神龍の巫女 ~聖女としてがんばってた私が突然、追放されました~ 嫌がらせでリストラ → でも隣国でステキな王子様と出会ったんだ

マナシロカナタ✨ねこたま✨GCN文庫

文字の大きさ
1 / 64

第1話 聖女、リストラされる。

しおりを挟む
 『神龍の巫女』

 神龍さまをあがめたてまつるこの国――神龍国家シェンロンには、代々そう呼ばれる乙女がいる。

 いるっていうか、何を隠そう、このわたしクレアがそうだったりする。

 神龍さまと普通の人間は会話ができないから、龍と会話することができる特別な才能を持った巫女が、お願いをしたりお話をしたりするんだ。

 お話しするって言っても、よく怒るカルシウム不足な神龍さまをなだめすかすのが、もっぱらの仕事なんだけどね。

 今日もわたしは『神龍の巫女』として、舞を奉納したり音楽を演奏しては、神龍さまのご機嫌をとっていた。

 そんな風に、国の存亡にかかわる神聖な儀式を行うので、『神龍の巫女』は聖女なんて言われたりもする。

 聖女クレア。

 むふふ……。

 わたしはこの呼び名が、結構気に入っていた。

 そんな『神龍の巫女』は、今は2人いる。
 わたしと、もう1人のバーバラだ。

 バーバラは巫女としての力は、すごく弱かった。
 っていうか多分、っていうか間違いなく、巫女としての力は持ってない。

 でもバーバラは、4大貴族であるブラスター公爵家の一人娘だったので、『神龍の巫女』に選ばれたんだ。

 ブラスター公爵は、後妻とのあいだに生まれた一人娘を溺愛してるので有名だから、そんな国の一大事にかかわる様なワガママですら、聞いてしまったんだろう。

 それが通ってしまうのが、大人の事情っていうやつだね。

 だからバーバラはぜんぜん仕事はしないし、できもしない。

 だって神龍さまとお話できないんだもん。
 『神龍の巫女』の仕事なんて、しようがないよね。

 だからいてもいなくても一緒ではあるんだけれど、でもバーバラは、まるで自分の力で神龍さまをなだめているんだって、周囲に言いふらしてたんだ。

 そして国の偉い人も、王様までも、そのことをみんな信じちゃっていた。
 
 最初の頃は、ほんとはわたしがやってるんだよって言ってたんだけど、誰も信じてはくれなった。

 まぁ名門貴族のバーバラと違って、わたしは庶民の――しかも孤児院の出だから、それも仕方ないんだけど。

 なに言ってんだこいつって言われるうちに、わたしは言うのをやめた。

 バーバラが中心で、わたしはそのサポート役。
 だからみんなは、そんな風に思ってるんだ。

 正直言うと、ちょっと悔しい。
 だってわたしの手柄を全部、バーバラに横取りされてるんだもん。

 それでも。
 「神龍の巫女バーバラのサポート役」として、そこそこ認めてもらえるのは嬉しかったし、お給金もすごく良かったから、わたしはがんばって職務をまっとうしてたんだ。

 わたしも含めて、歴代の『神龍の巫女』のがんばりもあって、『神龍災害』――神龍さまの怒りでもたらされる天変地異は、ここ100年のあいだ一度も発生していなかった。 

 こんな風に、わたしは毎日毎日、神龍の巫女としてのおしごとを頑張っていた。


 そんなある日、事件は起こった。

 その日、わたしはいつも通り神龍さまに奉納の舞をおどって、今日も今日とてカルシウム不足な神龍さまをなだめていた。

 無事に神龍さまが落ち着いてくれて、ふぅやれやれ、一安心。

 仕事を終えたわたしは、王宮にある自分の部屋に帰ろうとしたんだけど――そこにバーバラがやってきた。

 バーバラの隣には、1人の若い男が一緒にいた。

 バーバラは今日も勝手に早退してた。
 まぁ何もできないから、いてもいなくても一緒ではあるんだけどさ。

 でもせめて働いてるふりくらいは、してほしい。
 主にわたしのモチベーション的に。

 毎日毎日、怒りんぼな神龍さまのご機嫌取りするのって、すごく大変なんだからね?

「えっと、わたしに何のご用でしょうか? 仕事を終えて、今から帰るところなのですけれど……」

 わたしはへりくだって言った。

 バーバラも権力者の娘だけど、となりの男もまちがいなく上級貴族だったから。

 上級貴族の男は、庶民のわたしではとてもじゃないけど手が出せないような、高そうな衣服に身を包んでいる。
 多分わたしのお給金(庶民にしてはすごく多い)でも、1年分くらいはする服だ。

 そして時には「聖女」なんて呼ばれることもあるわたしだけど、庶民だから、こういう上下関係は大切なのだった。

 そんな上級貴族の若い男が、口を開いた。

「クレア君。君は今日でクビだ。荷物をまとめて、早々に王宮から立ち去るがいい」

 いきなりわたしは、そんなことを言われてしまったんだ――!
しおりを挟む
感想 133

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

現聖女ですが、王太子妃様が聖女になりたいというので、故郷に戻って結婚しようと思います。

和泉鷹央
恋愛
 聖女は十年しか生きられない。  この悲しい運命を変えるため、ライラは聖女になるときに精霊王と二つの契約をした。  それは期間満了後に始まる約束だったけど――  一つ……一度、死んだあと蘇生し、王太子の側室として本来の寿命で死ぬまで尽くすこと。  二つ……王太子が国王となったとき、国民が苦しむ政治をしないように側で支えること。  ライラはこの契約を承諾する。  十年後。  あと半月でライラの寿命が尽きるという頃、王太子妃ハンナが聖女になりたいと言い出した。  そして、王太子は聖女が農民出身で王族に相応しくないから、婚約破棄をすると言う。  こんな王族の為に、死ぬのは嫌だな……王太子妃様にあとを任せて、村に戻り幼馴染の彼と結婚しよう。  そう思い、ライラは聖女をやめることにした。  他の投稿サイトでも掲載しています。

召喚聖女が来たのでお前は用済みだと追放されましたが、今更帰って来いと言われても無理ですから

神崎 ルナ
恋愛
 アイリーンは聖女のお役目を10年以上してきた。    だが、今回とても強い力を持った聖女を異世界から召喚できた、ということでアイリーンは婚約破棄され、さらに冤罪を着せられ、国外追放されてしまう。  その後、異世界から召喚された聖女は能力は高いがさぼり癖がひどく、これならばアイリーンの方が何倍もマシ、と迎えが来るが既にアイリーンは新しい生活を手に入れていた。  

捨てられた元聖女ですが、なぜか蘇生聖術【リザレクション】が使えます ~婚約破棄のち追放のち力を奪われ『愚醜王』に嫁がされましたが幸せです~

鏑木カヅキ
恋愛
 十年ものあいだ人々を癒し続けていた聖女シリカは、ある日、婚約者のユリアン第一王子から婚約破棄を告げられる。さらには信頼していた枢機卿バルトルトに裏切られ、伯爵令嬢ドーリスに聖女の力と王子との婚約さえ奪われてしまう。  元聖女となったシリカは、バルトルトたちの謀略により、貧困国ロンダリアの『愚醜王ヴィルヘルム』のもとへと強制的に嫁ぐことになってしまう。無知蒙昧で不遜、それだけでなく容姿も醜いと噂の王である。  そんな不幸な境遇でありながらも彼女は前向きだった。 「陛下と国家に尽くします!」  シリカの行動により国民も国も、そして王ヴィルヘルムでさえも変わっていく。  そしてある事件を機に、シリカは奪われたはずの聖女の力に再び目覚める。失われたはずの蘇生聖術『リザレクション』を使ったことで、国情は一変。ロンダリアでは新たな聖女体制が敷かれ、国家再興の兆しを見せていた。  一方、聖女ドーリスの力がシリカに遠く及ばないことが判明する中、シリカの噂を聞きつけた枢機卿バルトルトは、シリカに帰還を要請してくる。しかし、すでに何もかもが手遅れだった。

【完結】次期聖女として育てられてきましたが、異父妹の出現で全てが終わりました。史上最高の聖女を追放した代償は高くつきます!

林 真帆
恋愛
マリアは聖女の血を受け継ぐ家系に生まれ、次期聖女として大切に育てられてきた。  マリア自身も、自分が聖女になり、全てを国と民に捧げるものと信じて疑わなかった。  そんなマリアの前に、異父妹のカタリナが突然現れる。  そして、カタリナが現れたことで、マリアの生活は一変する。  どうやら現聖女である母親のエリザベートが、マリアを追い出し、カタリナを次期聖女にしようと企んでいるようで……。 2022.6.22 第一章完結しました。 2022.7.5 第二章完結しました。 第一章は、主人公が理不尽な目に遭い、追放されるまでのお話です。 第二章は、主人公が国を追放された後の生活。まだまだ不幸は続きます。 第三章から徐々に主人公が報われる展開となる予定です。

愛しい義兄が罠に嵌められ追放されたので、聖女は祈りを止めてついていくことにしました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。  グレイスは元々孤児だった。孤児院前に捨てられたことで、何とか命を繋ぎ止めることができたが、孤児院の責任者は、領主の補助金を着服していた。人数によって助成金が支払われるため、餓死はさせないが、ギリギリの食糧で、最低限の生活をしていた。だがそこに、正義感に溢れる領主の若様が視察にやってきた。孤児達は救われた。その時からグレイスは若様に恋焦がれていた。だが、幸か不幸か、グレイスには並外れた魔力があった。しかも魔窟を封印する事のできる聖なる魔力だった。グレイスは領主シーモア公爵家に養女に迎えられた。義妹として若様と一緒に暮らせるようになったが、絶対に結ばれることのない義兄妹の関係になってしまった。グレイスは密かに恋する義兄のために厳しい訓練に耐え、封印を護る聖女となった。義兄にためになると言われ、王太子との婚約も泣く泣く受けた。だが、その結果は、公明正大ゆえに疎まれた義兄の追放だった。ブチ切れた聖女グレイスは封印を放り出して義兄についていくことにした。

処理中です...