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Ⅺ ノルフェリア王国の情勢
11 ティファニー救出作戦
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ノルフェリア王城・最深部。
外界から隔絶された地下聖室は、光すら差し込まぬ場所。
その暗いはずの空間が、突然、眩い光に包まれた――。
二十二歳とは思えぬほど痩せ細った“少女”、ティファニー王女は、あまりの眩しさに目をぎゅっと閉じ……そしてゆっくりと開いた。
そこには、兄リチャードと、見知らぬ数名の美しい男女が立っていた。
リチャードに背を支えられ、ティファニーはゆっくりと寝台から起こされる。
「……お兄……さま……?」
かすれた声に、リチャードの目が潤む。
「大丈夫だ、ティファニー、君はもう、ここから出るんだ」
少女は弱々しく、だが嬉しそうに微笑んだ。
一方でマーガレットは、青ざめた顔でティファニーの体温や脈を確かめる。
「……脈が弱い。これ以上遅れたら危険だわ……」
すぐそばでは、レオナルド・オスカー・エドガーの“NEOR三翼”が周囲を警戒し、天井裏には気配を完全に消した“闇夜の鴉”の諜報員が五名潜んでいる。
「シリウス、準備は?」
ニコラスの問いに、転移護符陣を展開するシリウスが力強く頷いた。
「問題ない。
――《ゲートリンク》、起動する!」
黄金の魔術式が床一面に広がり、光が渦を巻いて立ち昇る。
ティファニーは、その光を眩しげに見つめた。
「……外の世界、見られるの……?」
マーガレットが優しく手を握る。
「ええ。大丈夫よ。必ず助けるから!」
「……うん……」
その瞬間――転移門が開いた。
風が逆流し、魔力が空中で弾ける。ニコラスが叫ぶ。
「全員、護衛態勢!」
レオナルドがティファニーを抱え、光の中へ踏み出した。マーガレット、ニコラス、リチャードも続く。
光がすべてを包み込み――彼らの姿は一瞬で消えた。
◇◇◇
転移先は、ルナリア王城の奥にある治癒の間。純白の大理石と、滝のように流れる光の魔力が満ちる聖域。
そこに立つのは――ルナリア王妃・エリセア。
“命の大地母神の祝福を受けた聖妃”と呼ばれる、奇跡の治癒者である。
彼女はティファニーを一目見て、静かに目を細めた。
「……若いのに、とても苦しんできたのね。我が息子・第二王子マルクスを思い出すわ……。でも、もう大丈夫よ」
エリセアの掌が淡く光を帯びる。
「リチャード王太子。あなたは、ずっと一人で耐えてきたのでしょう?」
その言葉に、リチャードの身体が震えた。
「……っ……僕は……妹を……救いたくて……!」
「ならば、あなたも側にいてあげなさい。家族の愛は、何よりの薬ですから」
エリセア王妃はティファニーの胸に手を当て、静かに詠唱した。
「――《聖域の慈光(サンクタ・ルーミナリア)》」
白銀の光がほとばしり、治癒の間を満たす。
あまりの眩しさに、マーガレットもニコラスも思わず息を呑んだ。
痩せ細り、青白かったティファニーの肌に、ゆっくりと生気のある血色が戻っていく。凍りついたようだった胸が――大きく息を吸った。
「…あ…あったかい…。これが…外の…?」
リチャードは涙を流し、嗚咽を堪えながら唇を噛み締め、拳を握りしめる。
「ティファニー…!よかった…!うっ…うぅ… 本当に… よかった…!」
エリセア王妃は静かに微笑んだ。
「治癒を続けます。――この子は、必ず助けます。どうか安心して。」
治癒の間には、大きな安堵が満ちていった。
つづく
______________
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外界から隔絶された地下聖室は、光すら差し込まぬ場所。
その暗いはずの空間が、突然、眩い光に包まれた――。
二十二歳とは思えぬほど痩せ細った“少女”、ティファニー王女は、あまりの眩しさに目をぎゅっと閉じ……そしてゆっくりと開いた。
そこには、兄リチャードと、見知らぬ数名の美しい男女が立っていた。
リチャードに背を支えられ、ティファニーはゆっくりと寝台から起こされる。
「……お兄……さま……?」
かすれた声に、リチャードの目が潤む。
「大丈夫だ、ティファニー、君はもう、ここから出るんだ」
少女は弱々しく、だが嬉しそうに微笑んだ。
一方でマーガレットは、青ざめた顔でティファニーの体温や脈を確かめる。
「……脈が弱い。これ以上遅れたら危険だわ……」
すぐそばでは、レオナルド・オスカー・エドガーの“NEOR三翼”が周囲を警戒し、天井裏には気配を完全に消した“闇夜の鴉”の諜報員が五名潜んでいる。
「シリウス、準備は?」
ニコラスの問いに、転移護符陣を展開するシリウスが力強く頷いた。
「問題ない。
――《ゲートリンク》、起動する!」
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ティファニーは、その光を眩しげに見つめた。
「……外の世界、見られるの……?」
マーガレットが優しく手を握る。
「ええ。大丈夫よ。必ず助けるから!」
「……うん……」
その瞬間――転移門が開いた。
風が逆流し、魔力が空中で弾ける。ニコラスが叫ぶ。
「全員、護衛態勢!」
レオナルドがティファニーを抱え、光の中へ踏み出した。マーガレット、ニコラス、リチャードも続く。
光がすべてを包み込み――彼らの姿は一瞬で消えた。
◇◇◇
転移先は、ルナリア王城の奥にある治癒の間。純白の大理石と、滝のように流れる光の魔力が満ちる聖域。
そこに立つのは――ルナリア王妃・エリセア。
“命の大地母神の祝福を受けた聖妃”と呼ばれる、奇跡の治癒者である。
彼女はティファニーを一目見て、静かに目を細めた。
「……若いのに、とても苦しんできたのね。我が息子・第二王子マルクスを思い出すわ……。でも、もう大丈夫よ」
エリセアの掌が淡く光を帯びる。
「リチャード王太子。あなたは、ずっと一人で耐えてきたのでしょう?」
その言葉に、リチャードの身体が震えた。
「……っ……僕は……妹を……救いたくて……!」
「ならば、あなたも側にいてあげなさい。家族の愛は、何よりの薬ですから」
エリセア王妃はティファニーの胸に手を当て、静かに詠唱した。
「――《聖域の慈光(サンクタ・ルーミナリア)》」
白銀の光がほとばしり、治癒の間を満たす。
あまりの眩しさに、マーガレットもニコラスも思わず息を呑んだ。
痩せ細り、青白かったティファニーの肌に、ゆっくりと生気のある血色が戻っていく。凍りついたようだった胸が――大きく息を吸った。
「…あ…あったかい…。これが…外の…?」
リチャードは涙を流し、嗚咽を堪えながら唇を噛み締め、拳を握りしめる。
「ティファニー…!よかった…!うっ…うぅ… 本当に… よかった…!」
エリセア王妃は静かに微笑んだ。
「治癒を続けます。――この子は、必ず助けます。どうか安心して。」
治癒の間には、大きな安堵が満ちていった。
つづく
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