最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職

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第49話 リアル毒を食らわば皿まで。毒うまうま。

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「はぁはぁはぁ……なんかもう疲れた」


 1階層の人だかり程ではないにしろそれ以降の階層も他とは比べ物にならない程探索者が多くて、しかも結構な数が俺に話し掛けてきて……間違いなく気疲れだ。


 ただ、流石に10階層ともなる数は減ってるみたいだな。

 【NO2】の1階層位の探索者の数だから、気持ちが落ち着く。


 これならコカトリス探しが捗るかも。


「さぁて、コカトリスはどこにいるかなぁ……ってなんだこれ?」


 早速10階層の探索を始めると、足にべちょっと何かが張り付く感覚が。


 ガムでも踏んだのかと思って足を上げると、どろっと溶けたモンスターらしき物体が引っ付いてきた。

 よーく見ると目のようなものとか、ベロみたいなものとか、尻尾みたいなもの、臓器みたいなもの、いろんな部位が殆ど姿を残さず地面にへばりついていた。


 焼肉屋勤務の俺ですら嗚咽が出そうになるくらいグロい。

 なんか紫色に色づいているのがもうヤバい。


「ぎゃああああああああああああああああああああっ!!!」

「染みない限り毒の効果はない! 直ぐに洗い流せっ!! その服もさっさと捨てろっ!」


 フロア内に木霊す男の悲鳴。

 俺はその声に体をピクリとさせると、視線を移した。


 視線の先には必死にパートナーに水をかける男と紫色の粘液のようなものが付着した服を破り捨てる男の姿があった。


 これはこの溶けたモンスターと同じ……。

 なるほどねえこれがコカトリスの毒液かぁ、うーん……景さん、卵はちょっとまた今度って事に出来ないですかね?


「コカッ!!」


 探索者2人が毒液に悪戦苦闘していると、岩陰から顔を出していた蛇のモンスターからとは思えない鶏の鳴き声が。


 そういえば細江君がコカトリスの尻尾は蛇の顔をしてるって言ってたっけ。

 じゃああの奥に本体がいるんだな。


 流石に人の多いこの場所で【ファイアボール】を使うのは危険だし、ひっそり近づいて一気に殺すしかない。


 リスク高いからあんまり近づきたくないっていうのは勿論あるけど、探索者達のあの慌てよう……誰かが助けてやらないとちょっとヤバいよな。


「――コカッ!」


 俺がひっそりとコカトリスに近づくとコカトリスは唐突に鳴き声を漏らした。


 一瞬ヒヤっとしたけど、コカトリスの顔は俺を向いていない。

 意識はあくまで探索者2人のままみたいだ。


 にしても、ヘビの顔の尻尾が無ければただのデカい鶏だな。

 鳥、せせり、鶏むね肉、ささみ、もも肉……鳥刺しは調理も洗浄殺菌処理が面倒そうだから提供は難しいかな。


 でも食いてぇ。

 ワンチャン『佐藤ジャーキー』で洗浄殺菌処理とか出来ないかな。

 それか、他の企業と協力して……ってやば涎出てきた。


 まぁそれは置いといてまずはコカトリスを殺す事からだよな。


「バレないようにバレないように、抜き足差し足忍び足、抜き足差し足忍びあ――」

「おいっ! 見ろよ! あれ、焼肉森本の神だぞっ! 神が探索者2人を助けに向かってるんだ!」


 え? お前なにしてくれてんの?

 折角気付かれないようにここまで近づいたんだけど。


 悪気はないんだろうけど……。


 ――ちっ。


 いやぁどうしよ、自然と舌打ちしちゃった。


「コカァアアアアアッ!!」


 あーもうやっぱりこっち向いちゃったじゃん……。

 蛇の顔の尻尾も俺の方に向いてるし、毒液吐き出す満々でしょこいつ。


「今のうちだっ! お前ら早くっ!! 神が体を張ってくれている隙に上の階まで逃げろ!」

「「はいっ! ありがとうございます!」」


 大声で俺の存在をばらしてくれた探索者が襲われていた探索者2人に声を掛けた。


 なんかお前がお礼を言われてるみたいなのすっごい気になるんですけど。


「頑張れ神っ! そいつは蛇の頭が弱点! それを潰せば倒せるぞ!!」

「神頑張れーっ!!」

「毒液に気を付けろっ!!」


 応援してくれるのもアドバイスしてくれるのは嬉しいんだけどさ、ゆっくり後退していくのはなんなの?

 そんだけ応援してくれるんなら一緒に戦ってくれよ!


「コカトリスの尻尾の蛇の頭には可燃性の体液を貯めている小袋がある! 火の魔法は危ないぞ! ……特に俺達が!!」


 空気読めないけど、すっげえアドバイスしてくれるからいい奴だと信じてたんだけどなあぁ……。


 そうだよね、保身が一番――



 ――ビシュッ!!



 周りの探索者達に気を取られている隙にコカトリスは尻尾の蛇の頭から勢いよく毒を吐き出した。


 咄嗟だった事と意外なスピードで避けるのに失敗。

 毒液は俺の顔にもろに掛かり口の中にまで入ってしまった。


 ヤバい、俺もさっき見たモンスターみたいに溶かされ……って、ん? この毒液ってこんなに甘いの? 正直かなり美味いぞ。

 もう手遅れだし、いっその事全部舐めとっちゃお。


 はぁ、うんめえ。

 えーっとステータスは……うん、だんだん減ってるな。

 元のHPが多いって言ってもこれ回復間に合うか?

 毒の効果がいつ表面に出てくるのかも怖……ってHPの減少終わったんだけど――


『猛毒を一度に大量摂取、猛毒状態で一定の時間が経過。スキル猛毒耐性が発現しました』 
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