63 / 79
第63話 決行すっぞ!
しおりを挟む『はい! 本日は昨日の夜緊急であげさせて頂いた通り生放送となっております! 正社員、更には無料ご飯サービスを希望の方はこの機会をに是非是非ご参加くださーいっ!』
「優夏さん元気いっぱいだなぁ」
「昨日自分から店側の生配信にメインで出たいって言ってましたからね。きっと探索者として今回の作戦に参加出来ない分そっちで頑張りたいんですよ」
「いい子だよな、本当に」
「撮影は一ノ瀬さんが担当でお店は景さんが主軸、店長はランチタイムが始まるちょっと前から外に立って客を捌きながら『橘フーズ』の人間を丸め込む役に徹するらしいです」
「遠藤は店内で『橘フーズ』の人間が入ってしまった時ように、こっちに『ヒーリエ』を運んだ後でスタンバるらしい。ま、こっちの状況があまりに悪いようなら加勢するみたいな事も言っていたけど……」
「いくらオーク数匹が手伝ってくれるとはいえ、入り口の動画撮影兼チェックが俺だけだとしんどいかもなんで、すぐに呼ばないといけなくなりそうっすね」
「そうだね――」
「2人とも! もう上の階層で探索者がごった返して来た! 細江は直ぐに撮影の準備を! モンスター達と神様はもう先に進んでください! 俺はしんがりを担当します!」
細江君と30階層への階段前で焼肉森本のライブ配信を見ていると、慌てた様子で小鳥遊君がやって来た。
――あれから数日。
作戦決行まで実にあっという間だった。
人員の割り振り。
水面下での漏洩を装った故意による情報操作。
モンスターの育成。テイム。
細江君と小鳥遊君のレベル上げ。
オークへの『ヒーリエ』の使用方法伝達。
正直なところドラゴン相手にモンスター達がどこまで戦えるのかは分からないし、探索者がどれくらい集まるのかも分からないという状況の中、今日まで不安で仕方がなかった。
だが今の小鳥遊君の報告と、店側の同時視聴者が5万人以上集まっている事、更には意気揚々と言った様子のコボ、マグちゃん、それに他のモンスター達が俺の不安を拭っていってくれる。
「神様! 早く下に! 店側と連動してライブ配信も始めないといけないので!」
「分かった! 頼んだよ細江君!」
俺は細江君にお礼を言うと、モンスター達を連れて階段を下る。
この下は未知の領域。
ドラゴンがどれだけいるのか、そしてダンジョンを独占しているのだから、侵入してくる人間を追い返す役を担った『橘フーズ』の探索者が何人かいるはず……その人達がどれだけの実力を持っているのか。
そんな疑問が頭の中で駆け回――
「ぎぃぎゅああああああああああああああああああああっ!!!」
階段を半分ほど降りた頃、その先からドラゴンの鳴き声が。
肌がひりつくのと同時に鼓動が早くなる。
鳴き声だけでこの圧迫感、小鳥遊君じゃないけどワクワクきちまったなあ!!
「軍団森本、死ぬ気でドラゴンを殺せええええええええっ!!!」
「「お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」」
俺の声に呼応してテイムしたモンスター達も殺気の籠ったけたたましい鳴き声を発してくれる。
さぁ。景さんとの約束通りこれが全力で危険に挑む最後の探索だ!
◇
「神様と先輩、大丈夫かなぁ」
「ぶがっ!」
「え、えーっもう大丈夫なのかな? はい! こちら30階層への階段前です! イベントに参加する探索者さんは流石にまだ来ていませんが、1つ上の階層には既に探索者さん達でごったがえしているようです! えーっここを通過した探索者さんにはこの券を配布していまして、これプラスこの先で採取或いは狩ったモンスターを再びお持ちいただくと券にこのスタンプを押させて頂きます。それをお店に持っていく事で無料券として利用出来ます。無料になる量には制限はありません! ただ、お店が混んでしまった場合には時間制限を設けさせて頂きますのでご了承をお願いします。また正社員採用枠は早い者勝ちとなってます!」
俺は先に進む2人とモンスター達を見送るとカメラをオークに持たせて、早速撮影を始めた。
いつもは単純に探索している様子を撮影するだけだったからそこまで緊張しなかったけど、こうしてちゃんと説明とかするとちょっと緊張するな。
「こちらの映像は基本的に垂れ流ししているだけになりますので、店側と2窓視聴を――」
「お前ら! はぁはぁはぁ、か、勝手な事をしやがってっ! 何がイベント――」
「どけっ!! 低レベルのソロ探索者がほぼ無条件で正社員になれるチャンス! 枠は数が決まってんだ! 自分以外の奴は敵! 俺は蹴落としてでものし上がるんだよおおおっ!!」
「俺も!! この日の為にくそブラックな会社を退社してきたんだ!」
「券寄こせえええええっ!!」
ようやく1人降りてきたと思ったら他の探索者達がそれを蹴飛ばして、踏んづけて券を受け取りに来た。
順番を整理する人、準備、そんなものはない。
油断したもの、行動の遅いものは今みたいに踏んづけられるだけ。
多分さっきの探索者は『橘フーズ』の人間だとは思うけど……お気の毒様。
「ま、こっちは作戦通りかな。あっ! 券どうぞ! 採取と定時忘れないでくださいね!」
59
あなたにおすすめの小説
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~
シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。
目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。
『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。
カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。
ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。
ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。
えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始!
2024/2/21小説本編完結!
旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です
※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。
※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。
生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。
伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。
勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。
代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。
リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。
ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。
タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。
タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。
そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。
なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。
レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。
いつか彼は血をも超えていくーー。
さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。
一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。
彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。
コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ!
・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持
・12/28 ハイファンランキング 3位
インターネットで異世界無双!?
kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。
その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。
これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる