俺の悪役チートは獣人殿下には通じない

空飛ぶひよこ

文字の大きさ
63 / 311

試合開始③

しおりを挟む
「もちろん構いませんよ。ワシヤミアさん。私も、使える魔法は全て使って、貴方に勝たせていただきますから」

 微笑みと共にそう返すと、ナナークは獣面でもはっきりわかる笑みを浮かべた。……うーん。めちゃくちゃ爽やかなお人だ。これは好感度高いわ。

「それでは、そうさせてもらおう」

 そう言うと、ナナークは目の前で服を脱ぎ、3メートルほどのホワイトタイガーの姿に変わった。
 しょっちゅうアストルディアが目の前で裸になって獣化していることからもわかるように、獣人は裸になって獣化することに一切羞恥を覚えないらしい。
 けど俺としては獣面二足歩行の状態の全裸がどんな感じかとか知りたくなかったので、隠れてやって欲しかった。トラちんこもにゃんたまも、しっかり見えたし。
 ……なるほど。獣面状態のにゃんたまは毛が生えてんだな。人化状態のアストルディアのわんたまは、生えてなかった気がするけど。
 嫌な豆知識が、また一つ増えてしまった。

「それでは、立ち位置につこうか」

 ああ、兵団長。獣化状態で後ろ向いたら、ご立派な真っ白にゃんたまがさらに丸だしです。狼と違って尻尾が細いから、全然隠れておりません。
 生温い気持ちになりながらも、兵団長の後を追うように立ち位置につく。

「ーーはじめ!」

 主審がそう告げるなり、ホワイトタイガー姿のナナークが飛びかかってきた。
 速い。巨体なのに、2試合目のジャッカルの獣人と変わらない速さだ。
 身体強化の上に重力魔法を重ねがけ、より俊敏に動けるようにして、迫りくる爪をよける。
 地割れのように床を引き裂いたその爪痕を見て、驚愕した。

「床が……凍ってる?」

 まさか。獣人は魔法を使えないはずでは。
 驚く俺に、ゆっくり体勢を立て直したナナークが迫る。

「驚いたかい? 基本的に獣人は魔法は使えないが……稀に私のように、攻撃に所有する魔力の性質が現れるものもいる」

 頬を掠めた爪を寸でのところで除けたが、掠ったところが凍傷になった。

「私の爪は、傷つけた獲物を凍らせる。……さて、エドワード君は、これにどう対抗する?」

 正直獣人の爪や歯の威力を考えれば、こちらの得物が模造刀だと言うのはフェアじゃない気がしてきたが、今さらな話だ。だいたい俺には結界もあるわけだし。
 すぐに結界魔法を展開し、今度はこちらから攻撃を仕掛ける。
 向こうが氷ならば、こちらは火だ。
 しかし、放った火魔法は、ナナークに当たった瞬間霧散した。……くそ。強力な身体強化が結界並みに魔法を弾くって、まじだったか。

「君が結界を張ってくれて、嬉しいよ。私の爪が、結界にどれくらい対抗できるか、試してみたかったんだ」

 一度爪を結界を弾かれたナナークが、今度は俺ではなく結界そのもの狙って爪で切りつける。
 次の瞬間、パリンと音をたてて結界にひびが入ったのがわかった。
 ……さすが獣人の王宮兵団長。俺が今まで戦ってきた、どんな魔物より強い。
 このままじゃ、俺の魔法がナナークにダメージを与える前に、結界が破れる。まあ、そうなればそうなったで、何度でも結界を貼り直せばいいだけな話だが、ダメージを与える手段が思いつかない限り、それは時間稼ぎにしかならない。
 ……というわけで、ここはいっちょ、魔力譲渡を試してみる時でしょう! 
 正直対獣人戦の奥の手だから、ヴィダルスまでは使わない方が良いのかなとも思っていたが、相手は王宮兵団長。魔力譲渡が身体強化に与える影響をみるサンプルとしては、なかなか望ましい相手だ。やっぱり実験は、複数の対象で試しておかなくては。
 作戦はシンプル。ナナークの隙をついて魔力譲渡をし、すぐさま先ほど弾かれた中級程度の火魔法をぶち込む。身体強化が弱体化したなら、今度は攻撃が通るはずだ。
 さて、はりきってやってみよー!
 ナナークが結界のひびを割り広げている間に、片手で火魔法の魔法陣を書きながら、素早く魔力譲渡の魔法を詠唱した。
 計算通り、魔法陣を書き終わる前に、魔力譲渡の魔法が発動した。

「っ!」

 ナナークの目が見開かれたと同時に、魔法陣から放たれた火の矢がナナークを襲う。
 ナナークの悲鳴と共に、白く美しい毛皮が燃えあがる。
 よっしゃあ、計算通り! ……て、やばい。やばい。このままじゃ、ナナーク死んじゃうかも。

「業火に焼かれし者に、水の癒しを! 【水救癒】!」


しおりを挟む
感想 161

あなたにおすすめの小説

牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!

ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。 牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。 牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。 そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。 ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー 母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。 そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー 「え?僕のお乳が飲みたいの?」 「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」 「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」 そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー 昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!! 「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」 * 総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。 いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><) 誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

【8話完結】いじめられっ子だった俺が、覚醒したら騎士団長に求愛されました

キノア9g
BL
いじめられ続けた僕は、ある日突然、異世界に転移した。 けれど、勇者として歓迎されたのは、僕を苦しめてきた“あいつ”の方。僕は無能と決めつけられ、誰からも相手にされなかった。 そんな僕に手を差し伸べてくれたのは、冷酷と恐れられる騎士団長・ジグルドだった。 なのに、あいつの命令で、僕は彼に嘘の告白をしてしまう――「ジグルドさんのことが、好きなんです」 それが、すべての始まりだった。 あの日から彼は、僕だけをまっすぐ見つめてくる。 僕を守る手は、やさしく、強くて、どこまでも真剣だった。 だけど僕には、まだ知られていない“力”がある。 過去の傷も、偽りの言葉も超えて、彼の隣にいてもいいのだろうか。 これは、いじめられっ子の僕が“愛されること”を知っていく、嘘と覚醒の物語。 全8話。

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

悪役令息の兄って需要ありますか?

焦げたせんべい
BL
今をときめく悪役による逆転劇、ザマァやらエトセトラ。 その悪役に歳の離れた兄がいても、気が強くなければ豆電球すら光らない。 これは物語の終盤にチラッと出てくる、折衷案を出す兄の話である。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

処理中です...