【完結】白き塔の才女マーガレットと、婿入りした王子が帰るまでの物語

恋せよ恋

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Ⅺ ノルフェリア王国の情勢

4 学術院の講義

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 朝のセレスト学院は、朝靄に包まれ、学生たちがざわざわと集まり始めていた。

「見た?今日からヴァルディア王国の王女殿下が講義に来るんだって!」
「“桃色の髪の絶世の美女”って噂の…!」

 学術院は、いつも以上に浮き立った空気に満ちている。

 その中心で──

 マーガレットは、学術院のテキストを抱えつつ、静かに講義室前で待機していた。

(今日はセレーネ王女殿下のお世話役になる……落ち着いて、私)

 そこに──

「まあ…マーガレット様、お久しぶりね」
 軽やかなヒールの音とともに、セレーネ王女が現れた。桃色の髪が揺れ、サファイアの瞳が朝の光を受けて輝く。

「その節はお世話になりました、セレーネ王女殿下。ご滞在中、学術院の案内を務めさせていただきます」

 マーガレットが礼をすると──
 セレーネ王女のサファイアの瞳が、じろりと値踏みするように細められる。

( 相変わらず、穏やかな雰囲気だわね )

「そう、よろしくね。ニコラス殿下にお世話になりたかったけれど...(にっこり)」
 ふんわりと笑いながらも、瞳の奥は冷たい。

(……さすがは王族ね、“ヴァルディアの小悪魔姫”)
 マーガレットが困ったように微笑んだ、その瞬間。

「マーガレット、おはよう」

 軽やかで優しい声。
 セレーネ王女の眉がぴくりと動く。

 振り返ると、ニコラス殿下が自然な流れでマーガレットの横に並んでいた。

 距離が近い。朝から近い。

(……おやおや、これはもう“特別に親しい関係”を匂わせですね)

 オスカーは離れた場所で腕を組んでいた。

「学術院で困ったことがあったら、遠慮なく言えよ。僕が全部──」

「ニコラス殿下。
 わたくしが困ったとき、助けてくださるのは“あなた”ですわよね?」

 セレーネ王女が、にっこりと横から割り込む。

「は?……あぁ、それは... マーガレットに」
 ニコラスは愛想笑いを浮かべるが、視線は完全にマーガレットへ。

 その微妙すぎる温度差に、セレーネ王女の頬がぴくりと引きつる。

「おはよう!マーガレット嬢」
 甘い声が後ろから降ってきた。

 ノルフェリア王国のリチャード王太子である。翡翠色の瞳が柔らかく輝き、栗色のくせっ毛がふわりと揺れる。

 しかし、その視線は完全にマーガレットにロックオン!

「今日の講義は一緒ですよね? 嬉しいな。よかったら席は──」

 言い終える前に、ニコラスがさりげなく一歩前に出る。
「マーガレットは僕の隣だ。悪いけどな」
 独占欲のかたまり、余裕のかけらもない。

 セレーネ王女は思った....“殿下、あからさま過ぎませんこと……?”

 リチャード王太子も思った……“へぇ、そう来るんだ”

 学院生たちは思った...... “ちょ、これ修羅場では?”

 マーガレットも思った...... “今日は帰りたい”

◇◇◇

 少し離れた柱の影では、NEORが全員集結していた。

「おい、これ、今日の講義どうなるんだ」レオナルド

「さあ……だが、波乱は避けられないな」エドガー

「リチャード王太子をあの距離に近づけるのは危険だ」オスカー

 三つの視線が、同時にマーガレットへ向けられる。

(守るぞ、殿下の大切な人を!!!)
NEOR三名の心が、自然と一致する。

 講義室では、ニコラスとマーガレットの席は当然隣。
 そこにセレーネ王女とリチャード王太子が左右からぴったり張りつく。
 
 講義前から、すでに学院中の視線が集中していた。

つづく

_______________

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