迷い人と当たり人〜伝説の国の魔道具で気ままに快適冒険者ライフを目指します〜

青空ばらみ

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120. ラメール王国 一日目

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 エントさんがベッドから降りて、次はお父さん。

 お母さんがエントさんと同じように、服を脱がせようと引っ張ると……

「うっ」

 お父さんのうめき声にみんなギョッとする。
 エントさんと二人で、なんとか服を脱がせて……

 うわーっ?! 痛そう、びっくりだよ。

 肩から胸にかけて、赤黒くなっている。
 お母さんはすぐお父さんをベッドに寝かせ、ズボンも脱がせてチェックしていた。
 上半身だけの怪我のようだ……

 コウジュもおどろいていたけど黙ってみている。
 みんなには少し下がってもらい、すぐ取り掛かった。

 まずは他に悪いところがないか、手をからだにかざしてチェックする。
 うん、やっぱりモヤは肩と胸に集中していた。
 これならたぶん、ポーションでも治りそうだけど……

「お父さんのからだが、正常に機能しますように……なおれっ! ヒール!! 」

  願いを込めてヒールをかける。
 お父さんのからだ全体を、まぶしくない優しい光がキラキラ輝いてお父さんを包み込む。
 そしてまた一瞬、ピカッと輝いてスッと消える。

 すぐにお母さんがお父さんのそばまできて、キレイになった肩を触ってみていた。
 わたしは椅子に座って休憩する。

 なんだか前よりも、持っていかれた感じが少ないかも?
 これはちょっとおどろきだな……
 確実に魔力が増えていると思う。

 ベッドのまわりではコウジュたちが、またよろこびあっている。

 よかったな……

 コウジュが話しかけてきた。

「パール、パール様。あなたは、聖女様だったのですか?」

「これ、コウジュ。おまえは、黙っていなさい」

 お父さんがコウジュの話しを止める。

 聖女様? だれが?
 なんで? いや、いや、まさか聖女……って?
 違うのに、どうしよう……
 なんて説明する?
 ちょっと焦っていると……


 バッタンッ!

 ドアが思いっきり、開く音がする?

「コウジュ! エントは、どこだ! 上級ポーションを持ってきたぞー!! おじさん! おばさん!」

 聞いたことのある声?
 まさか?!

 そう広くもないエントさんのベッドルームに、六人目が入ってきた……

 あーっ、やっぱり……ガントだ。
 手には上級ポーションが握られている……
 わたしと目が合う……

「パール!? どうしてここに? エントは、大丈夫なのか?」

 パンツ一枚、上半身裸のエントさんとお父さんをみて目を大きく見開き、口をポカンとしていた。

「ガント、エントに上級ポーションを持ってきてくれたのか? ありがとうよ。もう大丈夫だ! それよりおまえ、パール様を知っているのか?」

「えっ、パール様?! おれたちと一緒にピアンタからラメールに向かっている子だけど……でも、なんでパール様?」

 あ~っ!

(チェリー、どーしよー? もうガントに、ヒールが使えるとバラす? そうじゃないと、聖女様にされそうだよ……)

(はい。このタイミングでは、しょうがないですね。それなら、この家族にも迷い人だと打ち明けて、魔力が向こうの国にいって強くなったことにしましょう)

 なるほど……

 まずはみんなでリビングへ移動することになった。
 そのあいだに、エントさんとお父さんは服を着る。
 わたしはガントと先にリビングへ。

 お母さんがだしてくれたお茶を飲みながら、この集落はガントの母方の親族たちだと教えてもらう。
 だからピアンタまでの仕事を引き受けていたそうだ。

 なるほど……

 チェリーがこれはもうあきらめて、ガントにはきちんと説明するよう告げてくる。
 この家族の人たちに、わたしは聖女ではなく迷い人だと伝えないと……
 そんなことを考えているとガントが話しだす。

「さあ、パール。これを説明してくれるか?」

「おい、ガント。パール様に失礼はダメだぞ!」

 服を着てリビングにやってきたお父さんがガントに注意する。

 ハァー。

「ガントとは、思いもしないところでよく会うね」

 つい、ポロッと本音がでてしまう……

「ああ、ホントにだな……それで?」

 もうごまかせない。
 しょうがないないからガントには向こうの国にいって魔力が多くなったことと、もともとヒールが少し使えたことを話す。

 コウジュ家族には、わたしは聖女ではなくピアンタから逃げてきた迷い人だと説明する。

 コウジュがそれもすごいと、ちょっと興奮していた。
 お父さんたちは聖女様ではなくても、命の恩人には違いないと言っている。

 大層だけど、仕方ないな……

「だから心配しないで、お金はいっぱいあるの」

 ホントにポーション代はいらないから、このことはナイショにしてほしいと告げておく。

 バタバタしたけど、ガントと一緒に宿屋へ帰ることにする。
 ガントは持ってきたポーションを、お父さんに渡していた。
 念のためだそうだ……
 
 コウジュにはいままでどおり名前で呼んでほしいと伝える。
 照れたようにニコッと微笑んで、明日の朝七時までにシッソー水を新しく作って、持ってきてくれると言ってくれた。

「コウジュ、無理はしないで……」


 ガントが帰り道で聞いてくる。

「パール。おまえ、ヒールが使えたのか?」

「まあね、でもナイショだよ」

「おまえ、すごいな……それからありがとな。遠いけど、おれの親族だから……」

「うん、上級ポーションを持っていてホントによかったよ。ガント、わたしがヒールを使えることはナイショだよ」

「あぁ、おじさんたちにも言われたから……でも、ライたちにもナイショなのか? ライたちには言ってもいいか?」

「ダメ! 少しでも知っている人は少ない方がいい。この魔法は使える人が少ないから、王族にでもバレたら囲われてしまうよ……」

「えっ、そんなことないと思うぞ? ハァーッ、つらい……パール、おれ無理かも……?」

「うそでしょ? ガントって、おしゃべりなの?」

「違う!」

「じゃあ、黙っていてね。お願いだよ!」

 肩を落としてトボトボわたしの少し先を歩くガントはちょっぴりおかしくって、なんとなくかわいそうだったけど……
 でもやっぱり秘密にしてねっと、もう一度念押ししておいた。

 コウジュはガントの親族なのか……だから背が高いのかな?
 ちょっと疲れたからだに、どうでもいいようなことを考えながらガントと二人、細道を歩いていく。

 からだにオレンジ色の夕日があたり、なんだか気持ちがいい……

 今日はラメール王国、一日目。
 ドキドキ、ハラハラが多い、一日だったな……

 となりには、なぜかガント。

 不思議な人だよ……


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