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お前は何もわかっていない①
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胸の中に黒い淀みのようなものが生まれたのがわかった。
……あ、これヤバい奴ヤバい奴。何とかして気持ち切り替えねーと。
『闇魔法に鍛錬は必要ない。身に宿す絶望が濃くなれば濃くなるほど、勝手に強くなる。必要なのは、絶望に飲まれて闇魔法に飲み込まれない為の、精神の強さだ』
以前魔法ジジイにこの話を聞いてから、俺は極力自分を絶望させないように気をつけていた。
いつも斜に構えて、自分を自分で茶化すことで傷ついた心を誤魔化して。そして何より、誰かに依存し過ぎないことが大事。依存したら、勝手に期待して、勝手に裏切られた気持ちになったりするし。何よりその人を失った時が怖い。……そう思っていたのに、俺はまんまとアストルディアに依存してしまった。
アストルディアが、お犬様のままなら良かった。神獣なら存在自体が、人間とは一線を置いた存在だし。言葉を交わすことができないと思っていたから、過剰に期待することはなかった。一方的に好きだと思えるだけで、満足していた。それだけで良かったはずなのに。
アストルディアがお犬様だとわかって。俺と同じように俺のことを親友だと思ってくれていると知って。
期待してしまったんだ。俺がアストルディアに向けるのと同じ思いを、アストルディアも俺に向けてくれているんじゃないかって。
……いやいやいや、別に同情すること自体は全然悪くないのよ? 寧ろ俺に同情して、戦争回避のために協力してくれてるアストルディア、めちゃくちゃ優しいわ。感謝すべき。
それなのに何だ? 『対等に見てくれない感じが傷ついたー』とか、俺メンヘラ過ぎだろ。繊細ヤクザかよ。痛いわ。
頭の冷静な部分が正確なツッコミを入れても、胸の淀みは消えてくれない。
……原作エドワードは多分この淀みが大量に積み重なった状態で、ランドルーク家を闇魔法で洗脳した結果、制御しきれなくなって精神が壊れて凶行に及んだんだと思ってるんだよな。俺としては。
じゃなきゃ復讐はともかく、闇落ち前はまんま俺な原作エドワードが、たとえ惚れてた弟を重ねたとしても、主人公に性的虐待をくわえるとは思えないもん。主人公には何の罪もないこと知ってて、普通そこまでやれる?って。元々俺、性欲あまりない方だし。
だから闇魔法に飲まれて、隠してた欲望を増幅された結果だと思う、というか思いたいわけで。
そんな事態を回避する為には、こんな些細なことでいちいち絶望を貯めちゃう弱々雑魚メンタルでいてはいけないわけで。
……やっぱり俺、こんなふうにアストルディアと親しくしちゃいけないんかなあ。なんか、どんどん弱くなっている気がする。
全く関わらないのは今さら無理だから、今までの素の自分に近い猫かぶり第三モードでも作って、一線を置くべきなのかも。
「…………お前は、本当に馬鹿なことを言う」
一人脳内であれこれ考えこんでいた俺を、特大のアストルディアのため息が引き戻した。
「何故、俺がお前を憐れむ必要がある? もし憐れんだとしたなら、俺が憐れんだのは、お前ではなく俺自身だ。突然お前に名指しで宿敵扱いされ、他の奴に俺を殺させる方法もあるが、などと言われたのだからな」
「……そんなこと、俺言ったっけ?」
言ったっけ? ……言ったかも。一案として、考えたことはあったからな。
「それでもお前は戦争を回避する為に、俺と親しくなりたいと言った。だから、俺はリシス王国から国交再開の話が来た時、クリスに協力することにしたんだ。全てはお前の願いを叶える為に」
「俺の、為……?」
「そうだ。俺を親友と言ってくれたお前に、報いる為だ」
ぷしゅっ、と。音を立てて、胸の淀みが霧散した。
「お前は、俺のことを生まれてはじめてできた友だと言っていたが、俺だって同じだ。畏怖と打算と敵意の中で生きてきた俺に、お前だけがまっすぐで温かい好意を向けてくれた。お前のお犬様として過ごした時間が、当時の俺にとってどれだけ大切な時間だったか。……お前は何もわかっていない」
……あ、これヤバい奴ヤバい奴。何とかして気持ち切り替えねーと。
『闇魔法に鍛錬は必要ない。身に宿す絶望が濃くなれば濃くなるほど、勝手に強くなる。必要なのは、絶望に飲まれて闇魔法に飲み込まれない為の、精神の強さだ』
以前魔法ジジイにこの話を聞いてから、俺は極力自分を絶望させないように気をつけていた。
いつも斜に構えて、自分を自分で茶化すことで傷ついた心を誤魔化して。そして何より、誰かに依存し過ぎないことが大事。依存したら、勝手に期待して、勝手に裏切られた気持ちになったりするし。何よりその人を失った時が怖い。……そう思っていたのに、俺はまんまとアストルディアに依存してしまった。
アストルディアが、お犬様のままなら良かった。神獣なら存在自体が、人間とは一線を置いた存在だし。言葉を交わすことができないと思っていたから、過剰に期待することはなかった。一方的に好きだと思えるだけで、満足していた。それだけで良かったはずなのに。
アストルディアがお犬様だとわかって。俺と同じように俺のことを親友だと思ってくれていると知って。
期待してしまったんだ。俺がアストルディアに向けるのと同じ思いを、アストルディアも俺に向けてくれているんじゃないかって。
……いやいやいや、別に同情すること自体は全然悪くないのよ? 寧ろ俺に同情して、戦争回避のために協力してくれてるアストルディア、めちゃくちゃ優しいわ。感謝すべき。
それなのに何だ? 『対等に見てくれない感じが傷ついたー』とか、俺メンヘラ過ぎだろ。繊細ヤクザかよ。痛いわ。
頭の冷静な部分が正確なツッコミを入れても、胸の淀みは消えてくれない。
……原作エドワードは多分この淀みが大量に積み重なった状態で、ランドルーク家を闇魔法で洗脳した結果、制御しきれなくなって精神が壊れて凶行に及んだんだと思ってるんだよな。俺としては。
じゃなきゃ復讐はともかく、闇落ち前はまんま俺な原作エドワードが、たとえ惚れてた弟を重ねたとしても、主人公に性的虐待をくわえるとは思えないもん。主人公には何の罪もないこと知ってて、普通そこまでやれる?って。元々俺、性欲あまりない方だし。
だから闇魔法に飲まれて、隠してた欲望を増幅された結果だと思う、というか思いたいわけで。
そんな事態を回避する為には、こんな些細なことでいちいち絶望を貯めちゃう弱々雑魚メンタルでいてはいけないわけで。
……やっぱり俺、こんなふうにアストルディアと親しくしちゃいけないんかなあ。なんか、どんどん弱くなっている気がする。
全く関わらないのは今さら無理だから、今までの素の自分に近い猫かぶり第三モードでも作って、一線を置くべきなのかも。
「…………お前は、本当に馬鹿なことを言う」
一人脳内であれこれ考えこんでいた俺を、特大のアストルディアのため息が引き戻した。
「何故、俺がお前を憐れむ必要がある? もし憐れんだとしたなら、俺が憐れんだのは、お前ではなく俺自身だ。突然お前に名指しで宿敵扱いされ、他の奴に俺を殺させる方法もあるが、などと言われたのだからな」
「……そんなこと、俺言ったっけ?」
言ったっけ? ……言ったかも。一案として、考えたことはあったからな。
「それでもお前は戦争を回避する為に、俺と親しくなりたいと言った。だから、俺はリシス王国から国交再開の話が来た時、クリスに協力することにしたんだ。全てはお前の願いを叶える為に」
「俺の、為……?」
「そうだ。俺を親友と言ってくれたお前に、報いる為だ」
ぷしゅっ、と。音を立てて、胸の淀みが霧散した。
「お前は、俺のことを生まれてはじめてできた友だと言っていたが、俺だって同じだ。畏怖と打算と敵意の中で生きてきた俺に、お前だけがまっすぐで温かい好意を向けてくれた。お前のお犬様として過ごした時間が、当時の俺にとってどれだけ大切な時間だったか。……お前は何もわかっていない」
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