最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職

文字の大きさ
14 / 79

14話 マシーン作成中

しおりを挟む
「身体だるおも……」


 医薬品のCMみたいな台詞が自然と口から出てしまった。


 それだけ昨日の焼肉屋の仕事は大変で……あれ今日もあるんだよなぁ。

 変な事聞いてくる客もいたし、ちょい憂鬱かも。


「がぁ……」

「おう、おはようさん」


 ランチタイムは店に出なくていいから、その分コボルト【RR】を狩って肉を捌く練習をしろってのが店長からの業務命令。

 といっても、魔石集めとか色々やりたい事もあるし通常の探索と日替わりでいいらしいけど。


「とにかく肉のストックが不安だから今日はこっちにするか」

「がぁ……」

「お前、何か雰囲気変わったな」

「がぁ?」


 コボルトの湧く場所に入ると、コボルト【RR】が7匹正座、そして俺の声に反応するこいつ。

 昨日まではあんなに怯えてたのに、今は堂々と俺の横に立って腕を組んでいる。


 頭にある冠はレベルが上がった証拠ではあるけど、ここまで変わるもんかね。


 しかもこいつ俺の言葉分かるっぽいぞ。


「今からコボルト【RR】の肉を収穫する」

「……っぐ」


 俺の言葉に昨日からいるコボルト【RR】は喉を鳴らして反応した。

 汗は滝の様に流れ、毛は逆立っている。


 きっと『食われる』って思ってるんだろうな。


「お前には仕事がある。それを全うしてくれている間は食べはしない」

「がぁっ!」


 やっぱり俺の言葉を理解している。


 さっきまで死にかけていた顔が信じられないくらいにこやかで……ちょっとキモいな。


「そんでこれはお前が命令させてるのか?」

「がぁっ!」


 正座をしているコボルト【RR】を指差すと、こくこくと首を縦に振る。


 俺に対する誠意を表してるつもりなのかな。

 コボルトのくせに頭が回るな。


「よくやった。これからも暴れないようにコボルト【RR】を献上してくれ。ってかこれが出来るなら……」

「がぁ?」

「そもそも俺はお前みたいなコボルト【RR】以上の肉を自動で手に入れたいんだよ。今日はもう大量の肉が必要だからこいつら殺しちゃうけど……お前にはこれから食い殺し調整係兼、育成係を命ずるっ!」

「が、がぁ?」

「お前は装置から発生したコボルトをコボルト【RR】に食わせて、成長させる。そんでもって俺が来るまでにまたこの状態にさせておく。それと、装置から発生したコボルトを数匹育成して欲しい。店が忙もっとしくなれば、今の肉量じゃ間に合わないかもしれないからな。ちょっと長くなったが理解出来たか?」

「がぉっ!」


 元気だけは立派だけど、本当に理解してんのかな?

 俺に媚びてるだけ――


「がっ!」


 俺の反応が微妙だと思い焦ったのか、昨日からいるコボルト……面倒くさいから、『コボ』でいいや。


 コボは、慌てながら地面に何か書き始めた。


 こいつ、器用な上に文字まで出来やがる。



『ok(^o^ゞ』



 しかも、絵文字使ってきたわ。

 なんかちょっとだけ腹立つんだけど。





「それじゃメインイベントといくか!」

「が、がぁ……」


 俺は絵文字なんか使ってきたコボを適当にあしらって、本日のメインに差し掛かる事にした。


 右手で弾けない様にそおっとそおっと……。



「「が――」」



 俺が正座で一列に並んでいるコボルト【RR】達の、1番右端にいた奴を拳1つで即死させると、他のコボルト【RR】達は口を大きく開き、声にならない叫びを発した。


 この反応がぞわぞわするのは俺がSだからかな?


 それにそれにこの一発で仕留めたとき……ひょぉおおおたまんねえっ!



 バタ、バタバタ、バタバタバタバタ。



「――もう終わっちまった」


 緩衝材のプチプチを潰した時に似たあの快感を感じながら、俺はあっという間にコボルト【RR】達を倒した。


 ……一気に殺すのは勿体無かったかもっていうサイコパスな感情が湧いてくる。


 はぁ、今日はこれで終わりかぁ。仕方ない、こっからは店長に言われた通りに肉を捌く練習でもしようかな。


「まず血抜きして……おい、手伝ってもらってもいいか?」

「がぁっ」


 俺はコボを呼ぶと血抜きの手伝いをさせる。

 といってもコボルト【RR】の死体を支えさせるだけだけど。


「――がぁ……」


 ――血抜きを始めると、もっとビビるかと思ったけど、コボはまじまじと俺の手元を見てきた。


 しかも地面にメモみたいなものまで書いて……


 もしかしてこいつ、興味あるのか?


「どっこいしょ。次を処理する……前に、コボ。お前にこれを渡しておく。まぁ使えるか分かんないけど」


 俺はメモ帳とペンをアイテム欄から取り出すと、コボに手渡した。


 なんでかは知らないけど、学ぼうとしてる姿勢があるなら助力するってのが大人ってもんよ。


「がぁっ!」


 嬉しそうにメモ帳を開くコボ。


 そしてさらさらさらとペンを使って早速何か書き出した。


『コボルトの捌き方。①血抜き:コボルトの身体を支え……』


 どこで言葉の意味を覚えたのかは知らないが、めちゃくちゃ分かりやすくまとめだしたぞこいつ。


「急に頭良くなりすぎ出し……お前、達筆過ぎるだろっ!もう器用って言葉だけじゃ済まな――」


 俺は言いかけて止まった。


 器用、頭良い、血抜きに興味。


 ……こいつにコボルトの捌きを完璧に教え込めば、俺の負担めっちゃ減るのでは?


「コボ、お前には新しく役を与える事にした」

「がぁ?」

「俺の代わりに肉の捌きのプロになれ! まずは俺とこの動画っ! しっかりメモしておくようにっ! いいなっ!」

「がぁっ!」


 どれぐらいかかるかは分からないけど、俺は自動肉捌きマシーンまで手に入れてしまったのかも……。

しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。  無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。  一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。  甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。  しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--  これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話  複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

僕だけレベル1~レベルが上がらず無能扱いされた僕はパーティーを追放された。実は神様の不手際だったらしく、お詫びに最強スキルをもらいました~

いとうヒンジ
ファンタジー
 ある日、イチカ・シリルはパーティーを追放された。  理由は、彼のレベルがいつまでたっても「1」のままだったから。  パーティーメンバーで幼馴染でもあるキリスとエレナは、ここぞとばかりにイチカを罵倒し、邪魔者扱いする。  友人だと思っていた幼馴染たちに無能扱いされたイチカは、失意のまま家路についた。  その夜、彼は「カミサマ」を名乗る少女と出会い、自分のレベルが上がらないのはカミサマの所為だったと知る。  カミサマは、自身の不手際のお詫びとしてイチカに最強のスキルを与え、これからは好きに生きるようにと助言した。  キリスたちは力を得たイチカに仲間に戻ってほしいと懇願する。だが、自分の気持ちに従うと決めたイチカは彼らを見捨てて歩き出した。  最強のスキルを手に入れたイチカ・シリルの新しい冒険者人生が、今幕を開ける。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

処理中です...