俺の悪役チートは獣人殿下には通じない

空飛ぶひよこ

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試合開始①

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 ……あーもう、こいつ本当に下品過ぎて嫌。
 何故かこいつと会うたびに、何もしてないブラッドリーの好感度が上がるんだよな。あいつ下品なこと言おうとするたび、顔真っ赤にしてたし。今思うと、坊ちゃん臭さが抜けない不良って、ギャップが可愛かった気もする。もう少し優しくしてやるべきだったか……いや、あいつが俺に惚れてたんなら、どっちにしろ駄目だったわ。
 ニヤニヤ笑いながら上機嫌に尻尾を揺らして去るヴィダルスの背中を睨みつけていると、ドスドスと近づいてくるデカい熊の姿が。
 おやまあ。招かれざる客がまた一人。

「……貴方は?」

「お前の初戦相手のヤンガルド・フープスだ」

 敵意顕わに睨みつけてきたのは、アストルディアやヴィダルスよりさらに一回りデカい熊獣人の生徒。
 はじめましてのはずなのに、何故か牙を剥き出しで俺を威嚇してくる。

「クラスの奴らを体術の講義で倒して調子に乗ってるようだがな。あいつらは、ただの雑魚だ。人間なんていう繁殖でしか取り柄がない劣等種が、獣人様に勝てるわけがないってことを俺が思い知らせてやるよ」

 吐き捨てられた侮蔑の言葉に、怒るよりも少し感動してしまった。
 おおう、留学前にはステレオタイプだと想像していた、人間を見下す系獣人がようやく話しかけてきた。
 どいつもこいつも俺を得体の知らない奴と忌避するか、雌扱いするかのどちらかで、意外にこの手の獣人今までいなかったんだよなー。新鮮新鮮。

「フープスさん。貴方はどのような得物を使われるのですか?」

 内心とは裏腹に、敢えて冷たい眼差しで問いかける。
 新鮮だとしても、別にお近づきになりたいタイプじゃないからね。鬱陶しいのは、ヴィダルスだけで十分だ。

「はあ? 人間ごときに武器なんか使うわけないだろ。お前なんか、牙と爪で十分だ」

「じゃあ、私もそうしましょう」

 嘲るように口端を吊り上げ、目を細めてやる。

「貴方と戦う時は、武器も身体強化以外の魔法も使いません。ちょうど、貴方が雑魚と言った、クラスメイトを倒した時と同じ条件ですね。もし武器を使われたとしても、貴方程度ならそれで十分倒せるでしょうけど」 

「……ふざけるな! 人間風情が、俺を侮るか!」

「侮ってません。冷静で客観的な分析の結果です」

 ぶっちゃけ君さ、図体こそデカいけど、魔力全然大したことないよね? かなり優しく見積って、雪山エリアにいる魔物くらい?
 正直全く負ける気しないんだけど。

「……決めた。ヴィダルス様が何て言おうが関係ない。俺が勝ったら、絶対にお前を犯す。お前なんぞ、獣人様の子を産むしか価値がないってことを、体で思い知らせてやる」

 だーかーら。獣人ったら、すぐそういう発想になるー。性欲に頭やられてんのか。俺なんかバリバリ童貞なのに、この学校来てから一度も自慰をしてないくらい性欲なくなってんだぞ! 毎晩アストルディアが泊まりに来るせいでな!

「できるものなら、どうぞご自由に。それでは後ほど試合で会いましょう」

 充血した目で睨みつけてくるヤンガルドに、吐き捨てるようにそう言って、足早にその場から立ち去る。……て、言っても、俺がいた場所にあいつが来たわけだから、行く場所特にないんだけど。
 どうしよう。審判席に行ったクリスにでも会いに行くかな。ここからまあまあ離れてるけど……はっ! 審査員席にいるアストルディアが、さり気にこちらを見てる!? 距離があるからわからないけど、何かまた怒ってる気配がする!?
 ……アストルディアの聴力なら、さっきの会話も聞こえたりすんのかな。この距離でも。やっべ、また余計なこと言ったって怒られるかも。
 でもヴィダルスと違って、こいつなら絶対大丈夫だから……絶対勝つから、許して。

「ーーそれでは、第一試合に参加する選手は、こちらにお集まりください」

 あ、呼ばれた。準備体操、十分できんかったな。
 まあ、次のヤンガルド戦が準備体操みたいなものだからいいか。

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