻っ攫うのが良さそうだ。
そういう意味では、その1つであるユニーククラス〈財宝王〉へと繋がるピースを先ほど手に入れていた。
これは何が何でも奴より先に〈財宝王〉を獲得しないといけないな。
「以前よりも良い暮らしをしつつ、因縁の相手の成果を奪う……この方針で行くとしよう」
回帰して間もなくアーティファクト〈月神の賢眼〉を手に入れた時から考えていた方針ではあるが、実際にこの眼で相手を確認したことで、その思いはより強固なものになった。
そのためには大量の金がいるので、鑑定宝玉の開発進捗の確認がてらミスリル鉱石を売りに天城コーポレーションへと向かうのだった。
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