『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

鈴白理人

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1 スキル? そんなことより屋根の雨漏りが大合唱

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 アーサー・アクアオッジは北の辺境伯の嫡男として生まれた。

 アクアオッジ領は領土面積こそ広大だったが、豊かな土地とは言い難かった。
 面倒な土地をひとまとめにして厄介払いしたような領土を代々のアクアオッジ辺境伯が頑張って治めているので、領地経営もカツカツで、領主館もかなりガタがきていた。

 まず、次の雨漏りが来る場所を、ネコが座って教えてくれる。これがアクアオッジ家・屋根裏の法則だ。
 
 加えて、平らな土地が少ない、山が多い、海に面した部分は細々とした漁業だけ──。
 人も少ないし、魔物の森にも、魔物の国にさえ面している(New!)。
 ……本当に、何この土地。
 さらに国土の北部で寒いし、王都からは遠い。
 ……うん、全体的にひどい。

 人のいい、なり立てホヤホヤの領主であるアーサーの父は、自領の民の税金を低く抑えていた。
 隠居したアーサーの祖父母から辺境伯の地位を受け継いで一年。税収は据え置きだった。
 もうちょっと高くても、多分誰も文句を言わない。
 隣接する他の領の税金を考えてもアクアオッジの税金は圧倒的に安い。

 もう一つ特筆すべきは子供の数だろう。なんせ七人もいる。妻も頑張った。
 おかげですごく貧乏だけど、常に賑やかで皆大らかな家族。
 父自らが施す教育の成果で、アーサーは思いやりがあって気遣いが出来る長男としてすくすくと育った。
 
 そんなアーサーの我が家があるのは、ラザナキア王国。
 川に囲まれた王都が自慢らしいが、北の辺境からは遠くて見えない。話に聞くだけ。なんだけど……

 周囲の列国の中でも異彩を放っている特徴がある、

 ラザナキア国民には【スキルツリー】という女神の加護が与えられるのだ。

 
 そんな【スキルツリー】は、十歳になったら教会で鑑定できるんだけど、銀貨五枚もかかるんだ。
 貧乏なアクアオッジ家にとっては、けっこうな大金だ。
 銀貨一枚はだいたい執事長であるセバスチャンの一日分のお給金。
 執事一人しかいないけれど、執事長。先代辺境伯の時代から勤めているベテランである。
 最近の口癖は「引き継げる後継者を育てたい」おっと話が逸れた。

 アーサーが十歳になったとき、両親から鑑定代をもらった。
 けれど、ド貧乏な我が家の状況を考えると、とても使う気にはなれなかった。
 なのでアーサーは鑑定には行かず、今もその銀貨を握ったまま、今日も屋根裏のタライと向き合っている。

 出来るなら雨漏りしている領主館の屋根を修復したい。
 屋根裏部屋には雨漏りの箇所に何個もタライが置いてある。最近ではいくつものタライが雨の日に音楽を奏でるようになってしまっていた。

 タライを置く担当はアーサーである。

 スキル鑑定? それより屋根の雨漏りが深刻なんだよね。……あ、ネコがまた座ってる。あそこに次、穴が開くってことなんだ。

 しゃべっているわけじゃなく、なんとなくそう言ってるみたい? ってアーサーは言うんだけど、それが【動物スキル?】という疑惑につながっている。

 父と母は既にスキルを鑑定済みだ。
 【スキルツリー】というだけあって、一つのスキルから【派生スキル】としていくつも増えて枝分かれしていく。
 教会にある鑑定器だと大元のツリースキルしか鑑定出来ないので、どんなスキルかさっぱりなことも多い。
 母の【育成スキル】は分かりやすいけど、父のスキルはさっぱり分からない。
 【掴みスキル】って何だろう?

 あ、握力が人よりあることは判明している。
 騎士団のお遊びで腕相撲大会が開かれたとき、「辺境伯さまもちょっとどうですか?」と言われてちょっと参加したら、ちょっと惨事になりかけた。
 
 危うく相手の骨を粉砕骨折するところだった。
 お遊びがお遊びで無くなるところだったと騎士団総長は語った。
 
 その他にも何だか怪しい効果はありそうだ。
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