80 / 214
第二部 「極光の殲滅姫」 第5章

第78話 vsジャック・オー・ランタン

しおりを挟む
「アイセル、手始めに何体かジャック・オー・ランタンを攻撃してみてくれ」

「了解です。スキル『剣気帯刃・オーラブレード』!」

 アイセルの声と共に、魔法剣がどこか幻想的な青白い光で覆われた。

「うわっ、綺麗……いいなぁ」
 俺の隣で見守っていたサクラが思わずって感じで呟く。

 普段はことあるごとに俺にウザ絡みしてくるけど、なんだかんだでサクラも年頃の女の子なんだよな。
 綺麗なものが好きだし憧れもするんだろう。

 しかし『剣気帯刃・オーラブレード』はただ綺麗なだけのしょっぱいスキルではない。
 実態を持たない敵にもダメージを与えられる、ハイクラスのスキルなのだ。

 それを証明するかのように、

「てりゃぁ!」

 アイセルが『剣気帯刃・オーラブレード』で強化した魔法剣をふるうたびに1体、また1体とジャック・オー・ランタンが倒され消えていく。

「なんだぁ、ジャック・オー・ランタンって全然大したことないじゃん?」
 それを見たサクラが拍子抜けしたように言った。

「ジャック・オー・ランタンはわざわざ討伐に行くのもアホらしいくらいに、本来は無害なゴーストなんだよ」

「ふーん。じゃ、このまま何事もなく終わればいいのにね」

「そうだな、そうなるといいな」

 俺はそう答えながらも、内心ではこのまま終わるはずがないという確信のような思いを抱いていた。

 なにせこれは南部諸国連合の最高意思決定機関である評議会から依頼された、Sランクの指名討伐クエストなのだ。

 勇者パーティ時代に受けたSランククエストは、どれもこれもが難しいクエストばかりだった。
 だから今回のクエストもこのまま簡単に終わるはずがない。

 そして悪い予感はやはり現実のものとなった。
 異変が起こったのはアイセルが10体目のジャック・オー・ランタンを倒した時だった。

「動きが変わった? 1か所に集まりだしたような……」

 アイセルの見立て通りそれまでふよふよ漂ってはいいようにやられていたジャック・オー・ランタンたちが、一つの場所に次々と集まって密集し始めたのだ。

 そしてそれはどんどんと数を増していく。
 「なにか」が起ころうとしていた。

「アイセル、いったん下がれ! 明らかに様子がおかしい!」

「了解です!」

 アイセルは不可解な動きを見せるジャック・オー・ランタンたちからすぐに離れると、一時撤退して後ろにいる俺たちの元へと戻ってきた。

 その間にもジャック・オー・ランタンたちは次々と集まっては、どんどんとその密度を増していく。

 さらに、

『ホッチャーン! ホ、ホーッ、ホアアーッ!! ホアーッ!!』
『ホッチャーン! ホ、ホーッ、ホアアーッ!! ホアーッ!!』
『ホッチャーン! ホ、ホーッ、ホアアーッ!! ホアーッ!!』
『ホッチャーン! ホ、ホーッ、ホアアーッ!! ホアーッ!!』
『ホッチャーン! ホ、ホーッ、ホアアーッ!! ホアーッ!!』
『ホッチャーン! ホ、ホーッ、ホアアーッ!! ホアーッ!! ホアーッ!! ホアーッ!! ホアホアホアホアホアーッ!!』

 ジャック・オー・ランタンたちは、声を重ねるようにして一斉に叫び始めたのだ。

「ちょっとケイスケ! ジャック・オー・ランタンたちがなんか合唱し始めたんだけど!?」

「分かってる! まずは様子見しつつ待機だ、何が起こっているかを確認したい。アイセルはいつでも動けるようにだけしといてくれ」

「了解です!」
「分かった!」

 俺たちが緊張感に包まれながら、ジャック・オー・ランタンたちの得体のしれない大合唱を見守っていると、次第にその姿が一つの形を取り始めた。

「まさかこんなことが……」

「ケースケ様、これって――」

「ケイスケ、あいつらなんか1つのでっかいカボチャになったんだけど!? キングカボチャだよ!?」

 何十体何百体と集まったジャック・オー・ランタンたちは融合合体して、いつしか超ビッグサイズのカボチャお化けに変化へんげしていたのだ!

 ゆうに直径5メートルはある、それは超巨大なカボチャお化けだった。

「これはまさかの展開だな。こんなの聞いたことないぞ。新種か? 報告すれば多分、魔獣辞典に発見者として名前が載るぞ?」

「ほんとケイスケって、いっつもそういうセコいことばっかり考えてるよね!」

「全然セコくねーよ、魔獣辞典に名前が載るとかすごいことだろ」

「はいはいそうね」

「その話は後でいいじゃないですか。つまりこの巨大カボチャがアレコレ問題を起こしていた、っていうわけですよね?」

 ワーワーといつものやり取りをしていた俺とサクラに、これまたいつものようにアイセルがさらっと割って入って話を進めてくれる。

 なんかもうパーティ運営もアイセルに任せていいんじゃないかな? かな?

「ほぼ断定できるだろうな」

「あ、でもでも巨大カボチャってなんだか間抜けな言いかたかも」

「そうだな……ならキング・オー・ランタンとかどうだ?」

 ジャックからキングへ。
 トランプ的な発想だけど、なかなか上手く言ったんじゃないだろうか?

「あら、ケイスケにしては上手いこと言ったじゃん、その名前採用!」

「だからいちいち煽らなくていいっつーの」

 そんなやり取りをしていた俺たちを見て、巨大カボチャ改めキング・オー・ランタンがニタリと笑った。

「これまた向こうさんはえらくやる気みたいだな」

「さっきまで一方的にやられた借りを、倍にして返してやるぜって感じ?」

「ジャック・オー・ランタンにはそんな高度な知性はないはずなんだけど、キング・オー・ランタンになったことで知性も向上したのかな?」

「危険度が大幅アップということですね。少し出方を見ながら戦ってみます」

「今回は相手のスペックも能力も完全に不明だ。分かってると思うけど無茶と無理は厳禁な。早めの撤退も頭に入れておいてくれ」

「了解です」

 アイセルが魔法剣を構えながら前に出た。

 ジャック・オー・ランタンの進化形態、キング・オー・ランタンとの戦いが幕をあげた――!
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

処理中です...