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第一章
第二十八話 他の探索者
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「──『火炎槍』」
エコーのかかったような声で魔法名を唱えた魔法使い系高位アンデッド〈不浄魔導師〉が持つ長杖の先に魔法陣が展開される。
その魔法陣から放たれてきた炎の槍を躱すと、距離を詰めるべく地面を蹴って駆け出した。
更に第4層能力【肉体変換】にて能力値を変換したため、今の敏捷値は100を優に超えている。
敏捷性に優れた上級覚醒者の敏捷値は150ほどであり、それと比較すれば遅いものの、魔法使い系のアンデッドであるリッチを相手取るには十分過ぎる速さだった。
──〈魔喰の精霊剣バアル〉の【魔を喰らう刃】が発動します。
──対象への能力行使に成功しました。
──知能値が5ポイント増大します。
──魔力値が7ポイント増大します。
──スキル【火炎魔法】を獲得しました。
神聖属性魔力を纏わせた精霊剣バアルにより、一撃でリッチを両断した。
壁役となる低位アンデッド達と共に現れるならば、エリアボス級の強さになるとも言われているモンスターだったのだが、今倒したリッチは単独で行動していた。
この〈不浄墓地〉に出現するリッチは単独行動するタイプと、壁役である〈骸骨兵士〉を複数体伴った集団行動タイプが存在する。
どちらかと言えば集団行動タイプの方が多いのだが、俺は単独行動タイプのリッチと遭遇していた。
リッチが持つ長杖が必要だったため、簡単に倒せる単独行動タイプを見つけられたのは運が良かった。
リッチの長杖を回収してから来た道を戻り、とある墓標の前にその長杖を置く。
指先に作り出した魔力の刃で自分の手のひらを軽く切ると、傷口から流れた血を墓標の前に置かれた長杖へと垂らす。
暫くの間、上から下へと全体に行き渡るように血を点々と垂らしていると、漸く長杖が紅い光を発し出した。
出血が多くて、気分が悪くなってきていたので正直言ってギリギリだった。
全体に垂らした血から発せられた紅い光が長杖を包み込んだ後、墓標の前にあった木製の長杖が、謎の物質で作られた紅い長杖へと変貌していた。
○吸血皇杖カーメリア
等級:叙事級。
とあるダンジョンで産出された長杖型マジックアイテム。
偉大なる吸血種の力が宿っている。
・【血装皇戯】……周囲にある血液を操って血装を使用可能。当アイテムに貯蔵された血液を使用して発動させることもできる。
・【吸血領域】……周囲の生物の傷口から血液を吸収し貯蔵する。また、その貯蔵された血液を消費して所有者の体力と魔力を回復することが可能。
予め持ち込んでおいた覚醒者用の造血剤を服用しながら、〈システム〉の力で隠しアイテムの詳細を確認する。
前世でも実物を見たことはあったが、能力の詳細までは知らなかったので、しっかりと目を通していく。
まぁ、ある意味では分かりやすい能力だよな。
「元は魔法発動のための補助具だったけど、今は血液を支配するマジックアイテムというわけか」
カーメリアの杖先に紅い刃を形成してみる。
こうして使えば槍のように使うこともできそうだ。
他にも長杖を柄として利用することで、大斧や大鎌、斧槍といった長柄武器の形でも使えることも確認していった。
逆に、血の槍を射出すれば遠距離攻撃も可能と、色々使い道があるマジックアイテムだった。
ただ、遠距離攻撃した場合は、【吸血領域】の有効範囲外にまで射出される可能性があるため、そうなると血液の再回収をすぐに行うことが出来なくなる。
遠距離攻撃時に使える弾数は、貯蔵した血液量次第なので普段から血液はストックしておく必要があるようだ。
「血液は必要だが、魔力を殆ど使わないのは魅力的だよな」
良い隠しアイテムが手に入ったことに満足しつつ、アンデッドしかいない〈不浄墓地〉では吸血対象が殆どいないので、吸血皇杖カーメリアはそのまま〈宝納の指環〉へと収納した。
このダンジョンにある隠しアイテムは後一つだが、そこに向かうためには先にエリアボスを倒す必要があるため、寄り道をせずに真っ直ぐエリアボスの元へと向かった。
神聖属性魔力を纏っているからか、まるで街灯に引き寄せられる虫のように低位のアンデッド達が群がってくる。
道中で遭遇するアンデッド達を次々と斬り捨てているうちに、レベルが3にまで上がっていた。
このダンジョンに来てから40体は倒しているはずだが、それでもたった2レベルしか上がらないとは、上級覚醒者ともなるとレベルが上がり難いな。
──〈魔喰の精霊剣バアル〉の【魔を喰らう刃】が発動します。
──対象への能力行使に成功しました。
──耐久値が2ポイント増大します。
──〈魔喰の精霊剣バアル〉の【魔を喰らう刃】が発動します。
──対象への能力行使に成功しました。
──魔力値が3ポイント増大します。
リッチからは【魔を喰らう刃】で計12ポイントの能力値と魔法スキルを獲得できたが、それ以外のアンデッド達からは合わせて5ポイントの能力値しか獲得出来なかった。
俺が上級覚醒者になったから、エリアボスに近しいレベルのモンスターでないと殆ど獲得できなくなったと見るべきか、ただ単に運が悪いだけと見るべきか、どっちなんだろうな?
「運気が上がるアイテムが欲しいところ、ん? 誰か戦っているのか?」
エリアボスがいるエリアに近付くにつれて戦闘音らしき音が聞こえてきた。
まさか俺以外に〈不浄墓地〉に入っている覚醒者がいるとは思わなかったな。
エリアボスに挑むぐらいの強さなら、一般覚醒者ではなく中級以上の覚醒者である探索者達だろう。
警戒しつつエリアボスとの戦場である広場を覗き込むと、そこにはアンデッド達に向かってメイスらしき武器を振り回している美女の姿があった。
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