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外伝 過去と未来の断片集
外伝5-3 後の魔王とその妃【後編】
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「カイン様!?」
部屋の中央まで行って、彼の名を呼ぶ。
けれども、いつもなら返って来る優しい声が聞こえてきませんでした。
ぎゅっ、と手を握って踵を返し、彼の部屋を出る。
お屋敷内を必死に探し回りましたが、カイン様を見つけることが出来なかったのです。
「カイン様、どちらに……!」
このお屋敷に居ないとなると……あとは……
私は屋敷の玄関を見る。
時刻は夜、国内とは言え、本来であれば出歩くには危ない時間ではありました。
明日になれば、何事もなくカイン様が戻って来る可能性はもちろんあります。
けれども、先ほどの……荷物が何一つ残っていない部屋を思い出すと、その可能性が低いと考えました。
「……行かないと!」
玄関近くのクローゼットから、夜道用のコートを取り出して羽織る。
そのまま、私は玄関のドアを開けて屋敷を出たのです。
そこまで遅い時間じゃない為、仕事終わりで自宅へ戻る人達の横を通りながら、私は必死にカイン様の姿を探しました。
まだ、国からは出ていない。
いくら彼が不老不死とは言え、こんな遅い時間での行動は危なすぎます。
宿、もしくは、時間的に食事を取っているかもしれない。
人々とすれ違いながら宿へ向かっている途中、ふと私は足を止めました。
今しがたすれ違った、壮年を少し過ぎた男性に引っかかりを覚えたからです。
私は慌てて振り返り、その男性の腕を掴みました。
「待ってください!」
「……え、君は?」
振り返ったその人は、全く知らない人でした。
えぇ、見た目だけならば。
私はまっすぐその人を見ながら、こう伝えたのです。
「カイン様、屋敷へ帰りましょう」
「かいん? えっと、人違いじゃないかな。僕は……」
「いいえ、カイン様です。だって……ずっと見てきましたもの。困った時のお顔ぐらいわかりますよ」
3年間、ずっと私とお兄様はカイン様と共に過ごしました。
その間に、私たちが彼を困らせたことも多くありました。
困らせる都度、彼は私たちに対して仕方ない子たちだと言わんばかりに、眉を下げて笑っていたのです。
「………」
「観念してくださいませ。何でしたら、お兄様をお呼びしましょうか? きっと、貴方だとすぐに気づきますよ」
「……やめてください、ミルフェリア様。と言うか、何でわかるんだよ……」
深いため息をついて、カイン様は笑いました。
ここでは流石に人目に付くと、私たちは人通りが少ない通りへと移動しました。
誰もいないことを確認してから、カイン様は魔術を解いて本来の姿に戻り……
「確か "変化の魔術" について、貴方にはお話していなかったはずなのですが」
「あら、何度か私たちから逃げる為に、使用人たちに変化した時がありましたよね?」
「うわぁ……バレてたのか……そういう所はリーダーの子孫だな」
「高祖父様も気づいたのですか?」
「リーダーは何に変化しても1発で気づいたよ。何度か本気でだまそうとしたのに、全然引っかかってくれなかった。ヤケクソでハニトラもやったのに、真顔で『キモイぞカイン』って言われた時は結構ショックだったね。まっ、他のみんなは引っかかってたせいで、そっちはそっちで笑ったけどさ」
思い出しただけでムカついてきた、とカイン様は苦虫をかみつぶしたような表情を見せたのです。
その姿がおかしくて、私はついつい笑ってしまいました。
だって、今の話を聞く限り、高祖父様に振り回されていたのが良く分かったのですから。
「笑わないでください、ミルフェリア様」
「あら、ごめんなさい、カイン様……それで、何で屋敷を出たんですか?」
「……それは」
視線を逸らしながら、カイン様は言葉を詰まらせる。
「貴方が急に出ていくなんて、私かお兄様が、不快な思いをさせてしまったのですか?」
「いえ、違います。その……」
カイン様の様子を見て、言えない何かがあるのだとすぐに察しました。
となれば、後はどうすれば彼が答えてくれるのか。
その手掛かりは、すぐに気が付きました。
今日、気が付いたら私は眠っていた。
昼過ぎまでは記憶があるにも関わらずです。
「ところでカイン様。私、今日の昼過ぎから先ほどまでの記憶がないのです」
「………」
「目が覚めたら、貴方と話さないといけない、と言う気持ちだけがありました。それで、お部屋に行ったのですが、いらっしゃらなくて」
「………」
「それどころか、カイン様の私物も何も無くなっていました。私たちが原因でないのであれば、どうして急にそんなことをされたのですか」
私の言葉に、カイン様は沈黙を守ったままでした。
気づいて欲しくない、そんな表情の彼に少し心が痛みましたが……それ以上に、私は怒っているのです。
「カイン様。私は、貴方が抱えている大きな役割を、どんな形であれ支えたいと思っております。それは、お兄様だって同じ気持ちです」
「ミルフェリア様……」
「ミリィにカイン! お前ら、こんな時間に何勝手に屋敷から出たんだ!」
そこに、お兄様の怒号が響き渡りました。
慌てて声のする方向を見ると、凄い形相のお兄様が走って来るのが見えたのです。
「起きたら2人とも屋敷にいない、って大変だったんだぞ、こっちは!」
「ご、ごめんなさいお兄様」
「すいません、グランツ様。とりあえず、ミルフェリア様を連れてお屋敷に……」
「お前も帰るに決まっているだろカイン! 少なくとも、まだ2年は家庭教師の期限があるんだ! それを放棄するのだけは、父様が許してもオレは許さないからな!」
ほらっ! と、お兄様は私とカイン様の腕を掴んで、強引に引っ張っていく。
引っ張られながらも、混乱している様子のカイン様に私は再び笑いました。
そのまま、私たち3人はお屋敷に戻り……入口で仁王立ちしていたお父様の前に立ちました。
「……まず、ミルフェリア」
「申し訳ありませんでした、お父様。次からは、屋敷の者に一声かけてからに致します」
「分かっているなら良い。そして、カイン君」
「……はい」
「賭けは私の、いや、私の子供たちの勝ちだ。この子らに記憶を返してやってくれ」
お父様の言葉を聞いて、あぁやっぱり……と、納得しました。
あまりにもポッカリと、今日の昼から先ほどまでの記憶が無かったのです。
体調不良で倒れたという感じも無かった以上、何かしらが自分自身の身に起こったと想像するのは簡単でした。
「父様、賭けとは?」
「明日までに、カイン君の不在に気づいて、変装した彼を探し出せるか否かをね」
「なんでまたそんなことを……」
「それは、記憶が戻ればわかる。カイン君、頼む」
お父様の言葉を聞いて、カイン様は両手に小さな光の塊を2つ出しました。
その小さな塊は、ゆっくりと彼の手から離れて私とお兄様に溶け込んだのです。
同時に、ポッカリと空いた今日の昼過ぎから先ほどまでの記憶が戻り……
「カイン様! 同行するとお伝えしたじゃないですか!」
「そうだぞカイン! いきなり記憶奪いやがって!」
私とお兄様は、ほぼ同時にカイン様に詰め寄りました。
「申し訳ありません。ですが、あまりにも悩まなさすぎなお2人も悪いですからね!? 分かっているんですか! 俺に同行するってことは……」
「承知の上です。1人で戦うにはあまりにも孤独過ぎます!」
いつ終わるかもわからない長い長い闘いになります。
いえ、恐らく人が人である限り永遠に終わることは無いでしょう。
「手伝わせてください、カイン様……いいえ、カイン! ずっと隣で、貴方が貴方でいられるように、傍に居ます! ですから……!」
「ミリィ、まるで告白だぞそれ」
お兄様の言葉を聞いて、私は思わず動きを止めてしまいました。
こくはく……? え、告白!?
「え、あの! わ、私はその、そんなつもりで……」
「分かってる分かってる。父様、カインの同行の件ですが……ミリィに譲ります」
「グランツ様」
「お兄様……」
「オレはこっちの立場から、お前らを援護するさ。ずっとは一緒にはいられないけど、後世に意志をつないでいくことも大切なはずだ。お前たち2人だけでは、いつか必ず限界が来る。その時、どんな形であれ、お前たちに協力してくれる人を1人でも多く残してやりたいからな」
========================
「それからも色々ありまして、なんやかんやでカイン様は魔王として、私はその妃として今ここに居るのです」
「そうだったのですね」
紅茶を飲みながら、真剣に私の話を聞いてくれたリレル様はとても素晴らしい方ですね。
ヒロト様がいらっしゃるせいなのかもしれませんが。
「で、カイン様が魔王になられた頃には……私は彼への想いをさすがに自覚いたしまして」
「……え。あの、今のまでの流れで自覚がなかったのですか!?」
「お恥ずかしながら……その、お兄様の存在もあったので、カイン様はもう1人の兄、みたいな気持ちでいましたし、それに……」
「それに?」
「カイン様の方も、私のことは "リーダーの玄孫" とか "歳の差がちょっと……" とかありまして。なかなか、恋愛感情というモノを持っていただけなかったのです」
「となりますと……どれぐらい?」
「……100年近くかけて、カイン様の意識改革をしました」
100という数字に、リレル様がピシリと固まった。
そうですよね、そう思いますよね。
もう1回、100年かけてカイン様をその気にさせろ、って言われたらちょっと自暴自棄になりそうですし。
「聞いてくださいよリレル様! カインったら、本当に世捨て人待ったなしだったんですよ!? もう色々と枯れちゃってて、この人には異性を愛する気持ちが本当に残っているのかと、何度疑ったことか!」
「これまでのお話を聞く限り、重要な話でありながらも、てっきりお2人の馴れ初めだとばかり」
「馴れ初めであればどれだけ良かったことか……!」
両手で顔を覆いながら、私は壮大に嘆きました。
本当に、あれだけ、あれだけアプローチしたのに、全然気づいてくださらなかったんですから!
途中で何度、自分自身に女性としての魅力がないのかを自問自答して、魔族で恋愛なんてしなくていいはずのアインスにまで相談したのですよ!?
アインスの何とも表現しがたい困り顔は、今でも忘れていません。
「あの、ミルフェリアさん。私は、今お聞きした話は間違いなく、お2人の馴れ初めだと思います!」
「本当ですか!?」
「はい。自覚はなくとも、立派な恋の始まりじゃないですか。自信を持ってください!」
「リレル様……! とても嬉しいです! ですよね!? 私とカインの馴れ初めでいいんですよね!」
「もちろんです! このお話を聞いた私が保証いたします!」
「ありがとうございます、リレル様……!」
「……なんか、あっちが楽しそうだね」
「ミリィが喜んでいるなら、俺はそれでいっかなーって」
「気楽だなー…‥っと、それでさ、バークライスさんと顔見知りなのは?」
「彼は、さっき話した旅仲間の末裔。裏事情を多少なりとも知っているから、対魔族の第一人者やってんだ」
―――GotoNEXT「79話 魔族への対抗策」
部屋の中央まで行って、彼の名を呼ぶ。
けれども、いつもなら返って来る優しい声が聞こえてきませんでした。
ぎゅっ、と手を握って踵を返し、彼の部屋を出る。
お屋敷内を必死に探し回りましたが、カイン様を見つけることが出来なかったのです。
「カイン様、どちらに……!」
このお屋敷に居ないとなると……あとは……
私は屋敷の玄関を見る。
時刻は夜、国内とは言え、本来であれば出歩くには危ない時間ではありました。
明日になれば、何事もなくカイン様が戻って来る可能性はもちろんあります。
けれども、先ほどの……荷物が何一つ残っていない部屋を思い出すと、その可能性が低いと考えました。
「……行かないと!」
玄関近くのクローゼットから、夜道用のコートを取り出して羽織る。
そのまま、私は玄関のドアを開けて屋敷を出たのです。
そこまで遅い時間じゃない為、仕事終わりで自宅へ戻る人達の横を通りながら、私は必死にカイン様の姿を探しました。
まだ、国からは出ていない。
いくら彼が不老不死とは言え、こんな遅い時間での行動は危なすぎます。
宿、もしくは、時間的に食事を取っているかもしれない。
人々とすれ違いながら宿へ向かっている途中、ふと私は足を止めました。
今しがたすれ違った、壮年を少し過ぎた男性に引っかかりを覚えたからです。
私は慌てて振り返り、その男性の腕を掴みました。
「待ってください!」
「……え、君は?」
振り返ったその人は、全く知らない人でした。
えぇ、見た目だけならば。
私はまっすぐその人を見ながら、こう伝えたのです。
「カイン様、屋敷へ帰りましょう」
「かいん? えっと、人違いじゃないかな。僕は……」
「いいえ、カイン様です。だって……ずっと見てきましたもの。困った時のお顔ぐらいわかりますよ」
3年間、ずっと私とお兄様はカイン様と共に過ごしました。
その間に、私たちが彼を困らせたことも多くありました。
困らせる都度、彼は私たちに対して仕方ない子たちだと言わんばかりに、眉を下げて笑っていたのです。
「………」
「観念してくださいませ。何でしたら、お兄様をお呼びしましょうか? きっと、貴方だとすぐに気づきますよ」
「……やめてください、ミルフェリア様。と言うか、何でわかるんだよ……」
深いため息をついて、カイン様は笑いました。
ここでは流石に人目に付くと、私たちは人通りが少ない通りへと移動しました。
誰もいないことを確認してから、カイン様は魔術を解いて本来の姿に戻り……
「確か "変化の魔術" について、貴方にはお話していなかったはずなのですが」
「あら、何度か私たちから逃げる為に、使用人たちに変化した時がありましたよね?」
「うわぁ……バレてたのか……そういう所はリーダーの子孫だな」
「高祖父様も気づいたのですか?」
「リーダーは何に変化しても1発で気づいたよ。何度か本気でだまそうとしたのに、全然引っかかってくれなかった。ヤケクソでハニトラもやったのに、真顔で『キモイぞカイン』って言われた時は結構ショックだったね。まっ、他のみんなは引っかかってたせいで、そっちはそっちで笑ったけどさ」
思い出しただけでムカついてきた、とカイン様は苦虫をかみつぶしたような表情を見せたのです。
その姿がおかしくて、私はついつい笑ってしまいました。
だって、今の話を聞く限り、高祖父様に振り回されていたのが良く分かったのですから。
「笑わないでください、ミルフェリア様」
「あら、ごめんなさい、カイン様……それで、何で屋敷を出たんですか?」
「……それは」
視線を逸らしながら、カイン様は言葉を詰まらせる。
「貴方が急に出ていくなんて、私かお兄様が、不快な思いをさせてしまったのですか?」
「いえ、違います。その……」
カイン様の様子を見て、言えない何かがあるのだとすぐに察しました。
となれば、後はどうすれば彼が答えてくれるのか。
その手掛かりは、すぐに気が付きました。
今日、気が付いたら私は眠っていた。
昼過ぎまでは記憶があるにも関わらずです。
「ところでカイン様。私、今日の昼過ぎから先ほどまでの記憶がないのです」
「………」
「目が覚めたら、貴方と話さないといけない、と言う気持ちだけがありました。それで、お部屋に行ったのですが、いらっしゃらなくて」
「………」
「それどころか、カイン様の私物も何も無くなっていました。私たちが原因でないのであれば、どうして急にそんなことをされたのですか」
私の言葉に、カイン様は沈黙を守ったままでした。
気づいて欲しくない、そんな表情の彼に少し心が痛みましたが……それ以上に、私は怒っているのです。
「カイン様。私は、貴方が抱えている大きな役割を、どんな形であれ支えたいと思っております。それは、お兄様だって同じ気持ちです」
「ミルフェリア様……」
「ミリィにカイン! お前ら、こんな時間に何勝手に屋敷から出たんだ!」
そこに、お兄様の怒号が響き渡りました。
慌てて声のする方向を見ると、凄い形相のお兄様が走って来るのが見えたのです。
「起きたら2人とも屋敷にいない、って大変だったんだぞ、こっちは!」
「ご、ごめんなさいお兄様」
「すいません、グランツ様。とりあえず、ミルフェリア様を連れてお屋敷に……」
「お前も帰るに決まっているだろカイン! 少なくとも、まだ2年は家庭教師の期限があるんだ! それを放棄するのだけは、父様が許してもオレは許さないからな!」
ほらっ! と、お兄様は私とカイン様の腕を掴んで、強引に引っ張っていく。
引っ張られながらも、混乱している様子のカイン様に私は再び笑いました。
そのまま、私たち3人はお屋敷に戻り……入口で仁王立ちしていたお父様の前に立ちました。
「……まず、ミルフェリア」
「申し訳ありませんでした、お父様。次からは、屋敷の者に一声かけてからに致します」
「分かっているなら良い。そして、カイン君」
「……はい」
「賭けは私の、いや、私の子供たちの勝ちだ。この子らに記憶を返してやってくれ」
お父様の言葉を聞いて、あぁやっぱり……と、納得しました。
あまりにもポッカリと、今日の昼から先ほどまでの記憶が無かったのです。
体調不良で倒れたという感じも無かった以上、何かしらが自分自身の身に起こったと想像するのは簡単でした。
「父様、賭けとは?」
「明日までに、カイン君の不在に気づいて、変装した彼を探し出せるか否かをね」
「なんでまたそんなことを……」
「それは、記憶が戻ればわかる。カイン君、頼む」
お父様の言葉を聞いて、カイン様は両手に小さな光の塊を2つ出しました。
その小さな塊は、ゆっくりと彼の手から離れて私とお兄様に溶け込んだのです。
同時に、ポッカリと空いた今日の昼過ぎから先ほどまでの記憶が戻り……
「カイン様! 同行するとお伝えしたじゃないですか!」
「そうだぞカイン! いきなり記憶奪いやがって!」
私とお兄様は、ほぼ同時にカイン様に詰め寄りました。
「申し訳ありません。ですが、あまりにも悩まなさすぎなお2人も悪いですからね!? 分かっているんですか! 俺に同行するってことは……」
「承知の上です。1人で戦うにはあまりにも孤独過ぎます!」
いつ終わるかもわからない長い長い闘いになります。
いえ、恐らく人が人である限り永遠に終わることは無いでしょう。
「手伝わせてください、カイン様……いいえ、カイン! ずっと隣で、貴方が貴方でいられるように、傍に居ます! ですから……!」
「ミリィ、まるで告白だぞそれ」
お兄様の言葉を聞いて、私は思わず動きを止めてしまいました。
こくはく……? え、告白!?
「え、あの! わ、私はその、そんなつもりで……」
「分かってる分かってる。父様、カインの同行の件ですが……ミリィに譲ります」
「グランツ様」
「お兄様……」
「オレはこっちの立場から、お前らを援護するさ。ずっとは一緒にはいられないけど、後世に意志をつないでいくことも大切なはずだ。お前たち2人だけでは、いつか必ず限界が来る。その時、どんな形であれ、お前たちに協力してくれる人を1人でも多く残してやりたいからな」
========================
「それからも色々ありまして、なんやかんやでカイン様は魔王として、私はその妃として今ここに居るのです」
「そうだったのですね」
紅茶を飲みながら、真剣に私の話を聞いてくれたリレル様はとても素晴らしい方ですね。
ヒロト様がいらっしゃるせいなのかもしれませんが。
「で、カイン様が魔王になられた頃には……私は彼への想いをさすがに自覚いたしまして」
「……え。あの、今のまでの流れで自覚がなかったのですか!?」
「お恥ずかしながら……その、お兄様の存在もあったので、カイン様はもう1人の兄、みたいな気持ちでいましたし、それに……」
「それに?」
「カイン様の方も、私のことは "リーダーの玄孫" とか "歳の差がちょっと……" とかありまして。なかなか、恋愛感情というモノを持っていただけなかったのです」
「となりますと……どれぐらい?」
「……100年近くかけて、カイン様の意識改革をしました」
100という数字に、リレル様がピシリと固まった。
そうですよね、そう思いますよね。
もう1回、100年かけてカイン様をその気にさせろ、って言われたらちょっと自暴自棄になりそうですし。
「聞いてくださいよリレル様! カインったら、本当に世捨て人待ったなしだったんですよ!? もう色々と枯れちゃってて、この人には異性を愛する気持ちが本当に残っているのかと、何度疑ったことか!」
「これまでのお話を聞く限り、重要な話でありながらも、てっきりお2人の馴れ初めだとばかり」
「馴れ初めであればどれだけ良かったことか……!」
両手で顔を覆いながら、私は壮大に嘆きました。
本当に、あれだけ、あれだけアプローチしたのに、全然気づいてくださらなかったんですから!
途中で何度、自分自身に女性としての魅力がないのかを自問自答して、魔族で恋愛なんてしなくていいはずのアインスにまで相談したのですよ!?
アインスの何とも表現しがたい困り顔は、今でも忘れていません。
「あの、ミルフェリアさん。私は、今お聞きした話は間違いなく、お2人の馴れ初めだと思います!」
「本当ですか!?」
「はい。自覚はなくとも、立派な恋の始まりじゃないですか。自信を持ってください!」
「リレル様……! とても嬉しいです! ですよね!? 私とカインの馴れ初めでいいんですよね!」
「もちろんです! このお話を聞いた私が保証いたします!」
「ありがとうございます、リレル様……!」
「……なんか、あっちが楽しそうだね」
「ミリィが喜んでいるなら、俺はそれでいっかなーって」
「気楽だなー…‥っと、それでさ、バークライスさんと顔見知りなのは?」
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