ひきこもり娘は前世の記憶を使って転生した世界で気ままな錬金術士として生きてきます!

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 私たちは村長の家を出ると、村に一つしかない宿へ向かった。村の人たちにとって憩いの場であり、南の町からくる冒険者たちも必ず寄る場所だから今後なにかしら行くことも多いから行っておこう、というミーちゃんの提案だった。宿も、食堂も、道具屋もやってるならあだ名は何でも屋さんだなぁ。

「この村は基本的に外部から人が来ることがほとんどないから、お店が全然ないのよ。今向かっているグラーデンさんの家がこの村でゆういつ商売をしているところだから、失礼がないようにね!エリナもお店をやるなら仲良くしといた方がいいと思うんだ!」

 ミーちゃんはその見た目からは驚くようなしっかり者で驚かされる。私なんかは挨拶にいったら『人のシマでなにしとんじゃぁ!ゴルァァァ!!!!』とか言われて殴られたらどうしよう、とか思うと怖くて行けない。前世の記憶では、先に商売している人のそばに同じようなお店を出すとが出てくるって見たような気がする。道具屋さんも錬金術のお店もあんまり変わらないような…。と思うと挨拶なんて怖くていけない。だが!今はミーちゃんが一緒だ!さすがに村長の娘がいる前で殴られたりはしないだろう。と思ってる。さっきの村長を見た後で不安だけどこの村の民度を信じたい。

「みーちゃんはさすがだねー、私もミーちゃんのいう事に賛成だし、なんだかとっても頼りになるよ!」

「ふふ~ん、そうでしょうそうでしょう!私にドンっと任せなさいよ!大切な友達だもん!応援してるから!ほら、ついたわよ!」

 小さな村なだけあって歩きながら喋っているとあっという間にグラーデンさんのお店についた。

(お。大きい…。村長さんの家4個分くらいあるんじゃないのかな?)

 見た目は普通の一軒家と変わらないから豪邸、とは言わないけどかなり大きな2階建ての家があった。入り口は開けっ放しになっていて、中から楽しそうな話し声やいいにおいがしてくる。ここが食堂の入り口のようだ。

(そういえば、昨日の朝から何も食べてないや)

 美味しそうなにおいのせいで盛大になりそうな腹の虫をなだめながら、私は中に入っていくミーちゃんの後ろをついていく。

「おばちゃーん!定食2つおねがーい!」

 ミーちゃんはお店に入ると中にいた中年の女性に声をかけて席に座った。私もそのあとについていく。何人かの人と目が合うたび、軽く頭を下げながら小声で「すいません、すいません」と言いながらなるべく目立たないように後をついていった。

「なんだいミリアーメル、珍しいじゃないか!お客さんと一緒だなんて。その可愛い娘さんはどこの人なんだい?」

「ただの友達よ。昨日この村に引っ越してきたんだって。ほら、あの井戸があるお化け屋敷あるじゃない?あそこでお店やるんだって」

 お、お化け屋敷?私の家ってそんな言われ方してたんだ。も、もとお化け屋敷だったりして…。
 お水をもってきてくれたこの店の女将さんらしき人に話しているミーちゃんの前で、私はもらったお水をありがたく飲みながら(お化けはどうかでませんように)とただ祈るだけだった。

「あぁ。あの夜中になるとたまに鬼火が浮遊するっていういわく付き物件かい。またそんなところで、いったい何のお店をやるんだい?」

 鬼火が浮遊する…。あぁ、きっと師匠が家の灯をつけないで携帯用のランプを使って時の灯かな。やっぱり私に内緒でこの村に来てたんだ。今朝倉庫を見た時に小さなランプがあったから、きっとその灯だろう。という事は、お化けは実質いない方向で平気かな?

「わ、私は錬金術士なので、錬金術で作ったものを売るお店ができたらいいなぁって思ってこの村に来ました。その、よろしくお願いいたします」

 私は椅子から立ち上がると食堂兼道具屋さんでもあるグラーデンさんに頭を下げた。

「錬金術!?すんごいじゃないの!その若さで錬金術士様なんか!うちの娘やミリアーメルとそんなに年も変わらない女の子なのに、一人でこんな村まで来て店をやるなんて、やっぱ錬金術士さまってぇのは大したもんだぁ。」

「いえいえ、私なんか王立錬金術学園アカデミーを卒業するのが精一杯ですし!師匠からも怒られてばっかりでしたしまだまだ半人前で」

王立錬金術学園アカデミーも卒業してるんか!そりゃあますますすごいことだわ!この村にも錬金術士さまが来てくれたっていうのは、ここも便利になって住みやすくなりそうだわぁ。期待してるよ!今後ともうちをごひいきに!」

「いえ、あ、あの。こちらこそ、まだまだ何もできないんですが、その、よろしくお願いします」

 しゃべり方も、性格も豪快な女将さんはほとんど直立不動状態だった私の背中をバンバンと叩くと高らかに笑いながら厨房へ戻っていった。

(なんだかすごい人だったなぁ)

 てっきりグラーデンさんに商売の邪魔だ、とか言われるかと思ったけど快く受け入れてもらえたみたいで一安心できた。王立錬金術学園アカデミーを卒業している、という時にお店にいた人と数人目があってドキドキしたけど、特に何か言われることもなかった。(なにかまずいことでもあったかなぁ)と思いながら席に付いた。人目は気になるところだけど、今はそれよりも気になることがある。

「ぐ、グラーデンさんの家にも、私くらいの子がいるの?」

「いるわよ。ルーシアっていうんだけど、いつも道具屋の方で売り子やってるから、ここには滅多に来ないかなぁ。」

 興味がなさそうな感じで喋るミーちゃんは、ルーシアという人とあんまり仲が良くないんだろうな、という雰囲気があった。友達じゃないけど、知ってるから一応教えてあげる。というような感じでつまらなそうだった。

「そ、そうなんだ、ルーシアちゃんかぁ。い、いくつなんだろうね」

「17歳よ。」

「あ、私のいっこ上だ!お姉ちゃんかぁ。優しい人だといいなぁ」

「あんた、16歳だったの?」

「そうだよ。ミーちゃんは?」

「ごめん、なんかとぼけた感じがしてたからずっと同い年か下だと思ってたわ。私は14歳、あんたよりも年下だけど、まぁ、今まで通りよろしくね」

「え、…えぇぇぇえぇえ!?」

 私は驚きお店で叫んでしまった。お店の視線が集まってしまって、とっても恥ずかしい…。とりあえず席を立って皆さんに向かった頭を何度も下げると、私はまたミーちゃんのことを見てしまう。え?14さ、え?2歳したってこと?てっきり10歳か11歳くらいかと思ったのに…。

「ちょっと、ねぇどこ見てんの?」

 私はミーちゃんの未来ある胸元を見ていると、上半身をひねり胸を隠すしぐさをして目を細め、明らかにイヤそうでちょっと怒った顔をしてこっちをみているミーちゃんの顔に気が付いた。

「あ、ごめん。つい、14歳かぁっておもって」

「あんた、どこ見て『14歳かぁ』って言ってんのよ!」

「あ、…ごめん」

「『あ、ごめん』。じゃないわよ!どんだけ失礼なわけ!?」

「はいはい!くだらないこと言いあってないで、旨いもの食べて忘れちまいな!」

 女将さんができたの料理を運んできてくれて、ちょうどいいタイミングで仲裁に入ってくれた。ミーちゃんは納得いっていないような顔だったけど、目の前に運ばれてきた料理を食べながらぶつぶつと最初こそ文句を言っていたが、次第に機嫌はなおっていった。焼き魚にサラダ、スープなどの定食の定番!という料理だったがどれも王都で食べる物よりもおいしく感じた。その味は女将さんの言う通り、ミーちゃんが14歳でも12歳でも何歳でもいいや。と、どうでもよくなってしまうくらい美味しいご飯だった。
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