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第二部・一章 人界の真実
第一話
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今でも時折、元の世界での十七年間の生活を思い出すことがある。
あの頃は……毎日が味気ない時間を永遠と過ごしていた。決まった時間に起きいつも通りに学校に通い、退屈な授業を帰宅時間まで受け、同じ時間に帰り一日を終える。
永久に続く長くて遅い時間に浸かりすぎたせいで、いつしか刺激を求めるような好奇心は薄れていった。
それに比べて──。
この不思議な異世界に転移してからの日々の、なんと早く過ぎ去っていったことか。一年半を振り返るだけでも、無駄な時間を過ごした十七年よりも濃厚な時間だと断言出来る。
コドールの村を旅立って、サランの街でサヤと出会って、アースリアでワタルとの出会い、暗黒騎士との死闘、中都にある魔術剣修道学園で学んだ一年はむしろ激動の毎日で、忙しさだけなら高校以上かもしれない。なのに、こうして思い返すと、あっという間だったという感慨だけが強く湧き上がる。
当初は、一秒でも早く元の世界に帰るだけを目指していた。
だが次第に、ここでの暮らしを……ことに学園でサヤやワタル、ユリと学園で過ごした日々を、楽しいと思っていた。学園に入り、剣技を磨いたのは、この世界から早く脱出さんがためであったはずなのに。楽しい日々が続いて欲しいと心の奥底で願ったからこそ、時間は早く流れていった。
だとすれば、それは裏切りだ。元の世界で、俺の身を案じているはずの家族や友人への。
その裏切りへの、これは報いなのだろうか。魔術剣修道学園での暮らしが血と涙に塗れた終わりを迎え、わずかな陽光も届かない地の底に繋がれることとなったのは──。
物思いを中断し、上体を起こすと、俺の右手首をがっちり拘束する鋼鉄の鎖がじゃらりと鈍い音を立てた。
「……今日で、一体何日経った……」
獄吏に感づかれないように囁き、辺りを見回す。
ここは中都統制教会の地下監獄であり、禁書目録を違反した罪人が審問までの間収容する場所。
本来禁書目録を事故で違反する場合はあるが、自らの意思で違反する者は誰一人としていない──ユーグのように意図的に違反していながら勝手な理屈で違反していないことを主張する輩もいるが──人界の民の多くは禁書目録を遵守している。
それ故に、監獄内は意外と清潔に保たれている。といっても、格安のボロ宿よりという話で、中等修剣士の寮に比べてベッドは固くて窮屈だし、トイレは鋼鉄の鎖がギリギリ届く範囲にしかなく、それ以外は何もない。
おまけに周囲は濃い闇に包まれていて、灯りは鉄格子を隔てた通路の先にある獄吏の詰め所からかすかに漏れ届くのみ。
適当な棒に光素を宿す程度の初歩魔術はとっくにマスターしているが、念入りなのか偶然なのか、この牢獄には空間魔素が枯渇しているため、初歩的な素因一つ生成出来ない。
体感的には、この地下牢獄に投獄されたのは七十時間ほど前。更に魔術剣修道学園から中都統制教会にまで半日を費やし、当時は事件発生から半日経っている。つまり、禁書目録に背いてから早くも三日経ったことになり、今四日目を過ぎようとしている。
正確には、ユーグの片腕を切断しただけなので明確な殺人ではなく、傷そのものは、すぐに処置すれば致命傷にはならなかったはずだが、彼は自らの命と血を犠牲に禁忌魔術を使用し死亡した。
禁忌魔術を使用した罪人とはいえ殺したのは変わりない。結果として異世界の人間一人の命を奪ってしまったことへの、罪の意識はもちろんある。事件発生の日など、ショックのあまり眠ることすら出来なかったし、食事も喉を通らなかった。
しかし、流石に四日も経とうとすればある程度落ち着きはする。罪から目を背けるわけではないが、これからのことを考えなければならない。死んでしまったユリとの約束もあるし、セレナのことだって……。
今はそれを追求している暇はない。日が昇れば、いつ審問官だか処刑人だか天界の騎士だかが俺を引き出しに来てもおかしくないのだ。
とにかく今は、自分が置かれている現状を確認しておく必要がある。
俺は改めて自分を縛める鎖に触れてみた。ひんやりと冷たく、絶望的なまでに硬い鋼鉄は、右手首に嵌められた同素材の輪っかに一端が溶接され、もう一端は壁に埋め込まれたリングに接続している。手錠も壁のリングも鎖本体も、引っ張るくらいでどうにかなる代物ではないことはとっくに確認済みだ。
三日前の朝、俺はコドールの村を旅立って以来の最終目的地だった中都統制教会の壁をついに超えた。変わり果てたセレナによって全身をがちがちに拘束され、飛竜の脚にぶら下げられて、ではあったが。
偉大な建造物を鑑賞する暇もなく、裏から地下へと降りる螺旋階段を延々歩かされ、ようやく到着した地下牢で、俺は恐ろしげな獄吏に引き渡された。
セレナは役目を終えると振り向きもせずに去り、ヤカンのような金属マスクを被った巨漢の獄吏が、のろのろとした……しかし着実な動作で、俺を牢の鎖に繋いだ。
食事は、朝と夕方の二度、かちかちに乾いたパンと生温い水の入った革袋が檻越しに放られただけだ。サヤとユリが手作りした手料理が高級料理と言っても過言ではないほどの不味さだったのを、今なお舌が鮮明に覚えている。
鎖を引っ張る、叩く、かじる等の試みは、投獄された日のうちに軒並み失敗している。もし戴天の鉤爪で作られた、自称《焔天剣》があればこんな鎖など一撃で両断出来るというものだが、せっかくサヤが持ってきてくれた愛剣はセレナと共に行方が知れない。
つまるところ、現段階では八方塞がりに限りなく近い状況である。
「なす術なし……か」
鉄枠にボロ布を被せただけのベッドに座ったまま、力なく呟く。このままでは何も出来ずに審問台に立たされ、何らかの刑を宣告され──その後は想像したくない。
盛大にため息を吐きながら窮屈なベッドに横たわる。
すると突然。
カツン、カツン、と鉄格子の向こうから、軽やかな足音が聞こえた。
ベッドから上体を起こし、鉄格子の向こうに広がる闇を見つめていると、暗闇の中から突然、輝きを帯びた鎧を纏う、一人の人族が姿を現した。
鎧男は何も言わず、無言で施錠に鍵を差し込むと、乱暴にガチャガチャと音を立てながら施錠を解き、錆びれた音を地下牢獄全体に響かせながら出入り口を開け、おぼつく足取りで中に入ってきた。
審問の時が来たのかと思い固唾を飲んだ瞬間、理解し難い出来事が、何の前触れもなく起きた。
鎧男は突然、一言も発さずに、カズヤの胸に倒れ込んできた。
「なっ!?」
男の重量と鎧の重量に押し負けてしまい、ベッドに頭から激突する。
しばしその場にうずくまり、両手で頭を抱えて、痛みと目眩に耐える。それらが収まってから、突然胸に飛び込んできた鎧男の頭を左手で何度も叩いた。
「どうしたんですかいきなり。具合でも悪いんですか」
倒れてきた男に尋ねるも、何の反応も返ってこない。
不思議に思ったカズヤは、まず上体を起こすために鎧男の頭をどけようとした、寸前。
「……助け…………て」
酷く掠れた声が、男から発せられた。男は緩慢な動作で右腕を上げ、次いで顔を上げた。
そして俺は、小さく息を呑んだ。
先程は暗がりでよく見えなかったが、男の鎧は真っ赤に染まっており、兜の隙間から赤い液体が噴き出していた。
「どうしたんですか! しっかりして下さい!」
すぐに治癒術を詠唱するも、空間魔素が枯渇した地下牢獄では素因の一つも作ることが出来なかった。
「頼……む…………助けて……くれ」
必死に助けを求める男は、血塗れた小手で制服の襟首を掴んできた。
「……まだ……死にたく…………ない」
男は最後にそう言うと、襟首を掴んでいた腕を糸が切れた人形のようにだらりと下げ、絶命した。
突然の出来事に気が動転する中、カズヤの視線はある一点に釘付けになっていた。
視線の先にあるもの。それは腰に携わった、一本の長剣だった。
一体何が起きているのかさっぱり理解出来ないが、今は訪れた機会を無駄にするわけにはいかないことだけは理解している。
俺は迷わず男の長剣に手を伸ばし、留め金を外す。ずっしりした重さを備えた長剣は、多少の傷や汚れはあるものの、一般販売されている長剣よりは業物であることを主張している。
人界の心臓といっても過言ではない中都統制教会を警備してるだけあって、一般兵でもそれなりの代物は与えられているらしい。
変死した男をベッドの上に寝かせボロ布を被せると、俺は鎖の中央部分に向かって、男の剣を力任せに振り下ろした。
ぎん! と鈍く激しい金属音が響いた途端、鎖に繋がれた右腕に強烈な衝撃が走る。一瞬顔をしかめるも、わずかにへこんだ箇所にもう一度剣を振り下ろす。そして再度、右腕を強烈な衝撃が襲う。
同じ作業を何度も繰り返していると──。
ピキン! という、これまでとは違う甲高い金属音が鳴り響いた。
今度こそ獄吏に気付かれたかと鉄格子の向こうをうかがうが、幸い何の反応もなかった。ほっと息を吐き、そろそろと体を起こす。
俺は右腕を突き出し、金輪から力なく垂れ下がる鎖を揺らした。長さ一メートル二十センチほどを残して、鎖は歪に切断されている。床に転がるU字型をした金属片は、剣で何度も圧力を与えられ続けていたリングが真ん中から割れ砕けたものだ。
「とりあえず、第一関門は突破出来たと……」
奥の壁から三メートルしか離れられないという状況から解放されはしたが、右手に残る鎖の尻尾を外す方法はまるで思いつかない。もう一度剣を叩きつけるにしても、長さは短く出来るかもしれないが、完全には取り外せない。
仕方なく、尻尾をくるくる前腕部に巻きつけ、即席のチェーン・ガントレットを完成させる。
「……さて、と」
次の行動に移る前に、俺は葛藤した。
牢の鍵は開いている。今ならここから脱出出来るが、それをすれば中都統制教会に真っ向から逆らうことになる。つまりは天界の騎士と対峙する恐れがあるということだ。
一年半前、人界に侵入してきた二十人余りのゴブリンを一切疲弊せずに殲滅したことを思い出し、微かに身震いする。
それに、地上では何か異変が起きている。中都統制教会に対する反乱は絶対に有り得ないし、牢に入ってきた男は謎の変死を遂げた。事が収まるまで牢に隠れている方が得策ではないか。
長い葛藤と苦慮を繰り返していると、突然獄吏の詰め所から、
「ぎゃあああ────ッ!!」
図太い声の悲鳴が轟いた。
悲鳴を聞いた瞬間、俺は考えるのをやめて牢から飛び出した。
連行された時に頭に叩き込んでおいた情報によれば、地下牢獄は車輪のスポーク状に八本の通路が延び、それぞれの通路の両側に収容房が四室ずつ設けられている構造だ。満室になった試しがないため、ほぼ全ての牢はとても綺麗に整備されている。
八本の通路が集まる、車輪の車軸にあたる空間には小さな獄吏詰め所があり、それを取り巻いて地上に続く螺旋階段が伸び上がっている。最初は獄吏をすり抜けて階段に飛び込めればいいと思っていたが、悲鳴を聞いたとなれば放っては置けない。
暗い道を詰め所に取り付けられた淡い明かりだけを頼りに突き進む。円筒型の詰め所の壁には小さなランプが吊るされ、周囲をぼんやりと照らし出している。
角に背を預け恐る恐る中を覗き見ると、ヤカンのような金属マスクを被った巨漢が、先程の変死同様、マスクから血を流しながら倒れていた。
「大丈夫ですか!?」
脇目も振らず中に入り上体を抱き起こすも、獄吏は既に意識を失っており、力なく腕を垂らしていた。
遅れてしまったことを悔やみながら、獄吏をゆっくりと地面に置く。
「……ごめんなさい」
死体となった獄吏に一言謝罪し、腰につけられた鍵の束を手に取る。ついでに欠けた刃の剣と真新しい剣も交換し、詰め所から出て行く。
一体ここで何が起きているのか全く理解出来なかったが、今すべき行動だけははっきりと理解していた。
謎の襲撃に便乗して、創世神が眠る祭壇に行ってしまおう。最低な作戦ではあるが、このまま死刑を待つよりもずっと理想的なプランではある。
無論それ相応のリスクも伴うが、既に罪人である俺にこれ以上失うものなんてない。どうせ死刑になるぐらいならば、最後まで足掻き続けてやる。
自分の行動を正当化するような御託を並べながら、右腕に鎖を、左手に剣をという奇妙な装備で、地上に繋がる螺旋階段を登り出した。
降りた時はかなり長く思えた螺旋階段だったが、懸命に駆け上がっているとほんの数分で出口の気配が漂い始めた。空気からはだんだんとかび臭さが消え、じっとり湿っていた壁や足許の石もいつしか艶のある大理石に変わる。
やがて行く手に仄かな光が見え、それが四角い出口の形になると、もう警戒心もかなぐり捨てて二段飛ばしで突進した。ついに地上へと到達した途端、新鮮な空気を貪るように吸い込む。
「…………ふぃ~……」
ようやく呼吸が落ち着くと、改めて周囲を見回した。空はまだ真っ暗だが、仄かな星明かりのお陰で、照明なしでもどうにか視界は確保できる。
人界を統制する中都統制教会は、広大な正方形の敷地内に存在する。三日前、飛竜にぶら下げられた状態でここぞとばかりに眺め回したところ、正門は東側にあり、そこから広い参道が教会の本体まで延びていた。
その本体の中に、人界の創造主が眠る祭壇が存在する。恐らく教会の最上部に祭壇が設置されている。そこまで到達する事が出来れば、俺は一年半ぶりに、元の世界へと戻れる……。
そんな感慨を嚙み締めながら、俺はゆっくり体を反転させ、脱走してきたばかりの地下牢の出入り口に向き合った。
扉のない長方形の穴は、純白の壁面にやや唐突な佇まいで口を開けている。滑らかに磨かれた大理石の壁に視線を移し、まず右、次に左、最後に上と眺めるが、濃い夜霧が立ちこめているせいもあってどの方向も端を見通せない。
いや、もし霧がなくても、壁の上端は見えなかったはずだ。なぜなら、ほんの一メートル先に存在する艶やかな大理石こそが、最終目的たる中都統制教会の外壁だからだ。
数歩前に出ると、左手を持ち上げ、白い壁にそっと触れた。左右に撫で、絶対的に硬く冷たい感触を確かめる。
牢から脱走して今更だが、俺は今、天界の騎士しか触ることの許されない建造物を触っている。予定していた守護隊ではなく、脱走囚人としてだが。
「セレナ……」
不意に、名前が零れた、
天界の騎士となった彼女も、この壁に触れたのだろうか……。
未だに信じられない。天真爛漫で優しかった少女が、何の躊躇いも躊躇もなく右頬を鞘で殴ってきたことが。
学園での衝撃的な再会を思い返し、殴られた頬をそっとさする。
牢に収監されている間、俺は天界の騎士となったセレナのことで頭が一杯になっていた。何故彼女が騎士になっているのか、何故再会したにも関わらず何の反応も示さないのか、疑問は尽きることなく出てきた。
ある程度落ち着きを取り戻した俺は、判明している情報などを元にして、最低限の現実的な推測を立てた。
セレナは恐らく、過去に魔界の民と接触していることから中都統制教会に連行された。そこで創世神に全てを話す過程で、セレナ自身が何か想像出来ない決意を固め、自らを天界の騎士と同じ身分にして行動していると思われる。
俺のことを知らないのは、創世神に頼み過去の記憶を封印した可能性がある。優しいセレナは、例え魔界の民でも殺す事が出来ない。それだと戦場では死んでしまうために、セレナは自らの存在を殺して、人界を守護する天界の騎士と同じ身分に成り上がったんだ。
根拠も証拠もない身勝手な憶測ではあるが、元々異常な出来事が日常茶飯事に巻き起こる異世界なんだ。元の世界の常識に当てはまるような答えの方が少ない。
「…………考えごと、してる場合じゃないか」
自分に言い聞かせ、大理石から手を離す。
すぐ傍から垂直にそびえる建造物の偉容は、まさしく人界の心臓部と言うに相応しい。最上階まで上るのは、仮に障害が何もなくても簡単ではあるまいが、逆に言えばもうそれだけだ。階段が何万段あろうと、それを全て上り切った時、俺の長い旅は終わる。想像よりも、ずっと早く。
だが無論、今唱えたのは理想的な終わりだ。現実はそう簡単に運ばない。
唯一の障害である天界の騎士が、今度は反逆者である俺に剣を向けてくる。鎖と獄吏の剣だけではかなり心許ない。
それに、問題は別にもある。
獄吏と警備兵を変死させた存在が、今もどこかに身を潜めている可能性がある。
突然牢に入ってきた警備兵は、全身血塗れで死亡していた。兜の内側からも血が噴き出しており、魔術系の攻撃で死亡したと推測できる。
この暗闇で即死系の魔術を詠唱されれば避けようがない。今最も警戒すべきは、天界の騎士よりもこちらと言っていい。
慌ただしく飛び出たせいで、何の計画も立てずに出てきてしまった。幸いまだ脱走はバレておらず追手の気配もなく、近くに身を隠せるほどの茂みはないため、現状況の再確認ぐらいは出来そうだ。
現在地は、中都統制教会の裏手ということしか解っていない。当然、東側は大理石の外壁に遮られている。
当面の目的は内部への侵入なので、近くに一階への入り口があれば話は早かったが、この西側はかなりの高さまで窓一つないツルツル仕上げでよじ登るのは無理そうだ。
唯一の開口部は上ってきたばかりの下り階段で、地下牢に他の通路が絶対に存在しないとは言えないが、上がる際に遭遇しなかった即死系の魔術者がいる可能性があるため、できれば戻りたくない。
となると次に考えるのはもちろん、外壁沿いに北か南へ移動することだ。しかし、どちらもほんの五メートルほど先で、壁と直角に金属柵が密接している。頑張ればよじ登れそうな高さだが、問題が一つ。柵の向こうにも、同じ柵が何重にも広がっていることを、三日前に上空から確認済みなのだ。
ツル性の植物がびっしり絡みついた青銅製の柵は、輝きからして地下牢の鉄格子より頑丈そうだ。そんな障壁が、西側の空間には、無数に張り巡らされている。つまりここは、植物園であると同時に迷路なのだ。恐らくは、万が一地下牢から囚人が脱走した時、地上での逃走を困難にするための。
東、南、北は壁と柵に遮られているが、西側にはゲートが一つある。そこから短い直接通路が延び、先は迷路内のちょっとした広場になっている。上空で眺めていたが、迷路の構造は複雑で、短い時間での暗記は不可能だった。しかし、どうやら他に選択肢はない。
「仕方ない……迷路を突破して、北か南に出るしかない」
ため息混じりに呟き、次に自分の装備を再確認する。
右腕には即席のチェーン・ガントレット。そして獄吏が所持していた、一般販売されているよりも少し業物な剣。鎖は解いて鞭代わりにも出来るし、先端に剣を括り付ければ遠心力を与えた強力な斬撃が繰り出せるなど、応用の効く補助装備ではある。
剣も決して弱いわけではなく、鋼鉄の鎖を叩き折る事が出来た。少しだけ期待出来るが、あまり期待しすぎない程度に留めておこう。
地下とは違い空間魔素が少しだけ漂っているが、魔道具の影響か光素のように初歩的な魔術しか詠唱出来ない程度しかない。これも脱走囚人が魔術で迷路を焼かないようにするための配慮だろう。
はっきり言えば、かなり不安な装備だ。ここに焔天剣があるだけでかなり心強いのだが、無い物ねだりをしたところで事態は急転しない。今ある装備で出来る限りのことをするしかない。
ほんの数歩で西のゲートに辿り着くと、まず金属柵を確認した。右手に巻いてる鎖で何度も叩けば破壊できるかもしれないが、時間がかかりそうだし、音を聞いて警備兵がわらわら集まってきてしまいそうだ。
俺は青銅のゲートをくぐると、まずは正面の広場を目指した。星明かりの下を、足音を殺して小走りに進む。
すぐに、次のゲートが姿を現した。この先が確か、セレナが駆る飛竜が着地した場所だ。ベンチと小さな噴水を見た覚えがあるが、植物園全体の地図があったかどうかは定かではない。いや、広場なんだからあるはずだ。
と念じながら、最初のものよりやや小さなゲートをくぐろうとしたが、寸前で足を止めた。
……誰か、いる。
咄嗟に身構え、俺は前方へ眼を凝らした。
広場は東西に延びる長方形で、俺のいるゲートが東端にあたる。中央には手紙を模したブロンズ像が立つ噴水が設けられ、その周りには柵と同じ青銅製のベンチが四つ、均等に並んでいる。
そして、俺から見て右──北のベンチに、何者かの姿があった。
波打つ長髪に隠れて顔は見えないが、細めの体軀は磨き上げられた漆黒の鎧に包まれ、左腰にはやや反りのある長剣。そして両の肩当てからは、濃い色のマントが垂れている。
鋭く息を呑み、続けて絞り出すように囁いた。
「て……天界の騎士……!」
間違いなかった。体格、髪型、装備の色からして、過去に出会った二人の騎士に当てはまらないが、二人と同じくらい強いことは容易に予想できる。
愛剣もなしに……いや、愛剣があっても無傷で勝てる相手とは思えない。
今すぐに、北か南のゲートに逃げ込むか。それとも真後ろに引き返すべきかと、一瞬迷った。しかし行動を決定する前に、爽やかな響きのある女の声が広場に流れた。
「そんなところにいないで、こちらにいらっしゃい。囚人君」
ひょいっと持ち上げられた右手に光っているのは、ワイングラスだ。見れば、ベンチにはボトルも一本置かれている。
騎士はゆっくりこちらに顔を向けると、手に持つグラスをベンチに置いた。
「残念ね。一瓶のワインを供に夜明かしするつもりでいたのに、こうして脱獄してくる囚人君がいるなんて。それに、何やら神聖な場所で狼藉を働く者もいるみたいだし」
つい気圧されて黙り込んでいると、騎士は組んでいた脚を解き、軽やかに鎧を鳴らして立ち上がった。かなりの身長──俺よりも頭一つ分は高いだろう。パープルのマントと、波打つパープルの髪が、同時に夜風になびく。
女騎士の顔は、月明かりの下でもハッとさせられるほどの美貌だった。武人の凛々しさと女性の優雅さが見事なバランスで入れ交じっている。
あまりの美貌に一瞬見惚れてしまったが、騎士が不意に発した一言で我に返り、鋭い指摘を繰り出した。
「狼藉を働く者……」
狼藉……つまり乱暴な行いが起きていることを、この女騎士は知っていたのか。知っていながら、ここでゆっくりとワインを飲んでいたのか。
「今の反応……どうやら、この事態は囚人君が引き起こしたわけじゃないようね」
微笑みながら、騎士は空いた右手で長髪を掻き上げ、ほんの少しだけ語気を強める。
「だからと言って、あなたを見逃すわけにはいかない。すぐに地下牢に戻ってもらうけど、その前に、少々厳しいお仕置きが必要かしら。もちろん君も覚悟の上でしょう?」
薄い笑みは消えていないのに、長身痩軀のシルエットから圧倒的な闘気が吹き付けてきて、俺は一歩下がりそうになるのを懸命に堪えた。腹に力を入れ直し、どうにかまともな声で言い返す。
「ならあなたも、俺が無抵抗にお仕置きを受けるとは思ってませんよね」
「威勢がいいわね。まだ学園を卒業してない可愛らしい坊やだと思っていたけど、大したものね。その空元気に敬意を評して、名乗っておくわ。──私は二十一番目に天界から召喚されし天界の騎士、キクノ。まだ若輩の身だから、そこはお許し願うわ」
騎士の美声で述べられた長広舌の台詞には、幾つかの重要情報が含まれていた。
二十一番目に召喚された若輩の騎士。つまり現段階では、天界の騎士は二十一人しかいない事が明らかになった。セレナの方が後に生まれた可能性もあるが、それでも数は決して多くはない。しかも少なからぬ騎士が、人界各地を魔界の民から守護するためにここを離れていると推定すれば、施設内に残る騎士は多くて十人というところではあるまいか。
だがそんな計算も、眼前の新米騎士を撃破できなければ、何の意味もない。
俺は右腕に巻いた鎖を解き、左手で剣を構えた。
それを見た騎士は、眉を軽く動かした。
「興味深いわね。まさか、その鎖と剣が武器なんて、少しは戦いがましい戦いが期待できそうだわ」
その声も、表情も、未だに余裕たっぷりだ。俺は少しずつ距離を詰めながら、騎士相手に有効な戦法を模索する。
唯一有効な戦法は、剣よりも間合いが遥かに広い鎖で攻め続け、小ダメージを積み重ねるといったものだ。
という俺の目論見は、しかし次の瞬間、木っ端微塵に砕け散った。騎士キクノが、右手を腰の剣ではなくマントに覆われた背中に動かしながら、続けて言ったのだ。
「なら私も、剣ではなくこちらを使わせてもらうね」
さっと引き抜かれた右手が握り締めるのは、二つ目の武器──純銀の輝きを帯びる、鎖鎌だった。
無骨な鎖とは対照的に、美麗に洗礼された鎖に繋がれた、死神の鎌を思わせる巨大な鎌は、石畳の上に落ちただけで深々と突き刺さった。あんなものに切り裂かれたら、皮膚が裂ける程度では済まない。確実に分断されてしまう。
その上、鎖の全長は目測で少なくとも四メートル以上はありそうだった。こちらの鎖は一・二メートル、リーチの差は三倍以上。これでは、先ほどの戦法など成立しない。
俺が冷や汗をかきつつ立ち止まると、キクノはこちらの内心を見透かしたように右手を鋭く振った。石畳に突き刺さった鎌が空中でうねり、騎士の左手に収まる。
「それじゃ……禁書目録だけに飽き足らず、創世神様が眠る中都統制教会に背いたあげく、牢破りまでした覚悟に敬意を表して、最初から全力でイかせてもらうわ」
こちらが反応する間もなく、キクノは柔らかい声で言った。
「可愛らしい坊やを傷つけるのはお姉さんの趣味じゃないけど、悪く思わないでね。坊や、結構お姉さん好みの可愛らしい見た目をしていたのに、本当に残念だわ」
よく分からない戯言に耳を傾けず、俺は目の前に立つ女性を再認識した。
眼前に立つのは、人界最強の騎士。こちらの常識が通用する相手じゃないことを、改めて痛感させられた。
あの頃は……毎日が味気ない時間を永遠と過ごしていた。決まった時間に起きいつも通りに学校に通い、退屈な授業を帰宅時間まで受け、同じ時間に帰り一日を終える。
永久に続く長くて遅い時間に浸かりすぎたせいで、いつしか刺激を求めるような好奇心は薄れていった。
それに比べて──。
この不思議な異世界に転移してからの日々の、なんと早く過ぎ去っていったことか。一年半を振り返るだけでも、無駄な時間を過ごした十七年よりも濃厚な時間だと断言出来る。
コドールの村を旅立って、サランの街でサヤと出会って、アースリアでワタルとの出会い、暗黒騎士との死闘、中都にある魔術剣修道学園で学んだ一年はむしろ激動の毎日で、忙しさだけなら高校以上かもしれない。なのに、こうして思い返すと、あっという間だったという感慨だけが強く湧き上がる。
当初は、一秒でも早く元の世界に帰るだけを目指していた。
だが次第に、ここでの暮らしを……ことに学園でサヤやワタル、ユリと学園で過ごした日々を、楽しいと思っていた。学園に入り、剣技を磨いたのは、この世界から早く脱出さんがためであったはずなのに。楽しい日々が続いて欲しいと心の奥底で願ったからこそ、時間は早く流れていった。
だとすれば、それは裏切りだ。元の世界で、俺の身を案じているはずの家族や友人への。
その裏切りへの、これは報いなのだろうか。魔術剣修道学園での暮らしが血と涙に塗れた終わりを迎え、わずかな陽光も届かない地の底に繋がれることとなったのは──。
物思いを中断し、上体を起こすと、俺の右手首をがっちり拘束する鋼鉄の鎖がじゃらりと鈍い音を立てた。
「……今日で、一体何日経った……」
獄吏に感づかれないように囁き、辺りを見回す。
ここは中都統制教会の地下監獄であり、禁書目録を違反した罪人が審問までの間収容する場所。
本来禁書目録を事故で違反する場合はあるが、自らの意思で違反する者は誰一人としていない──ユーグのように意図的に違反していながら勝手な理屈で違反していないことを主張する輩もいるが──人界の民の多くは禁書目録を遵守している。
それ故に、監獄内は意外と清潔に保たれている。といっても、格安のボロ宿よりという話で、中等修剣士の寮に比べてベッドは固くて窮屈だし、トイレは鋼鉄の鎖がギリギリ届く範囲にしかなく、それ以外は何もない。
おまけに周囲は濃い闇に包まれていて、灯りは鉄格子を隔てた通路の先にある獄吏の詰め所からかすかに漏れ届くのみ。
適当な棒に光素を宿す程度の初歩魔術はとっくにマスターしているが、念入りなのか偶然なのか、この牢獄には空間魔素が枯渇しているため、初歩的な素因一つ生成出来ない。
体感的には、この地下牢獄に投獄されたのは七十時間ほど前。更に魔術剣修道学園から中都統制教会にまで半日を費やし、当時は事件発生から半日経っている。つまり、禁書目録に背いてから早くも三日経ったことになり、今四日目を過ぎようとしている。
正確には、ユーグの片腕を切断しただけなので明確な殺人ではなく、傷そのものは、すぐに処置すれば致命傷にはならなかったはずだが、彼は自らの命と血を犠牲に禁忌魔術を使用し死亡した。
禁忌魔術を使用した罪人とはいえ殺したのは変わりない。結果として異世界の人間一人の命を奪ってしまったことへの、罪の意識はもちろんある。事件発生の日など、ショックのあまり眠ることすら出来なかったし、食事も喉を通らなかった。
しかし、流石に四日も経とうとすればある程度落ち着きはする。罪から目を背けるわけではないが、これからのことを考えなければならない。死んでしまったユリとの約束もあるし、セレナのことだって……。
今はそれを追求している暇はない。日が昇れば、いつ審問官だか処刑人だか天界の騎士だかが俺を引き出しに来てもおかしくないのだ。
とにかく今は、自分が置かれている現状を確認しておく必要がある。
俺は改めて自分を縛める鎖に触れてみた。ひんやりと冷たく、絶望的なまでに硬い鋼鉄は、右手首に嵌められた同素材の輪っかに一端が溶接され、もう一端は壁に埋め込まれたリングに接続している。手錠も壁のリングも鎖本体も、引っ張るくらいでどうにかなる代物ではないことはとっくに確認済みだ。
三日前の朝、俺はコドールの村を旅立って以来の最終目的地だった中都統制教会の壁をついに超えた。変わり果てたセレナによって全身をがちがちに拘束され、飛竜の脚にぶら下げられて、ではあったが。
偉大な建造物を鑑賞する暇もなく、裏から地下へと降りる螺旋階段を延々歩かされ、ようやく到着した地下牢で、俺は恐ろしげな獄吏に引き渡された。
セレナは役目を終えると振り向きもせずに去り、ヤカンのような金属マスクを被った巨漢の獄吏が、のろのろとした……しかし着実な動作で、俺を牢の鎖に繋いだ。
食事は、朝と夕方の二度、かちかちに乾いたパンと生温い水の入った革袋が檻越しに放られただけだ。サヤとユリが手作りした手料理が高級料理と言っても過言ではないほどの不味さだったのを、今なお舌が鮮明に覚えている。
鎖を引っ張る、叩く、かじる等の試みは、投獄された日のうちに軒並み失敗している。もし戴天の鉤爪で作られた、自称《焔天剣》があればこんな鎖など一撃で両断出来るというものだが、せっかくサヤが持ってきてくれた愛剣はセレナと共に行方が知れない。
つまるところ、現段階では八方塞がりに限りなく近い状況である。
「なす術なし……か」
鉄枠にボロ布を被せただけのベッドに座ったまま、力なく呟く。このままでは何も出来ずに審問台に立たされ、何らかの刑を宣告され──その後は想像したくない。
盛大にため息を吐きながら窮屈なベッドに横たわる。
すると突然。
カツン、カツン、と鉄格子の向こうから、軽やかな足音が聞こえた。
ベッドから上体を起こし、鉄格子の向こうに広がる闇を見つめていると、暗闇の中から突然、輝きを帯びた鎧を纏う、一人の人族が姿を現した。
鎧男は何も言わず、無言で施錠に鍵を差し込むと、乱暴にガチャガチャと音を立てながら施錠を解き、錆びれた音を地下牢獄全体に響かせながら出入り口を開け、おぼつく足取りで中に入ってきた。
審問の時が来たのかと思い固唾を飲んだ瞬間、理解し難い出来事が、何の前触れもなく起きた。
鎧男は突然、一言も発さずに、カズヤの胸に倒れ込んできた。
「なっ!?」
男の重量と鎧の重量に押し負けてしまい、ベッドに頭から激突する。
しばしその場にうずくまり、両手で頭を抱えて、痛みと目眩に耐える。それらが収まってから、突然胸に飛び込んできた鎧男の頭を左手で何度も叩いた。
「どうしたんですかいきなり。具合でも悪いんですか」
倒れてきた男に尋ねるも、何の反応も返ってこない。
不思議に思ったカズヤは、まず上体を起こすために鎧男の頭をどけようとした、寸前。
「……助け…………て」
酷く掠れた声が、男から発せられた。男は緩慢な動作で右腕を上げ、次いで顔を上げた。
そして俺は、小さく息を呑んだ。
先程は暗がりでよく見えなかったが、男の鎧は真っ赤に染まっており、兜の隙間から赤い液体が噴き出していた。
「どうしたんですか! しっかりして下さい!」
すぐに治癒術を詠唱するも、空間魔素が枯渇した地下牢獄では素因の一つも作ることが出来なかった。
「頼……む…………助けて……くれ」
必死に助けを求める男は、血塗れた小手で制服の襟首を掴んできた。
「……まだ……死にたく…………ない」
男は最後にそう言うと、襟首を掴んでいた腕を糸が切れた人形のようにだらりと下げ、絶命した。
突然の出来事に気が動転する中、カズヤの視線はある一点に釘付けになっていた。
視線の先にあるもの。それは腰に携わった、一本の長剣だった。
一体何が起きているのかさっぱり理解出来ないが、今は訪れた機会を無駄にするわけにはいかないことだけは理解している。
俺は迷わず男の長剣に手を伸ばし、留め金を外す。ずっしりした重さを備えた長剣は、多少の傷や汚れはあるものの、一般販売されている長剣よりは業物であることを主張している。
人界の心臓といっても過言ではない中都統制教会を警備してるだけあって、一般兵でもそれなりの代物は与えられているらしい。
変死した男をベッドの上に寝かせボロ布を被せると、俺は鎖の中央部分に向かって、男の剣を力任せに振り下ろした。
ぎん! と鈍く激しい金属音が響いた途端、鎖に繋がれた右腕に強烈な衝撃が走る。一瞬顔をしかめるも、わずかにへこんだ箇所にもう一度剣を振り下ろす。そして再度、右腕を強烈な衝撃が襲う。
同じ作業を何度も繰り返していると──。
ピキン! という、これまでとは違う甲高い金属音が鳴り響いた。
今度こそ獄吏に気付かれたかと鉄格子の向こうをうかがうが、幸い何の反応もなかった。ほっと息を吐き、そろそろと体を起こす。
俺は右腕を突き出し、金輪から力なく垂れ下がる鎖を揺らした。長さ一メートル二十センチほどを残して、鎖は歪に切断されている。床に転がるU字型をした金属片は、剣で何度も圧力を与えられ続けていたリングが真ん中から割れ砕けたものだ。
「とりあえず、第一関門は突破出来たと……」
奥の壁から三メートルしか離れられないという状況から解放されはしたが、右手に残る鎖の尻尾を外す方法はまるで思いつかない。もう一度剣を叩きつけるにしても、長さは短く出来るかもしれないが、完全には取り外せない。
仕方なく、尻尾をくるくる前腕部に巻きつけ、即席のチェーン・ガントレットを完成させる。
「……さて、と」
次の行動に移る前に、俺は葛藤した。
牢の鍵は開いている。今ならここから脱出出来るが、それをすれば中都統制教会に真っ向から逆らうことになる。つまりは天界の騎士と対峙する恐れがあるということだ。
一年半前、人界に侵入してきた二十人余りのゴブリンを一切疲弊せずに殲滅したことを思い出し、微かに身震いする。
それに、地上では何か異変が起きている。中都統制教会に対する反乱は絶対に有り得ないし、牢に入ってきた男は謎の変死を遂げた。事が収まるまで牢に隠れている方が得策ではないか。
長い葛藤と苦慮を繰り返していると、突然獄吏の詰め所から、
「ぎゃあああ────ッ!!」
図太い声の悲鳴が轟いた。
悲鳴を聞いた瞬間、俺は考えるのをやめて牢から飛び出した。
連行された時に頭に叩き込んでおいた情報によれば、地下牢獄は車輪のスポーク状に八本の通路が延び、それぞれの通路の両側に収容房が四室ずつ設けられている構造だ。満室になった試しがないため、ほぼ全ての牢はとても綺麗に整備されている。
八本の通路が集まる、車輪の車軸にあたる空間には小さな獄吏詰め所があり、それを取り巻いて地上に続く螺旋階段が伸び上がっている。最初は獄吏をすり抜けて階段に飛び込めればいいと思っていたが、悲鳴を聞いたとなれば放っては置けない。
暗い道を詰め所に取り付けられた淡い明かりだけを頼りに突き進む。円筒型の詰め所の壁には小さなランプが吊るされ、周囲をぼんやりと照らし出している。
角に背を預け恐る恐る中を覗き見ると、ヤカンのような金属マスクを被った巨漢が、先程の変死同様、マスクから血を流しながら倒れていた。
「大丈夫ですか!?」
脇目も振らず中に入り上体を抱き起こすも、獄吏は既に意識を失っており、力なく腕を垂らしていた。
遅れてしまったことを悔やみながら、獄吏をゆっくりと地面に置く。
「……ごめんなさい」
死体となった獄吏に一言謝罪し、腰につけられた鍵の束を手に取る。ついでに欠けた刃の剣と真新しい剣も交換し、詰め所から出て行く。
一体ここで何が起きているのか全く理解出来なかったが、今すべき行動だけははっきりと理解していた。
謎の襲撃に便乗して、創世神が眠る祭壇に行ってしまおう。最低な作戦ではあるが、このまま死刑を待つよりもずっと理想的なプランではある。
無論それ相応のリスクも伴うが、既に罪人である俺にこれ以上失うものなんてない。どうせ死刑になるぐらいならば、最後まで足掻き続けてやる。
自分の行動を正当化するような御託を並べながら、右腕に鎖を、左手に剣をという奇妙な装備で、地上に繋がる螺旋階段を登り出した。
降りた時はかなり長く思えた螺旋階段だったが、懸命に駆け上がっているとほんの数分で出口の気配が漂い始めた。空気からはだんだんとかび臭さが消え、じっとり湿っていた壁や足許の石もいつしか艶のある大理石に変わる。
やがて行く手に仄かな光が見え、それが四角い出口の形になると、もう警戒心もかなぐり捨てて二段飛ばしで突進した。ついに地上へと到達した途端、新鮮な空気を貪るように吸い込む。
「…………ふぃ~……」
ようやく呼吸が落ち着くと、改めて周囲を見回した。空はまだ真っ暗だが、仄かな星明かりのお陰で、照明なしでもどうにか視界は確保できる。
人界を統制する中都統制教会は、広大な正方形の敷地内に存在する。三日前、飛竜にぶら下げられた状態でここぞとばかりに眺め回したところ、正門は東側にあり、そこから広い参道が教会の本体まで延びていた。
その本体の中に、人界の創造主が眠る祭壇が存在する。恐らく教会の最上部に祭壇が設置されている。そこまで到達する事が出来れば、俺は一年半ぶりに、元の世界へと戻れる……。
そんな感慨を嚙み締めながら、俺はゆっくり体を反転させ、脱走してきたばかりの地下牢の出入り口に向き合った。
扉のない長方形の穴は、純白の壁面にやや唐突な佇まいで口を開けている。滑らかに磨かれた大理石の壁に視線を移し、まず右、次に左、最後に上と眺めるが、濃い夜霧が立ちこめているせいもあってどの方向も端を見通せない。
いや、もし霧がなくても、壁の上端は見えなかったはずだ。なぜなら、ほんの一メートル先に存在する艶やかな大理石こそが、最終目的たる中都統制教会の外壁だからだ。
数歩前に出ると、左手を持ち上げ、白い壁にそっと触れた。左右に撫で、絶対的に硬く冷たい感触を確かめる。
牢から脱走して今更だが、俺は今、天界の騎士しか触ることの許されない建造物を触っている。予定していた守護隊ではなく、脱走囚人としてだが。
「セレナ……」
不意に、名前が零れた、
天界の騎士となった彼女も、この壁に触れたのだろうか……。
未だに信じられない。天真爛漫で優しかった少女が、何の躊躇いも躊躇もなく右頬を鞘で殴ってきたことが。
学園での衝撃的な再会を思い返し、殴られた頬をそっとさする。
牢に収監されている間、俺は天界の騎士となったセレナのことで頭が一杯になっていた。何故彼女が騎士になっているのか、何故再会したにも関わらず何の反応も示さないのか、疑問は尽きることなく出てきた。
ある程度落ち着きを取り戻した俺は、判明している情報などを元にして、最低限の現実的な推測を立てた。
セレナは恐らく、過去に魔界の民と接触していることから中都統制教会に連行された。そこで創世神に全てを話す過程で、セレナ自身が何か想像出来ない決意を固め、自らを天界の騎士と同じ身分にして行動していると思われる。
俺のことを知らないのは、創世神に頼み過去の記憶を封印した可能性がある。優しいセレナは、例え魔界の民でも殺す事が出来ない。それだと戦場では死んでしまうために、セレナは自らの存在を殺して、人界を守護する天界の騎士と同じ身分に成り上がったんだ。
根拠も証拠もない身勝手な憶測ではあるが、元々異常な出来事が日常茶飯事に巻き起こる異世界なんだ。元の世界の常識に当てはまるような答えの方が少ない。
「…………考えごと、してる場合じゃないか」
自分に言い聞かせ、大理石から手を離す。
すぐ傍から垂直にそびえる建造物の偉容は、まさしく人界の心臓部と言うに相応しい。最上階まで上るのは、仮に障害が何もなくても簡単ではあるまいが、逆に言えばもうそれだけだ。階段が何万段あろうと、それを全て上り切った時、俺の長い旅は終わる。想像よりも、ずっと早く。
だが無論、今唱えたのは理想的な終わりだ。現実はそう簡単に運ばない。
唯一の障害である天界の騎士が、今度は反逆者である俺に剣を向けてくる。鎖と獄吏の剣だけではかなり心許ない。
それに、問題は別にもある。
獄吏と警備兵を変死させた存在が、今もどこかに身を潜めている可能性がある。
突然牢に入ってきた警備兵は、全身血塗れで死亡していた。兜の内側からも血が噴き出しており、魔術系の攻撃で死亡したと推測できる。
この暗闇で即死系の魔術を詠唱されれば避けようがない。今最も警戒すべきは、天界の騎士よりもこちらと言っていい。
慌ただしく飛び出たせいで、何の計画も立てずに出てきてしまった。幸いまだ脱走はバレておらず追手の気配もなく、近くに身を隠せるほどの茂みはないため、現状況の再確認ぐらいは出来そうだ。
現在地は、中都統制教会の裏手ということしか解っていない。当然、東側は大理石の外壁に遮られている。
当面の目的は内部への侵入なので、近くに一階への入り口があれば話は早かったが、この西側はかなりの高さまで窓一つないツルツル仕上げでよじ登るのは無理そうだ。
唯一の開口部は上ってきたばかりの下り階段で、地下牢に他の通路が絶対に存在しないとは言えないが、上がる際に遭遇しなかった即死系の魔術者がいる可能性があるため、できれば戻りたくない。
となると次に考えるのはもちろん、外壁沿いに北か南へ移動することだ。しかし、どちらもほんの五メートルほど先で、壁と直角に金属柵が密接している。頑張ればよじ登れそうな高さだが、問題が一つ。柵の向こうにも、同じ柵が何重にも広がっていることを、三日前に上空から確認済みなのだ。
ツル性の植物がびっしり絡みついた青銅製の柵は、輝きからして地下牢の鉄格子より頑丈そうだ。そんな障壁が、西側の空間には、無数に張り巡らされている。つまりここは、植物園であると同時に迷路なのだ。恐らくは、万が一地下牢から囚人が脱走した時、地上での逃走を困難にするための。
東、南、北は壁と柵に遮られているが、西側にはゲートが一つある。そこから短い直接通路が延び、先は迷路内のちょっとした広場になっている。上空で眺めていたが、迷路の構造は複雑で、短い時間での暗記は不可能だった。しかし、どうやら他に選択肢はない。
「仕方ない……迷路を突破して、北か南に出るしかない」
ため息混じりに呟き、次に自分の装備を再確認する。
右腕には即席のチェーン・ガントレット。そして獄吏が所持していた、一般販売されているよりも少し業物な剣。鎖は解いて鞭代わりにも出来るし、先端に剣を括り付ければ遠心力を与えた強力な斬撃が繰り出せるなど、応用の効く補助装備ではある。
剣も決して弱いわけではなく、鋼鉄の鎖を叩き折る事が出来た。少しだけ期待出来るが、あまり期待しすぎない程度に留めておこう。
地下とは違い空間魔素が少しだけ漂っているが、魔道具の影響か光素のように初歩的な魔術しか詠唱出来ない程度しかない。これも脱走囚人が魔術で迷路を焼かないようにするための配慮だろう。
はっきり言えば、かなり不安な装備だ。ここに焔天剣があるだけでかなり心強いのだが、無い物ねだりをしたところで事態は急転しない。今ある装備で出来る限りのことをするしかない。
ほんの数歩で西のゲートに辿り着くと、まず金属柵を確認した。右手に巻いてる鎖で何度も叩けば破壊できるかもしれないが、時間がかかりそうだし、音を聞いて警備兵がわらわら集まってきてしまいそうだ。
俺は青銅のゲートをくぐると、まずは正面の広場を目指した。星明かりの下を、足音を殺して小走りに進む。
すぐに、次のゲートが姿を現した。この先が確か、セレナが駆る飛竜が着地した場所だ。ベンチと小さな噴水を見た覚えがあるが、植物園全体の地図があったかどうかは定かではない。いや、広場なんだからあるはずだ。
と念じながら、最初のものよりやや小さなゲートをくぐろうとしたが、寸前で足を止めた。
……誰か、いる。
咄嗟に身構え、俺は前方へ眼を凝らした。
広場は東西に延びる長方形で、俺のいるゲートが東端にあたる。中央には手紙を模したブロンズ像が立つ噴水が設けられ、その周りには柵と同じ青銅製のベンチが四つ、均等に並んでいる。
そして、俺から見て右──北のベンチに、何者かの姿があった。
波打つ長髪に隠れて顔は見えないが、細めの体軀は磨き上げられた漆黒の鎧に包まれ、左腰にはやや反りのある長剣。そして両の肩当てからは、濃い色のマントが垂れている。
鋭く息を呑み、続けて絞り出すように囁いた。
「て……天界の騎士……!」
間違いなかった。体格、髪型、装備の色からして、過去に出会った二人の騎士に当てはまらないが、二人と同じくらい強いことは容易に予想できる。
愛剣もなしに……いや、愛剣があっても無傷で勝てる相手とは思えない。
今すぐに、北か南のゲートに逃げ込むか。それとも真後ろに引き返すべきかと、一瞬迷った。しかし行動を決定する前に、爽やかな響きのある女の声が広場に流れた。
「そんなところにいないで、こちらにいらっしゃい。囚人君」
ひょいっと持ち上げられた右手に光っているのは、ワイングラスだ。見れば、ベンチにはボトルも一本置かれている。
騎士はゆっくりこちらに顔を向けると、手に持つグラスをベンチに置いた。
「残念ね。一瓶のワインを供に夜明かしするつもりでいたのに、こうして脱獄してくる囚人君がいるなんて。それに、何やら神聖な場所で狼藉を働く者もいるみたいだし」
つい気圧されて黙り込んでいると、騎士は組んでいた脚を解き、軽やかに鎧を鳴らして立ち上がった。かなりの身長──俺よりも頭一つ分は高いだろう。パープルのマントと、波打つパープルの髪が、同時に夜風になびく。
女騎士の顔は、月明かりの下でもハッとさせられるほどの美貌だった。武人の凛々しさと女性の優雅さが見事なバランスで入れ交じっている。
あまりの美貌に一瞬見惚れてしまったが、騎士が不意に発した一言で我に返り、鋭い指摘を繰り出した。
「狼藉を働く者……」
狼藉……つまり乱暴な行いが起きていることを、この女騎士は知っていたのか。知っていながら、ここでゆっくりとワインを飲んでいたのか。
「今の反応……どうやら、この事態は囚人君が引き起こしたわけじゃないようね」
微笑みながら、騎士は空いた右手で長髪を掻き上げ、ほんの少しだけ語気を強める。
「だからと言って、あなたを見逃すわけにはいかない。すぐに地下牢に戻ってもらうけど、その前に、少々厳しいお仕置きが必要かしら。もちろん君も覚悟の上でしょう?」
薄い笑みは消えていないのに、長身痩軀のシルエットから圧倒的な闘気が吹き付けてきて、俺は一歩下がりそうになるのを懸命に堪えた。腹に力を入れ直し、どうにかまともな声で言い返す。
「ならあなたも、俺が無抵抗にお仕置きを受けるとは思ってませんよね」
「威勢がいいわね。まだ学園を卒業してない可愛らしい坊やだと思っていたけど、大したものね。その空元気に敬意を評して、名乗っておくわ。──私は二十一番目に天界から召喚されし天界の騎士、キクノ。まだ若輩の身だから、そこはお許し願うわ」
騎士の美声で述べられた長広舌の台詞には、幾つかの重要情報が含まれていた。
二十一番目に召喚された若輩の騎士。つまり現段階では、天界の騎士は二十一人しかいない事が明らかになった。セレナの方が後に生まれた可能性もあるが、それでも数は決して多くはない。しかも少なからぬ騎士が、人界各地を魔界の民から守護するためにここを離れていると推定すれば、施設内に残る騎士は多くて十人というところではあるまいか。
だがそんな計算も、眼前の新米騎士を撃破できなければ、何の意味もない。
俺は右腕に巻いた鎖を解き、左手で剣を構えた。
それを見た騎士は、眉を軽く動かした。
「興味深いわね。まさか、その鎖と剣が武器なんて、少しは戦いがましい戦いが期待できそうだわ」
その声も、表情も、未だに余裕たっぷりだ。俺は少しずつ距離を詰めながら、騎士相手に有効な戦法を模索する。
唯一有効な戦法は、剣よりも間合いが遥かに広い鎖で攻め続け、小ダメージを積み重ねるといったものだ。
という俺の目論見は、しかし次の瞬間、木っ端微塵に砕け散った。騎士キクノが、右手を腰の剣ではなくマントに覆われた背中に動かしながら、続けて言ったのだ。
「なら私も、剣ではなくこちらを使わせてもらうね」
さっと引き抜かれた右手が握り締めるのは、二つ目の武器──純銀の輝きを帯びる、鎖鎌だった。
無骨な鎖とは対照的に、美麗に洗礼された鎖に繋がれた、死神の鎌を思わせる巨大な鎌は、石畳の上に落ちただけで深々と突き刺さった。あんなものに切り裂かれたら、皮膚が裂ける程度では済まない。確実に分断されてしまう。
その上、鎖の全長は目測で少なくとも四メートル以上はありそうだった。こちらの鎖は一・二メートル、リーチの差は三倍以上。これでは、先ほどの戦法など成立しない。
俺が冷や汗をかきつつ立ち止まると、キクノはこちらの内心を見透かしたように右手を鋭く振った。石畳に突き刺さった鎌が空中でうねり、騎士の左手に収まる。
「それじゃ……禁書目録だけに飽き足らず、創世神様が眠る中都統制教会に背いたあげく、牢破りまでした覚悟に敬意を表して、最初から全力でイかせてもらうわ」
こちらが反応する間もなく、キクノは柔らかい声で言った。
「可愛らしい坊やを傷つけるのはお姉さんの趣味じゃないけど、悪く思わないでね。坊や、結構お姉さん好みの可愛らしい見た目をしていたのに、本当に残念だわ」
よく分からない戯言に耳を傾けず、俺は目の前に立つ女性を再認識した。
眼前に立つのは、人界最強の騎士。こちらの常識が通用する相手じゃないことを、改めて痛感させられた。
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