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今日はなんだか村の雰囲気が違った。いつも小さな村なりに通行人やお話している人はいるのに。今日はなんだか村の人が忙しそう、というか慌ただしくしている。井戸で水を汲んでいると目の前を1人の女性が通りかかった。
「あ、あの!なにかあったんですか?」
「あら錬金術士様。いえね、今日モンスターを盗伐する冒険者の方がヴェルスターデから来るんですよ。なんでもそれが今回あまりよろしくないって話で…あらやだ。錬金術士様、申し訳ございません今日は急いでいますのでこれで失礼します」
「あ、お、教えてくれてありがとうございます!」
家の前を小走りで急いでいた女の人に声をかけてみたけど、小さくお辞儀をするとすぐに行ってしまった。
(うん、よくわかんない)
私はよくわからずキョロキョロとあたりを見回してみるも、やはり今日はなんとなく村が慌ただしい。とりあえず工房に戻ろうとドアを開けると
「え、エリーちゃん!!」
遠くからルーシーちゃんの声が聞こえた。私はルーシーちゃんを店に入れると汲んだ井戸の水をコップに入れて渡した。かなり焦ってきたのか、だいぶ身なりが乱れている。それほどの何かがあったのだろうか?
「あ、ありがと…生き返ったわ。」
「だ、だいじょうぶ?かなり急いでたみたいだけど、何があったの?ゆっくり教えてくれる?」
「うん、うん。ちょっとまって」
ルーシーちゃんはお水をおかわりして乱れた呼吸を整え口を開くとほぼ同時だった。
カランカランっ
「あ、いらっしゃいませ。ごめんなさい、今日は売り物がなくてお休みなんですよー」
お店のドアが開くと、見たことない人が3人、お店に入ってきた。私はルーシーちゃんにお水のおかわり(3杯目)をつぐと席を立ち、お客さんの方へ歩いた。
「え、エリーちゃ」
ほとんど聞こえないくらいの声でルーシーちゃんが何かを言っていたようにも聞こえたけど、それは私には届かなかった。
お店に入ってきたのは冒険者風の3人、2人は中年のそれっぽい冒険者。強くもないが、弱くもない。いわば中堅、という感じで持っている装備も手入れをして長く使っているような印象を受ける。もう一人は若い人、ルーシーちゃんよりも少し年上って感じの人。暗い金髪の短髪で、後ろはやや伸ばしている。筋肉質な体に見えるがどことなくだらしない印象を受ける。なにより
(め、目つきが怖い…)
好きな顔ではなかった。当然、顔で人を好きか嫌いかというのは非常によくないのがわかっているけど、大きな身長で目つきが悪くて細マッチョ…。前世の時からこんなやつにロクなイメージがない。ぜぇったいによくない。この世界に来て過去一番に私の前世の記憶が『ダメ!』と言っているように感じた。しかも装備のところどころに金の装飾があって無駄にキンピカしてる。どうしてこーゆー人は世界関係なくこんな雰囲気をだしているんだろう?
「すまねぇなお嬢ちゃん、俺たちヴェルスターデから来たんだが、喉が渇いちまって…店っぽかったから入ったんだが、水をもらえないか?」
中年の冒険者の一人が事情を説明してくれた。さっきのおばさんが言ってた人たちって、この人の事かな?後ろの人は知らないけど、前の2人は悪い人じゃなさそうだけど…。
「はい、いいですよ。今ちょうど汲んできたので…3つでいいですよね?はい。こちらへどうぞ」
私は窓際のテーブルを案内すると、コップに水を入れて3人へ手渡した。
「いや、助かった。今年は思ったよりも暑くてね。持ってきてた水もすぐになくなっちまって」
「お休みの日に悪かったね、助かったよ」
「・・・」
「いえいえ、おかわり言ってくださいね。まだありますから」
中年の冒険者は愛想よく話してくれて「おかわり頼む」「もう一杯くれるか」と手を伸ばしてくる。見た目がこわい人は無言だったけど、私は2人の中年の人と少しお話をしていた。南の町にはいった事がないのでヴェルスターデというのがどういったところなのかを知りたかったからだ。
「…おい」
「あはは!そんな美味しいものがたくさんあるならいちど言ってみたいですね!」
「おい!!」
3人で話していると見た目の悪い人が急に怒り出した。私はその声に驚いてビクンッと体を動かしてお喋りをやめた。
「お前ら、わかんねーのかよ。…チっ、いらつくなぁ」
「あ、シギルさんもお水っすね。すまんお嬢さん、お水をくれるか?」
「は、はい。どうぞ」
私は水をコップに入れる。シギルと呼ばれた態度が悪くて目が細くてうるさくてなんか無駄にピカピカしているひとは『チッ!』と舌打ちすると水を一気に飲み干し、『うん』と言いながら軽く首を動かす。その素振りを見た冒険者の一人が、「もう一杯たのむわ」と言ってきたので、私は「は、はぁ」と言いながらもう一度水を注いだ。
「お前ら、こんな田舎の小娘相手に無駄話してんじゃねーよ。お前らが優先すべきは俺だろーが。だからテメーらはいつまでたってもロクな依頼が受けられない三流なんだよ。」
「いや、ははは。すいませんシギルさん。」
1人は愛想笑いでご機嫌を取るが、もう1人は特に何も言うことなく黙っていた。
「どうして、謝るんですか?」
「…!」
どうみても2人の冒険者の方が先輩、経験者っぽいのに、なんで謝っているのかわからず聞いてみると、3人に空気が凍り付いた。
「あ、あの!なにかあったんですか?」
「あら錬金術士様。いえね、今日モンスターを盗伐する冒険者の方がヴェルスターデから来るんですよ。なんでもそれが今回あまりよろしくないって話で…あらやだ。錬金術士様、申し訳ございません今日は急いでいますのでこれで失礼します」
「あ、お、教えてくれてありがとうございます!」
家の前を小走りで急いでいた女の人に声をかけてみたけど、小さくお辞儀をするとすぐに行ってしまった。
(うん、よくわかんない)
私はよくわからずキョロキョロとあたりを見回してみるも、やはり今日はなんとなく村が慌ただしい。とりあえず工房に戻ろうとドアを開けると
「え、エリーちゃん!!」
遠くからルーシーちゃんの声が聞こえた。私はルーシーちゃんを店に入れると汲んだ井戸の水をコップに入れて渡した。かなり焦ってきたのか、だいぶ身なりが乱れている。それほどの何かがあったのだろうか?
「あ、ありがと…生き返ったわ。」
「だ、だいじょうぶ?かなり急いでたみたいだけど、何があったの?ゆっくり教えてくれる?」
「うん、うん。ちょっとまって」
ルーシーちゃんはお水をおかわりして乱れた呼吸を整え口を開くとほぼ同時だった。
カランカランっ
「あ、いらっしゃいませ。ごめんなさい、今日は売り物がなくてお休みなんですよー」
お店のドアが開くと、見たことない人が3人、お店に入ってきた。私はルーシーちゃんにお水のおかわり(3杯目)をつぐと席を立ち、お客さんの方へ歩いた。
「え、エリーちゃ」
ほとんど聞こえないくらいの声でルーシーちゃんが何かを言っていたようにも聞こえたけど、それは私には届かなかった。
お店に入ってきたのは冒険者風の3人、2人は中年のそれっぽい冒険者。強くもないが、弱くもない。いわば中堅、という感じで持っている装備も手入れをして長く使っているような印象を受ける。もう一人は若い人、ルーシーちゃんよりも少し年上って感じの人。暗い金髪の短髪で、後ろはやや伸ばしている。筋肉質な体に見えるがどことなくだらしない印象を受ける。なにより
(め、目つきが怖い…)
好きな顔ではなかった。当然、顔で人を好きか嫌いかというのは非常によくないのがわかっているけど、大きな身長で目つきが悪くて細マッチョ…。前世の時からこんなやつにロクなイメージがない。ぜぇったいによくない。この世界に来て過去一番に私の前世の記憶が『ダメ!』と言っているように感じた。しかも装備のところどころに金の装飾があって無駄にキンピカしてる。どうしてこーゆー人は世界関係なくこんな雰囲気をだしているんだろう?
「すまねぇなお嬢ちゃん、俺たちヴェルスターデから来たんだが、喉が渇いちまって…店っぽかったから入ったんだが、水をもらえないか?」
中年の冒険者の一人が事情を説明してくれた。さっきのおばさんが言ってた人たちって、この人の事かな?後ろの人は知らないけど、前の2人は悪い人じゃなさそうだけど…。
「はい、いいですよ。今ちょうど汲んできたので…3つでいいですよね?はい。こちらへどうぞ」
私は窓際のテーブルを案内すると、コップに水を入れて3人へ手渡した。
「いや、助かった。今年は思ったよりも暑くてね。持ってきてた水もすぐになくなっちまって」
「お休みの日に悪かったね、助かったよ」
「・・・」
「いえいえ、おかわり言ってくださいね。まだありますから」
中年の冒険者は愛想よく話してくれて「おかわり頼む」「もう一杯くれるか」と手を伸ばしてくる。見た目がこわい人は無言だったけど、私は2人の中年の人と少しお話をしていた。南の町にはいった事がないのでヴェルスターデというのがどういったところなのかを知りたかったからだ。
「…おい」
「あはは!そんな美味しいものがたくさんあるならいちど言ってみたいですね!」
「おい!!」
3人で話していると見た目の悪い人が急に怒り出した。私はその声に驚いてビクンッと体を動かしてお喋りをやめた。
「お前ら、わかんねーのかよ。…チっ、いらつくなぁ」
「あ、シギルさんもお水っすね。すまんお嬢さん、お水をくれるか?」
「は、はい。どうぞ」
私は水をコップに入れる。シギルと呼ばれた態度が悪くて目が細くてうるさくてなんか無駄にピカピカしているひとは『チッ!』と舌打ちすると水を一気に飲み干し、『うん』と言いながら軽く首を動かす。その素振りを見た冒険者の一人が、「もう一杯たのむわ」と言ってきたので、私は「は、はぁ」と言いながらもう一度水を注いだ。
「お前ら、こんな田舎の小娘相手に無駄話してんじゃねーよ。お前らが優先すべきは俺だろーが。だからテメーらはいつまでたってもロクな依頼が受けられない三流なんだよ。」
「いや、ははは。すいませんシギルさん。」
1人は愛想笑いでご機嫌を取るが、もう1人は特に何も言うことなく黙っていた。
「どうして、謝るんですか?」
「…!」
どうみても2人の冒険者の方が先輩、経験者っぽいのに、なんで謝っているのかわからず聞いてみると、3人に空気が凍り付いた。
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