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Ⅱ 五年後の王宮
2 女子会-かつての婚約者候補
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白薔薇を象ったティーセットの前には、三人の少女――いや、今はもう立派な淑女たちがいる。
「もう、マグノリアったら。そのお腹の赤ちゃん、今にも蹴ってきそうね?」
からかうように笑うのは、一児の母となってなお、柔らかな少女っぽさがあるロレンヌ。
ハワード侯爵令嬢だった彼女は、第一王子側近のクロイ公爵家二男オットーと二年前に政略結婚。今年、嫡男ロアを出産した。
サヴォイア侯爵令嬢だったマグノリアは、第一王子の側近で護衛騎士のエレオノール侯爵家二男ザビエルと3年前に政略結婚。今は妊娠六か月である。
「ふふ……元気なのは父親譲りよ。ザビエル様、毎朝の剣の稽古を欠かさないのですもの。この子もすでに戦う気満々かもしれないわ」
そう言って微笑むマグノリアは、以前より柔らかく穏やかだった。
その横で、十五歳のマーガレットは両手でティーカップを包み、嬉しそうに二人を見つめていた。
『ロレンヌ様もマグノリア様も……本当にお幸せそうです。
王宮でご一緒していた頃が、もうずっと昔のことのようで…… 』
「まあ、もう“様”なんて呼ばないで」
ロレンヌが苦笑する。
「同じ屋根の下で勉学に励んだ仲じゃない!マーガレット、あなたは私たちの妹みたいなものよ!」
「そう!そう!」マグノリアがうなずく。
「あなたが十五歳で王城に残って、立派に殿下を支えていると聞いて、本当に誇らしかったの。ねえロレンヌ?」
「もちろんよ。マーガレットは昔から聡明で、けれど謙虚だった。……まるで“知の精霊”ね。今のカルリスタに必要な存在よ」
マーガレットは頬を少し赤らめ、紅茶の湯気の向こうで微笑んだ。
『皆さまのように幸せなご家庭を築く日が来るかは分かりませんが、私は今、殿下のお傍で学べることが何より幸せです』マグノリアが目を細める。
「まぁ……その言い方。少し照れた声になってるわ」
『……えっ⁉』
「図星ね」ロレンヌがくすくす笑い、
「殿下は聡明な女性がお好きだから、きっと今もあなたの答えを聞くのが楽しみなのよ」
マーガレットは思わず俯いた。耳までほんのりと赤い。
『お二人とも、からかわないでください……。』
笑い声が重なり、窓の外では初夏の庭園に風が渡る。
ロレンヌは膝の上に手を置き、小さく息をついた。
「でもね、こうしてまた三人で集まれてうれしいわ。お互いの立場が変わっても――昔のように笑える時間がある。それだけで、心が満たされるの」
マグノリアも頷き、
『この子が生まれたら、また連れて来るわ。“フェニックスの城”で暮らすマーガレットに"知の恵み“を分けてもらいたいの(笑)」
マーガレットはそっと手を伸ばし、マグノリアの膨らんだお腹に触れた。
『……この子が大きくなった時、また三人でお茶をいただけたらいいですね』
「約束よ!」ロレンヌが優しく笑う。
「その時は一歳のロアも一緒に。きっと子供たちは庭を駆け回って、私たちはそれを眺めながらお喋りを楽しみましょう!」
陽だまりの中、三人の笑い声が、静かに城の廊下を包んでいった。
それは、変わらぬ友情の証。
王家の陰で咲き続ける、三輪の白薔薇のように――。
つづく
________________________
いいね❤️&応援ありがとうございます🌿
皆さまのひと押しが執筆の力になります✨
「もう、マグノリアったら。そのお腹の赤ちゃん、今にも蹴ってきそうね?」
からかうように笑うのは、一児の母となってなお、柔らかな少女っぽさがあるロレンヌ。
ハワード侯爵令嬢だった彼女は、第一王子側近のクロイ公爵家二男オットーと二年前に政略結婚。今年、嫡男ロアを出産した。
サヴォイア侯爵令嬢だったマグノリアは、第一王子の側近で護衛騎士のエレオノール侯爵家二男ザビエルと3年前に政略結婚。今は妊娠六か月である。
「ふふ……元気なのは父親譲りよ。ザビエル様、毎朝の剣の稽古を欠かさないのですもの。この子もすでに戦う気満々かもしれないわ」
そう言って微笑むマグノリアは、以前より柔らかく穏やかだった。
その横で、十五歳のマーガレットは両手でティーカップを包み、嬉しそうに二人を見つめていた。
『ロレンヌ様もマグノリア様も……本当にお幸せそうです。
王宮でご一緒していた頃が、もうずっと昔のことのようで…… 』
「まあ、もう“様”なんて呼ばないで」
ロレンヌが苦笑する。
「同じ屋根の下で勉学に励んだ仲じゃない!マーガレット、あなたは私たちの妹みたいなものよ!」
「そう!そう!」マグノリアがうなずく。
「あなたが十五歳で王城に残って、立派に殿下を支えていると聞いて、本当に誇らしかったの。ねえロレンヌ?」
「もちろんよ。マーガレットは昔から聡明で、けれど謙虚だった。……まるで“知の精霊”ね。今のカルリスタに必要な存在よ」
マーガレットは頬を少し赤らめ、紅茶の湯気の向こうで微笑んだ。
『皆さまのように幸せなご家庭を築く日が来るかは分かりませんが、私は今、殿下のお傍で学べることが何より幸せです』マグノリアが目を細める。
「まぁ……その言い方。少し照れた声になってるわ」
『……えっ⁉』
「図星ね」ロレンヌがくすくす笑い、
「殿下は聡明な女性がお好きだから、きっと今もあなたの答えを聞くのが楽しみなのよ」
マーガレットは思わず俯いた。耳までほんのりと赤い。
『お二人とも、からかわないでください……。』
笑い声が重なり、窓の外では初夏の庭園に風が渡る。
ロレンヌは膝の上に手を置き、小さく息をついた。
「でもね、こうしてまた三人で集まれてうれしいわ。お互いの立場が変わっても――昔のように笑える時間がある。それだけで、心が満たされるの」
マグノリアも頷き、
『この子が生まれたら、また連れて来るわ。“フェニックスの城”で暮らすマーガレットに"知の恵み“を分けてもらいたいの(笑)」
マーガレットはそっと手を伸ばし、マグノリアの膨らんだお腹に触れた。
『……この子が大きくなった時、また三人でお茶をいただけたらいいですね』
「約束よ!」ロレンヌが優しく笑う。
「その時は一歳のロアも一緒に。きっと子供たちは庭を駆け回って、私たちはそれを眺めながらお喋りを楽しみましょう!」
陽だまりの中、三人の笑い声が、静かに城の廊下を包んでいった。
それは、変わらぬ友情の証。
王家の陰で咲き続ける、三輪の白薔薇のように――。
つづく
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