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建国祭⑥
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その一瞬、アストルディアが抱える闇の一端が垣間見えた気がした。
「……王配のニルカグル様は参加してなかったな」
「70半ばの父は、奴隷だった十代の頃の無理が祟って、体のあちこちに問題が生じていてな。滅多に人前には立たない。仮に立てたとしても、母がそれを望むとも思えないが」
「女王陛下はその……まだお若いように見えたけど」
「父と母は34歳離れている。親子どころか、祖父と孫でもおかしくはない年齢差だ。体の弱いエレナを心配した祖父アルデフィアが、エレナの懇願に折れて子を作ることを同意したのは40になってからだったらしいが、父はさらに遅い。5つ上の兄が生まれた時には既に50代半ば、俺に至って60手前にできた子どもだ」
アストルディアの家系について聞いた時点で想像がついていたし、歴史の教科書を参考に実際の差も既に割り出していたが、改めて聞いてもエグい年の差だ。
政略結婚が当たり前の貴族では、たまにあることではあるけど、どうしても女王エルディアに同情してしまう。……いや、番に対する愛情が深い狼獣人ならば、これくらいの年齢差も問題はないのだろうか。それにしては、あまり夫婦仲が良いという話は聞かないのだが。
「……お前の家族について、俺は詳しく聞いても許されるのか」
「番が聞いて悪いことなぞ、何もない」
隠している闇に踏み込んでも許されるのかと言外に問うと、アストルディアは即答した。
「だが、話して愉快な話ではないのも確かだ。今はそれよりも、お前と過ごせる祭りの時間を楽しみたい。いつかきちんと説明するが、然るべき時が来るまで待っていて欲しい」
「……わかった」
本当に来るんだろうな……その然るべき時。
そんな疑いを込めた視線にも、アストルディアは逸らすことなく真っ直ぐ見返してきた。
……はいはい、信じてやりますよ。俺は狼獣人のお前にとって、唯一無二の番ですもんね。
「それにしても……どこを見渡しても美形ばっかりだけど、慣れるとやっぱりアスティが一番美形だな。何てかオーラが違う感じ?」
仕方ないから話を変えてやると、アストルディアはホッとしたようにため息を吐いた。
「美醜なぞどうでもいいと思ってたが、エディにそう言ってもらえるのは嬉しいな」
「こんだけ美形が渋滞してるのに、アスティなら絶対見つけ出せる自信あるもん。……しかし、ずいぶん道が混んで来たな。向こうに何かあるのか?」
「ああ。あちらにはサーカスの特設ステージがあるんだ」
「サーカス?」
魔法が一般的な国だと、どうしても感動が薄れるのか、リシス王国にはサーカスのような興行は存在しなかった。
けれど、そうか、身体強化が売りの獣人なら、サーカスがあったとしてもおかしくはないのか。人間より基礎的身体能力が高い獣人が、他の獣人からお金を取れるような業を披露するんだ。どれだけすごいものを見せてくれるんだろう。
……俺、前世で結構サーカスとか憧れてたんだよね。児童小説か何かに出てきたんだと思うけど。いつか妹と二人で見に行きたいけど、妹がサーカスから攫われちゃったらどうしようなんて、本気で悩んだりして。
結局、その後前世でサーカス一緒に見に行けたのかな。そこまでは思い出せねーや。
「それって事前にチケット買ってなくても、見に行けるの?」
「ああ。席が保証されない代わりに、当日券しかないはずだ。……見たいか?」
「見たい!」
「じゃあ、行ってみよう。はぐれないよう、手は離すなよ」
特設ステージに向かっていく人の流れに身を任せるように、アストルディアと手を繋いで進んで行く。
獣人国のサーカスって、どんなんかなー。空中ブランコとか、綱渡りとかやっぱりあんのかな。
獣化して火の輪くぐりは、普通にやりそう。
ルンルンで向かっていくと、不意にアストルディアが足を止めた。
「アスティ? こんなところで止まると危ない……」
「……ついてないな。まさか、アレがいるとは」
舌打ちしたアストルディアの視線の先。向こうからやってくる逆方向の流れの中には、金髪碧眼の美男美女に囲まれた黒髪の男がいた。
身長や、体格はアストルディアと同じくらいだろうか。三角耳がついた長い黒髪を無造作に結い上げた男の顔は、他の獣人同様に……というかアストルディア同様に他の獣人より無駄にオーラがある美形ではあるけど、何か傲慢そうでムカつく顔をしている。何故か上半身は裸で、無駄に美しいもっこり割れた筋肉を露わにしてるし。何だあの変態。
「……王配のニルカグル様は参加してなかったな」
「70半ばの父は、奴隷だった十代の頃の無理が祟って、体のあちこちに問題が生じていてな。滅多に人前には立たない。仮に立てたとしても、母がそれを望むとも思えないが」
「女王陛下はその……まだお若いように見えたけど」
「父と母は34歳離れている。親子どころか、祖父と孫でもおかしくはない年齢差だ。体の弱いエレナを心配した祖父アルデフィアが、エレナの懇願に折れて子を作ることを同意したのは40になってからだったらしいが、父はさらに遅い。5つ上の兄が生まれた時には既に50代半ば、俺に至って60手前にできた子どもだ」
アストルディアの家系について聞いた時点で想像がついていたし、歴史の教科書を参考に実際の差も既に割り出していたが、改めて聞いてもエグい年の差だ。
政略結婚が当たり前の貴族では、たまにあることではあるけど、どうしても女王エルディアに同情してしまう。……いや、番に対する愛情が深い狼獣人ならば、これくらいの年齢差も問題はないのだろうか。それにしては、あまり夫婦仲が良いという話は聞かないのだが。
「……お前の家族について、俺は詳しく聞いても許されるのか」
「番が聞いて悪いことなぞ、何もない」
隠している闇に踏み込んでも許されるのかと言外に問うと、アストルディアは即答した。
「だが、話して愉快な話ではないのも確かだ。今はそれよりも、お前と過ごせる祭りの時間を楽しみたい。いつかきちんと説明するが、然るべき時が来るまで待っていて欲しい」
「……わかった」
本当に来るんだろうな……その然るべき時。
そんな疑いを込めた視線にも、アストルディアは逸らすことなく真っ直ぐ見返してきた。
……はいはい、信じてやりますよ。俺は狼獣人のお前にとって、唯一無二の番ですもんね。
「それにしても……どこを見渡しても美形ばっかりだけど、慣れるとやっぱりアスティが一番美形だな。何てかオーラが違う感じ?」
仕方ないから話を変えてやると、アストルディアはホッとしたようにため息を吐いた。
「美醜なぞどうでもいいと思ってたが、エディにそう言ってもらえるのは嬉しいな」
「こんだけ美形が渋滞してるのに、アスティなら絶対見つけ出せる自信あるもん。……しかし、ずいぶん道が混んで来たな。向こうに何かあるのか?」
「ああ。あちらにはサーカスの特設ステージがあるんだ」
「サーカス?」
魔法が一般的な国だと、どうしても感動が薄れるのか、リシス王国にはサーカスのような興行は存在しなかった。
けれど、そうか、身体強化が売りの獣人なら、サーカスがあったとしてもおかしくはないのか。人間より基礎的身体能力が高い獣人が、他の獣人からお金を取れるような業を披露するんだ。どれだけすごいものを見せてくれるんだろう。
……俺、前世で結構サーカスとか憧れてたんだよね。児童小説か何かに出てきたんだと思うけど。いつか妹と二人で見に行きたいけど、妹がサーカスから攫われちゃったらどうしようなんて、本気で悩んだりして。
結局、その後前世でサーカス一緒に見に行けたのかな。そこまでは思い出せねーや。
「それって事前にチケット買ってなくても、見に行けるの?」
「ああ。席が保証されない代わりに、当日券しかないはずだ。……見たいか?」
「見たい!」
「じゃあ、行ってみよう。はぐれないよう、手は離すなよ」
特設ステージに向かっていく人の流れに身を任せるように、アストルディアと手を繋いで進んで行く。
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「アスティ? こんなところで止まると危ない……」
「……ついてないな。まさか、アレがいるとは」
舌打ちしたアストルディアの視線の先。向こうからやってくる逆方向の流れの中には、金髪碧眼の美男美女に囲まれた黒髪の男がいた。
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