神龍の巫女 ~聖女としてがんばってた私が突然、追放されました~ 嫌がらせでリストラ → でも隣国でステキな王子様と出会ったんだ

マナシロカナタ✨ねこたま✨GCN文庫

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第17話 聖女、奉納の舞を披露する。

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 おいしい朝ごはんをライオネルとリリーナさんと食べてから、わたしは早速『水龍の巫女』としての仕事を始めることにした。

 ライオネルに連れられて、『水龍の神殿』へと向かう。

 わたしはまず、いの一番に水龍さまとコミュニケーションをとるための儀式を行う、『祭壇さいだんの間』をチェックしはじめた。

 そして『祭壇さいだんの間』には、かなりお年を召された巫女さんが、数人待機していた。

 わたしが「おはようございますー」と挨拶してぺこりと頭を下げると、一斉に「ハハー!」って感じで、頭を下げてきた。

 いきなりだったので、かなりびっくりした。
 ビクゥッ! ってなった。

 うん、でも。
 それだけ期待されてるって、ことだよね。

 がんばらなくちゃ!

「ぱっと見、悪くない感じですね」
 わたしが『祭壇さいだんの間』の率直な感想を言うと、

「むかし巫女をサポートしていた者たちに、当時を再現してもらってるんだ」
 ライオネルが説明をしてくれる。

「そうだったんですね、納得です」
 そっかそっか、この老巫女さんたちは、昔の『水龍の巫女』のサポート役だった人たちなんだね。 

「全部、見よう見まねだけどね。だから水龍さまの声を聞ける巫女は、いないままなんだ」

 ライオネルの言うとおり、隅々まで細やかな清掃が行き届いているし、儀式用の道具もしっかりと手入れがなされている。

 祭壇さいだんの全体的なレイアウトとか雰囲気作りがちょっと古風なのは、昔のを変えずに再現しているからだろう。
 きっとこれが、水龍さまが好きだった当時の様式そのままなんだ。

 でも、うーん。
 これだけきっちりやってるんだ。

 長年静かにしていた水龍さまが、ここ1、2か月で、急に怒りだした理由があるようには思えないんだけどなぁ……。

 ここに来るまでの道すがらに教えてもらったんだけど、水龍さまはとてもおだやかな龍だって、ブリスタニアの文献にはあるみたいだし。

「ってことはつまり、水龍さまになにかアクシデントがあったっぽいね……」
 わたしはアタリを付けた。

 となると――、

「水龍さまと直接お話してみます」
 やっぱりそれが一番だ。

「よろしく頼んだよ、クレア。我がブリスタニアの未来は、『水龍の巫女』である君の双肩にかかっている」

 ライオネルはそう言うと、わたしと、サポート役の老巫女さんたちと、そして最後に水龍さまに深々と礼をしてから、『祭壇さいだんの間』から出ていった。

 ライオネルを見送ったわたしは、老巫女さんたちに簡単な指示を出すと、

「ふぅ……」
 呼吸をととのえ、精神を集中しはじめた。

 これからは余計なことを考えちゃいけない。
 今のわたしは、水龍さまに仕える『水龍の巫女』なんだから――!

 わたしは気合を入れると、

「偉大なる水龍さまに、『水龍の巫女』クレアが『奉納の舞』を捧げたてまつらん――」

 さっそく水龍さまへの『奉納の舞』を踊り始めた。

 老巫女さんたちの奏でる、笛や太鼓の演奏に合わせて、優雅な舞を奉納する。

 今日踊る演目のは、わたし大得意の『神龍かぐら』。
 神龍国家シェンロンの『神龍の巫女』にだけに伝わる、門外不出のとっておきのとっておき、わたしの必殺技だった。

 勝負するならこれしかないよね!

 もちろん老巫女さん達は、『神龍かぐら』を知らない。
 だから今まで通りに演奏をしてって、言ってある。

 ま、その辺は、わたしの方であわせれば、なんとかなるはずだから。
 こう見えてわたしってばもう5年以上も、ほとんど毎日『奉納の舞』を踊ってきたんだから。

 わたしは、今までは神龍さまのために踊ってた『神龍かぐら』をベースに、少しアレンジしてゆっくり穏やかな所作と振り付けで、舞い踊っていく。

 というのも、『祭壇さいだんの間』の配置を見る限り、水龍さまは大きく大胆な舞よりも、落ちついた繊細な舞を好むと思ったから。

 最初の数分で、老巫女さんたちの雅楽ががくの演奏の流れやクセをつかんだわたしは、ここから水龍さまへのコンタクトを深めていく。

 舞い踊りながら、意識を深い水の底に沈ませていくような感覚。

 龍とは、意志を持った強大なエネルギー存在だ。
 だからその強大な「力」を感じとるのが、コンタクトの最初の一歩なんだ。

 意識を沈ませていくと、すぐに巨大すぎる「力」を感じた。

 まちがいない、水龍さまだ――。
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