断罪された魅了の悪女は過去に戻ってやり直します!~嫌われてたはずの王太子様に迫られてます!?~

かべうち右近

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9.ヤりなおした人生 ※

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「っそんな、あ、赤ちゃんができちゃうじゃないですか!」

「そうだ。お前を孕ませてやりたい」

 とんでもないことを言う。

「……だ、めです……!」

 子どもなどできたら、いよいよ逃げられない。ベッドから抜けだそうと腕を振りかけたところで、その腕が捕まえられた。そうしてそのまま両腕をベッドに縫い留められる。

「どうしてだ?」

「そんなの……」

 ジルドと婚約したくないからに決まっている。

「貴女は俺が好きだと言ってくれたじゃないか」

「……っ!」

「何度も、何度も。熱烈に告白してくれただろう」

「あれはジルド様じゃないって思ってたから……!」

 仮面舞踏会の夜のできごとなど、イレーニアにとってはノーカウントだ。だが、彼にとってはそうじゃない。

「俺じゃないと思ったから? 本音を話していたのか?」

「うぅ……」

 その通りすぎて、反論ができなかった。

「愛し合う二人が周囲の承諾を得て婚約するんだ。なんの問題もなかろう」

「んぁっ」

 ぐり、と繋がったままだった奥を揺らされて、イレーニアは声をあげる。そのままピストンが再開されて、どちゅどちゅと突き上げられる。白濁がかき混ぜられて水音は増すばかりだ。

「やっふぁっあ、んぁああ……っじるど、さま……ばか、やだぁ……っ!」

「ああ、貴女は素直になってくれればいい。俺の前でだけは本音を晒せ」

(本音……?)

「んはぁ……っ!?」

 疑問で一瞬抵抗が弱まったところに、ぐんっと強く押しつけられてぐりぐりと押し込まれる。

「貴女は本当は甘えたがりで、我儘で……寂しがり屋だ。人前でそれが出せないなら、俺にだけぶつければいい」

「は、ぁんっああっあ、で、も……」

(そんなことしたら……)

 ジルドに嫌われるのではないか。奥を重点的に揺らし続けながら、ジルドは言う。

「貴女の本音をぶつけられるのが、俺は嬉しい」

「あ……っ?」

 きゅうっと蜜壺がうねって、かくかくと痙攣をおこす。

「う、そ……」

「はは。貴女は疑り深くもあるんだな。わかった。貴女が俺の気持ちを信じられるまで、ぐずぐずに溶かしてやる」

 甘イキしている中をかき回すように腰を動かして、ジルドは口づけを落としてくる。

「んぅ……ん、ふ、ぅうう……」

 上下の口を同時に責め立てられる。両手を拘束されて口も秘部もいいようにされるだなんて、まるで犯されているようではないか。けれどもそれは、ねっとりと甘くてどうしようもなくイレーニアを悦ばせる。

「気持ちいいか? それともいやか?」

「あ……き、もち、いい……」

「ならいい。イレーニア、もっと俺のために啼いてくれ」

 ごく嬉しそうな声が耳をくすぐって、腰の動きが激しくなる。

「んぁああ……っ!」

 ぎゅうっとうねって竿を包みこみ、またもイレーニアは絶頂を迎える。そうしてその夜、彼女は抱き潰され、ただただ快楽に溺れさせられジルドの与える熱に堕とされたのだった。


***


「んぅ……っ……?」

 下半身に違和感を覚えてイレーニアは目を覚ました。寝返りを打とうと思うのに、身体がガチガチに固まっていてなんだか動けない。うっすらを瞼を開いて、やけにすべすべとした肌触りのものに頬を預けているのに気づく。

「あれ……?」

 呟いた声は、ずいぶんとかすれていた。それもそうだろう。昨晩は一晩中、ジルドに抱かれて嬌声をあげ続けていたのだ。身体が動かせず、声も出ないのも当然である。

「ぁ……っ」

(待って……)

 蜜壺がうねったその刹那、ようやくイレーニアは股の異物に思い至る。先ほど感じた違和感は、未だ身の内を貫いている男根だった。しかも生理現象のせいか、それが硬い。

(……うそでしょ)

 イレーニアは今、あろうことかジルドの上に乗って、肉棒を咥え込んだまま寝ていたのだ。

(どうして、あんなにシちゃったの……)

 げんなりとしながらイレーニアは思い返す。結局昨晩は、宣言通りにぐずぐずにされた。そうして、快楽に堕とされてなんだかんだイレーニアも騎乗位で愉しんだし酷かった。おまけに建前やらなにやらか全て吹っ飛んでいた。

『俺のことが好きか?』
『すきぃ……んぁっふ、ぁ、ぁんん、すきぃ……じるど、さまは……?』
『俺も好きだ』
『うれし、い……ふぁあっ』

 というような状態で、本当に『わからせ』られてしまったのである。結局盛り上がりすぎて最後はシながらそのまま寝落ちたのだ。

(うぅ……本当に……欲に負けすぎじゃないかな、私……)

 自身で呆れるものの、昨晩のことを思い返すと胸がほこほこしてくる。前世も含めて十年以上想い続けた相手から好きだと言われて嬉しくないわけがないのだ。けれども同時にこれからのことを思うと気が滅入った。

(ジルド様と婚約しちゃだめなのに……)

 もう言い逃れもできないほどに立派な既成事実だ。今すぐジルドの上から逃げ出したいのに、悲しいかな、彼女の身体は昨日の情事のせいで指一本動かすのも億劫だ。おまけに彼女の身体を支えるようにして、ジルドの両腕ががっちりと抱きこんでいたから、動こうにも動けない。

(でも)

 その腕の強さを感じながら、イレーニアは考える。

「……ジルド様って、本当に私のこと好き、なんだ……」

 ぽつりと小さく呟いた。抱かれている最中、何度も好きだ、可愛い、もっと我儘を言え、もっと甘えろと何度も言われた。そのせいで余計に気持ちよくなってしまって、イレーニアも翻弄されたのだ。あれがベッドの上だけのリップサービスだとしたら相当な女誑しだが、残念ながら彼がそんな男でないことを前世と今世で見てきているから知っている。あれが彼の本音でなくてなんだというのだろう。

「なんだ、やっと伝わったのか」

「えっ」

 驚いてぐぎぎ、と首を動かせば、琥珀の瞳が面白いものでも見つけたかのようにイレーニアを見つめている。

「ならこの婚約も文句あるまいな」

 そうは言ってくるものの、どうせ誓約書も書いてあるうえ既成事実もある。イレーニアがどうしたってひっくり返しようのない状況だ。

「……文句を言ったって、聞き入れてくれないじゃありませんか……」

 むくれたイレーニアに、ふは、とジルドは笑う。その柔らかな笑顔を、昨晩は何度も見た気がする。美しい顔が近くにあるだけで見惚れてしまうのに、その笑顔は反則である。思わず顔が赤らんだ。

「ああ。当然だ。俺は貴女を手放すつもりはない」

「……」

「貴女は、前世のように悪女になって、俺に処刑されるのが怖いんだろうが……」

「えっ」

 唐突に言い出したジルドに、イレーニアは目を瞠る。

(私、処刑されたなんて言ってないし、ジルド様が終わらせたなんて言ってないし……そもそも、前世の話をジルド様は信じてくださってるの……?)

 全ての疑問が顔に浮かんだイレーニアを、ジルドはまたも笑う。

「貴女は『信託の聖女』だ。あれは前世で見聞きしたことなんだろう? だから貴女が時間をさかのぼってやり直しているということに疑問はない」

「でも……」

「もし俺が貴女の婚約者で、貴女が悪女だったなら」

 不意にジルドは顔を引き締める。

「貴女を、責任もって処刑台に送っただろうな」

「……っ」

 思わず逃げ腰になったイレーニアを、拘束する両腕がぐっと引き寄せる。

「だがな、それは今の人生じゃない。貴女は俺にしか肌を許さないし、許させるつもりはない」

「…………私の前世の話を信じているなら、また、悪女になるかもしれませんよ。ジルド様がみていないところで、悪いことたくさんしてたかもしれません。その……えっちなこと以外だって、悪いことはたくさんありますし……」

 もちろんしていない。だが、将来そうなる可能性はある。だって、彼女は昨晩、ジルドの与える快楽に溺れて流されてしまったのだから。もちろん、彼が好きだからというのもおおいにあるのだろうが。

「そこが問題ないのはわかって・・・・いる」

「どういうことです」

「貴女が、あの夜からこっち、ずっと男の影などなかったことは、ずっと監視していたからわかっている」

「かん、し……?」

 理解不能な単語を聞いた気がして、イレーニアはおうむ返しに尋ねる。

「ああ。あの夜抱いた貴女が聖女カルタであることも、前世も事実だとわかっていたからな。貴女に求婚するにも、王太子妃になるとなれば、私生活もそれなりに貞淑でなければならん。だから」

「私に監視をつけてたんですか……?」

「そうだ」

 一切悪びれもせずにジルドは頷く。

「貴女の貞淑さは折り紙付きだ」

 喜んでいいのかどうかわからない箔である。

「今までは聖女だったからだけかもしれませんよ。聖女をやめたら悪女になるかも……」

「ありえないな」

「どうしてです?」

 むっとしてイレーニアが問えば、ジルドは不敵に笑う。そうしてイレーニアの背筋をつぅっと撫でた。

「ん……っ真面目な話を、してるんです……!」

「貴女に触れるのは、今までもこれからも俺だけだ。それに俺の子を孕めば、貴女が悪女になんかなる隙はないだろう?」

 それはずいぶんと力業な回避方法ではないか。ぽかんとしたイレーニアはやがてくすくすと笑えてきてしまう。

(こんな変な方だったのね、ジルド様って)

 監視はいただけない。だが、それがイレーニアを悪女にしないためだなんて、おかしな話だ。仕事ぶりはいつだって真面目なくせに、恋愛においてはたがが外れてしまう人だったらしい。

(これからもっと……色んなジルド様の顔を知るようになるのかな)

 ふとそう考えて、なんだか悪くも思えない自分に気づく。もう、イレーニアの中で答えは出ているのだ。

「イレーニア、できれば無理やりでなく、貴女の意思で受け入れてほしい。貴女を生涯守るし、寂しい想いもさせない。代わりに俺の我儘も聞いてもらうが……俺と、結婚してくれないか?」

 ちゃっかり自分の要求も忘れないところがまたおかしい。

(あーあ。絶対、ジルド様とは婚約しちゃだめって思ってたのに)

 くすくすと笑いながら、イレーニアは次に紡ぐべき言葉を口にする。

「はい。結婚、します。……でも、私を悪女にさせないでくださいね?」

「ああ。何があってもお前を寂しくなんかさせない」

 質問の答えがおかしい。けれどきっと、イレーニアにとってはその答えで正しいのだろう。ジルドは答えてから、彼女を腕に抱えたまま、上半身を起こす。繋がったままの場所がぐりっと刺激された。

「ん……ジルド、様……これ……」

「愛している、イレーニア」

「あ……の、私も、その……愛し……ん、むぅ」

 言い切る前にイレーニアの唇は奪われた。

「んんっんぅーっ!」

 途端に下からの突き上げが始まる。昨晩散々にイレーニアを抱いたはずのジルドはまだ抱き足りないとでも言うのか、彼女の承諾を得ると同時に容赦がないことだ。

「は、ぁああ……じる、どさま……っだ、めぇ……」

「だめなものか、貴女は俺のものだからな」

「あああ……っ!」

 結局その日、イレーニアは朝っぱらから再び抱き潰されるはめになった。今世ではまっとうな人生を送るため、魅了の悪女は治癒の聖女として努力して人生をやり直した。けれども結局は王太子の婚約者の座に収まって、快楽に溺れさせられている。けれどその相手はきっとジルドの言うとおり、前世と違って彼だけに許すのだろう。イレーニアは抱かれる相手をヤりなおすために時間をさかのぼったらしい。

 そうして、翌日には王太子の婚約者をすっ飛ばして、王太子妃になったことが公表された。ヴェールの聖女は、その後、ヴェールの王太子妃として名を馳せた。その傍にはいつもジルドがいたのだった。
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