ひきこもり娘は前世の記憶を使って転生した世界で気ままな錬金術士として生きてきます!

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「せめて、山からの風が吹けばのぉ…」

「そうじゃな、山からの恵みがあればいいのじゃが」

 あきらめムードの中、村のおじいさんがボソッと言った。それに同調するように、1人、また1人口を開く。

「そういえば、今日ルーシーちゃんも言ってたんだけど、山からの涼しい風が吹くって本当?」

 お昼に森で採取している時、ルーシーちゃんが話していたのを思い出してミーちゃんに聞いてみる。

「そうね、毎年こんな暑くないし、山から少し冷たい風が時々拭くのよ。ね、お爺様」

「そうじゃな、あの山、ミルガナは冬が来るとてっぺんの当たりは猛吹雪でな。そりゃあ死人が出るほどだ。その寒さの中で樹氷石が育って行って雪解けとともにてっぺんから転がり落ちてくるんじゃよ。そこを風が抜けて、冷やされた空気が村に流れ込んでくるんじゃが…。今年は涼しい風がまったくこんでな」

 樹氷石じゅひょうせきって言うのは、見た目がちょっと変わってて、例えるならサンドイッチかな。普通の石がパンで、中に青みがかった水晶のようなもの挟んであって、石のサンドイッチで具材が青い水晶、って感じ。寒い地方の特産品で、樹氷に『実』のようにできることから樹氷石、って言われている。冬の山が猛吹雪になって、取りに行ったら本当に死んじゃうくらいだって言うなら樹氷石があってもおかしくない。山の麓にあるっていう樹氷石は雪解けと一緒に頂上から転がってくるのかな。それならこの辺りに樹氷石があってもおかしくないんだけど、この暑さだと見つけるのは大変だと思う。樹氷石は熱に弱くて、暖かいところにあると溶けちゃうんだよね。この暑さだと麓に転がっているかもしれないってう樹氷石をなかなか見つけるのは厳しいんじゃないかなぁ…。
 図鑑でしか見たことがなかったけど、この辺には本物があるんだ。王都や王立錬金術学園アカデミーでも樹氷石の本物は見たことがないから、こんなところに落ちてるなんて思わなかった。

「そっか、山の涼しい風の正体は樹氷石なんだ…」

「そうじゃが、さっき言った通り今年は涼しい風がまったく吹かんでな。この異常な熱に樹氷石はもう溶けてしまってるかもしれんの」

「もし、錬金術士様。その樹氷石っちゅーのを手に入れたら、ワシらは助かるってことですか?」

「いや、そうゆう事じゃないんだけど。でも氷は変えないし、私の初級回復薬ポーションと井戸の水だけじゃ根本的に解決することもないだろうし、…王都からの支援が望めないのであれば、この村で手に入れる事ができる素材を使って解決するのが一番いいかなぁって思うんだけど」

 今のお話を聞く限り、ルーシーちゃんパパが南の街へ行ったけどきっとあのシギル親子が邪魔してくるだろうと思う。ものすごく高い金額で氷を売ってくるかもしれないし。

「エリナ、こないだ山へ採取行ったの覚えてるでしょ?あの時、なんか小さいな石見つけて『ひんやりする~』とか言ってなかった?」

「え?うーんと、山へ行ったとき…。あ!暑くて、地面に落ちてた変な石を拾ったような…確かにその時普通の石よりもひんやりしたよーな」

「きっとそれよ!あんた、それが溶けて頂上から落ちてきた樹氷石の残りカスなのよ!アトリエに残ってないの!?」

「え?…え、えぇぇええ!!あの小さいのが!?樹氷石?あんなちっちゃい…と、溶けてないかなぁ。もう」

私は直径数センチの少し冷たい石を思いだした。でも、図鑑だともっと形は違うし大きさも手のひら大だったのに…

「と、とりあえず戻るわよ!もし残ってたら使えるじゃない!ホラ!早く!お爺様、私ちょっとエリナと出かけてきます!」

「ちょ、ちょっとまって、まだお菓子が残って…。んぐっ!!っケホッ、ケホッ!ちょっとミーちゃん、まって、ひっぱらないでぇーー!」

 慌てて食べたお菓子がのどに引っかかってむせかえるも、お構いなしにミーちゃんは私の腕をつかんで部屋から勢いよく飛び出していく。

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