最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職

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第50話 マジで痛いのって久々だな

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「――コカッ!?」

「……ごめんお前のそれ、もうシロップと変わらんわ」


 ――ビシュッビシュッ!!


 一向に毒の影響を受けない事に理解が追い付かないのか、コカトリスは毒液を吐く事を止めようとしない。


 完全に気が動転してるな。

 吐き出す毒の狙いもまともに定められてない。


 俺はそんなコカトリスとの距離を一歩一歩と詰める。

 このダンジョンを踏破するまではこいつのテイムも出来ないだろうから、毒ももう怖くないし、出来ればここでこいつを飼うみたいな事をしたいな。


 ダンジョン【NO9】、コカトリス保管計画っていうところかな。

 

「……はぁあっ!!」

「――コケッ!」


 俺はコカトリスの元に飛び込みなんとか蛇の顔の尻尾を掴んだ。


 じたばたと暴れて俺の手を振りほどこうとするコカトリスだが、強力な毒とは打って変わって力はそこまでじゃない。


「つっても動かれると鬱陶しいから……ちょっと黙ってろ」


 俺はコカトリスの尻尾の蛇を軽く小突いて気を失わせた。

 ちょっと力を入れ過ぎたから焦ったけど、コボルトやゴブリンと比較してもこのコカトリスはHPも防御力もかなり高い水準にあるらしい。


「ふぅ。もう大丈夫だからみんな普通に探索を続け……え? いない?」


 コカトリスを無力化した事を周りの探索者達に伝えようとしたけど、居た筈の探索者達はもうそこにいなかった。


 あいつら、あんだけいろいろ野次ってたのに……。

 これだから探索者って奴は――


「おじさん凄いね。毒耐性に半端ない攻撃力。いやぁ、そいつだけは毒がネックで諦めてたんだけど……。そいつ……そのコカトリスを殺さずどこかに閉じ込めようってんでしょ?それ、本当に助かるよ」


 声のする方へ視線を移すと、そこには1匹のモンスターと高校生くらいの男性が1人。

 

 モンスターは2メートルくらいの大きさの、ドラゴン?

 口から火が漏れてるところを見ると、攻撃を仕掛けようとしていたんだろう。


 もしかしてさっきまでいた探索者達はこのドラゴンの攻撃とコカトリスの持つ可燃性の体液による爆発を恐れてどこかに消えてしまったのかもしれない。

 そもそもこのドラゴン……野生じゃないのか。


「うちの会社としてもコカトリスは害悪モンスター困っていたし、いやぁ助かる助かる」

「えっと、話が見えてこないんですけど」

「ん? ああ、俺がそのコカトリスっていう種をコントロールしてあげるから渡してって事」

「……」

「反応が悪いねえ。もしかしてこのダンジョンは初めて?」

「ま、まぁ」

「仕方ないなあ。このダンジョンって上階は人が多いけど、この辺になると一気に人が減るでしょ。しかも上階には豊富にモンスターもいて、中にはドラゴン擬きのワイバーンとかレアなモンスターもいてさ。でもそれってうちの会社が上階のモンスターの発生をある程度コントロールしてるからなんだよね」

「それがなんでコカトリスを渡す事に繋がるんですか?」

「それは俺が、うちの探索者がテイムしたモンスターの発生をコントロール出来るから。だからそれを渡してって」

「……えっとぉ、なんでそんな慈善活動みたいな」

「あー……まぁ別に言ってもいいか。30階層以降はうちの会社にとって大事なドラゴン肉の生産所になってくる。だから、他の探索者にはこっちでモンスターの発生をコントロールした上階で満足してもらおうってわけ。それで1~9階層はまぁまあ上手い事いってるんだけど、10階層だけそいつ、コカトリスが邪魔で人が停滞してるんだよ。あんまりに1階層が混むもんだから最近はうちの会社にクレームが企業からくる事もあって……」

「なるほど……」

「君らとしても悪い話じゃないしさ。大人しくそのコカトリスを渡してくれよ」

「……いいですけど、無料っていうのはちょっと」

「ふーん金が欲しいって事? おじさん結構がめつ――」

「いや、そっちがこのコカトリスの発生を操作出来るのなら卵の生産に協力してくれませんか?」

「ふーん。ビジネスを持ちかけるってわけ」

「俺は毒耐性を持ってますし、コカトリスの扱いも問題なし。この10階層を焼肉森本とあなたの会社の為の養鶏場として運用しませんか?」

「確かに、卵も、コカトリスの肉も流通出来るようになればそれなりの利益が期待出来るもんね。それはいい案だと思う」

「だったら――」

「でも、それを企業で協力関係になってってなれば利益は半減。それなら俺、もっといい案があるよ」

「……それはどんな案ですか?」

「おじさんにうちの会社に来てもらう。うちの探索者として働きなよ」

「……それは出来ません」

「そう。だったら実力行使。無理やりって事も出来なくないよ。俺これでもこのダンジョン踏破してて……強いから。まあおじさんくらいならこいつで十分かもだけど」


 そう言って男性はドラゴンの尻を蹴飛ばした。

 

 するとドラゴンはぎろりと俺を睨みんで凄む。

 

 こんな強引な、暴力で従わせようっていうやり方……こいつは探索者やくざって言ってもいいかもしれないな。


「――グオオオオオオオオオオオオ大オオオオオオンッ!!」


 力強い鳴き声と共にドラゴンは超低空超高速飛行で突進してきた。

 俺はコカトリスを投げ捨ててそれを受け止めるが……。


「痛っ」


 スキル『大器晩成』が覚醒してから結構な期間が経ったけど……こんなに痛い思いをしたのはあの日以来だよ。
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