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「いやぁ、悪いな~、俺までご馳走になっちまって!」
「いいですよ。レオさんにも助けてもらってるし、それに何よりえりーちゃん、明日…行くんでしょ?またミルガナへ」
ルーシーちゃんが晩御飯をテーブルに5人分並べてくれながら私の方をチラっと見てくる。
目が合うと、私は小さくうなずいた。
レオさんが椅子に座ると、ラミリアさんを見て声をかけた。
「あ、あの。俺、レオ・エスカルトって言います。南の町の冒険者してて。その、一応これでも剣士やってて、あの…」
顔を赤くしながらしどろもどろになって話すレオは、明らかに動揺している様子だった。
『ねぇ?なんかずいぶん私たちと扱いが違くない?』
ミーちゃんがコソコソっと耳打ちしてくる。私はそれをアハハ、と軽く笑い流した。この4人の中で一番お姉さんで、しかも見た目もかなりきれい。年齢の割に幼く見える童顔だし、そりゃモテるよね。本人は目立ちたくないって言ってたけど…。
でもこーゆー時、恋愛に敏感な乙女がもう1人…。
晩御飯の準備をしていたルーシーちゃんは2人が何を話すのかウズウズした様子で、テーブルに背を向けて聞き耳をたてていた。本当に人の恋が気になって仕方がない子なんだよなぁ。
ラミリアさんは特に返事をするわけもなく、なんとなくレオさんの方を見て黙って話を聞いていた。その視線を受けてレオさんはますます顔が赤くなってしまい、目が泳ぎ始める。
「そ、その…。お嬢ちゃんたちと知り合いなんですか?良ければ!、お、お名前を聞きたいんですが?」
そこまで緊張するかなぁ?と思いながら2人の様子を見ていた。お名前、ラミリアさんはなんて答えるのかな。くらいに考えていた時に、思い出したことがあった。それは私たち3人がほぼ同時に思い出したようで、なにか声をかける前に私たちは動いた。
「はじめまして~♪ウチの名前はラミリア・シルヴァリール、はたちだ…ぶぶふぅう!!」
「あ!ああぁあああ!!!!ああーー!!」
私とルーシーちゃんはラミリアさんを両サイドから捕まえて口を塞ぎ、愛想笑いをしながらテーブルから少し距離をとった。
ミーちゃんはラミリアさんの前に立ってとにかく大きな声で聞こえないように誤魔化してくれた。ひとり意味の分かっていないレオさんは驚いていたが、あのままラミリアさんが『魔法様の配下~☆』とか言いだす方がよほど危険だ。
私とルーシーちゃんはズルズルとラミリアさんを引きづってテーブルから離すと、なるべくレオさんには聞こえないように小声で怒る。
「ダメって言ったじゃん!あの自己紹介はダメなの!言っちゃダメ!」
「そうだよ!私たちだけの秘密なんだってば!ラミリアさんは普通の人間なの!魔界とか、魔王様とか、全部言っちゃダメ!」
「えぇー?けっこう気に入ってたんやけどなぁ。人間って最初のツカミが大事ちゃうの?」
ツカミってなんなのかわからないけど、本人はいいと思ってるんだろうなぁ。確かに、的確な自己紹介だと思うけど…。さすがにコレは見過ごせないから、今度なにか他の自己紹介を考えないと。
「そんならルーシアは、どんな自己紹介ならええと思うの?」
「っえ!?」
とんだ飛び火だ。こっちに来なくてよかったと心底思う。
ルーシーちゃんはしばらく考えたあと、
「こんばんは~、はじめまして、わたし、ルーシアって言いますぅ。」
うぅーん。ラミリアさんのとあんまり変わってない気がするけど、違いがあるとすれば、ちょっと猫かぶったような、甘えるクネクネとしたような声で体をモジモジさせて頬を赤らめながら彼女は言った。
いやいや!おかしいって!ルーシーちゃんそんなんじゃなかったじゃん!
「なんでそんな言い方なん?へんやって」
「へ、変とは何よ!いい!?大人の女っていうのはこーゆーものなのよ!女は舐められたらダメってお母さんが言ってた!だから先に手玉にするのよ!」
お母さん…あの肝っ玉母さんみたいな人なら確かにいいそうなんだけど、なにかだいぶこじらせてる気がする。
そもそも、大人の女ってなに?ルーシーちゃんは何をイメージしてるの?
「あ、あのね?ルーシーちゃん。わたし、いつもの感じがいいっていうか、最初普通に声かけてくれた時の方が…」
「まぁ、人間の世界にはいろいろあるんやな。わかった!ありがとうルーシア!」
私が声をかけるのとほぼ同時になにを理解して納得したのかラミリアさんは席に戻って行った。
「ねぇルーシーちゃん?さっきの自己紹介、どーゆー時につかうの?」
「昔読んだ本に、男心をくすぐる仕草と喋り方、ってゆー本があって、それをアレンジしたんだけど、どうかな!?」
めっちゃドヤ顔で、自信満々に話す彼女に私は首を振ることしか出来なかった。それにしても、なんちゅー本を読んでるんだこの子は。
「あ、あの。…お名前、聞いてもいいですか?」
レオさんは懲りずにまた聞いてくる。私たち3人はラミリアさんがなんて言うのか固唾を呑んで見守るも、
「こんばんは~、はじめましてぇ、わたし、ラミリア、って言いますぅ。」
「ら、らら、ラミ、リア、さん!!…す、すいません!ちょっと風に当たってきます!!」
慌てて外へ向かうレオを見送ると、意味もわからずお尻をフリフリと、振っているラミリアさん。
大きな胸を強調する仕草に甘い声、赤らめた頬、潤んだ瞳。
それは中年の冒険者1人をノックアウトするにはじゅうぶんだった。
「いいですよ。レオさんにも助けてもらってるし、それに何よりえりーちゃん、明日…行くんでしょ?またミルガナへ」
ルーシーちゃんが晩御飯をテーブルに5人分並べてくれながら私の方をチラっと見てくる。
目が合うと、私は小さくうなずいた。
レオさんが椅子に座ると、ラミリアさんを見て声をかけた。
「あ、あの。俺、レオ・エスカルトって言います。南の町の冒険者してて。その、一応これでも剣士やってて、あの…」
顔を赤くしながらしどろもどろになって話すレオは、明らかに動揺している様子だった。
『ねぇ?なんかずいぶん私たちと扱いが違くない?』
ミーちゃんがコソコソっと耳打ちしてくる。私はそれをアハハ、と軽く笑い流した。この4人の中で一番お姉さんで、しかも見た目もかなりきれい。年齢の割に幼く見える童顔だし、そりゃモテるよね。本人は目立ちたくないって言ってたけど…。
でもこーゆー時、恋愛に敏感な乙女がもう1人…。
晩御飯の準備をしていたルーシーちゃんは2人が何を話すのかウズウズした様子で、テーブルに背を向けて聞き耳をたてていた。本当に人の恋が気になって仕方がない子なんだよなぁ。
ラミリアさんは特に返事をするわけもなく、なんとなくレオさんの方を見て黙って話を聞いていた。その視線を受けてレオさんはますます顔が赤くなってしまい、目が泳ぎ始める。
「そ、その…。お嬢ちゃんたちと知り合いなんですか?良ければ!、お、お名前を聞きたいんですが?」
そこまで緊張するかなぁ?と思いながら2人の様子を見ていた。お名前、ラミリアさんはなんて答えるのかな。くらいに考えていた時に、思い出したことがあった。それは私たち3人がほぼ同時に思い出したようで、なにか声をかける前に私たちは動いた。
「はじめまして~♪ウチの名前はラミリア・シルヴァリール、はたちだ…ぶぶふぅう!!」
「あ!ああぁあああ!!!!ああーー!!」
私とルーシーちゃんはラミリアさんを両サイドから捕まえて口を塞ぎ、愛想笑いをしながらテーブルから少し距離をとった。
ミーちゃんはラミリアさんの前に立ってとにかく大きな声で聞こえないように誤魔化してくれた。ひとり意味の分かっていないレオさんは驚いていたが、あのままラミリアさんが『魔法様の配下~☆』とか言いだす方がよほど危険だ。
私とルーシーちゃんはズルズルとラミリアさんを引きづってテーブルから離すと、なるべくレオさんには聞こえないように小声で怒る。
「ダメって言ったじゃん!あの自己紹介はダメなの!言っちゃダメ!」
「そうだよ!私たちだけの秘密なんだってば!ラミリアさんは普通の人間なの!魔界とか、魔王様とか、全部言っちゃダメ!」
「えぇー?けっこう気に入ってたんやけどなぁ。人間って最初のツカミが大事ちゃうの?」
ツカミってなんなのかわからないけど、本人はいいと思ってるんだろうなぁ。確かに、的確な自己紹介だと思うけど…。さすがにコレは見過ごせないから、今度なにか他の自己紹介を考えないと。
「そんならルーシアは、どんな自己紹介ならええと思うの?」
「っえ!?」
とんだ飛び火だ。こっちに来なくてよかったと心底思う。
ルーシーちゃんはしばらく考えたあと、
「こんばんは~、はじめまして、わたし、ルーシアって言いますぅ。」
うぅーん。ラミリアさんのとあんまり変わってない気がするけど、違いがあるとすれば、ちょっと猫かぶったような、甘えるクネクネとしたような声で体をモジモジさせて頬を赤らめながら彼女は言った。
いやいや!おかしいって!ルーシーちゃんそんなんじゃなかったじゃん!
「なんでそんな言い方なん?へんやって」
「へ、変とは何よ!いい!?大人の女っていうのはこーゆーものなのよ!女は舐められたらダメってお母さんが言ってた!だから先に手玉にするのよ!」
お母さん…あの肝っ玉母さんみたいな人なら確かにいいそうなんだけど、なにかだいぶこじらせてる気がする。
そもそも、大人の女ってなに?ルーシーちゃんは何をイメージしてるの?
「あ、あのね?ルーシーちゃん。わたし、いつもの感じがいいっていうか、最初普通に声かけてくれた時の方が…」
「まぁ、人間の世界にはいろいろあるんやな。わかった!ありがとうルーシア!」
私が声をかけるのとほぼ同時になにを理解して納得したのかラミリアさんは席に戻って行った。
「ねぇルーシーちゃん?さっきの自己紹介、どーゆー時につかうの?」
「昔読んだ本に、男心をくすぐる仕草と喋り方、ってゆー本があって、それをアレンジしたんだけど、どうかな!?」
めっちゃドヤ顔で、自信満々に話す彼女に私は首を振ることしか出来なかった。それにしても、なんちゅー本を読んでるんだこの子は。
「あ、あの。…お名前、聞いてもいいですか?」
レオさんは懲りずにまた聞いてくる。私たち3人はラミリアさんがなんて言うのか固唾を呑んで見守るも、
「こんばんは~、はじめましてぇ、わたし、ラミリア、って言いますぅ。」
「ら、らら、ラミ、リア、さん!!…す、すいません!ちょっと風に当たってきます!!」
慌てて外へ向かうレオを見送ると、意味もわからずお尻をフリフリと、振っているラミリアさん。
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それは中年の冒険者1人をノックアウトするにはじゅうぶんだった。
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