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兎の騎士④
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「あのねー……丸くて、中がトロッとして、ザクザクしてて、焼いたの」
「……とりあえず、色々探してみようか」
うーん……生クリームを挟んだロッククッキーとかか?
セネーバのお菓子には詳しくないから、出店を見てみないとわからないな。
アニカと色々なことを話しながら、祭りの屋台を回る。
アニカは今、7歳。孤児院の年下の子からはお姉ちゃんと懐かれて、年上の子からは可愛がられているらしい。
とりあえず孤児院内に、兎獣人を差別するような子がいなかったことにホッとする。
「孤児院にたまに遊びに来てくれるお客さまが、一度お祭りで買ったお菓子を持ってきてくれたことがあって。どうしてもそれを、下の子たちに食べさせてあげたかったの」
「そうか。アニカは優しいな」
「えへへ。わたしがもう一度食べたかったってのも、あるけどね」
孤児院の子達は、たまに簡単なアルバイトのようなことをしてお小遣いをもらえることがあるようで。
アニカをはじめとした年上の子達が、まだアルバイトができない下の子の為に、持っていたお小遣いを出しあったらしい。……健気過ぎて、泣ける。
「あ、あれ! あれかも」
アニカが指を指したのは、ベビーカステラのような丸くて小さな焼き菓子だった。
中にカスタードクリームとナッツ、ドライフルーツなんかが入っているらしく、中がトロッとしながらザクザクの意味に納得する。
自分で買えるように肩車をしていたアニカをいったん下ろし、手を繋いで客の列に並んだ。
「小、中、大とサイズがあって、大きいのが1000銅貨。中くらいのが800銅貨。小さいのが600銅貨みたいだな」
1銅貨はだいたい1円くらいなので、そこまでは高くない。
けれどそれを聞いたアニカは、さぁっと顔を青ざめさせた。
「え……500銅貨しかない」
「え」
……アルバイトして一生懸命子ども達が貯めたお金が500銅貨しかないって、どんだけ低賃金で子どもをこき使ってんだよ……待遇ひど過ぎだよ。
「……やっぱ、別のにしようかな。もっと安いおかし、あるよね」
そう言って、俺の服の裾をひくアニカの前に、しゃがみ込む。
「……ねぇ、アニカ。俺も食べたくなったから、少しお金払うよ。一緒に食べよう」
「でも……」
「アニカの思い出のお菓子、どんな味か気になるからさ」
アニカが返事をする前に順番が来たので、サッと前に進み出て一番大きいお菓子を買う。
さっき、孤児院の子はアニカと先生を入れて14人って話してたから、一人2個ずつだとしても2つ余るはず。
狸の店主は俺を兎獣人だと思ったのか少し嫌そうな顔をしていたが、チップで少し多めに払ったからか文句を言うことなく焼き立ての奴を袋に詰めてくれた。
アニカの手を引いて道の端に移動すると、まだ温かいお菓子を袋から2個取り出して、片方を差し出す。
「ほら、アニカ。一個だけ焼き立ての奴、先に二人で食べちゃおう。これ、俺の取り分だからさ」
「……全然足りないよお。倍以上出してくれたのに」
……あれま。チップを払ったことも含めて、バレてたらしい。
「アニカはちゃんと、お金の計算ができるんだね。小さいのにすごいな」
「……じゃなきゃ、お手伝いできないもん。全然すごくないよお。それより、本当にいいの? 騎士さまに負担かけてばっかりだよ」
「いいの。いいの。俺はアニカが笑ってくれれば、それで十分だから。ほら、食べよう」
耳をペタンとして落ち込むアニカの頭を撫で、自分の分のお菓子を齧る。
柔らかい卵の生地から温かいカスタードクリームがトロッと溢れ出し、生地に混ぜられたナッツとドライフラワーのザクザクした食感が楽しい。
「おいしいね」
「……うん。おいしい。ありがとう。騎士さま」
本当はお金ももらいたくなかったけど、アニカがどうしてももらってくれと言いはったので、その分以上に別のお菓子も買って、俺個人のお土産として孤児院に持って行くことにした。
「これじゃあお金をはらった意味がないよお」とますますしょげるアニカに、孤児院に遊びに来るお客様だってお菓子を持ってきてくれるだろう?と無理やり納得させた。
「……いいのかなぁ……本当に本当に、甘えちゃって、いいの?」
「いいよ。だから笑ってよ。アニカ。俺はアニカが笑っているところが見たいな」
「……とりあえず、色々探してみようか」
うーん……生クリームを挟んだロッククッキーとかか?
セネーバのお菓子には詳しくないから、出店を見てみないとわからないな。
アニカと色々なことを話しながら、祭りの屋台を回る。
アニカは今、7歳。孤児院の年下の子からはお姉ちゃんと懐かれて、年上の子からは可愛がられているらしい。
とりあえず孤児院内に、兎獣人を差別するような子がいなかったことにホッとする。
「孤児院にたまに遊びに来てくれるお客さまが、一度お祭りで買ったお菓子を持ってきてくれたことがあって。どうしてもそれを、下の子たちに食べさせてあげたかったの」
「そうか。アニカは優しいな」
「えへへ。わたしがもう一度食べたかったってのも、あるけどね」
孤児院の子達は、たまに簡単なアルバイトのようなことをしてお小遣いをもらえることがあるようで。
アニカをはじめとした年上の子達が、まだアルバイトができない下の子の為に、持っていたお小遣いを出しあったらしい。……健気過ぎて、泣ける。
「あ、あれ! あれかも」
アニカが指を指したのは、ベビーカステラのような丸くて小さな焼き菓子だった。
中にカスタードクリームとナッツ、ドライフルーツなんかが入っているらしく、中がトロッとしながらザクザクの意味に納得する。
自分で買えるように肩車をしていたアニカをいったん下ろし、手を繋いで客の列に並んだ。
「小、中、大とサイズがあって、大きいのが1000銅貨。中くらいのが800銅貨。小さいのが600銅貨みたいだな」
1銅貨はだいたい1円くらいなので、そこまでは高くない。
けれどそれを聞いたアニカは、さぁっと顔を青ざめさせた。
「え……500銅貨しかない」
「え」
……アルバイトして一生懸命子ども達が貯めたお金が500銅貨しかないって、どんだけ低賃金で子どもをこき使ってんだよ……待遇ひど過ぎだよ。
「……やっぱ、別のにしようかな。もっと安いおかし、あるよね」
そう言って、俺の服の裾をひくアニカの前に、しゃがみ込む。
「……ねぇ、アニカ。俺も食べたくなったから、少しお金払うよ。一緒に食べよう」
「でも……」
「アニカの思い出のお菓子、どんな味か気になるからさ」
アニカが返事をする前に順番が来たので、サッと前に進み出て一番大きいお菓子を買う。
さっき、孤児院の子はアニカと先生を入れて14人って話してたから、一人2個ずつだとしても2つ余るはず。
狸の店主は俺を兎獣人だと思ったのか少し嫌そうな顔をしていたが、チップで少し多めに払ったからか文句を言うことなく焼き立ての奴を袋に詰めてくれた。
アニカの手を引いて道の端に移動すると、まだ温かいお菓子を袋から2個取り出して、片方を差し出す。
「ほら、アニカ。一個だけ焼き立ての奴、先に二人で食べちゃおう。これ、俺の取り分だからさ」
「……全然足りないよお。倍以上出してくれたのに」
……あれま。チップを払ったことも含めて、バレてたらしい。
「アニカはちゃんと、お金の計算ができるんだね。小さいのにすごいな」
「……じゃなきゃ、お手伝いできないもん。全然すごくないよお。それより、本当にいいの? 騎士さまに負担かけてばっかりだよ」
「いいの。いいの。俺はアニカが笑ってくれれば、それで十分だから。ほら、食べよう」
耳をペタンとして落ち込むアニカの頭を撫で、自分の分のお菓子を齧る。
柔らかい卵の生地から温かいカスタードクリームがトロッと溢れ出し、生地に混ぜられたナッツとドライフラワーのザクザクした食感が楽しい。
「おいしいね」
「……うん。おいしい。ありがとう。騎士さま」
本当はお金ももらいたくなかったけど、アニカがどうしてももらってくれと言いはったので、その分以上に別のお菓子も買って、俺個人のお土産として孤児院に持って行くことにした。
「これじゃあお金をはらった意味がないよお」とますますしょげるアニカに、孤児院に遊びに来るお客様だってお菓子を持ってきてくれるだろう?と無理やり納得させた。
「……いいのかなぁ……本当に本当に、甘えちゃって、いいの?」
「いいよ。だから笑ってよ。アニカ。俺はアニカが笑っているところが見たいな」
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