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建国祭④
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「……すまない。エディ。お前の気分を害すことをしてしまっただろうか」
「……べーつにぃ?」
アストルディアは、悪くない。俺が勝手に、取れたかもしれない狸の皮算用をしてるだけで。
「……お前が作ってくれた料理を、勝手に人に作らせたのが悪かったか」
「だから、別に怒ってないって」
「すまない……どうしても、お前が作ってくれたあの味を、セネーバでも味わいたかったんだ」
……お犬様、俺が作ったコロッケ気に入ってたもんな。
はふはふと美味しそうにコロッケを食べていたお犬様の姿が脳裏に浮かび、一気に気分が浮上する。
そうかー、どうしても食べたかったのかぁ。
「でも、やっぱり駄目だな。腕のいい王宮料理人にどれだけ忠実に再現させても、お前が作ってくれたコロッケには及ばなかった。お前のコロッケが一番美味い」
「……今度部屋で一緒に食べる? 揚げたて状態で亜空間収納したのがあるよ」
「是非頼む。……できればソースもかけて欲しい。あれは再現できなかった」
「うひひ。いーよ。たっぷりかけたげる」
王宮料理人の力作より、俺のコロッケがいいなんて。やっぱり、お犬様……じゃない、アストルディアはかぁーいーなあ。
そういや、セネーバ来てから、全然アストルディアに俺の料理食べさせてなかったわ。たまには食堂行かないで、俺の部屋で夕食食べないか提案してみよーっと。
可愛いお犬様=アストルディアの行動にすっかり機嫌を治した俺は、せっかくなので出店のコロッケを買って食べることにした。
「うわ! 中にひき肉がみっちり入ってて、最早コロッケというか芋を繋ぎにしたメンチカツって感じ」
「肉食系の獣人には、この方が受けがいいんだろうな。だが、これが俺の好物だと謳われるのは正直複雑だ」
「アスティも狼獣人なのに?」
「俺はお前が作ってくれたコロッケの割合が一番いい」
……そんなこと言って、俺がお肉みっちりコロッケ作ったら、それはそれで美味い美味い食べるんだろうな。アストルディアのことだから。今度試してみるか。
「てか、今さらだけど名前の呼び方って、そのままでいいの? せっかく変装してるのに」
「俺を愛称で呼ぶものは、エディ以外いないから何も問題はない」
……まあ、第2王子を愛称で呼ぶ人間なんかそうそういないか。アスティなら、アスタールとかアストロヌスとか他の名でも全然通用する愛称だし。
それからは暫くアストルディアと屋台をひやかして回った。
カリカリのコーンフレークを纏った水飴のようなものを食べたり、指で石を弾いて飛ばす射的のようなものをして遊んだり、ペットとして売られている檻に入れられた魔物に驚いたり。
何でもないようなことが、何だかすごく楽しい。
「……そういえば、こんなふうに誰かと遊びに出かけたの、生まれて初めてかも」
ポツリとそう呟いた瞬間、アストルディアの大きな手が俺の手を握った。
「……俺もだ。エディ。義務として祭りに駆り出されることはあったが、こんなふうに祭りを楽しめたのも生まれて初めてだ」
『お前は、俺のことを生まれてはじめてできた友だと言っていたが、俺だって同じだ。畏怖と打算と敵意の中で生きてきた俺に、お前だけがまっすぐで温かい好意を向けてくれた。お前のお犬様として過ごした時間が、当時の俺にとってどれだけ大切な時間だったか。……お前は何もわかっていない』
以前聞いた、アストルディアの言葉が脳裏に過ぎる。
俺の話を聞いてくれるばかりで、自分のことは全く話そうとしないアストルディアが、唯一吐露した過去の断片。
アストルディアは、一体どんな子ども時代を送ってきたのだろう。どんな環境で育って来たんだろう。……番ならば、それを聞いても許されるのだろうか。
「アスティの家族って……」
「ああ、そうだ。ちょうどいい。そろそろ時間だ」
思いきって尋ねようとした俺の言葉を遮って、アストルディアは俺の手を引いた。
「これから広場で、セネーバの王族によるスピーチがあるんだ。おいで、エディ。俺の家族を見せてやる」
「……べーつにぃ?」
アストルディアは、悪くない。俺が勝手に、取れたかもしれない狸の皮算用をしてるだけで。
「……お前が作ってくれた料理を、勝手に人に作らせたのが悪かったか」
「だから、別に怒ってないって」
「すまない……どうしても、お前が作ってくれたあの味を、セネーバでも味わいたかったんだ」
……お犬様、俺が作ったコロッケ気に入ってたもんな。
はふはふと美味しそうにコロッケを食べていたお犬様の姿が脳裏に浮かび、一気に気分が浮上する。
そうかー、どうしても食べたかったのかぁ。
「でも、やっぱり駄目だな。腕のいい王宮料理人にどれだけ忠実に再現させても、お前が作ってくれたコロッケには及ばなかった。お前のコロッケが一番美味い」
「……今度部屋で一緒に食べる? 揚げたて状態で亜空間収納したのがあるよ」
「是非頼む。……できればソースもかけて欲しい。あれは再現できなかった」
「うひひ。いーよ。たっぷりかけたげる」
王宮料理人の力作より、俺のコロッケがいいなんて。やっぱり、お犬様……じゃない、アストルディアはかぁーいーなあ。
そういや、セネーバ来てから、全然アストルディアに俺の料理食べさせてなかったわ。たまには食堂行かないで、俺の部屋で夕食食べないか提案してみよーっと。
可愛いお犬様=アストルディアの行動にすっかり機嫌を治した俺は、せっかくなので出店のコロッケを買って食べることにした。
「うわ! 中にひき肉がみっちり入ってて、最早コロッケというか芋を繋ぎにしたメンチカツって感じ」
「肉食系の獣人には、この方が受けがいいんだろうな。だが、これが俺の好物だと謳われるのは正直複雑だ」
「アスティも狼獣人なのに?」
「俺はお前が作ってくれたコロッケの割合が一番いい」
……そんなこと言って、俺がお肉みっちりコロッケ作ったら、それはそれで美味い美味い食べるんだろうな。アストルディアのことだから。今度試してみるか。
「てか、今さらだけど名前の呼び方って、そのままでいいの? せっかく変装してるのに」
「俺を愛称で呼ぶものは、エディ以外いないから何も問題はない」
……まあ、第2王子を愛称で呼ぶ人間なんかそうそういないか。アスティなら、アスタールとかアストロヌスとか他の名でも全然通用する愛称だし。
それからは暫くアストルディアと屋台をひやかして回った。
カリカリのコーンフレークを纏った水飴のようなものを食べたり、指で石を弾いて飛ばす射的のようなものをして遊んだり、ペットとして売られている檻に入れられた魔物に驚いたり。
何でもないようなことが、何だかすごく楽しい。
「……そういえば、こんなふうに誰かと遊びに出かけたの、生まれて初めてかも」
ポツリとそう呟いた瞬間、アストルディアの大きな手が俺の手を握った。
「……俺もだ。エディ。義務として祭りに駆り出されることはあったが、こんなふうに祭りを楽しめたのも生まれて初めてだ」
『お前は、俺のことを生まれてはじめてできた友だと言っていたが、俺だって同じだ。畏怖と打算と敵意の中で生きてきた俺に、お前だけがまっすぐで温かい好意を向けてくれた。お前のお犬様として過ごした時間が、当時の俺にとってどれだけ大切な時間だったか。……お前は何もわかっていない』
以前聞いた、アストルディアの言葉が脳裏に過ぎる。
俺の話を聞いてくれるばかりで、自分のことは全く話そうとしないアストルディアが、唯一吐露した過去の断片。
アストルディアは、一体どんな子ども時代を送ってきたのだろう。どんな環境で育って来たんだろう。……番ならば、それを聞いても許されるのだろうか。
「アスティの家族って……」
「ああ、そうだ。ちょうどいい。そろそろ時間だ」
思いきって尋ねようとした俺の言葉を遮って、アストルディアは俺の手を引いた。
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