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第一部・二章 サランの街
第十六話
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惨劇が街を襲ったのは、七時の鐘が鳴った時だった。
東の詰め所で目覚めた一人の衛士は、朝の新鮮な空気を吸うために外に出た。
一度大きく伸びをし、胸いっぱいに澄んだ空気を吸い込む。
そこで、違和感に気付いた。
澄んだ空気の中に、かすかに漂う獣臭。
もう一度大きく息を吸い込むと、先ほどよりも鮮明に感じる獣臭に、違和感は強まった。
衛士は咄嗟に森に視線を向け、すぐ詰め所に引き返した。
詰め所に設置された光素で作られた音声反響魔術を作動させ、喉の奥から焦りのこもる叫びが迸った。
「緊急連絡!! 東の森から、魔獣が複数こちらに向かっている!! 至急応援頼む!! 繰り返す!! 東の森から……」
繰り返し放送された緊急連絡は、まず街の各所に設けられた詰め所に伝令され、街に衛士長から街の長に伝令された。
だがその頃には、すでに魔獣は街に到達しており、破壊の限りを尽くしていた。
応援に来た三十名の衛士隊は、住民の避難が完了するまでの時間稼ぎの任務に執行した。
だがしかし、魔獣化によって身体能力が向上したドランエイプに勝てるはずもなく、鍛え上げられた衛士が次々と蹂躙されていった。
最初の犠牲者は、衛士隊に入隊したばかりの若者だった。
住人を守れる衛士を長年夢見ており、念願の夢が叶ってこれからという時に、無慈悲に繰り出された棍棒に押し潰され、志半ばでその生涯を終えた。
その後も、散発的に、しかし途切れることなく衛士隊は倒れ続けた。
わずか五匹の魔獣に、三十人いた衛士隊はあっという間に削られていき、街の破壊も食い止めることが出来ずにいた。
三十分経つ頃には、衛士は残り十人にまで減らされていた。
中都で衛士を務めていた衛士長は、自分の不甲斐なさを悔やんだ。
若者が何人も亡くなったというのに、歳だけ取った老兵が生き残っているのが悔しくて堪らなかった。
衛士長は、苦渋の決断の末に、残った衛士に向けて叫んだ。
「全員広場まで後退し、残った住人を連れて西の大門から避難しろ!!」
衛士長はぎりりと歯を食い縛りながら、再度叫んだ。
「ここは私が食い止める! お前たちは住人を守るために……この街のためにも、生き残るんだ!」
衛士長はそう叫ぶと、棍棒を振り下ろそうとしている魔獣へ走り、猛訓練で使い込まれた両手用大剣を魔獣の足に突き刺した。
魔獣は一瞬だけ怯み、次いで棍棒をめちゃくちゃに振り回した。
振り回される棍棒が右脇腹に直撃すると、骨が数本折れる音を鳴らせた後、後方へ吹き飛ばされた。
「隊長!!」
一人の衛士が駆け寄り、倒れた衛士長に治癒術を施そうとした。
しかし衛士長は首を振り、激しく吐血しながら叫んだ。
「やめろ!! これが、歳だけ取った老いぼれに出来る、最後の仕事だ…………若き衛士よ、この街を…………任せたぞ」
直後、衛士長は絶命した。
衛士は、衛士長の懐に入っていた、長の勲章を預かり、石畳に置いた両手用の大剣を握り直した。
それからも、衛士は侵攻を食い止めようとするも、次々と散っていくばかりで、魔獣を止めるには至らなかった。
「もうだめだ! 退け! 退け──っ!!」
辛うじて生き残っている三人の衛士は、未だ歩みを止めない魔獣から退避する。
が、一人の衛士が足を瓦礫に持ってかれてしまい、その場でつまずいてしまう。
そして、その後ろには魔獣。
魔獣は、殺された衛士の血で染まった棍棒を振り上げた。
衛士は、風素を背中に解放し、全身が光の筋となって霞むほどの速度で疾駆し、転がる衛士の前に飛び込んだ。
轟然と落下してくる棍棒を、長が残した大剣で受ける。
大地を震わせる衝撃音と、赤みを帯びた閃光が激しく散る。
長の大剣は、一般衛士が扱う剣に比べれば業物ではある。だが、魔獣の剛力の前では無力に等しい棒切れだった。
拮抗状態はわずか半秒で崩れ、大剣の刀身に何本もの亀裂が走る。
剣は、儚い光芒を散らして砕け散った。
衛士はすかさず柄を投げ捨て、落下してくる棍棒を素手で受け止めた。
幾つもの鈍い音が、体を通して響いた。両腕の手首から二の腕までの骨が、あちこちで悲鳴をあげながら砕けたのだ。
視界が白く飛ぶほどの激痛。噴き出した鮮血が、顔面に飛び散った。
「く……うっ……おおお!!」
歯を食い縛り、漏れそうになる悲鳴を気合に変えて、最後の余力を出し切り、棍棒の軌道を横に逸らす。
棍棒は石畳を深く穿ち、食い込んだ。
今のうちに後ろの衛士と逃げなければ……頭でそう判断するも、痛みは灼熱の炎と化して全身を駆け巡り、視界が真っ赤に染まる。
そして一人の衛士は、仲間であり長が守ろうとした若き衛士を守り通し、立ったまま死亡した。
自分を守り死亡した衛士は、群がる魔獣によって醜い肉片となってしまい、人界から姿を消してしまった。
──走らなきゃ……自分を犠牲に救ってくれたんだから、走って逃げなきゃ。
脳から全身に、今すぐ立ち上がり逃げろと指示を送るも、恐怖で体が震えてしまい命令を遂行出来ない。
やがて、一匹の魔獣がこちらの存在に気付き、操り人形のような動きで、ぐるんと首だけを向けた。
真っ赤に充血した両眼からは、無邪気な殺意と残虐な好奇心が宿っており、これから起こりうる未来図が物語っていた。
「ヒッ!! ヒィッ!!」
恐怖で震え上がった悲鳴を上げながら、逃げようと空しくもがく。それに向かってヒョコヒョコと奇妙な足取りで、魔獣が近づいてくるのが分かる。
「た……助けてくれ!!」
遠くの方で片腕を負傷した仲間に呼びかけるも、恐怖で凍りついた表情を浮かべながら、脇目も振らずに広場へと走って行った。
「そんな……置いてかないでくれ!! 一人にしないでくれ!!」
懇願の叫びは、廃れた街の中でただ虚しく響くだけだった。
背後で、荒々しい鼻息が後頭部を撫でた。
振り返ると、棍棒を振り上げた魔獣が、こちらを見下ろしていた。
──死にたくない。
最後に創世神に願ったのは、ごく当たり前な願いだった。
人界に住む清き魂は皆、創世神の生まれ故郷である天界に召されると伝承されている。
その真実を証明する証拠はないが、人界の民はその伝承を信じており、誰一人として悪事を働かない。
だがしかし、死ぬ直前になれば分かる。
本当に自分は、天界に召されるのか。
このまま、何も感じず孤独に死んでゆき、何もない真っ暗な空間を放浪するだけなんじゃないのか。
──創世神様!! お願いです!! 助けてください!!
最後の祈りを創世神に飛ばすと同時に、振り上げられた棍棒が躊躇いなく振り下ろされる。
衛士は、目の前で起きている出来事を呑み込めずに、ただ呆然と眺めていることしか出来なかった。
最初に驚愕したのは、落ちてきたのが棍棒ではなく、剛力な腕だったこと。
腕から溢れ出す赤黒い液体は、あっという間に石畳に血溜まりを作った。
次に、衛士は信じられないものを目の当たりにした。
自分の前に飛び出てきたのは、一人の少年。
普通の少年が、私の前に突如姿を現したのだ。
だが衛士が見たのは、それだけではない。
彼の持つ剣が、魔獣の腕を切り落としたのだ。しかも、なんの抵抗もなく、流れるように。
衝撃的な事が雨霰のように降り注ぎ、衛士は膨大な情報を処理しきれず、ただただ少年の背中を眺める他なかった。
「……き、騎士様だ……天界の騎士様が、助けに来てくれたんだ」
少年の背中は、天界の騎士と酷似するほど大きく、頼もしかった。
そこで衛士は、抑えていた涙が溢れだし、頰を濡らした。止める気力など存在せず、ただ涙を流し続けた。
目の前に舞い降りた少年は、ゆっくりとこちらに振り返った。
大人しいスタイルの、朝焼けの下で煌めく黒髪。
黒髪の下で微笑む、優しい表情。
男と思える人物に、衛士は天界から舞い降りた天使のように可憐な存在に写った。
触れようものなら儚く散ってしまいそうなほどの美貌に、つい見惚れてしまうほど、少年の容姿は整っていた。
少年はひざまずき、倒れた体を助け起こした。
そこで我に返り、隣に立つ少年に慌てながら言った。
「すまない。助かったよ」
少年は柔らかい笑みを浮かべると、そっとかぶりを振りながら、優しく囁いた。
「もう大丈夫です。街の人は、西の大門から近くの森に避難しました。あなたも、早く避難してください」
「ま、待て。何をする気だ」
「……決まってますよ」
振り返り、先程の慈愛の化身と思えた雰囲気が一変する。
慈愛で満たされていた両眼からは、明確な怒りが放たれており、微笑むは面影を無くしている。
「奴等を倒します。それが、今の俺にできることです」
鋭い声が放たれるや、少年が持っている剣に炎素が宿る。
衛士は一瞬、全身の鳥肌が遡り恐怖した。
それほどまでに、少年の覇気が高まっていた。
***
大きく息を吸い、激発寸前の感情をどうにか押し留めて、剣を構える。
魔獣は、こちらの殺意に怯えているのか戸惑いを見せている。
先程まで衛士を殺戮していた魔獣が、通常のドランエイプのように怯えているのか、それともこの剣の気迫に気付いたのか。
だが今となっては、どちらでも良い。
数多くの衛士を殺した魔獣を生かす理由なんて、禁書目録にも、街の掟にも
「ないからな!!」
叫び、右足を踏み込む。
剣に宿った炎素を、斬撃を同時に打ち出すように、眼前のドランエイプに向けて袈裟懸けを繰り出す。
地面を穿つように繰り出された炎素と斬撃波は、片腕を失った魔獣を穿ち、斬り裂く。
二つに裂かれた魔獣は、焼け焦げた傷跡から煙を立ち昇らせている。
振り下ろした剣を構え直し、叫ぶ。
「魔獣共! その死体は、お前たちの未来の姿だ! 斬られる覚悟がある奴は前に出ろ!」
凛と響く大声に気圧されたかのように、魔獣たちの勢いがわずかに緩んだ。
しかし直後、一匹が犬歯を剥き出して雄叫びを上げた。
それに釣られ次々と雄叫びを上げる魔獣たちは、先の戸惑いを無理矢理消し去った。
流石に、そこまで上手くいかないか……。
流れる汗を払い、刀身に炎素を宿す。
この時カズヤは、自らが立てた浅はかな作戦の失敗の焦りが生じていた。
彼が立てた作戦のうち、住人と衛士の避難は成功している。
それによって、彼は魔獣の撤退も成功すると過信していた。
いくら魔獣とは言え自然で生きてきた生物。
自然に生きる生物は生き残ることに必死になり、自分より強い生物と対峙すれば、生存本能から逃走の選択肢が現れるはず。
だから彼は、持てる力全てを絞り出した一撃で、一体の魔獣を仕留めた。
これで、こちらが魔獣よりも優っていることを見せつけられた。後は奴等が命欲しさに森へ帰ることを期待していた。
だが、その作戦には穴があった。
それは、奴等が好戦的で凶暴である魔獣だということだ。
奴等は今回、たまたま群れとなって行動しているが、そこに仲間意識があるわけがない。魔獣にとって、一匹の死は然程興味のない事なのだ。
そこを見落としていたために、この作戦は失敗に終わってしまった。
こうなってしまっては、もう方法は一つしかない。
「こいつらを、全部倒すしかない……」
乾燥した唇を一度湿らせ、炎素の宿った剣を振りかぶる。
魔獣が動くのと同時に、剣を勢いよく振り下ろす。
再び、炎素を宿した斬撃波が発生する。
今回は少し学習したのか、粗悪な棍棒を前に突き出し、斬撃波を受け止めてきた。
だが受け止めるはずもなく、粗悪な棍棒に炎素が燃え移り、受け止めていた斬撃波によって粉砕される。
魔獣の死体は燃焼を終えると黒い炭と化し──。直後に粉々に崩れて跡形もなく消滅した。
もう一発、同じ攻撃を撃ち出そうと剣を構えた途端。
「ッ──!?」
全身を電光に似た痛みが駆け巡り、その場にひざまずく。
喉からこみ上げてきたものを吐き捨てると、真っ赤な液体が石畳に小さな斑点を作り上げた。
ここで俺は、自分に起きている異変に感づいた。
戴天の鉤爪を素材にした長剣は、あの天界の騎士が扱う武器と同等の業物。
それを、一般高校生である俺が、たかが数週間振り続けただけで使えるわけがない。
今までは腕が痛くなったところで素振りをやめているが、それだけでも全身に負担が掛かっている。
睡眠では取れない負担に蝕まれているにも関わらず、俺はこの剣を全力で二度振り続けた。
当然、体は悲鳴を上げる。
しかもただ振るのではなく、炎素も組み合わせているため、精神にも負担を掛けている。
心身ともに負担を掛ければ、立つことさえ難しくなる。
吐血の勢いは収まらず、次から次にこみ上げてくる。
その場で血を吐き出し続けると、眼前で何者かが立ち止まった。
顔を上げると、顔に傷を負った魔獣が、棍棒を振り下ろしていた。
──殺られる!
なんとか上体を起こし、膂力を無理矢理引き締めて鞘で迎撃する。
鞘と棍棒は火花を散らせ、衝突の勢いによって後方へ吹き飛ばされる。
背中から地面に衝突し、肺から酸素が一気に放出され、息苦しさと目眩が生じる。だが意識だけは激痛によって引き止められた。
鞘を杖代わりに立ち上がり、不足した酸素を必死に取り込むために、必死に呼吸を繰り返す。
視線を前方の魔獣に据え、剣を構える。それだけの動作で、全身にまたもや激痛が駆け巡る。
「まだだ……まだ。時間を、稼がなきゃ」
倒れそうになる自分に言い聞かせるように呟き、突進してくる魔獣を見据える。
そして、両眼を見開く。
突進していた魔獣が、突然力なく倒れ込んだ。
だが、カズヤが驚愕したのは、倒れた魔獣ではなく、倒れた魔獣の後ろに立っていた者だった。
横風でなびく紫のスカートと、後ろで結われた紫髪のポニーテール。
頭頂部に生えている、狼に似た二つの耳に、ボリュームのある毛量の尻尾。
獣人族であり、人族に深い憎悪を抱いていたサヤが、片手に仰々しい大剣を持って立っていた。
「サ……サヤ……どうして」
萎れた声を喉から搾り出し、自分を救ってくれた獣人の名を呼んだ。
サヤは、大剣を楽々持ち上げながら、尻尾を激しく振りつつ歩み寄ってきた。
俺はその間、彼女が持っている大剣にのみ、視線を集中させてしまった。
──なんだ……あの剣は。
明らかに女性が持てるサイズではない。
紫の刀身をした大剣は、俺の剣よりも三倍ほどの幅をしている。
刀に似た構造なのか、片方に刃はない。だがもう片方の刃は、狼の牙を思わせるほどギザギザしており、殺傷力の高さを見せつけている。
あんな大剣、彼女の家にあったか? そもそも、なぜサヤがここにいるんだ? まさか、俺を心配して──。
最後に現れた可能性を否定するかのように首を振ると、眼前でサヤが立ち止まった。
膝を着くカズヤを見下ろす彼女の顔色は、逆光で見えずにいた。
今、彼女がどういった表情を浮かべているのかは解らない。分かるのは精々、後ろの尻尾を先程よりも激しく振っていることだけだった。
「サヤ……どうして、ここに」
吐血しながらもう一度呼びかけると、腰の携帯袋から、濃い緑色の液体が入った小瓶を取り出した。
「それは……一体なムゴッ!?」
小瓶の栓を抜くと、こちらの質問を遮るように、開いた口に小瓶を突っ込んできた。
中に入っていた濃い緑色の液体が次々と口の中に入り込んでくる。あまりの苦酸っぱさに顔をしかめ、空になった小瓶を遠くに放り投げる。
「ちょっ!? お前何を!?」
抗議を口にしようとした瞬間、もう一つ取り出された小瓶を口に突っ込まれ、再度苦酸っぱい液体が口内に巡ってくる。
口に突っ込まれた小瓶が空になると、サヤはそれを遠くに放り投げた。
まだ口に残る後味に顔をしかめつつ、遮られた抗議を再開しようとした途端。
彼女の悲痛な表情が目に入り、言葉が喉に詰まった。
「カズヤ……一人で無茶しすぎよ……」
悲痛な表情で、震える声を絞り出した。
目から涙が溢れ、宝石のように輝きながら次々に滴り落ちる。
抗議しようとしていた言葉が喉の下に引っ込み、どうにか短いひと言を音に変えた。
「ごめん……」
俺の声は、自分でも驚くほど弱々しく掠れていた。
彼女が助けに来たことへの安堵からか、溜まっていた疲労と負担が一気に精算されたんだろう。全身から気怠さと眠気が湧き出てくる。
サヤは一度大きく頷くと、腰の携帯袋をこちらに差し出してきた。
「この中に、さっきと同じ霊薬があと三本入ってる。残さず飲みなさいよ」
携帯袋の中身を確認すると、確かに先程の液体が入った小瓶が三本入っている。
霊薬。
人界全土に生えている魔素を吸収して育った霊草を原材料にした薬。
新陳代謝を促進させる霊薬や、疲労困憊を完治させる霊薬など、身体的症状を治す作用が施されている。
当然身体への影響も少なからずあるため、成人男性は一日十本まで、成人していない者は五本までと、禁書目録に記載されている。
サヤが口に突っ込んだのは、きっと疲労困憊を完治させる霊薬だ。先程まで感じ取れていた気怠さが少しだけ晴れた気がする。
「待っててカズヤ。すぐ終わらせるから」
囁き、優美な動作で大剣を持ち上げ、歩き出す。
その向かう先では、三匹の魔獣が焦ったようにじりじりと後退している。
大剣を恐れているのだろうか……いや、違う。
彼女の放つ気迫に怯えているんだ。
一度サヤと剣を交えた時も、獣と対峙しているような緊張があった。
しかし、今は違う。獣なんて易しい生物ではない。
この気迫──天界の騎士にも負けず劣らずのものだ。
やがて一匹の魔獣が、耳をつんざくほどの雄叫びを上げ、棍棒を振り上げながらサヤに突進した。
大地を揺るがす勢いを持った魔獣にとって、サヤは衛士と変わらないひ弱な存在に写っているのだろう。
魔獣の口許が緩み、勝利を確信したような凶暴な笑みが漏れた。
──刹那。
魔獣は、二つに裂かれた。
暗赤色の毛皮を更に濃く染めるかのように、血飛沫が噴き出す。
サヤが何をしたのか、カズヤは見逃さなかった。
彼女は、持っている大剣を豪快に振り下ろした。
たったそれだけ。それしか行っておらず、魔術よ詠唱もしていない。
なのに──。
大剣を振っただけなのに、魔獣は二つに裂かれた。
俺の視線は無意識に大剣に向けられた。
──サヤが使ってる剣に、何か秘密があるのか?
「何見てんのよ変態」
夢中で眺めていると、サヤは振り向き様に言った。
慌てて視線を逸らし、誤魔化すように霊薬を口に含む。やはり慣れない味に苦々しい表情を浮かべながら尋ねる。
「……その剣は一体?」
紫の大剣を指差すと、何故か誇らしげな顔色になり、少し上ずった声で答えた。
「凄いでしょ。この剣は、獣人族が代々受け継いできた宝剣、餓断剣よ」
「が、餓断剣?」
剣の銘なのか、偉く物騒な響きを復唱すると、サヤは餓断剣を一度肩に担ぎ、説明を始めた。
「この剣は、獣人族を守護するための大剣として受け継がれてきた。先代は叔父様で、今は私が継承者よ」
「……へぇ~」
突然話の規模が飛躍してしまい、呆然と頷く他なかった。
というか、宝剣を受け継ぐ家系ってことは、もしかしてサヤってかなりのお嬢様?
などと考えていたのも束の間、衝撃の事実が明らかになる。
「素材には、餓狼の牙が使われてるわ」
「え!? 餓狼って、まさかあの……」
「そう。南の凍山に生息していたと言われる、古の狼よ」
「……マジかよ。なら納得だ」
口に残る苦味を意識しながら、剣の切れ味に納得したように頷く。
餓狼──。
創成期から人界の南側に生息していた、群れを成して行動する狼。独自の進化を遂げており、牙は上顎と下顎を足して四本しかない。
四本ある牙は岩を噛み砕いても欠けることはなく、捕食する肉を容易く噛みちぎる。
狼の中でも特出した脚力を持っており、高さ十メートルの崖を一飛びで越えてしまう。
知能も高く、捉えた獲物を集団で囲んで逃げ道を塞ぎ、ゆっくりと仕留める。仲間意識も高く、一匹の窮地には全匹で対処する。
一見すれば万能な生物と思える餓狼なのだが、どんな生物にも一つの欠点はある。またそれは、絶滅の直接的原因になる場合もある。餓狼も、例外ではなかった。
餓狼は、身体能力の向上とともに、体内環境にも変化があった。
動物は時間を掛けて食した物を消化するが、腹の膨れによって機動力が落ちると狩りが失敗すると判断した餓狼は、消化を促進させる霊草を食し、短時間で食料を消化する胃酸を手に入れた。
だがそれは、自らを絶滅させる選択だった。
消化が早まるということは、常に飢餓状態ということになる。いくら食しても消化され、また食しても消化される悪循環を繰り返していき、やがて食料が枯渇した。
常に飢餓状態であることから餓狼と名付けられた狼は、自ら選択した進化によって絶滅してしまった。
不運な最後を迎えた餓狼の牙は、それだけで白銀貨が何枚も飛ぶほどの稀少価値であり、それを素材にした剣などを市場に出品すれば、一生遊んで暮らせるだけの金が手に入る。
といっても、あまりにも希少なため、市場に出回ることなど滅多にない。
「ご先祖様が、風化していた牙を復元して、長い年月をかけて作り上げたのが、この餓断剣ってわけ」
餓断剣を下段に構えたサヤは、殺意の視線を魔獣に向けた。
魔獣は先程の攻撃によって畏怖しており、その場から動こうとせず、ただ眺めているだけだ。
「あなたたちに恨みはないけど、死んでもらう」
残虐非道ここに極まれり。瞬時に思いついた言葉がそれだった。
恨みもないくせに殺すなんて酷すぎるだろ、と指摘しようとしたが、今の俺にそれを言う勇気はない。
今の俺に出来るのは、携帯袋に入っている霊薬を飲み続けることしかない。
それに、魔獣は殺処分対象なのだから、サヤの言い分は決して間違いじゃない。
二匹の魔獣は、覚悟を決めたのか同時に叫び声を上げ、サヤに突進していった。
重々しい大剣を片手に持ったサヤは、強く地面を蹴り、高々と飛び上がった。
空中でしなやかに体勢を変えると、一匹の魔獣の首目掛けて、豪快な唐竹割りを繰り出す。
「ヒゴッ…………」
厳つい容貌に相応しくない、裏返った悲鳴が漏れた。
両脚から力が抜け、操り人形の糸を切断したように倒れ込んだ。頭部は胴体と離れた場所に落下し、切断面から血煙を噴き出している。
餓断剣は石畳を深々と穿ち、噴き出された血煙によって紫から暗赤に染まっていく。
サヤの全身もみるみる赤く染まっていき、顔半分が真っ赤に染まっている。
これが獣人の本当の実力。あの時は、半分の力も出していなかったのか。もし今の彼女と戦っていたらと想像すると……。
かたかたと震えながら、怯える手で四本目の小瓶の栓を抜いた。
「残り一体……」
死神の宣告かのように聞こえたそれは、魔獣すらも恐怖するおぞましさを兼ね備えていた。
もはや雄叫びすら上げられないのか、魔獣は少しずつ後退していく。
サヤは、血のついた餓断剣を振り払い、大剣を大きく振り上げた。
魔獣はそこで、最後の判決を下した。
棍棒を小枝のようにぶんぶん振り回しながら、凄まじい勢いで突進した。
前方に転がる魔獣の死体を左右に跳ね飛ばし、勢いを緩めずに突き進む。
彼女の大剣が振り下ろされる。
そして魔獣は、断末魔も上げることなく絶命した。
俺が五本目の小瓶を口にしようとした途端、数多くの衛士を蹂躙した魔獣は、一人の獣人族によって倒された。
「…………化け物」
無意識に零れた言葉は、運悪くも獣人の耳に届いてたらしく、物凄い勢いで振り返ってきた。
「あんた……今なんて言った?」
「何も言ってません!」
反射的に答えるも、思わず嘘を言ってしまったことに、今頃になって焦り始める。
「何も言ってないはないんじゃないの? 本当のことをいえば、許してあげるけ──」
「化け物って言いました! ごめんなさい!」
凄まじい速さで土下座と謝罪をすると、数秒間の沈黙の果てに、小さめな笑い声が聞こえてきた。
恐る恐る顔を上げると、必死に笑いを堪えているサヤの顔が目に入った。
「ご、ごめん。本当に、すぐ謝ってきたから、つい」
そんなに笑うようなことか? 本気で疑問に思いながら、彼女の無邪気な笑顔を見つめた。
やっぱり、普通の女の子じゃないか。
餓断剣を片手で持ち上げた挙げ句、魔獣をいとも容易く倒していく様は鬼神の如き実力だった。
戦闘中の彼女に関しては、女性と言われたら首を傾げるほど悍ましかった。
だがやはり、今みたいに戦闘とは無縁な時は、普通の女の子とほとんど変わらないことに、謎の感動を受けてしまった。
東の詰め所で目覚めた一人の衛士は、朝の新鮮な空気を吸うために外に出た。
一度大きく伸びをし、胸いっぱいに澄んだ空気を吸い込む。
そこで、違和感に気付いた。
澄んだ空気の中に、かすかに漂う獣臭。
もう一度大きく息を吸い込むと、先ほどよりも鮮明に感じる獣臭に、違和感は強まった。
衛士は咄嗟に森に視線を向け、すぐ詰め所に引き返した。
詰め所に設置された光素で作られた音声反響魔術を作動させ、喉の奥から焦りのこもる叫びが迸った。
「緊急連絡!! 東の森から、魔獣が複数こちらに向かっている!! 至急応援頼む!! 繰り返す!! 東の森から……」
繰り返し放送された緊急連絡は、まず街の各所に設けられた詰め所に伝令され、街に衛士長から街の長に伝令された。
だがその頃には、すでに魔獣は街に到達しており、破壊の限りを尽くしていた。
応援に来た三十名の衛士隊は、住民の避難が完了するまでの時間稼ぎの任務に執行した。
だがしかし、魔獣化によって身体能力が向上したドランエイプに勝てるはずもなく、鍛え上げられた衛士が次々と蹂躙されていった。
最初の犠牲者は、衛士隊に入隊したばかりの若者だった。
住人を守れる衛士を長年夢見ており、念願の夢が叶ってこれからという時に、無慈悲に繰り出された棍棒に押し潰され、志半ばでその生涯を終えた。
その後も、散発的に、しかし途切れることなく衛士隊は倒れ続けた。
わずか五匹の魔獣に、三十人いた衛士隊はあっという間に削られていき、街の破壊も食い止めることが出来ずにいた。
三十分経つ頃には、衛士は残り十人にまで減らされていた。
中都で衛士を務めていた衛士長は、自分の不甲斐なさを悔やんだ。
若者が何人も亡くなったというのに、歳だけ取った老兵が生き残っているのが悔しくて堪らなかった。
衛士長は、苦渋の決断の末に、残った衛士に向けて叫んだ。
「全員広場まで後退し、残った住人を連れて西の大門から避難しろ!!」
衛士長はぎりりと歯を食い縛りながら、再度叫んだ。
「ここは私が食い止める! お前たちは住人を守るために……この街のためにも、生き残るんだ!」
衛士長はそう叫ぶと、棍棒を振り下ろそうとしている魔獣へ走り、猛訓練で使い込まれた両手用大剣を魔獣の足に突き刺した。
魔獣は一瞬だけ怯み、次いで棍棒をめちゃくちゃに振り回した。
振り回される棍棒が右脇腹に直撃すると、骨が数本折れる音を鳴らせた後、後方へ吹き飛ばされた。
「隊長!!」
一人の衛士が駆け寄り、倒れた衛士長に治癒術を施そうとした。
しかし衛士長は首を振り、激しく吐血しながら叫んだ。
「やめろ!! これが、歳だけ取った老いぼれに出来る、最後の仕事だ…………若き衛士よ、この街を…………任せたぞ」
直後、衛士長は絶命した。
衛士は、衛士長の懐に入っていた、長の勲章を預かり、石畳に置いた両手用の大剣を握り直した。
それからも、衛士は侵攻を食い止めようとするも、次々と散っていくばかりで、魔獣を止めるには至らなかった。
「もうだめだ! 退け! 退け──っ!!」
辛うじて生き残っている三人の衛士は、未だ歩みを止めない魔獣から退避する。
が、一人の衛士が足を瓦礫に持ってかれてしまい、その場でつまずいてしまう。
そして、その後ろには魔獣。
魔獣は、殺された衛士の血で染まった棍棒を振り上げた。
衛士は、風素を背中に解放し、全身が光の筋となって霞むほどの速度で疾駆し、転がる衛士の前に飛び込んだ。
轟然と落下してくる棍棒を、長が残した大剣で受ける。
大地を震わせる衝撃音と、赤みを帯びた閃光が激しく散る。
長の大剣は、一般衛士が扱う剣に比べれば業物ではある。だが、魔獣の剛力の前では無力に等しい棒切れだった。
拮抗状態はわずか半秒で崩れ、大剣の刀身に何本もの亀裂が走る。
剣は、儚い光芒を散らして砕け散った。
衛士はすかさず柄を投げ捨て、落下してくる棍棒を素手で受け止めた。
幾つもの鈍い音が、体を通して響いた。両腕の手首から二の腕までの骨が、あちこちで悲鳴をあげながら砕けたのだ。
視界が白く飛ぶほどの激痛。噴き出した鮮血が、顔面に飛び散った。
「く……うっ……おおお!!」
歯を食い縛り、漏れそうになる悲鳴を気合に変えて、最後の余力を出し切り、棍棒の軌道を横に逸らす。
棍棒は石畳を深く穿ち、食い込んだ。
今のうちに後ろの衛士と逃げなければ……頭でそう判断するも、痛みは灼熱の炎と化して全身を駆け巡り、視界が真っ赤に染まる。
そして一人の衛士は、仲間であり長が守ろうとした若き衛士を守り通し、立ったまま死亡した。
自分を守り死亡した衛士は、群がる魔獣によって醜い肉片となってしまい、人界から姿を消してしまった。
──走らなきゃ……自分を犠牲に救ってくれたんだから、走って逃げなきゃ。
脳から全身に、今すぐ立ち上がり逃げろと指示を送るも、恐怖で体が震えてしまい命令を遂行出来ない。
やがて、一匹の魔獣がこちらの存在に気付き、操り人形のような動きで、ぐるんと首だけを向けた。
真っ赤に充血した両眼からは、無邪気な殺意と残虐な好奇心が宿っており、これから起こりうる未来図が物語っていた。
「ヒッ!! ヒィッ!!」
恐怖で震え上がった悲鳴を上げながら、逃げようと空しくもがく。それに向かってヒョコヒョコと奇妙な足取りで、魔獣が近づいてくるのが分かる。
「た……助けてくれ!!」
遠くの方で片腕を負傷した仲間に呼びかけるも、恐怖で凍りついた表情を浮かべながら、脇目も振らずに広場へと走って行った。
「そんな……置いてかないでくれ!! 一人にしないでくれ!!」
懇願の叫びは、廃れた街の中でただ虚しく響くだけだった。
背後で、荒々しい鼻息が後頭部を撫でた。
振り返ると、棍棒を振り上げた魔獣が、こちらを見下ろしていた。
──死にたくない。
最後に創世神に願ったのは、ごく当たり前な願いだった。
人界に住む清き魂は皆、創世神の生まれ故郷である天界に召されると伝承されている。
その真実を証明する証拠はないが、人界の民はその伝承を信じており、誰一人として悪事を働かない。
だがしかし、死ぬ直前になれば分かる。
本当に自分は、天界に召されるのか。
このまま、何も感じず孤独に死んでゆき、何もない真っ暗な空間を放浪するだけなんじゃないのか。
──創世神様!! お願いです!! 助けてください!!
最後の祈りを創世神に飛ばすと同時に、振り上げられた棍棒が躊躇いなく振り下ろされる。
衛士は、目の前で起きている出来事を呑み込めずに、ただ呆然と眺めていることしか出来なかった。
最初に驚愕したのは、落ちてきたのが棍棒ではなく、剛力な腕だったこと。
腕から溢れ出す赤黒い液体は、あっという間に石畳に血溜まりを作った。
次に、衛士は信じられないものを目の当たりにした。
自分の前に飛び出てきたのは、一人の少年。
普通の少年が、私の前に突如姿を現したのだ。
だが衛士が見たのは、それだけではない。
彼の持つ剣が、魔獣の腕を切り落としたのだ。しかも、なんの抵抗もなく、流れるように。
衝撃的な事が雨霰のように降り注ぎ、衛士は膨大な情報を処理しきれず、ただただ少年の背中を眺める他なかった。
「……き、騎士様だ……天界の騎士様が、助けに来てくれたんだ」
少年の背中は、天界の騎士と酷似するほど大きく、頼もしかった。
そこで衛士は、抑えていた涙が溢れだし、頰を濡らした。止める気力など存在せず、ただ涙を流し続けた。
目の前に舞い降りた少年は、ゆっくりとこちらに振り返った。
大人しいスタイルの、朝焼けの下で煌めく黒髪。
黒髪の下で微笑む、優しい表情。
男と思える人物に、衛士は天界から舞い降りた天使のように可憐な存在に写った。
触れようものなら儚く散ってしまいそうなほどの美貌に、つい見惚れてしまうほど、少年の容姿は整っていた。
少年はひざまずき、倒れた体を助け起こした。
そこで我に返り、隣に立つ少年に慌てながら言った。
「すまない。助かったよ」
少年は柔らかい笑みを浮かべると、そっとかぶりを振りながら、優しく囁いた。
「もう大丈夫です。街の人は、西の大門から近くの森に避難しました。あなたも、早く避難してください」
「ま、待て。何をする気だ」
「……決まってますよ」
振り返り、先程の慈愛の化身と思えた雰囲気が一変する。
慈愛で満たされていた両眼からは、明確な怒りが放たれており、微笑むは面影を無くしている。
「奴等を倒します。それが、今の俺にできることです」
鋭い声が放たれるや、少年が持っている剣に炎素が宿る。
衛士は一瞬、全身の鳥肌が遡り恐怖した。
それほどまでに、少年の覇気が高まっていた。
***
大きく息を吸い、激発寸前の感情をどうにか押し留めて、剣を構える。
魔獣は、こちらの殺意に怯えているのか戸惑いを見せている。
先程まで衛士を殺戮していた魔獣が、通常のドランエイプのように怯えているのか、それともこの剣の気迫に気付いたのか。
だが今となっては、どちらでも良い。
数多くの衛士を殺した魔獣を生かす理由なんて、禁書目録にも、街の掟にも
「ないからな!!」
叫び、右足を踏み込む。
剣に宿った炎素を、斬撃を同時に打ち出すように、眼前のドランエイプに向けて袈裟懸けを繰り出す。
地面を穿つように繰り出された炎素と斬撃波は、片腕を失った魔獣を穿ち、斬り裂く。
二つに裂かれた魔獣は、焼け焦げた傷跡から煙を立ち昇らせている。
振り下ろした剣を構え直し、叫ぶ。
「魔獣共! その死体は、お前たちの未来の姿だ! 斬られる覚悟がある奴は前に出ろ!」
凛と響く大声に気圧されたかのように、魔獣たちの勢いがわずかに緩んだ。
しかし直後、一匹が犬歯を剥き出して雄叫びを上げた。
それに釣られ次々と雄叫びを上げる魔獣たちは、先の戸惑いを無理矢理消し去った。
流石に、そこまで上手くいかないか……。
流れる汗を払い、刀身に炎素を宿す。
この時カズヤは、自らが立てた浅はかな作戦の失敗の焦りが生じていた。
彼が立てた作戦のうち、住人と衛士の避難は成功している。
それによって、彼は魔獣の撤退も成功すると過信していた。
いくら魔獣とは言え自然で生きてきた生物。
自然に生きる生物は生き残ることに必死になり、自分より強い生物と対峙すれば、生存本能から逃走の選択肢が現れるはず。
だから彼は、持てる力全てを絞り出した一撃で、一体の魔獣を仕留めた。
これで、こちらが魔獣よりも優っていることを見せつけられた。後は奴等が命欲しさに森へ帰ることを期待していた。
だが、その作戦には穴があった。
それは、奴等が好戦的で凶暴である魔獣だということだ。
奴等は今回、たまたま群れとなって行動しているが、そこに仲間意識があるわけがない。魔獣にとって、一匹の死は然程興味のない事なのだ。
そこを見落としていたために、この作戦は失敗に終わってしまった。
こうなってしまっては、もう方法は一つしかない。
「こいつらを、全部倒すしかない……」
乾燥した唇を一度湿らせ、炎素の宿った剣を振りかぶる。
魔獣が動くのと同時に、剣を勢いよく振り下ろす。
再び、炎素を宿した斬撃波が発生する。
今回は少し学習したのか、粗悪な棍棒を前に突き出し、斬撃波を受け止めてきた。
だが受け止めるはずもなく、粗悪な棍棒に炎素が燃え移り、受け止めていた斬撃波によって粉砕される。
魔獣の死体は燃焼を終えると黒い炭と化し──。直後に粉々に崩れて跡形もなく消滅した。
もう一発、同じ攻撃を撃ち出そうと剣を構えた途端。
「ッ──!?」
全身を電光に似た痛みが駆け巡り、その場にひざまずく。
喉からこみ上げてきたものを吐き捨てると、真っ赤な液体が石畳に小さな斑点を作り上げた。
ここで俺は、自分に起きている異変に感づいた。
戴天の鉤爪を素材にした長剣は、あの天界の騎士が扱う武器と同等の業物。
それを、一般高校生である俺が、たかが数週間振り続けただけで使えるわけがない。
今までは腕が痛くなったところで素振りをやめているが、それだけでも全身に負担が掛かっている。
睡眠では取れない負担に蝕まれているにも関わらず、俺はこの剣を全力で二度振り続けた。
当然、体は悲鳴を上げる。
しかもただ振るのではなく、炎素も組み合わせているため、精神にも負担を掛けている。
心身ともに負担を掛ければ、立つことさえ難しくなる。
吐血の勢いは収まらず、次から次にこみ上げてくる。
その場で血を吐き出し続けると、眼前で何者かが立ち止まった。
顔を上げると、顔に傷を負った魔獣が、棍棒を振り下ろしていた。
──殺られる!
なんとか上体を起こし、膂力を無理矢理引き締めて鞘で迎撃する。
鞘と棍棒は火花を散らせ、衝突の勢いによって後方へ吹き飛ばされる。
背中から地面に衝突し、肺から酸素が一気に放出され、息苦しさと目眩が生じる。だが意識だけは激痛によって引き止められた。
鞘を杖代わりに立ち上がり、不足した酸素を必死に取り込むために、必死に呼吸を繰り返す。
視線を前方の魔獣に据え、剣を構える。それだけの動作で、全身にまたもや激痛が駆け巡る。
「まだだ……まだ。時間を、稼がなきゃ」
倒れそうになる自分に言い聞かせるように呟き、突進してくる魔獣を見据える。
そして、両眼を見開く。
突進していた魔獣が、突然力なく倒れ込んだ。
だが、カズヤが驚愕したのは、倒れた魔獣ではなく、倒れた魔獣の後ろに立っていた者だった。
横風でなびく紫のスカートと、後ろで結われた紫髪のポニーテール。
頭頂部に生えている、狼に似た二つの耳に、ボリュームのある毛量の尻尾。
獣人族であり、人族に深い憎悪を抱いていたサヤが、片手に仰々しい大剣を持って立っていた。
「サ……サヤ……どうして」
萎れた声を喉から搾り出し、自分を救ってくれた獣人の名を呼んだ。
サヤは、大剣を楽々持ち上げながら、尻尾を激しく振りつつ歩み寄ってきた。
俺はその間、彼女が持っている大剣にのみ、視線を集中させてしまった。
──なんだ……あの剣は。
明らかに女性が持てるサイズではない。
紫の刀身をした大剣は、俺の剣よりも三倍ほどの幅をしている。
刀に似た構造なのか、片方に刃はない。だがもう片方の刃は、狼の牙を思わせるほどギザギザしており、殺傷力の高さを見せつけている。
あんな大剣、彼女の家にあったか? そもそも、なぜサヤがここにいるんだ? まさか、俺を心配して──。
最後に現れた可能性を否定するかのように首を振ると、眼前でサヤが立ち止まった。
膝を着くカズヤを見下ろす彼女の顔色は、逆光で見えずにいた。
今、彼女がどういった表情を浮かべているのかは解らない。分かるのは精々、後ろの尻尾を先程よりも激しく振っていることだけだった。
「サヤ……どうして、ここに」
吐血しながらもう一度呼びかけると、腰の携帯袋から、濃い緑色の液体が入った小瓶を取り出した。
「それは……一体なムゴッ!?」
小瓶の栓を抜くと、こちらの質問を遮るように、開いた口に小瓶を突っ込んできた。
中に入っていた濃い緑色の液体が次々と口の中に入り込んでくる。あまりの苦酸っぱさに顔をしかめ、空になった小瓶を遠くに放り投げる。
「ちょっ!? お前何を!?」
抗議を口にしようとした瞬間、もう一つ取り出された小瓶を口に突っ込まれ、再度苦酸っぱい液体が口内に巡ってくる。
口に突っ込まれた小瓶が空になると、サヤはそれを遠くに放り投げた。
まだ口に残る後味に顔をしかめつつ、遮られた抗議を再開しようとした途端。
彼女の悲痛な表情が目に入り、言葉が喉に詰まった。
「カズヤ……一人で無茶しすぎよ……」
悲痛な表情で、震える声を絞り出した。
目から涙が溢れ、宝石のように輝きながら次々に滴り落ちる。
抗議しようとしていた言葉が喉の下に引っ込み、どうにか短いひと言を音に変えた。
「ごめん……」
俺の声は、自分でも驚くほど弱々しく掠れていた。
彼女が助けに来たことへの安堵からか、溜まっていた疲労と負担が一気に精算されたんだろう。全身から気怠さと眠気が湧き出てくる。
サヤは一度大きく頷くと、腰の携帯袋をこちらに差し出してきた。
「この中に、さっきと同じ霊薬があと三本入ってる。残さず飲みなさいよ」
携帯袋の中身を確認すると、確かに先程の液体が入った小瓶が三本入っている。
霊薬。
人界全土に生えている魔素を吸収して育った霊草を原材料にした薬。
新陳代謝を促進させる霊薬や、疲労困憊を完治させる霊薬など、身体的症状を治す作用が施されている。
当然身体への影響も少なからずあるため、成人男性は一日十本まで、成人していない者は五本までと、禁書目録に記載されている。
サヤが口に突っ込んだのは、きっと疲労困憊を完治させる霊薬だ。先程まで感じ取れていた気怠さが少しだけ晴れた気がする。
「待っててカズヤ。すぐ終わらせるから」
囁き、優美な動作で大剣を持ち上げ、歩き出す。
その向かう先では、三匹の魔獣が焦ったようにじりじりと後退している。
大剣を恐れているのだろうか……いや、違う。
彼女の放つ気迫に怯えているんだ。
一度サヤと剣を交えた時も、獣と対峙しているような緊張があった。
しかし、今は違う。獣なんて易しい生物ではない。
この気迫──天界の騎士にも負けず劣らずのものだ。
やがて一匹の魔獣が、耳をつんざくほどの雄叫びを上げ、棍棒を振り上げながらサヤに突進した。
大地を揺るがす勢いを持った魔獣にとって、サヤは衛士と変わらないひ弱な存在に写っているのだろう。
魔獣の口許が緩み、勝利を確信したような凶暴な笑みが漏れた。
──刹那。
魔獣は、二つに裂かれた。
暗赤色の毛皮を更に濃く染めるかのように、血飛沫が噴き出す。
サヤが何をしたのか、カズヤは見逃さなかった。
彼女は、持っている大剣を豪快に振り下ろした。
たったそれだけ。それしか行っておらず、魔術よ詠唱もしていない。
なのに──。
大剣を振っただけなのに、魔獣は二つに裂かれた。
俺の視線は無意識に大剣に向けられた。
──サヤが使ってる剣に、何か秘密があるのか?
「何見てんのよ変態」
夢中で眺めていると、サヤは振り向き様に言った。
慌てて視線を逸らし、誤魔化すように霊薬を口に含む。やはり慣れない味に苦々しい表情を浮かべながら尋ねる。
「……その剣は一体?」
紫の大剣を指差すと、何故か誇らしげな顔色になり、少し上ずった声で答えた。
「凄いでしょ。この剣は、獣人族が代々受け継いできた宝剣、餓断剣よ」
「が、餓断剣?」
剣の銘なのか、偉く物騒な響きを復唱すると、サヤは餓断剣を一度肩に担ぎ、説明を始めた。
「この剣は、獣人族を守護するための大剣として受け継がれてきた。先代は叔父様で、今は私が継承者よ」
「……へぇ~」
突然話の規模が飛躍してしまい、呆然と頷く他なかった。
というか、宝剣を受け継ぐ家系ってことは、もしかしてサヤってかなりのお嬢様?
などと考えていたのも束の間、衝撃の事実が明らかになる。
「素材には、餓狼の牙が使われてるわ」
「え!? 餓狼って、まさかあの……」
「そう。南の凍山に生息していたと言われる、古の狼よ」
「……マジかよ。なら納得だ」
口に残る苦味を意識しながら、剣の切れ味に納得したように頷く。
餓狼──。
創成期から人界の南側に生息していた、群れを成して行動する狼。独自の進化を遂げており、牙は上顎と下顎を足して四本しかない。
四本ある牙は岩を噛み砕いても欠けることはなく、捕食する肉を容易く噛みちぎる。
狼の中でも特出した脚力を持っており、高さ十メートルの崖を一飛びで越えてしまう。
知能も高く、捉えた獲物を集団で囲んで逃げ道を塞ぎ、ゆっくりと仕留める。仲間意識も高く、一匹の窮地には全匹で対処する。
一見すれば万能な生物と思える餓狼なのだが、どんな生物にも一つの欠点はある。またそれは、絶滅の直接的原因になる場合もある。餓狼も、例外ではなかった。
餓狼は、身体能力の向上とともに、体内環境にも変化があった。
動物は時間を掛けて食した物を消化するが、腹の膨れによって機動力が落ちると狩りが失敗すると判断した餓狼は、消化を促進させる霊草を食し、短時間で食料を消化する胃酸を手に入れた。
だがそれは、自らを絶滅させる選択だった。
消化が早まるということは、常に飢餓状態ということになる。いくら食しても消化され、また食しても消化される悪循環を繰り返していき、やがて食料が枯渇した。
常に飢餓状態であることから餓狼と名付けられた狼は、自ら選択した進化によって絶滅してしまった。
不運な最後を迎えた餓狼の牙は、それだけで白銀貨が何枚も飛ぶほどの稀少価値であり、それを素材にした剣などを市場に出品すれば、一生遊んで暮らせるだけの金が手に入る。
といっても、あまりにも希少なため、市場に出回ることなど滅多にない。
「ご先祖様が、風化していた牙を復元して、長い年月をかけて作り上げたのが、この餓断剣ってわけ」
餓断剣を下段に構えたサヤは、殺意の視線を魔獣に向けた。
魔獣は先程の攻撃によって畏怖しており、その場から動こうとせず、ただ眺めているだけだ。
「あなたたちに恨みはないけど、死んでもらう」
残虐非道ここに極まれり。瞬時に思いついた言葉がそれだった。
恨みもないくせに殺すなんて酷すぎるだろ、と指摘しようとしたが、今の俺にそれを言う勇気はない。
今の俺に出来るのは、携帯袋に入っている霊薬を飲み続けることしかない。
それに、魔獣は殺処分対象なのだから、サヤの言い分は決して間違いじゃない。
二匹の魔獣は、覚悟を決めたのか同時に叫び声を上げ、サヤに突進していった。
重々しい大剣を片手に持ったサヤは、強く地面を蹴り、高々と飛び上がった。
空中でしなやかに体勢を変えると、一匹の魔獣の首目掛けて、豪快な唐竹割りを繰り出す。
「ヒゴッ…………」
厳つい容貌に相応しくない、裏返った悲鳴が漏れた。
両脚から力が抜け、操り人形の糸を切断したように倒れ込んだ。頭部は胴体と離れた場所に落下し、切断面から血煙を噴き出している。
餓断剣は石畳を深々と穿ち、噴き出された血煙によって紫から暗赤に染まっていく。
サヤの全身もみるみる赤く染まっていき、顔半分が真っ赤に染まっている。
これが獣人の本当の実力。あの時は、半分の力も出していなかったのか。もし今の彼女と戦っていたらと想像すると……。
かたかたと震えながら、怯える手で四本目の小瓶の栓を抜いた。
「残り一体……」
死神の宣告かのように聞こえたそれは、魔獣すらも恐怖するおぞましさを兼ね備えていた。
もはや雄叫びすら上げられないのか、魔獣は少しずつ後退していく。
サヤは、血のついた餓断剣を振り払い、大剣を大きく振り上げた。
魔獣はそこで、最後の判決を下した。
棍棒を小枝のようにぶんぶん振り回しながら、凄まじい勢いで突進した。
前方に転がる魔獣の死体を左右に跳ね飛ばし、勢いを緩めずに突き進む。
彼女の大剣が振り下ろされる。
そして魔獣は、断末魔も上げることなく絶命した。
俺が五本目の小瓶を口にしようとした途端、数多くの衛士を蹂躙した魔獣は、一人の獣人族によって倒された。
「…………化け物」
無意識に零れた言葉は、運悪くも獣人の耳に届いてたらしく、物凄い勢いで振り返ってきた。
「あんた……今なんて言った?」
「何も言ってません!」
反射的に答えるも、思わず嘘を言ってしまったことに、今頃になって焦り始める。
「何も言ってないはないんじゃないの? 本当のことをいえば、許してあげるけ──」
「化け物って言いました! ごめんなさい!」
凄まじい速さで土下座と謝罪をすると、数秒間の沈黙の果てに、小さめな笑い声が聞こえてきた。
恐る恐る顔を上げると、必死に笑いを堪えているサヤの顔が目に入った。
「ご、ごめん。本当に、すぐ謝ってきたから、つい」
そんなに笑うようなことか? 本気で疑問に思いながら、彼女の無邪気な笑顔を見つめた。
やっぱり、普通の女の子じゃないか。
餓断剣を片手で持ち上げた挙げ句、魔獣をいとも容易く倒していく様は鬼神の如き実力だった。
戦闘中の彼女に関しては、女性と言われたら首を傾げるほど悍ましかった。
だがやはり、今みたいに戦闘とは無縁な時は、普通の女の子とほとんど変わらないことに、謎の感動を受けてしまった。
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