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第43話 バーバラ SIDE 3 ~シェンロン~(上)
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~神龍国家シェンロン~
「はぁっ!? あのチンチクリン庶民のクレアが、ブリスタニア王国の第3王子ライオネル様の婚約者ですって!? 寝言を言ってるんじゃないわよ! わたしをバカにしてるの!?」
失敗の報告とそのバカげた理由を聞いた瞬間。
怒りが頂点に達したバーバラは、手に持っていたフルーツ盛りを容器ごと、報告をした婚約者(=追放ヤロウ。命名クレア)に向かってぶん投げた。
ちなみに婚約者(追放ヤロウ)の名前は、ハリソンと言う。
いと尊き上級貴族の中ではやや下の家柄に生まれたハリソンは、だから上級貴族でありながら劣等感のかたまりで、とても野心家で上昇志向が強かった。
そんなハリソンだから、ブラスター公爵の一人娘であるバーバラを、たいして好きでもないのに必死に口説き落として、その婚約者の座に収まったのだ。
ゆくゆくはブラスター公爵家の跡取りとなって、その絶大な権力を手に入れるために。
「ま、まさかそんな。オレが君に嘘を言うはずはないだろ? な、バーバラ。まずは落ちついてくれないか?」
だからフルーツ盛りをぶつけられても、ハリソンは優しい笑みを張り付けて平身低頭で耐え忍ぶ。
こんなどうしようもないクソみたいな性格でも、バーバラは見てくれだけは素晴らしいし、なによりブラスター公爵家の一人娘という得難い地位は、どんなマイナス要素も補って余りあるほどに魅力的だったからだ。
このままバーバラと結婚すれば、そこそこの人生で終わるはずだった自分が、4大貴族と言われるブラスター公爵家の絶大な権力を、思うがままに行使できるようになるのだ。
そう考えれば、バーバラに少しくらいどやされようが、蹴り飛ばされようが、フルーツ盛りを容器ごとぶつけられようが、ハリソンにとっては大したことではなかった。
そこに「愛」はない。
いや、これもまた一つの「愛の形」なのかもしれなかった。
少なくともハリソンは――己の権力欲のためにとはいえ――バーバラをとても大切に扱っていたし、バーバラのことをなくてはならない存在だと思っていたのだから。
「はぁ!? これが落ち着いていられるかっての! 意味わかんないわよ!」
しかしハリソンがいくらなだめすかしても、バーバラの怒りはいっこうにおさまる気配を見せはしない。
「本当なんだよ。ブリスタニア王の御前でライオネル殿下が直々に、クレア殿は自分の婚約者であると、確かにそうおっしゃられたんだ。そしてブリスタニア王もそれを認められたんだ」
「なっ……!」
まさか本人の口からだなんて――!
「ってことは、ホントにホントなの!?」
「やっとわかってくれたか」
ハリソンがホッとしたような顔を見せる。
「ギリ……っ!」
しかしバーバラは、返事をする代わりに奥歯をギリギリギリリと噛みしめた。
歯と歯がこすれる嫌な音がするが、構いやしない。
それほどまでに、バーバラはムカついていたのだ。
なにがムカつくって、ブリスタニア王国第3王子ライオネル殿下と言えば、近隣諸国にもその名を知られた超がつくイケメン王子なことだ。
しかも性格もすこぶるよくて、頭が切れて、武芸百般に通じ、パーティや舞踏会では多くの女性に囲まれる、プリンス・オブ・プリンスじゃないの!
ハリソンだって十分にイケメンだが、ライオネル殿下の匂いたつような色香と比べれば、月とスッポンだ。
その地位も、王族のライオネル殿下とギリギリ上級貴族に入れてもらってるハリソンじゃ比べるまでもない。
ハリソンなどはライオネル殿下の前では、吹けば飛ぶ鼻くそみたいなもんだった。
男は、女のステータスの中で1番大事な要素だ。
どんなに高貴で教養ある美人でも、連れてる男がイケてなければ、それだけで嘲笑の対象となる。
だっていうのに!
あのチンチクリン庶民は、何をどうやったのかは知らないが、こともあろうにライオネル殿下という世界最高のステータスを、手に入れやがったのだ……!
「ギリリリッ――!」
バーバラは奥歯を、さらに強く強く噛みしめた。
「この私が……! このバーバラ・ブラスターが……! あのサルみたいな庶民に負けたっていうの……!」
ギリッ!
ギリギリギリ――ッ!
「はぁっ!? あのチンチクリン庶民のクレアが、ブリスタニア王国の第3王子ライオネル様の婚約者ですって!? 寝言を言ってるんじゃないわよ! わたしをバカにしてるの!?」
失敗の報告とそのバカげた理由を聞いた瞬間。
怒りが頂点に達したバーバラは、手に持っていたフルーツ盛りを容器ごと、報告をした婚約者(=追放ヤロウ。命名クレア)に向かってぶん投げた。
ちなみに婚約者(追放ヤロウ)の名前は、ハリソンと言う。
いと尊き上級貴族の中ではやや下の家柄に生まれたハリソンは、だから上級貴族でありながら劣等感のかたまりで、とても野心家で上昇志向が強かった。
そんなハリソンだから、ブラスター公爵の一人娘であるバーバラを、たいして好きでもないのに必死に口説き落として、その婚約者の座に収まったのだ。
ゆくゆくはブラスター公爵家の跡取りとなって、その絶大な権力を手に入れるために。
「ま、まさかそんな。オレが君に嘘を言うはずはないだろ? な、バーバラ。まずは落ちついてくれないか?」
だからフルーツ盛りをぶつけられても、ハリソンは優しい笑みを張り付けて平身低頭で耐え忍ぶ。
こんなどうしようもないクソみたいな性格でも、バーバラは見てくれだけは素晴らしいし、なによりブラスター公爵家の一人娘という得難い地位は、どんなマイナス要素も補って余りあるほどに魅力的だったからだ。
このままバーバラと結婚すれば、そこそこの人生で終わるはずだった自分が、4大貴族と言われるブラスター公爵家の絶大な権力を、思うがままに行使できるようになるのだ。
そう考えれば、バーバラに少しくらいどやされようが、蹴り飛ばされようが、フルーツ盛りを容器ごとぶつけられようが、ハリソンにとっては大したことではなかった。
そこに「愛」はない。
いや、これもまた一つの「愛の形」なのかもしれなかった。
少なくともハリソンは――己の権力欲のためにとはいえ――バーバラをとても大切に扱っていたし、バーバラのことをなくてはならない存在だと思っていたのだから。
「はぁ!? これが落ち着いていられるかっての! 意味わかんないわよ!」
しかしハリソンがいくらなだめすかしても、バーバラの怒りはいっこうにおさまる気配を見せはしない。
「本当なんだよ。ブリスタニア王の御前でライオネル殿下が直々に、クレア殿は自分の婚約者であると、確かにそうおっしゃられたんだ。そしてブリスタニア王もそれを認められたんだ」
「なっ……!」
まさか本人の口からだなんて――!
「ってことは、ホントにホントなの!?」
「やっとわかってくれたか」
ハリソンがホッとしたような顔を見せる。
「ギリ……っ!」
しかしバーバラは、返事をする代わりに奥歯をギリギリギリリと噛みしめた。
歯と歯がこすれる嫌な音がするが、構いやしない。
それほどまでに、バーバラはムカついていたのだ。
なにがムカつくって、ブリスタニア王国第3王子ライオネル殿下と言えば、近隣諸国にもその名を知られた超がつくイケメン王子なことだ。
しかも性格もすこぶるよくて、頭が切れて、武芸百般に通じ、パーティや舞踏会では多くの女性に囲まれる、プリンス・オブ・プリンスじゃないの!
ハリソンだって十分にイケメンだが、ライオネル殿下の匂いたつような色香と比べれば、月とスッポンだ。
その地位も、王族のライオネル殿下とギリギリ上級貴族に入れてもらってるハリソンじゃ比べるまでもない。
ハリソンなどはライオネル殿下の前では、吹けば飛ぶ鼻くそみたいなもんだった。
男は、女のステータスの中で1番大事な要素だ。
どんなに高貴で教養ある美人でも、連れてる男がイケてなければ、それだけで嘲笑の対象となる。
だっていうのに!
あのチンチクリン庶民は、何をどうやったのかは知らないが、こともあろうにライオネル殿下という世界最高のステータスを、手に入れやがったのだ……!
「ギリリリッ――!」
バーバラは奥歯を、さらに強く強く噛みしめた。
「この私が……! このバーバラ・ブラスターが……! あのサルみたいな庶民に負けたっていうの……!」
ギリッ!
ギリギリギリ――ッ!
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