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Ⅷ ヴァルディア王国
3 各国の安堵
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カルリスタ王国王都。
マーガレット発見の知らせが王宮に届いたとき、王と王妃、そして王太子のもとに静かな歓声が広がった。
「……そうか。無事に――生きていたのだな」
エルンスト王は深く息をつき、重く垂れた肩をようやく安堵で下ろした。
エマニュエル王妃は震える指で手紙を握りしめ、目元を潤ませる。
「よかった……本当によかったわね、マーガレット……」
その声は嗚咽に変わり、侍女たちがそっとハンカチを差し出した。
マクシミリアン王太子も静かに頷き、父母の隣に歩み寄る。
「眠ったままでも、命があるなら必ず希望はあります。彼女の帰国の際には、我々ができる限りの支援を――」
王は頷き、玉座の横に置かれた筆を取り、即座に書簡をしたためた。
“カルリスタ王国は、レーヴェン伯爵家の娘マーガレットの帰国に際し、最大限の援助を約束する”
――それは、王家の印を添えた正式な宣言として各国へ送られた。
◇◇◇
マーガレット発見の報せが届くや否や、アルマディス大公邸は歓喜と安堵の声に包まれた。
ニコラス殿下は報告書を握りしめたまま動けずにいたが、やがて震えるように息をついた。
「……マーガレット......よかった。本当によかった……」
その言葉は、長い苦悩と捜索の日々を終えた青年の祈りのようだった。
オーデリア公女は目を潤ませてニコラスの肩に手を置き、
「殿下、神はきっと見ていてくださったのですわ」と穏やかに微笑む。
ローレンスは、黙ってニコラスの肩を叩いた。その瞳は潤み、心から友の安堵を喜んでいた。
ルーカス大公も厳めしい表情のまま頷いた。
「ヴァルディア王国に至急返信を。マーガレット嬢の回復を祈り、国として全面的に支援しよう」
アルマディスの夜空に、ようやく光が戻った。
◇◇◇
報告を受けたリュシア王女は、赤く淡く光る瞳を見開いた。
「やっぱり……あの時見えたのは夢じゃなかったのね!」
隣にいたマルクス王子も、胸をなでおろすように息を吐く。
「マーガレット嬢が無事でよかった……リュシアの目は、本当に“理”を見通していたのだね」
ルナリア王国王城・謁見の間。
静寂の中で、レオン王太子がゆっくりと口を開いた。
「――我らには、シリウス・ヴァーンがしでかした罪の責任がある」
その声に、王も王妃も厳しい面持ちで頷いた。
「彼の行為は、ルナリアの名を穢すもの。マーガレット嬢の命を危険に晒した以上、我らはその償いを果たさねばならぬ」
レオンは深く息を吸い、続ける。
「彼女の帰国の際は、我が国の転移門と魔導馬車をもって送り届けよう。それが贖罪の第一歩となるだろう」
王は静かに玉座から立ち上がり、言葉を添えた。
「――マーガレット・レーヴェン嬢のために、ルナリアの名誉をもって償いを示せ」
王妃の祈りの声が重なり、王宮の大広間に厳かな静寂が流れた。
その夜、ルナリアの空には淡く紅い月が昇り、国の“誇り”と“悔恨”を照らしていた。
◇◇◇
ローゼンタール王国王宮、ナザレフ王太子執務室。
報告を受けた瞬間、ナザレフは胸の奥から長く息を吐いた。
「……そうか。マーガレットが、無事に……」
卓上に置かれた古代文献の頁をそっと閉じる。
その瞳には、学問の友を失うことなく済んだ安堵と、深い感謝の光が宿っていた。
「古代魔導学で意見をぶつけ合える友を失わずに済んでよかったよ」
窓の外に目をやり、微かに笑みを浮かべる。
「まったく……心臓に悪い。さあ、たまった仕事を片づけなくてはな。ははは……」
彼の机の上には、積み上がった調査報告書と、マーガレットへの返信のための封筒が静かに並んでいた。
つづく
_______________
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マーガレット発見の知らせが王宮に届いたとき、王と王妃、そして王太子のもとに静かな歓声が広がった。
「……そうか。無事に――生きていたのだな」
エルンスト王は深く息をつき、重く垂れた肩をようやく安堵で下ろした。
エマニュエル王妃は震える指で手紙を握りしめ、目元を潤ませる。
「よかった……本当によかったわね、マーガレット……」
その声は嗚咽に変わり、侍女たちがそっとハンカチを差し出した。
マクシミリアン王太子も静かに頷き、父母の隣に歩み寄る。
「眠ったままでも、命があるなら必ず希望はあります。彼女の帰国の際には、我々ができる限りの支援を――」
王は頷き、玉座の横に置かれた筆を取り、即座に書簡をしたためた。
“カルリスタ王国は、レーヴェン伯爵家の娘マーガレットの帰国に際し、最大限の援助を約束する”
――それは、王家の印を添えた正式な宣言として各国へ送られた。
◇◇◇
マーガレット発見の報せが届くや否や、アルマディス大公邸は歓喜と安堵の声に包まれた。
ニコラス殿下は報告書を握りしめたまま動けずにいたが、やがて震えるように息をついた。
「……マーガレット......よかった。本当によかった……」
その言葉は、長い苦悩と捜索の日々を終えた青年の祈りのようだった。
オーデリア公女は目を潤ませてニコラスの肩に手を置き、
「殿下、神はきっと見ていてくださったのですわ」と穏やかに微笑む。
ローレンスは、黙ってニコラスの肩を叩いた。その瞳は潤み、心から友の安堵を喜んでいた。
ルーカス大公も厳めしい表情のまま頷いた。
「ヴァルディア王国に至急返信を。マーガレット嬢の回復を祈り、国として全面的に支援しよう」
アルマディスの夜空に、ようやく光が戻った。
◇◇◇
報告を受けたリュシア王女は、赤く淡く光る瞳を見開いた。
「やっぱり……あの時見えたのは夢じゃなかったのね!」
隣にいたマルクス王子も、胸をなでおろすように息を吐く。
「マーガレット嬢が無事でよかった……リュシアの目は、本当に“理”を見通していたのだね」
ルナリア王国王城・謁見の間。
静寂の中で、レオン王太子がゆっくりと口を開いた。
「――我らには、シリウス・ヴァーンがしでかした罪の責任がある」
その声に、王も王妃も厳しい面持ちで頷いた。
「彼の行為は、ルナリアの名を穢すもの。マーガレット嬢の命を危険に晒した以上、我らはその償いを果たさねばならぬ」
レオンは深く息を吸い、続ける。
「彼女の帰国の際は、我が国の転移門と魔導馬車をもって送り届けよう。それが贖罪の第一歩となるだろう」
王は静かに玉座から立ち上がり、言葉を添えた。
「――マーガレット・レーヴェン嬢のために、ルナリアの名誉をもって償いを示せ」
王妃の祈りの声が重なり、王宮の大広間に厳かな静寂が流れた。
その夜、ルナリアの空には淡く紅い月が昇り、国の“誇り”と“悔恨”を照らしていた。
◇◇◇
ローゼンタール王国王宮、ナザレフ王太子執務室。
報告を受けた瞬間、ナザレフは胸の奥から長く息を吐いた。
「……そうか。マーガレットが、無事に……」
卓上に置かれた古代文献の頁をそっと閉じる。
その瞳には、学問の友を失うことなく済んだ安堵と、深い感謝の光が宿っていた。
「古代魔導学で意見をぶつけ合える友を失わずに済んでよかったよ」
窓の外に目をやり、微かに笑みを浮かべる。
「まったく……心臓に悪い。さあ、たまった仕事を片づけなくてはな。ははは……」
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