ひきこもり娘は前世の記憶を使って転生した世界で気ままな錬金術士として生きてきます!

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 私の言葉で、その場の空気が変わった。シギルは怖い顔がさらに怖くなって睨みつけてくるし、冒険者の2人は青ざめた顔を見合わせてあたふたとしていて、ルーシーちゃんに関しては後ろなので見えないけど物音ひとつしないあたり、まだそこにいるのかもわからない。

「ど、どうして?ってそりゃあシギル様の方が俺たちなんかより偉いからだよ。なぁ?」

「あ。あぁ。そうだ、えらいからだ!だから俺たちが謝るのは当然の事なんだよ」

 立ち上がるとシギルの方を気にしながら私の方に近づいてきて小さな声で、子供に諭すような言い方で

「変な事言わないでくれ。俺たちの首が飛ぶ」

 表情こそ笑顔だったが、その時の目は怒りと恐怖に満ちていたのを私は感じた。よくわかっていないままとりあえず無言でうなずくと、冒険者の2人は愛想笑いをしながらシギルへ振り返ると同時に、水が入っていたグラスが2人の顔の横を通り壁にあたって粉々に砕けた。

 ガシャン!!!
『きゃああああ!』

 割れたグラスの音に驚いた私とルーシーちゃんの悲鳴が響く。

「てめぇ。誰に向かって口きいてやがる!俺はな、"ビュリオス家"のシギル様だぞ?お前みたいな平民と一緒にすんじゃねぇ!」

「ビュ、ビュリオス家!?あ、あなたがシギル様?も、申し訳ございません!まだこの者はこの村に来て日が浅いもので、大変失礼をしました!ほら、エリーちゃんも謝って!」

 ビュリオス家。という言葉を聞いた瞬間にルーシーちゃんの態度は一変した。このあたりでは有名な人なのかな。

「ご、ごめんなさい。シギル…。シギル…。うーん。聞いたことがなくて、あなたのことわからなかったです」

 バンッ!私はその音にまたビビってしまう。謝ったのにシギルはさっきよりも怒りの色を濃くしているのがわかった。『ルーシーちゃん!謝ったよ!ちゃんと謝ったのに!!』と私はルーシーちゃんの方を向いて訴えるも、ルーシーちゃんは顔面を手で隠して肩を震わしながら左右に頭を振っていた。私はてっきり知らなかったことを謝るものだと思ったけど、違ったみたい。

 テーブルを殴りつけたシギルは席から立ち上がると、ゆっくりと右手を剣に伸ばす。

「シ、シギル様、このような小娘相手になさらず、行きましょう」

「うるせぇ!!この女、俺を見下しやがって。…気に入らねぇ!ここで切り捨ててやる!」

 そういうと鞘から剣を抜く。

「あわわ、ど、ど、どどうしよう!ご、ごめんなさい!私、王都から来たばかりで錬金術士で、錬金術以外の事に全く興味がなくて、そ、それであなたの事も知らなくて!!」

「錬金術士だぁ?…こんな田舎村に…」

「シギル様!こんなところで揉め事は好ましくありません!どうかここは気を静めてくださいませ。こんな小娘相手に揉め事を起こしたとしれれば、御父上の耳に入ってしまったら…」

 シギルの動きが鈍くなった瞬間を見て、冒険者の2人が仲裁に入ると、少し葛藤し、何かを考えた様子だったが『チっ!またあのクソ親父か。…てめぇ、覚えとけよ』と吐き捨てて剣を鞘に戻すとそのまま無言で店から出ていった。

 残った2人も急いで後を追っていく。

「シ、シギル様!お待ちください!我々も今参ります!娘!シギル様の寛大なお心に感謝しろ!」

 1人はすぐに店をでるが、もう1人は去り際にこちらへ振り向くと、

「水は感謝する、だが、発言には気を付けた方がいい。グリムホルンやヴェルスターデ南の町近隣の商人の親玉がシギル様の御父上、ガルデン・ビュリオス様だ。そのご子息で冒険者をやっていらっしゃるのがあのお方だ。冒険者でも、商いでもお2人に目をつけられてはやっていけなくなるぞ。水の礼だ。ここで商売がしたいのならくれぐれも、気を付けろ」

 そう言い残し、軽く頭を下げて店から出ていった。
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