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錬金術というのは何度見ても目を奪われてしまう。師匠が水面へと静かに小麦粉、塩を入れてゆっくりとかき混ぜ棒(私が勝手にそう呼んでる)でかき回すと水面がうっすらと光り始める。いつもはめんどくさがりな師匠もこの瞬間は楽しそうに見えて、私はその姿を見るのがとっても大好きだった。
…そうだ、小さな時に師匠がおなか減って私が泣いた時にもこうやってくれてた。その時の顔が取っても優しくて、本当のお姉ちゃんみたいで、嬉しくて、優しい気持ちになって、私も誰かを幸せにすることができたら素敵だなぁって思って錬金術士を目指したんだ。毎日毎日成績や卒業の事ばっかりで忘れてたけど、錬金術って楽しかったんだ。
(小さい時、師匠がよく作ってくれたのは…)
師匠が何をやろうとしているか思いだした私は冷蔵庫から牛のミルクを取ってきた。
「おいエリナ、冷蔵庫から~…なんだ、もうわかっちゃったのか。せっかく可愛い妹の卒業祝いにガキの時から大好きだったクッキーを作ってやろうと思ったのに」
少し恥ずかしそうに笑う師匠は昔と同じ、面倒見のいいお姉ちゃんの顔をしていた。小さかった私はいつも師匠のとなりで立っているだけしかできなくてウズウズしていたんだったな。
「えへへ。これでもアカデミー公認のFランクの錬金術士なんで師匠のやることはお見通しですよ。それに…」
(アカデミーで忘れてしまった大切なことも思いだしたし)
「それに?なんだエリナ、ハッキリ言ったらどうだ?『お姉ちゃんが好きで好きでたまらない』とな。お姉ちゃんに隠し事は禁止だ!おやつ抜きにするぞ!」
っもうどうしてこの人はそう恥ずかしいことばっかりスラスラでてくるのかなぁ。そもそも好きで好きで大好きでも、好きなんて言えるわけないじゃない!
「おやつ禁止はダメです!私はまだ育ちざかりなのでちゃんと食べてちゃんと寝て、たくさん遊びます!私にだって、家族に秘密ごとの1つや2つあります!内緒なものは内緒です!あと、お姉ちゃんじゃなく師匠です!」
「いいんだな私にそのような口の利き方をして。…私の作ったクッキーあげないぞ?せっかく数年ぶりに作ってやるというのに、後悔はないな?」
「後悔します!だからっ」
私は師匠の隣に立ってミルクを釜の中へゆっくりと流していった。釜を混ぜる師匠は少し驚いた様子で見ていたが、フフンっと鼻で笑うとご機嫌な様子で釜に魔力を注ぎ始めた。
うっすらと光っていた水面の光が少しづつ強くなってきた。淡いみどりの光になって釜の中で何かが光っている。
「いまは見ているだけじゃなくて、一緒に作れるようになったんですから、私も師匠と一緒につくりたいです。師匠が作ったクッキーじゃなくて、私と師匠が作ったクッキーなので、これなら一緒に食べれます!」
師匠の持っているかき混ぜ棒に触れて、私の魔力も釜へ流し込む。うっすら緑の光がオレンジ色に輝き始めた。
「言うようになったじゃないか!私とエリナの初めての共同作業ってやつだな。まったくお前は行動力がありすぎてお姉ちゃんは嬉しい!そんな積極的だと心の準備が追い付かないぞ!」
「ちょ、え?…えぇぇぇぇえええええ!!!?」
ただ単に一緒に錬金術をしているだけなのに、あれ?おかしい。共同作業?え?結婚ですか?誰がだれと?
「大丈夫だ!お前の明日からの人生、私に任せろ!」
「ちょ、ちがいます!違うんです師匠!わわわ、私そんな風に言ったつもりなくて、ただ一生懸命勉強してきて、やっと錬金術で師匠と一緒にー」
わたわたと喋っている間にも師匠はなぜかヒートアップしてドンドン進めて行く。まってまって、そうじゃないの、違うの。ただ一緒に料理をするくらいの感覚だったんだけど、どうしてこんなことになっちゃったの?
「師匠、わたー」
「できたぁー!」
その瞬間、錬金釜は一瞬閃光に包まれた。
…そうだ、小さな時に師匠がおなか減って私が泣いた時にもこうやってくれてた。その時の顔が取っても優しくて、本当のお姉ちゃんみたいで、嬉しくて、優しい気持ちになって、私も誰かを幸せにすることができたら素敵だなぁって思って錬金術士を目指したんだ。毎日毎日成績や卒業の事ばっかりで忘れてたけど、錬金術って楽しかったんだ。
(小さい時、師匠がよく作ってくれたのは…)
師匠が何をやろうとしているか思いだした私は冷蔵庫から牛のミルクを取ってきた。
「おいエリナ、冷蔵庫から~…なんだ、もうわかっちゃったのか。せっかく可愛い妹の卒業祝いにガキの時から大好きだったクッキーを作ってやろうと思ったのに」
少し恥ずかしそうに笑う師匠は昔と同じ、面倒見のいいお姉ちゃんの顔をしていた。小さかった私はいつも師匠のとなりで立っているだけしかできなくてウズウズしていたんだったな。
「えへへ。これでもアカデミー公認のFランクの錬金術士なんで師匠のやることはお見通しですよ。それに…」
(アカデミーで忘れてしまった大切なことも思いだしたし)
「それに?なんだエリナ、ハッキリ言ったらどうだ?『お姉ちゃんが好きで好きでたまらない』とな。お姉ちゃんに隠し事は禁止だ!おやつ抜きにするぞ!」
っもうどうしてこの人はそう恥ずかしいことばっかりスラスラでてくるのかなぁ。そもそも好きで好きで大好きでも、好きなんて言えるわけないじゃない!
「おやつ禁止はダメです!私はまだ育ちざかりなのでちゃんと食べてちゃんと寝て、たくさん遊びます!私にだって、家族に秘密ごとの1つや2つあります!内緒なものは内緒です!あと、お姉ちゃんじゃなく師匠です!」
「いいんだな私にそのような口の利き方をして。…私の作ったクッキーあげないぞ?せっかく数年ぶりに作ってやるというのに、後悔はないな?」
「後悔します!だからっ」
私は師匠の隣に立ってミルクを釜の中へゆっくりと流していった。釜を混ぜる師匠は少し驚いた様子で見ていたが、フフンっと鼻で笑うとご機嫌な様子で釜に魔力を注ぎ始めた。
うっすらと光っていた水面の光が少しづつ強くなってきた。淡いみどりの光になって釜の中で何かが光っている。
「いまは見ているだけじゃなくて、一緒に作れるようになったんですから、私も師匠と一緒につくりたいです。師匠が作ったクッキーじゃなくて、私と師匠が作ったクッキーなので、これなら一緒に食べれます!」
師匠の持っているかき混ぜ棒に触れて、私の魔力も釜へ流し込む。うっすら緑の光がオレンジ色に輝き始めた。
「言うようになったじゃないか!私とエリナの初めての共同作業ってやつだな。まったくお前は行動力がありすぎてお姉ちゃんは嬉しい!そんな積極的だと心の準備が追い付かないぞ!」
「ちょ、え?…えぇぇぇぇえええええ!!!?」
ただ単に一緒に錬金術をしているだけなのに、あれ?おかしい。共同作業?え?結婚ですか?誰がだれと?
「大丈夫だ!お前の明日からの人生、私に任せろ!」
「ちょ、ちがいます!違うんです師匠!わわわ、私そんな風に言ったつもりなくて、ただ一生懸命勉強してきて、やっと錬金術で師匠と一緒にー」
わたわたと喋っている間にも師匠はなぜかヒートアップしてドンドン進めて行く。まってまって、そうじゃないの、違うの。ただ一緒に料理をするくらいの感覚だったんだけど、どうしてこんなことになっちゃったの?
「師匠、わたー」
「できたぁー!」
その瞬間、錬金釜は一瞬閃光に包まれた。
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