万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵

文字の大きさ
67 / 139
第二章

第六十七話 アビス攻略後の変化

しおりを挟む


 ◆◇◆◇◆◇


 アビスのボスを倒してからは大変だった。
 何故ならば、アビスにはダンジョン攻略時のような内部にいる人間達を外へと排出する機能がないからだ。
 ダンジョン攻略時のように待っていても外へと自動的に転移されず、消滅するアビスと運命を共にすることになる。
 そのため、ボスのオグリティカスを倒してすぐに出現したアーティファクトとオグリティカスの死体を回収。
 死傷者を連れてすぐにボス部屋を後にすると、ボス部屋の前で待機していた居残り組と合流してからアビスを脱出した。
 この脱出をスムーズに行うという意味でも、ボス戦前の通常モンスターの掃討は必要だったわけだ。

 そうして、崩壊が始まったアビス内を駆け抜け、現実世界へと帰還してから3日が経った。
 今日は報酬のモンスターの死体を受け取るためにガーベラギルドに来ていた。


「3日も経ったのに凄い人集りだな」

「テレビでもまだ取り上げられてますからね。熱はまだ冷めないでしょう」

「確かにな。世間の話題が俺達からコッチに移ったのは良いんだが……ここで降りるか」


 ガーベラギルドのオフィス前で待ち受ける多数の記者達の姿が遠目に見る。
 リリアと共にタクシーでガーベラギルドに向かっていたのだが、オフィス前の人集りが見えたタイミングで車を停めてもらった。
 このまま目の前で降りたらスクープを求めている記者達に捕まりかねないからだ。

 ここまでの金を支払ってからタクシーを降りると、そのまま近くにあった有名アパレルブランドの店に入る。
 一部の記者がタクシーから降りる俺達に気付いてこちらを見ていたからだ。
 記者達のスクープを求める嗅覚に戦慄しつつ、ガーベラギルドに用は無いですよー、ということを示すべく、リリアに協力を求めた。


「記者がこっち見てるから誤魔化すぞ。悪いけど、もっとくっついてきてくれ」

「くっつく?」

「カップルのフリをしてくれってことだ」

「ふぁっ!?」

「なんだ、その声は?」


 驚きからか奇声を上げるリリアに腕を軽く差し出して促すと、恐る恐る腕を組んできた。
 その様子は付き合い始めて日が浅いことを感じさせる初々しいで、こちらを向いていた一部の記者達は一度舌打ちをしてから視線をガーベラギルドのオフィスへと戻した。


「ふぅ、どうにか誤魔化せたな。すぐに出ると怪しまれるし、暫く店内を見て回るか。もう手を離していいぞ?」


 店内に入っても俺の腕を掴んだままのリリアにそう告げたところ、頭を横に振って拒否された。


「こ、ここにもマスメディア関係者がいるかもしれません。油断しては駄目です!」

「いくらなんでも此処にはいないと思うが……まぁいいや。あと、顔真っ赤だぞ」

「暑いからですね!」

「確かに今日は暑いな。此処は涼しいけど」


 上級覚醒者の身でも今日の天気は暑く感じられる。
 ダンジョン資源や関連技術による地球温暖化対策は各方面で研究されているが、まだ成果は出しておらず、夏前なのに真夏のような暑さだった。
 ちょうど良いから夏物の服でも買うとしよう。
 涼しい店内でなければ思わず振り解きたくなるぐらいにくっつくリリアを連れて、暫く夏服を見て回った。

 買い物を終えて店を出ると、ギルドオフィスの前は未だに記者達で埋まっていた。
 このままでは埒が明かないので電話でレイカ先輩に許可を取ってから、人目の無い場所に移動して第7層能力【座標変換】を使用した。


「いらっしゃい。大変だったわね……っと思ったけど、楽しんできたみたいね?」


 転移先のオフィスの一角にて同情するかのような表情でレイカ先輩が出迎えてくれた。
 だが、その視線が買った服が入った袋と、変わらず腕を組んだままのリリアの視線が冷たくなっていく。


「ああ、これはオフィス前の記者達に捕まりそうになったので、ガーベラギルドとは無関係のカップルですよと誤魔化すための偽装です」

「違うのに捕まっているみたいだけど? もうオフィス内だから必要ないんじゃない?」

「それもそうですね。リリア……リリア?」

「なんでしょうか?」

「もうフリは必要ないから、そろそろ離してくれ」

「……分かりました」


 不承不承といった態度を隠す気のないリリアが漸く手を離した。
 我ながら美女と腕を組むのは緊張していたようで、組んでいた腕が凄く強張っていた。
 解放された腕の強張りを解すために軽く回していると、レイカ先輩と共に俺達を出迎えてくれたマキナが近寄ってきた。
 一体何だろうと思っていると、俺の腕をマッサージし始めた。


「えっと、マキナさん、一体何を?」
 
「見ての通りマッサージでございます」

「それはまぁ、そうなんでしょうけど……」


 顔見知りの異性がいきなりそんなことをしてきたら、どう反応していいか分からなくて困るな。
 しかも普通に上手いから止めさせるのも勿体なく、そのままされるがままになっていた。
 レイカ先輩とリリアはストレスでも溜まってるのか、2人揃って目元がヒクついている。
 マッサージが必要なのは彼女達の方な気がしてきたな。
 マキナによるマッサージが腕から手のひらにまで移ったタイミングで、レイカ先輩が咳払いをした。


「コホン。そろそろ移動してもいいかしら?」

「あ、はい。それは勿論……何か怒ってます?」

「そんなことはないわ。こっちよ、ついて来て。マキナも早く戻ってきなさい」

「嫉妬するお嬢様も可愛いですね」

「うるさい」


 2人のやり取りから相変わらず仲が良いなと思っていると、リリアから声を掛けられた。


「……クロヤさん」

「なんだ?」

「実は私もマッサージが上手いんですよ。だから今度、私もマッサージをしてあげますね?」

「お、おう。ありが、とう?」


 目にハイライトが無いように見えるリリアから謎の圧力を感じつつ疑問系で頷くと、彼女と一緒にレイカ先輩達の後をついて行った。



 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

新世機生のアポストル 〜Restart with Lost Relic〜

黒城白爵
ファンタジー
 異界から突如出現したモンスターによって、古き世界は終わりを告げた。  新たな世界の到来から長い年月が経ち、人類は世界各地に人類生存圏〈コロニー〉を築いて生き残っていた。  旧人類、新人類、コロニー企業、モンスター、魔力、旧文明遺跡、異文明遺跡……etc。  そんな様々な物が溢れ、廃れていく世界で生きていた若きベテランハンターのベリエルは、とある依頼で負った怪我の治療費によって一文無しになってしまう。  命あっての物種、だが金が無ければ何も始まらない。  泣く泣く知り合いから金を借りてマイナススタートを切ることになったベリエルは、依頼で危険なコロニーの外へと向かい、とある遺物を発見する……。  

アポカリプスな時代はマイペースな俺に合っていたらしい

黒城白爵
ファンタジー
 ーーある日、平穏な世界は終わった。  そうとしか表現できないほどに世界にモンスターという異物が溢れ返り、平穏かつ醜い世界は崩壊した。  そんな世界を自称凡人な男がマイペースに生きる、これはそんな話である。

日本国 召喚獣管理省 関東庁 召喚獣総合事案即応科。

wakaba1890
ファンタジー
召喚獣。 それは向こう側とされる所から、10歳を迎えた日本人の子供の下に召喚されるモンスターのことである。 初代天皇・神武天皇が日本を建国した際に書かれた絵画には彼は金鵄と呼ばれる金色に輝く鵄(とび)と契約したのが原初となっている。 そして、縄文、弥生、古墳、飛鳥、平安、戦国時代から近代から今に至るまで、時代を動かしてきた人物の側には確かに召喚獣は介在していた。 また、奇妙な事に、日本国に限り、齢10歳を迎えた日本在住の日本人にのみ体のどこかから多種多様な紋章が発現し、当人が念じると任意の場所から召喚陣が現れ、人ならざるモンスターを召喚される。 そして、彼らモンスターは主人である当人や心を許した者に対して忠実であった。 そのため、古来の日本から、彼ら召喚獣は農耕、治水、土木、科学技術、エネルギー、政治、経済、金融、戦争など国家の基盤となる柱から、ありとあらゆる分野において、今日に至るまで日本国とアジアの繁栄に寄与してきた。 そして、建国から今まで、国益の基盤たる彼ら数万種類以上をも及ぶ召喚獣を取り締まり管理し、2600年以上と脈々と受け継がれてきた名誉ある国家職がーーーーー国家召喚獣管理官である。

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

この世界にダンジョンが現れたようです ~チートな武器とスキルと魔法と従魔と仲間達と共に世界最強となる~

仮実谷 望
ファンタジー
主人公の増宮拓朗(ましみやたくろう)は20歳のニートである。 祖父母の家に居候している中、毎日の日課の自宅の蔵の確認を行う過程で謎の黒い穴を見つける。 試にその黒い穴に入ると謎の空間に到達する。 拓朗はその空間がダンジョンだと確信して興奮した。 さっそく蔵にある武器と防具で装備を整えてダンジョンに入ることになるのだが…… 暫くするとこの世界には異変が起きていた。 謎の怪物が現れて人を襲っているなどの目撃例が出ているようだ。 謎の黒い穴に入った若者が行方不明になったなどの事例も出ている。 そのころ拓朗は知ってか知らずか着実にレベルを上げて世界最強の探索者になっていた。 その後モンスターが街に現れるようになったら、狐の仮面を被りモンスターを退治しないといけないと奮起する。 その過程で他にもダンジョンで女子高生と出会いダンジョンの攻略を進め成長していく。 様々な登場人物が織りなす群像劇です。 主人公以外の視点も書くのでそこをご了承ください。 その後、七星家の七星ナナナと虹咲家の虹咲ナナカとの出会いが拓朗を成長させるきっかけになる。 ユキトとの出会いの中、拓朗は成長する。 タクロウは立派なヒーローとして覚醒する。 その後どんな敵が来ようとも敵を押しのける。倒す。そんな無敵のヒーロー稲荷仮面が活躍するヒーロー路線物も描いていきたいです。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

処理中です...