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結婚に向けて⑥
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親父とレオ、両方を説得できるような言葉を口にしなければならない。
迷った末に、俺は以前親父に告げたのと同じ言葉で説得することにした。
「ーー俺は、他の獣人には対抗できるが、アストルディアにだけは絶対勝てない。強力な無属性を持つアストルディアには、どれだけ優秀な兵士や魔法士が束になったとしても、絶対に敵わないと断言できる。それぐらい、あいつの力は規格外なんだ。敵側にアストルディアがいるというだけで、もし戦争が起きれば、必ずリシス王国は負ける」
「っ」
「幸い、あいつは俺を番にすることに乗り気だったし、今も俺を番として特別視してくれている。狼獣人は、唯一の番に人生ごと縛られる。あいつは、俺より国を選ぶことはできない。だからこそ、正式に婚姻を結べさえすれば、二国間で友好関係を築くことはそう難しくないはずだ」
「っなら、その獣人に、セネーバよりも辺境伯領を選ばせればいいっ! 兄上がセネーバに嫁ぐ必要はないでしょうっ!」
「次期王と囁かれてる第二王子を、他国の一貴族に婿入りさせるなど、セネーバ王家が許すはずないだろう。レオ。冷静に考えろ」
「僕は冷静です!」
どう見ても冷静でない様子で食卓を離れたレオは、俺の前に走って来て、両手を握った。
「兄上が犠牲になることはない……辺境伯領の為に、兄上が犠牲になることはないんです」
「レオ、それは……」
「わかってます……そう言ったところで、兄上が受け入れるはずはないって。ならせめて、僕も一緒に戦わせてください」
黒曜石の瞳を潤ませながら、レオが俺の手を自分の頬にあてる。
「僕は、僕は、兄上……兄上を犠牲にするくらいなら、共にセネーバと戦って、共に死にたい」
「っ」
「愛してるんです。兄上。……兄上だけが、僕を孤独から救いだしてくれた……僕は、そんな兄上に報いたいんです……どうか、兄上、お考え直しください」
レオが言う「愛してる」は、あくまで家族に向けた愛情で、原作エドワードが抱いた肉欲を含むそれではないことは、わかっていた。
わかってはいたけど、湧き上がる怒りのまま、俺はレオの手を振り払っていた。
「……兄上っ」
「……俺は、【国境の守護者】として、辺境伯領と、辺境伯の民を守る」
俺の絶対。
何があっても揺らぐことのない、俺の使命であり生きる意味。
たとえどれだけアストルディアやセネーバを愛しても、守るべき辺境伯の民に裏切られたとしても、俺はきっと死ぬまでこの使命だけは裏切れない。
だからこそ、湧き上がる怒りを止められない。
「だからこそ……俺は、俺が守ると決めた命を粗末にする奴は、大嫌いだ」
敵ならば、仕方ない。
けれど守るべき味方から、「俺の為」だなんて言われて邪魔されるのだけは、許せない。
「兄、上」
ショックを受けたようなレオの顔に、自分の失態を悟る。……ここはもっと優しく、理詰めで納得させなければならない場面だったのに、感情的になり過ぎた。
リカバリーする為、できるだけ優しい笑顔を浮かべて、レオの頭を撫でる。
「……だから、お願いだよ。レオ。俺と共に死ぬだなんて、言わないでくれ。俺に、お前を嫌わせないでくれ。俺は大事な弟であるお前には、生きて欲しいんだ。お前が生きようとさえしてくれれば、必ず俺がお前を守ってやるから」
レオに言った言葉は、遠回しに親父に向けた言葉でもあった。
伯父がどんな人だったのかなんて、俺は親父の言葉からしか知らない。
けれど今よりなお獣人への遺恨が残っていた時代に、セネーバとの友好関係を築きたいと思ってた人だから。とても、優しい人だったんだろう。
……親父。多分伯父さんは、俺と同じことを、弟である親父に対して思っていたと思うよ。
たとえ自分が死んでも、親父にだけは生きていて欲しいって。
だから……いっそあの時、伯父と一緒に死にたかったと思っていたとしても、レオの言葉には賛成なんかしないでくれ。
レオだけでも生きていて欲しいと、そう思ってくれよ。
迷った末に、俺は以前親父に告げたのと同じ言葉で説得することにした。
「ーー俺は、他の獣人には対抗できるが、アストルディアにだけは絶対勝てない。強力な無属性を持つアストルディアには、どれだけ優秀な兵士や魔法士が束になったとしても、絶対に敵わないと断言できる。それぐらい、あいつの力は規格外なんだ。敵側にアストルディアがいるというだけで、もし戦争が起きれば、必ずリシス王国は負ける」
「っ」
「幸い、あいつは俺を番にすることに乗り気だったし、今も俺を番として特別視してくれている。狼獣人は、唯一の番に人生ごと縛られる。あいつは、俺より国を選ぶことはできない。だからこそ、正式に婚姻を結べさえすれば、二国間で友好関係を築くことはそう難しくないはずだ」
「っなら、その獣人に、セネーバよりも辺境伯領を選ばせればいいっ! 兄上がセネーバに嫁ぐ必要はないでしょうっ!」
「次期王と囁かれてる第二王子を、他国の一貴族に婿入りさせるなど、セネーバ王家が許すはずないだろう。レオ。冷静に考えろ」
「僕は冷静です!」
どう見ても冷静でない様子で食卓を離れたレオは、俺の前に走って来て、両手を握った。
「兄上が犠牲になることはない……辺境伯領の為に、兄上が犠牲になることはないんです」
「レオ、それは……」
「わかってます……そう言ったところで、兄上が受け入れるはずはないって。ならせめて、僕も一緒に戦わせてください」
黒曜石の瞳を潤ませながら、レオが俺の手を自分の頬にあてる。
「僕は、僕は、兄上……兄上を犠牲にするくらいなら、共にセネーバと戦って、共に死にたい」
「っ」
「愛してるんです。兄上。……兄上だけが、僕を孤独から救いだしてくれた……僕は、そんな兄上に報いたいんです……どうか、兄上、お考え直しください」
レオが言う「愛してる」は、あくまで家族に向けた愛情で、原作エドワードが抱いた肉欲を含むそれではないことは、わかっていた。
わかってはいたけど、湧き上がる怒りのまま、俺はレオの手を振り払っていた。
「……兄上っ」
「……俺は、【国境の守護者】として、辺境伯領と、辺境伯の民を守る」
俺の絶対。
何があっても揺らぐことのない、俺の使命であり生きる意味。
たとえどれだけアストルディアやセネーバを愛しても、守るべき辺境伯の民に裏切られたとしても、俺はきっと死ぬまでこの使命だけは裏切れない。
だからこそ、湧き上がる怒りを止められない。
「だからこそ……俺は、俺が守ると決めた命を粗末にする奴は、大嫌いだ」
敵ならば、仕方ない。
けれど守るべき味方から、「俺の為」だなんて言われて邪魔されるのだけは、許せない。
「兄、上」
ショックを受けたようなレオの顔に、自分の失態を悟る。……ここはもっと優しく、理詰めで納得させなければならない場面だったのに、感情的になり過ぎた。
リカバリーする為、できるだけ優しい笑顔を浮かべて、レオの頭を撫でる。
「……だから、お願いだよ。レオ。俺と共に死ぬだなんて、言わないでくれ。俺に、お前を嫌わせないでくれ。俺は大事な弟であるお前には、生きて欲しいんだ。お前が生きようとさえしてくれれば、必ず俺がお前を守ってやるから」
レオに言った言葉は、遠回しに親父に向けた言葉でもあった。
伯父がどんな人だったのかなんて、俺は親父の言葉からしか知らない。
けれど今よりなお獣人への遺恨が残っていた時代に、セネーバとの友好関係を築きたいと思ってた人だから。とても、優しい人だったんだろう。
……親父。多分伯父さんは、俺と同じことを、弟である親父に対して思っていたと思うよ。
たとえ自分が死んでも、親父にだけは生きていて欲しいって。
だから……いっそあの時、伯父と一緒に死にたかったと思っていたとしても、レオの言葉には賛成なんかしないでくれ。
レオだけでも生きていて欲しいと、そう思ってくれよ。
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