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今日もアクアオッジ家は平和です
32 ⑦ヘンテコなのは絵かメリルか
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三体のドラゴンがタウン・ハウスのドラゴン留まりに降り立った。
管理人はすでに今か今かとみんなの到着を待ち構えていた。隣にはおそらく王子の護衛騎士たちだろう。馬から降りて一緒に並んでいる。
きゅう舎の管理人も、鞍を外す手伝いのために下働きの者を数名連れてきていた。
「お待ちしておりました。馬車もこちらに。直ぐにリー商会に向かわれますか?」
「そうしましょ。約束の時間ギリギリだもの」
母がドラゴンにお礼を言ったあとそう言うと、管理人がエスコートして馬車へと案内する。
「かしこまりました」
メリルは王子に手を引かれながらも、何も考えず「わあ、ふかふかの座席~」と馬車に乗り込む。
彼女は気が付いていないが、王子はこういう時の席順まで常に意識し、最善の位置に誘導する。
今回はメリルは母と王子に挟まれた。そのあとウィルフレッド、ソルが乗り込み馬車が出発する。
(よし。今回の座席の配置も最善だ)
王子は内心ほくそ笑む。
護衛騎士たちは各自の馬に乗って馬車と並走していた。
「う~相変わらず遠目から見ても悪趣味な家だよねえ」
メリルが窓から見える館を見て遠慮なく口にする。
「ホントだね。今回上から初めて館を眺めたけど、なんか変な金ぴか像がたくさんくっついてた。しかも像はみんな全裸だし……」
「おええ……ウィルよく見てるね」
そんな二人の様子を見ながら母は言った。
「あらあら。仕方ないわ。取り壊すことも考えたのだけれど、当時は土地と屋敷を買うだけで精いっぱいでね。それでも中に置いてあった物は、商人たちが結構頑張って高値で買い取ってくれたのよ。おかげで外観はともかく、金ぴかの額縁も、変な絵も、謎のキノコ型のランプやシャンデリアも撤去して内装はさっぱりしたじゃない」(それに最優先だった、念願の一人一台のベッド……)
ウィルフレッドが、母の一番言いたかった心の声をしっかりと聞き届けた。
(一人一台のベッドが最高)
「……それってなんだかよく分からない壺とか彫像とか絵画だよね。館に入ったとき、余りの悪趣味さにびっくりしたよなあ」
ソルがきょとんとして会話に加わる。
「謎のキノコ型のランプやシャンデリア、ですか? 最近、昆虫やキノコなどの植物をモチーフにした日用品が評価されていませんでしたか?」
王子も美術を学んだ際に、それらが出てきたことを思い出す。
「確か"新芸術"といって、評価され始めた分野ではなかっただろうか」
アドリアナはそれを聞いて目をぱちくりさせた。
「あらあら。それで室内の品を売った金額が、お値段以上……♪だったのかしら」
「そういえばメリルが何故か気に入ったあの絵画は……」
王子だけは(メリルが好きな絵はどんな絵なんだ? 前衛的な絵画だろうか……)と思ったが、まあ見ていないからそう思っても仕方なくはある。
「あ! あれは、売らないほうがいいって父さまにお願いしたの! だって必死な絵だったし!」
「「必死ー?」」
ありゃ? 母さまとウィルが見事にハモった。何故かメリルは数年前の自領の街で髪と眉毛が全焼した男たちを思い出した。やった張本人はメリルだが。
「仮装したバニー姿の男が何かを指さしながらさかさまにひっくり返っている絵が!?」
ウィルフレッドが呆れてお手上げの仕草になった。
「うん。だってあの努力はすごいよね。さかさまになってるのに涼しい顔してて」
馬車の中に大量の『?』が飛び交った。
絵だよね?
今話してるのは絵の話だよね?
そんな『?』だ。
その時ウィルフレッドは確信した。やっぱりこの家の中で一番ヘンテコなのは絵ではなく、メリルだと。
"バニーってあれだろ? うさぎちゃん♪"
"まあ、そんな風に呼ばれる擬人ウサギみたいだな"
"思うけど、メリルってやっぱり"
"ヒトにしては変よね"
"退屈しなくていいカモ"
"面白いからま、いっか"
何が面白いのか。ぷぅ、と膨れながら大真面目にメリルは思った。
この時、誰かが『絵』についての見解を述べていたら、メリルの発想に皆が納得したかもしれないのだが、運が悪かった。
『"絵"とはどういうものなのか』
メリルが正しく理解出来ていたら、タウン・ハウスが"惨状の館"になり、この時の"バニー男"が本物として現れることもなかったかもしれない──
管理人はすでに今か今かとみんなの到着を待ち構えていた。隣にはおそらく王子の護衛騎士たちだろう。馬から降りて一緒に並んでいる。
きゅう舎の管理人も、鞍を外す手伝いのために下働きの者を数名連れてきていた。
「お待ちしておりました。馬車もこちらに。直ぐにリー商会に向かわれますか?」
「そうしましょ。約束の時間ギリギリだもの」
母がドラゴンにお礼を言ったあとそう言うと、管理人がエスコートして馬車へと案内する。
「かしこまりました」
メリルは王子に手を引かれながらも、何も考えず「わあ、ふかふかの座席~」と馬車に乗り込む。
彼女は気が付いていないが、王子はこういう時の席順まで常に意識し、最善の位置に誘導する。
今回はメリルは母と王子に挟まれた。そのあとウィルフレッド、ソルが乗り込み馬車が出発する。
(よし。今回の座席の配置も最善だ)
王子は内心ほくそ笑む。
護衛騎士たちは各自の馬に乗って馬車と並走していた。
「う~相変わらず遠目から見ても悪趣味な家だよねえ」
メリルが窓から見える館を見て遠慮なく口にする。
「ホントだね。今回上から初めて館を眺めたけど、なんか変な金ぴか像がたくさんくっついてた。しかも像はみんな全裸だし……」
「おええ……ウィルよく見てるね」
そんな二人の様子を見ながら母は言った。
「あらあら。仕方ないわ。取り壊すことも考えたのだけれど、当時は土地と屋敷を買うだけで精いっぱいでね。それでも中に置いてあった物は、商人たちが結構頑張って高値で買い取ってくれたのよ。おかげで外観はともかく、金ぴかの額縁も、変な絵も、謎のキノコ型のランプやシャンデリアも撤去して内装はさっぱりしたじゃない」(それに最優先だった、念願の一人一台のベッド……)
ウィルフレッドが、母の一番言いたかった心の声をしっかりと聞き届けた。
(一人一台のベッドが最高)
「……それってなんだかよく分からない壺とか彫像とか絵画だよね。館に入ったとき、余りの悪趣味さにびっくりしたよなあ」
ソルがきょとんとして会話に加わる。
「謎のキノコ型のランプやシャンデリア、ですか? 最近、昆虫やキノコなどの植物をモチーフにした日用品が評価されていませんでしたか?」
王子も美術を学んだ際に、それらが出てきたことを思い出す。
「確か"新芸術"といって、評価され始めた分野ではなかっただろうか」
アドリアナはそれを聞いて目をぱちくりさせた。
「あらあら。それで室内の品を売った金額が、お値段以上……♪だったのかしら」
「そういえばメリルが何故か気に入ったあの絵画は……」
王子だけは(メリルが好きな絵はどんな絵なんだ? 前衛的な絵画だろうか……)と思ったが、まあ見ていないからそう思っても仕方なくはある。
「あ! あれは、売らないほうがいいって父さまにお願いしたの! だって必死な絵だったし!」
「「必死ー?」」
ありゃ? 母さまとウィルが見事にハモった。何故かメリルは数年前の自領の街で髪と眉毛が全焼した男たちを思い出した。やった張本人はメリルだが。
「仮装したバニー姿の男が何かを指さしながらさかさまにひっくり返っている絵が!?」
ウィルフレッドが呆れてお手上げの仕草になった。
「うん。だってあの努力はすごいよね。さかさまになってるのに涼しい顔してて」
馬車の中に大量の『?』が飛び交った。
絵だよね?
今話してるのは絵の話だよね?
そんな『?』だ。
その時ウィルフレッドは確信した。やっぱりこの家の中で一番ヘンテコなのは絵ではなく、メリルだと。
"バニーってあれだろ? うさぎちゃん♪"
"まあ、そんな風に呼ばれる擬人ウサギみたいだな"
"思うけど、メリルってやっぱり"
"ヒトにしては変よね"
"退屈しなくていいカモ"
"面白いからま、いっか"
何が面白いのか。ぷぅ、と膨れながら大真面目にメリルは思った。
この時、誰かが『絵』についての見解を述べていたら、メリルの発想に皆が納得したかもしれないのだが、運が悪かった。
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