人質同然だったのに何故か普通の私が一目惚れされて溺愛されてしまいました

ツヅミツヅ

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「陛下?」
 私はこの時間政務室におられる筈のこのグリムヒルト王国の王であらせられるベネディクト王のお姿を見つけて驚く。

「サボりではないぞ。終えた」
 陛下はさらりと私の手を取り、手の甲にキスを落とした。
 陛下の綺麗な銀の髪の一筋が手の甲を一緒に撫ぜる。
 深いエメラルド色の海の様な瞳がじっと私を見つめた。

「レイティア。お前も今日は何もないと聞いているが」

「はい。今日は私は公務もありませんし、ここでお勉強をしておりました」

 私はこの国に来て1年経つ。
 元よりこの国に嫁ぐ為に育った王妃ではないので、この国の作法をほとんど知らない。
 学ばなければならない事が山程あって未だに公務も差し障りのないものを宰相様が吟味して下さってようやくこなせているのが現状だ。

 お優しい陛下はいつも
「我らの作法など大した歴史のある物でも格式のある様なものでもない。無理に覚える必要などないぞ」
 と仰って下さるけど、やはり人がいて、国があって、その作法を重んじる方々がいるなら、それは覚えなければならない礼儀なのだと思うので、
 陛下の優しさに甘える訳にはいかない。

 確かにこの国には生贄の様な儀式があったけれど、私の嘆願を聞き届けて下さった陛下が生贄の撤廃を断行してくれた。

 それによって救われた方々は今も私の側付きの従者として務めている。
 皆は私に救われたと感謝を述べてくれるけれど、全て陛下が決めて下さった事。

 陛下は、きっと本人も気がついていないけれど、とても優しい人だ。

「それではここまでにして、部屋に戻ります」
 陛下にふわりと喜色が浮かぶ。
 私はそれに少し照れ臭い気持ちになりながら、取られた手をそのまま預け、陛下のエスコートされて進む。
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