人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス

712 狙われるレオラ と アイリスの危険な囮作戦 6 現れた刺客者

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 たった今まですぐそこに居たカズが、何かを口にしたと思った瞬間、妙な体勢をして拳に力を込めレオラに変わった。

「「レオラ様!!」」

「え? え!? レオラちゃん!」

「? 姉上ッ!」

 瞬時に現れたレオラを見たアイリス達と、そのレオラ自身は突然の出来事で驚いていた。
 こんな事が出来るのは、この場でカズだけだと気付き、レオラは今まで自分が居た場所に目を向ける。

「ッ!! 第六皇女が!?」

「やらせるか!」

 カズは刺さった物を右手で掴み引き抜き、そのまま現れた男から奪い取り《威圧》を使い睨み付ける。
 カズの威圧に怯む事もなく、奪い取られた物を取り返そうともせず「チッ!」と舌打ちをし、無数の文字や模様で埋め尽くされた外套マントで全身を覆い隠す。

「!」

 全身を覆い隠した途端、そこに居るにも関わらず、魔力感知と気配感知だけではなく殺意までも消えた。
 そして急に現れた男が今度はスゥーッと姿を消し始め、カズの【マップ】からも敵対する赤い表示が薄くなる。
 カズは左腕の怪我を治す前に、完全に消えて逃げる前に刺客者を取り押さえようと右手を伸ばす。
 しかし今一歩届かず、完全に姿を消す。
 逃がしてはならないと分かってはいるが、感知系スキルだけではなく【マップ】からも反応が完全に消えてしまった。

 そこに「カズッ!」と、レオラから絶対に逃がすなと怒号がカズに飛ぶ。
 逃げると見せかけて、再度レオラを狙うか、アイリスに標的を変える可能性があると考え、カズは半壊した馬車までの広い範囲に〈重力魔法グラヴィティ〉を使用した。
 移動を阻害する程度の生半可な重力では捕らえられないと、総魔力量の一割強を使って高重力を掛けた。
 低音と共にズンッ! と周囲に数十倍の重力が掛かる。

 半壊した馬車も重力の範囲に入り、ミシミシと音を立てて後輪が壊れ、ぐしゃりと半壊していた馬車が潰れる。
 消えた刺客者の姿は見えないが、周囲の地面を見渡すと、人型に凹んだ所が出来た。
 カズは奪った物を【アイテムボックス】に放り込み、刺された左腕を〈ヒーリング〉で治療して、その場所に移動する。
 人型に凹んだ地面の周囲にだけに、重力魔法グラヴィティの範囲を狭めると、魔力を纏った手で刺客者が装備していた外套マントがあるだろう辺りを握る。
 辛うじて感触があり、掴んで剥ぎとると、隠れていた姿が見えるようになった。
 そうするとマップにも、感知スキルにも反応するようになった。
 無数の文字と模様で埋め尽くされた外套マントも、奪い返されないよう【アイテムボックス】に回収する。

「ぐゔぅぅ」

「お前は誰だ? 他に仲間は? 誰の差し金だ? 答えろ」

 カズが刺客者に質問するも、予想通り答える気はない。
 徐々に強まる重力で動けない状態にあるにも関わらず、何か言いたいのか口を動かそうとする。
 諦めて黒幕の情報でも話すのかと考えたが、ここまでの事をする者が、そう簡単に話す筈がないと考え、地肌が見えている部分に触れて〈パラライズ〉を使うと、今度は効果があった。
 重力で押し潰されてる状態で麻痺魔法の効果を受けた事で、刺客者は重力に耐えきれず気を失った。

「カズ!」

 そこにレオラが駆け付けて来た。

「殺したのか?」

「してない。口内に毒を仕込んでる可能性があったから、直接ふれて麻痺の魔法を使った。装備している物の効果なのか、最初は効かなかったんだけど、今回は効果あった」

「そうか」

「この状況で麻痺が効いたことで、先に使ってた重力魔法に耐えきれず気絶して、泡を吹いたんだろう」

 駆け寄って来たレオラに説明すると、重力魔法グラヴィティを解除すると同時に、少し離れた所に生えている蔓草つるくさを利用した〈プラントバインド〉を使い、手と足と胴体をぐるぐる巻きにして拘束した。
 避けられる事なくつるで拘束したので、気を失っているフリではないと分かり、張り詰めていた緊張感が少し和らいだ。

「なら口内に仕込んであるかも知れない毒を取り除くのは後だ。このタオルで噛めないようにして、ギルドに連れて行く。そこでくまなく全身を調べる」

「わかったが、それは俺がやる。レオラはコイツに近づかない方がいい。俺達の知らないスキルやアイテムも持ってる可能性があるし、実は動けないフリをしてる知れないだろ」

「しかしだ」

「俺はレオラとアイリス様の護衛として来ているだ。レオラがどれだけ強くて、襲って来た奴が動けないからと言って、近づかせるわけにはいかない。それよりアイリス様の所に戻ってろよ」

「そう…確かにカズの言う通りだ。拘束だけじゃなく、目隠しを忘れるな。失明しても構わない」

「わかった(久々に多くの魔力を使った。最近たいした依頼も受けてなかったし、少し平和ボケしたかな)」

 カズは厚めの布を【アイテムボックス】から取り出し、気絶している刺客者の視界を封じる。
 流石に失明したら、証拠を見せて確認させる事が出来なくなるので、巻き付けたら強めに縛るだけにした。
 拘束した刺客者を冒険者ギルド本部に連れて行くは後にして、先にアイリスを屋敷に戻す事にする。

「気分は大丈夫ですか? アイリス様」

「大丈夫…と、言いたいのですが」

 見るからにアイリスの顔色は悪く、カズが持っている刺客者に目を向けると、今にも嘔吐しそうなる。
 それをカミーリアが支え、ネモフィラが背中を優しくさする。
 
「姉上はもう限界だ。カズ頼む」

「わかりました。周囲の警戒をおこたらないでください」

 まだ同じ装備をしている刺客者が潜伏しているかも知れないとカズは警戒をし、アイリス達を包む防壁魔法バリア・フィールドの範囲を広げてから、空間転移魔法ゲートを使った。
 この状況で池の畔にあるアイリスの屋敷に転移先を繋げては危険と判断して、女性騎士達の訓練を行った池の側の砂地に繋げた。
 これでレオラを狙った刺客者と同じ装備をした者がもう一人居たとしても、砂地なら砂に足跡が付き、潜伏して居る事が分かると考えた。
 
 レオラが指示した方向に、アイリスを支えるカミーリアとネモフィラが進み、何も無い空間にすうっと消える。
 続けてレオラが追いかけ、最後に拘束している刺客者を持ったカズが空間転移魔法ゲートを通り砂地に出る。
 そして砂地を見て、隠れて追って来ている者がいないかを確認する。

「何をしているカズ? 姉上の屋敷から離れすぎてるぞ」

「大丈夫そうだ。姿を完全に消す効果を使って、追い掛けている奴はいないようだ」

 そう言うと再度空間転移魔法ゲートを使用してを、アイリスの屋敷正門前に繋げ全員移動した。
 屋敷正門で警備の仕事をしていた女性騎士二人は、突如現れた五人に驚きを隠せなかった。
 だがそれも一瞬。
 主人のアイリスが同僚のカミーリアとネモフィラに支えられてるのを見て、一人は即座に駆け寄り、もう一人は仲間を呼びに建物内へ。
 外履きに履き替える事もせず慌てて来た侍女と、集まった女性騎士達が、アイリスを丁重に私室へと連れて行く。

「これでとりあえず、姉上は気が休まるだろう。カミーリアも戻り皆に説明を。ネモフィラには一緒に来てもらうぞ」

「はい。わかりました」

 カミーリアはそのままアイリスに仕える皆に、何が起きたかの説明をする役目を与えた。
 ネモフィラは証人として、カズが拘束している刺客者と、レオラと共に冒険者ギルド本部に向かう事に。
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