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「ま、まだ少し奥にも落ちてるから、‥ちょっとまって…」
ミーちゃんは両手で2∼3個の樹氷石を抱えて狭い洞穴から出てきた。
私たちはろうそく石のそばにあった洞穴で樹氷石を集めている。どういう訳か、この穴の中には樹氷石がほぼ溶けないで残っていたのだ。小柄なミーちゃんが奥の方に潜り、持てるだけちょっとずつ集めてきてくれている。
何度もこの往復をして、今20個くらいの樹氷石が手に入った。手前には見当たらず、少し奥の方へ行かないとないみたいで小柄なミーちゃんに薄暗い穴の中をゆっくりと探索してもらっている。
ズズズズズズズ‥‥
「きゃぁああ!!」
洞穴の中でミーちゃんの声が木霊している。
また地震だ。鈍い低い音を出しながら地面が揺れた。
「ミーちゃんだいじょうぶ!?もう危ないから出てきなよ!これだけあればとりあえずどうにかなるよ!」
「あ、あともう一回。ここの下にまだデカいのが落ちてるのよ。これだけ拾ったら出るから…」
「え、エリーちゃん、…あ、あれみて」
ろうそく石とその周囲がにある石が再びうっすら赤い線が入り脈打ちはじめた。まだお昼だというのにその光はじんわりと赤く光ってみえる。さらに奥の坂道からモンスターが数匹出てくるのが見える。
「ば、バクバウム…こんなにたくさん」
「…バク…バウム?」
血の気が引いた顔でルーシーちゃんは狼のようなモンスターを見て小さな声で言った。
「あれはバクバウム。一匹でも退治するのが大変なのに、あんな群れで行動しているなんて…。あれに見つかったら私たちなんてすぐに食べられちゃうわ。見つからないようにしないと…」
岩陰からバクバウムの様子をそっと見守る。モンスターたちはろうそく石の周囲をウロウロと何かを探している。
「あそこにはマグマタイトがあるのに…やっかいね」
「マグマタイト?」
「うん、錬金術で使える素材なんだけどね、特別な功績で炎の魔力っていうのかな、火の力が込められた石なんだけど、それがあそこらへんで赤く光っている奴なんだよね。扱いが難しくて、ヘタに触ったりすると爆発もするかなり危ないやつ。」
「炎の魔力…。なるほど、もしかしたらあいつら…」
ルーシーちゃんが何か言いだす前に、バクバウムの一匹が石の中から淡く光るマグマタイト見つけると大きな口で思い切り噛み砕いた。
「い、石を…食べてるの?」
他のバクバウムも続いてマグマタイトを見つけ出しては噛み砕く。淡い魔力の光はバクバウムの体へ吸収されていく。
「聞いた話なんだけどね、あのモンスターは炎を食べるんだって。だからあの石に炎と同じか、それ以上の力があるからきっと食べてるんじゃないかな。」
次々にマグマタイトを噛み砕く姿を見て唖然としている私たちの後ろから、無邪気な声が聞こえてきた。
「ふぅ~。見てみて、このでっかいの!すごいおっきくて大変だったけど…みなさいこのサイズ!」
洞穴から全身土まみれのミーちゃんが威勢よく出てきた。
(やばっ!!完全に忘れてた!)
「あ、あぁすごいねミーちゃん、でも、ちょっと今は静かにしてほしいんだけど…」
「はぁ?こんなに頑張ったんだから少しくらいなにか言うことないの?!」
「え、エリーちゃん…ダメかもしんない…」
私がミーちゃんをなだめたものの、ミーちゃんは空気を読まずいつもの感覚で喋ってしまい静かな山に大きな声が響いた。当然、バクバウム様のお耳にも聞こえたご様子で、全員こちらをロックオンしてらっしゃる…。
ルーシーちゃんが引きつった顔で私たちの方に上がってくると、ジリジリと距離を詰めてくるバクバウムたち。
(戦えるの!?…私たちだけで?)
低い唸り声をあげて、奴らはゆっくりと近づいてきた。
ミーちゃんは両手で2∼3個の樹氷石を抱えて狭い洞穴から出てきた。
私たちはろうそく石のそばにあった洞穴で樹氷石を集めている。どういう訳か、この穴の中には樹氷石がほぼ溶けないで残っていたのだ。小柄なミーちゃんが奥の方に潜り、持てるだけちょっとずつ集めてきてくれている。
何度もこの往復をして、今20個くらいの樹氷石が手に入った。手前には見当たらず、少し奥の方へ行かないとないみたいで小柄なミーちゃんに薄暗い穴の中をゆっくりと探索してもらっている。
ズズズズズズズ‥‥
「きゃぁああ!!」
洞穴の中でミーちゃんの声が木霊している。
また地震だ。鈍い低い音を出しながら地面が揺れた。
「ミーちゃんだいじょうぶ!?もう危ないから出てきなよ!これだけあればとりあえずどうにかなるよ!」
「あ、あともう一回。ここの下にまだデカいのが落ちてるのよ。これだけ拾ったら出るから…」
「え、エリーちゃん、…あ、あれみて」
ろうそく石とその周囲がにある石が再びうっすら赤い線が入り脈打ちはじめた。まだお昼だというのにその光はじんわりと赤く光ってみえる。さらに奥の坂道からモンスターが数匹出てくるのが見える。
「ば、バクバウム…こんなにたくさん」
「…バク…バウム?」
血の気が引いた顔でルーシーちゃんは狼のようなモンスターを見て小さな声で言った。
「あれはバクバウム。一匹でも退治するのが大変なのに、あんな群れで行動しているなんて…。あれに見つかったら私たちなんてすぐに食べられちゃうわ。見つからないようにしないと…」
岩陰からバクバウムの様子をそっと見守る。モンスターたちはろうそく石の周囲をウロウロと何かを探している。
「あそこにはマグマタイトがあるのに…やっかいね」
「マグマタイト?」
「うん、錬金術で使える素材なんだけどね、特別な功績で炎の魔力っていうのかな、火の力が込められた石なんだけど、それがあそこらへんで赤く光っている奴なんだよね。扱いが難しくて、ヘタに触ったりすると爆発もするかなり危ないやつ。」
「炎の魔力…。なるほど、もしかしたらあいつら…」
ルーシーちゃんが何か言いだす前に、バクバウムの一匹が石の中から淡く光るマグマタイト見つけると大きな口で思い切り噛み砕いた。
「い、石を…食べてるの?」
他のバクバウムも続いてマグマタイトを見つけ出しては噛み砕く。淡い魔力の光はバクバウムの体へ吸収されていく。
「聞いた話なんだけどね、あのモンスターは炎を食べるんだって。だからあの石に炎と同じか、それ以上の力があるからきっと食べてるんじゃないかな。」
次々にマグマタイトを噛み砕く姿を見て唖然としている私たちの後ろから、無邪気な声が聞こえてきた。
「ふぅ~。見てみて、このでっかいの!すごいおっきくて大変だったけど…みなさいこのサイズ!」
洞穴から全身土まみれのミーちゃんが威勢よく出てきた。
(やばっ!!完全に忘れてた!)
「あ、あぁすごいねミーちゃん、でも、ちょっと今は静かにしてほしいんだけど…」
「はぁ?こんなに頑張ったんだから少しくらいなにか言うことないの?!」
「え、エリーちゃん…ダメかもしんない…」
私がミーちゃんをなだめたものの、ミーちゃんは空気を読まずいつもの感覚で喋ってしまい静かな山に大きな声が響いた。当然、バクバウム様のお耳にも聞こえたご様子で、全員こちらをロックオンしてらっしゃる…。
ルーシーちゃんが引きつった顔で私たちの方に上がってくると、ジリジリと距離を詰めてくるバクバウムたち。
(戦えるの!?…私たちだけで?)
低い唸り声をあげて、奴らはゆっくりと近づいてきた。
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