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第5章 冒険者4か月目
外伝3 ちょっとした小話
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□嬉しかったこと
それは、ある日の夜。
宿の1室に、4人が集まって晩酌をしていた時の話。
「そう言えば、船旅の少し前、ヒロトに魔術の授業をしていた時なんですけど、とても嬉しい事を言われたんですよ」
嬉しそうに微笑みながら、リレルがそう切り出した。
「へぇ、どんな?」
興味津々にアルムが話を促す。
リレルはくるくると手に持ったグラスを揺らしながら答えた。
「"リレルも、サディエルも、アルムも、オレがまっすぐ言葉を投げたら、しっかり受け止めて、返してくれる" って。ふふっ、私の言葉がちゃんとヒロトに伝わっていた。こんなに嬉しい事だったんだって、思っちゃいました」
「最初からみんな優しかったじゃん。オレとしてはそんな事情があった方がよっぽど驚きだよ」
少し恥ずかしそうにヒロトが返す。
ちびちびと、1人だけノンアルコールだと渡されたブドウジュースを飲んで、気を紛らわそうとしている。
「最初の頃に言ったはずだぞ。"大半はサディエルの受け売りだ。僕はそれを真似てるに過ぎない、苦手だ" って。それなのに、馬鹿正直に信じてくれちゃってさ。そういう所はそっくりだよな、お前とサディエルは」
「"安心したい言葉が欲しい時は、サディエルに言えばすぐ" とも、申し上げたんですけどね。私たちの経験談でしたのに」
「そんな意味で言ってるなんて、分かるわけないじゃん」
無理ゲー、と言いながらヒロトは皿に乗っているおつまみに手を伸ばす。
明日も早いはずなのに、彼らの会話が終わる雰囲気は無い。
「あっはは……右も左も分からなくて、自分の事で手一杯な時期のヒロトに難易度高い事を課すなよな、2人共。ヒロトがやっと周囲に目を向け始めたのだって、アルムと喧嘩した後ぐらいからなんだし、そこまで察せるわけ無いだろ」
「へいへい。わるぅございました」
「はい、申し訳ありません」
「なぁサディエル。ちーっとも反省してる気配がないのは、気のせい?」
「気のせいじゃないな。ったく、そういう態度は本当に俺らだけ、もしくは、将来一緒になりたいと思う人だけにとどめとけよ。いや、一緒になりたい人にも限度は覚えろ。ヒロトはともかく、俺がお前らの伴侶に殺されかねない」
========================
□リレルの師匠さん
「リレルの師匠さんもこの国に居るんだよね? 会っていかないの?」
「……あの人、放浪癖があって、今日まで戻ってきていないんです」
「えぇ……けど、そう言えばカイン君が "放浪癖名医" って言ってたっけ」
「姿見ないと思ったら、まただったのか。そうだよな、戻っているなら精密検査の場に居ただろうし」
「僕の師匠も大概だったけど、リレルの師匠もとんでもないよな」
========================
□バークライスとレックス
「今更だけど、バークライスさんと、レックスさんって、どういう関係なの? 歳は離れているけど、互いに名前を呼び捨てだし」
「この前ちょっと話したトラブルで仲良くなったんだよ。俺とバークライスさん、レックスさんの3人で事件解決にあたったからな。あれ以来、意気投合したのか、休暇が合えば互いに職場の愚痴を言いあっているらしいぞ」
「……サディエル、そのトラブルの件を改めて詳しく」
「話始めると、芋ずる式にアルムやリレルとの話もしなきゃならないから、時間がある時にな」
「それ、絶対に語られないパターンなんですが……」
========================
□レックスさんへはいつ?
「サディエル。いつの間にレックスさんにオレの事を説明したの? バークライスさんやアークさんは、カイン君の証明のお陰であっさりとだったけど。証拠もなしで大変だったんじゃない」
「あー……それなんだけどさ。レックスさん、俺とヒロトが似ているって言った時点で、ずっと不審に思っていたらしくてさ」
「……うわぁ」
「親族でもないし、顔も似ているわけでもないのに、俺とヒロトが同じ人物に見えてしまった違和感が拭えない。おまけに、こうも矢継ぎ早に俺が魔族に襲われるのはあまりにも不自然だって。何か知っているなら、突拍子もない事でもいいから白状しろって、言われてさ。あまりの剣幕に喋っちゃって……悪い」
「で、信じて貰えたんだ」
「あの人、クレインさんに対して悪意がある人を見抜くのがめっちゃうまくてさ。その関係で、俺が嘘を言っていない事と、自身の感覚から、ヒロトが異世界人だって信じてくれたんだ。もちろん、これまでのヒロトの人となりも考慮して、だけどな」
「レックスさんって、もしかしなくても慧眼の持ち主?」
「クレインさんと言う崇拝対象がいなかったら、多分、それなりの地位と名誉を得ていたと思えるぐらい凄い人だよ、レックスさんは」
========================
□今までの内容でも20%だったらしい
「サディエルはエルフェル・ブルグに着いてから3か月間、フットマンとして雇われていたんだよね。その後すぐに、アルムやリレルと旅に出たの?」
「いや、半年……違うな、6~7か月はこの国で、2人が旅に出られるだけの体力作りと、必要な知識を教え込んでいたよ。あと、軍資金集めで、早朝と深夜にバイト」
「え?」
「え、じゃないよ。旅もしたことがない、体力もない人間を2人も引き連れては無理だ。俺1人で何とか出来る範囲を超えている。旅の必需品だって人数分も無かったし」
「オレの時と、状況違いすぎ」
「素人1人に対して3人で対応出来るのと、素人2人に対して1人しか対応出来ないのとじゃ雲泥の差だ。おまけにアルムとリレルは、俺の話を全然聞こうとしなかったからな。ヒロトに教えた20%を覚えるのに、3か月も掛かったし」
「……ちょっと待ってサディエル。20%? え、これまでの旅でみんなから教わたことが、全体の20%!? あの量で80%カットだったってこと!?」
「自衛手段だけに特化したからな。魔物に対する対処を始め、そのあたりは全然触れてなかっただろ。省略した部分を教えていたら、本当に受験勉強している暇がなくなるぞ」
「冒険者って、もっとこう、勢いで飛び出しても何とかなるイメージだったんだけどな……」
「そうやって飛び出していった奴は、3日も経たずにあの世へ冒険に行くことになるな。ヒロトの所で、よく故郷を焼き払われて復讐に……! ってやつ。今まで、村でただ住んでいただけの少年なのに、予備知識なしで旅に出る話があるだろ。どうやって生き延びたのか、聞く都度に不思議だったよ」
「物語上の都合ってやつかな……いやまぁ、シャレにならないんだけどね、現実だと」
========================
□ジェネレーションギャップ(2回目)
「ヒロト兄ちゃん、携帯電話って今どうなっている? 小型化がさらに進んだとか」
「ガラケーか。今はもうほとんど生産されなくなって、スマホが主流になってるよ」
「がら、けー? 何だその単語」
「携帯電話の事だよ。ガラパゴス携帯って揶揄されている。確か2016年ごろには、あるメーカーを皮切りに、次々と販売終了の流れになっていったんだ。それっぽいものは残っているけど、厳密に言えば違うかな」
「嘘だ。携帯電話が、もう存在していないなんて……!」
「今はその後継機として、スマホがあるよ。折り畳み式じゃなくなったし、ゲームだって色々……あ、やばい。ソシャゲのログインが軒並み途絶えている。ゲーム内ギルドからもキックされてそうだな、イベント走れてないし」
「ジェネレーションギャップが激しい」
========================
□カインとアインス
「アインスは、俺にとって最初に作り出した魔族で、特別な存在なんだ」
「身に余る光栄です」
「こいつにだけは、俺が魔王になった経緯も、何でこの地位にいるかも全部教えてある。だから、アインスには腹割って色々話せるんだ」
「カイン様のお役に立てるならば、これほど嬉しいことはありません」
「普段は影武者もやって貰ってさ、勇者とかが来たら、まずは彼が戦って『やーらーれーた!』って負けるんだ。で、そこから俺がじゃじゃーん! と出てくる」
「毎回、ギリギリのタイミングで逃げるのが、ちょっとスリルがあって楽しいです」
「ラスボスで良くある、第2形態ってやつ。いやぁ、あっちの絶望した顔、最高だよね。俺やヒロト兄ちゃんだったらさ、あー、はいはい、テンプレテンプレ。どうせそうだって知ってた、って反応薄くなりそうだし」
「それは面白くありませんね。ここではびっくりして頂かないと、せっかく体を張った意味がありません」
「……あのさ、カイン君。アインスさん、結構面白い性格しているね」
「伊達に俺やミルフェリアと一緒に、数千年生きてないからな」
「ボキャブラリーは豊富になったと自負しております」
それは、ある日の夜。
宿の1室に、4人が集まって晩酌をしていた時の話。
「そう言えば、船旅の少し前、ヒロトに魔術の授業をしていた時なんですけど、とても嬉しい事を言われたんですよ」
嬉しそうに微笑みながら、リレルがそう切り出した。
「へぇ、どんな?」
興味津々にアルムが話を促す。
リレルはくるくると手に持ったグラスを揺らしながら答えた。
「"リレルも、サディエルも、アルムも、オレがまっすぐ言葉を投げたら、しっかり受け止めて、返してくれる" って。ふふっ、私の言葉がちゃんとヒロトに伝わっていた。こんなに嬉しい事だったんだって、思っちゃいました」
「最初からみんな優しかったじゃん。オレとしてはそんな事情があった方がよっぽど驚きだよ」
少し恥ずかしそうにヒロトが返す。
ちびちびと、1人だけノンアルコールだと渡されたブドウジュースを飲んで、気を紛らわそうとしている。
「最初の頃に言ったはずだぞ。"大半はサディエルの受け売りだ。僕はそれを真似てるに過ぎない、苦手だ" って。それなのに、馬鹿正直に信じてくれちゃってさ。そういう所はそっくりだよな、お前とサディエルは」
「"安心したい言葉が欲しい時は、サディエルに言えばすぐ" とも、申し上げたんですけどね。私たちの経験談でしたのに」
「そんな意味で言ってるなんて、分かるわけないじゃん」
無理ゲー、と言いながらヒロトは皿に乗っているおつまみに手を伸ばす。
明日も早いはずなのに、彼らの会話が終わる雰囲気は無い。
「あっはは……右も左も分からなくて、自分の事で手一杯な時期のヒロトに難易度高い事を課すなよな、2人共。ヒロトがやっと周囲に目を向け始めたのだって、アルムと喧嘩した後ぐらいからなんだし、そこまで察せるわけ無いだろ」
「へいへい。わるぅございました」
「はい、申し訳ありません」
「なぁサディエル。ちーっとも反省してる気配がないのは、気のせい?」
「気のせいじゃないな。ったく、そういう態度は本当に俺らだけ、もしくは、将来一緒になりたいと思う人だけにとどめとけよ。いや、一緒になりたい人にも限度は覚えろ。ヒロトはともかく、俺がお前らの伴侶に殺されかねない」
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□リレルの師匠さん
「リレルの師匠さんもこの国に居るんだよね? 会っていかないの?」
「……あの人、放浪癖があって、今日まで戻ってきていないんです」
「えぇ……けど、そう言えばカイン君が "放浪癖名医" って言ってたっけ」
「姿見ないと思ったら、まただったのか。そうだよな、戻っているなら精密検査の場に居ただろうし」
「僕の師匠も大概だったけど、リレルの師匠もとんでもないよな」
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□バークライスとレックス
「今更だけど、バークライスさんと、レックスさんって、どういう関係なの? 歳は離れているけど、互いに名前を呼び捨てだし」
「この前ちょっと話したトラブルで仲良くなったんだよ。俺とバークライスさん、レックスさんの3人で事件解決にあたったからな。あれ以来、意気投合したのか、休暇が合えば互いに職場の愚痴を言いあっているらしいぞ」
「……サディエル、そのトラブルの件を改めて詳しく」
「話始めると、芋ずる式にアルムやリレルとの話もしなきゃならないから、時間がある時にな」
「それ、絶対に語られないパターンなんですが……」
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□レックスさんへはいつ?
「サディエル。いつの間にレックスさんにオレの事を説明したの? バークライスさんやアークさんは、カイン君の証明のお陰であっさりとだったけど。証拠もなしで大変だったんじゃない」
「あー……それなんだけどさ。レックスさん、俺とヒロトが似ているって言った時点で、ずっと不審に思っていたらしくてさ」
「……うわぁ」
「親族でもないし、顔も似ているわけでもないのに、俺とヒロトが同じ人物に見えてしまった違和感が拭えない。おまけに、こうも矢継ぎ早に俺が魔族に襲われるのはあまりにも不自然だって。何か知っているなら、突拍子もない事でもいいから白状しろって、言われてさ。あまりの剣幕に喋っちゃって……悪い」
「で、信じて貰えたんだ」
「あの人、クレインさんに対して悪意がある人を見抜くのがめっちゃうまくてさ。その関係で、俺が嘘を言っていない事と、自身の感覚から、ヒロトが異世界人だって信じてくれたんだ。もちろん、これまでのヒロトの人となりも考慮して、だけどな」
「レックスさんって、もしかしなくても慧眼の持ち主?」
「クレインさんと言う崇拝対象がいなかったら、多分、それなりの地位と名誉を得ていたと思えるぐらい凄い人だよ、レックスさんは」
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□今までの内容でも20%だったらしい
「サディエルはエルフェル・ブルグに着いてから3か月間、フットマンとして雇われていたんだよね。その後すぐに、アルムやリレルと旅に出たの?」
「いや、半年……違うな、6~7か月はこの国で、2人が旅に出られるだけの体力作りと、必要な知識を教え込んでいたよ。あと、軍資金集めで、早朝と深夜にバイト」
「え?」
「え、じゃないよ。旅もしたことがない、体力もない人間を2人も引き連れては無理だ。俺1人で何とか出来る範囲を超えている。旅の必需品だって人数分も無かったし」
「オレの時と、状況違いすぎ」
「素人1人に対して3人で対応出来るのと、素人2人に対して1人しか対応出来ないのとじゃ雲泥の差だ。おまけにアルムとリレルは、俺の話を全然聞こうとしなかったからな。ヒロトに教えた20%を覚えるのに、3か月も掛かったし」
「……ちょっと待ってサディエル。20%? え、これまでの旅でみんなから教わたことが、全体の20%!? あの量で80%カットだったってこと!?」
「自衛手段だけに特化したからな。魔物に対する対処を始め、そのあたりは全然触れてなかっただろ。省略した部分を教えていたら、本当に受験勉強している暇がなくなるぞ」
「冒険者って、もっとこう、勢いで飛び出しても何とかなるイメージだったんだけどな……」
「そうやって飛び出していった奴は、3日も経たずにあの世へ冒険に行くことになるな。ヒロトの所で、よく故郷を焼き払われて復讐に……! ってやつ。今まで、村でただ住んでいただけの少年なのに、予備知識なしで旅に出る話があるだろ。どうやって生き延びたのか、聞く都度に不思議だったよ」
「物語上の都合ってやつかな……いやまぁ、シャレにならないんだけどね、現実だと」
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□ジェネレーションギャップ(2回目)
「ヒロト兄ちゃん、携帯電話って今どうなっている? 小型化がさらに進んだとか」
「ガラケーか。今はもうほとんど生産されなくなって、スマホが主流になってるよ」
「がら、けー? 何だその単語」
「携帯電話の事だよ。ガラパゴス携帯って揶揄されている。確か2016年ごろには、あるメーカーを皮切りに、次々と販売終了の流れになっていったんだ。それっぽいものは残っているけど、厳密に言えば違うかな」
「嘘だ。携帯電話が、もう存在していないなんて……!」
「今はその後継機として、スマホがあるよ。折り畳み式じゃなくなったし、ゲームだって色々……あ、やばい。ソシャゲのログインが軒並み途絶えている。ゲーム内ギルドからもキックされてそうだな、イベント走れてないし」
「ジェネレーションギャップが激しい」
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□カインとアインス
「アインスは、俺にとって最初に作り出した魔族で、特別な存在なんだ」
「身に余る光栄です」
「こいつにだけは、俺が魔王になった経緯も、何でこの地位にいるかも全部教えてある。だから、アインスには腹割って色々話せるんだ」
「カイン様のお役に立てるならば、これほど嬉しいことはありません」
「普段は影武者もやって貰ってさ、勇者とかが来たら、まずは彼が戦って『やーらーれーた!』って負けるんだ。で、そこから俺がじゃじゃーん! と出てくる」
「毎回、ギリギリのタイミングで逃げるのが、ちょっとスリルがあって楽しいです」
「ラスボスで良くある、第2形態ってやつ。いやぁ、あっちの絶望した顔、最高だよね。俺やヒロト兄ちゃんだったらさ、あー、はいはい、テンプレテンプレ。どうせそうだって知ってた、って反応薄くなりそうだし」
「それは面白くありませんね。ここではびっくりして頂かないと、せっかく体を張った意味がありません」
「……あのさ、カイン君。アインスさん、結構面白い性格しているね」
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「ボキャブラリーは豊富になったと自負しております」
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