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息子さんをください⑦
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何枚もの肖像画に描かれる、黒髪黒目のアストルディア。
そしてそのほとんどが、俺そっくりのエレナ姫が隣に寄り添っていた。
……孫のアストルディアはともかく、エレナ姫と俺は遠い血縁でしかないのに、ここまで似てると怖いな。
コスプレした俺とアストルディアの絵が混ざってても、これ絶対気づかれない奴。
「あの子は、私以上に父に似てます。……その力さえも」
建国の英雄アルデフィアが単独で描かれた数少ない作品を、そっと指先でなぞりながら、エルディアナ女王は目を伏せる。
「獣人は、力が全てです。どれほど有能で頭が良い人物であっても、力がなければ侮られる。父アルデフィアは、妻が力なき病弱な人間だと言う不利な要因があってなお、補って余りあるほどの強さがあった。私は父ほどの力はありませんでしたが、番であるニルカグルの助力があって足りない部分を補えた。……けれど、カーディンクルは、たくさんの力ある番がいてなお、王になるに足るだけの力はありません」
女王はため息を吐いて、その刺すような黒い眼差しを俺に向けた。
「あの子の番は、皆が皆中途半端。集団での連携はそれなりに取れているようですが、全員が集ってもなお、王宮兵団長一人に敵わない。そもそもカーディンクル自体が、力がなさ過ぎるのです。普段は雌側が戦闘の中心になる獅子獣人とは言え、いざと言う時に自らの群れであるプライドを守るのは雄の役目です。ただヘラヘラと守られることを当然としているあの子じゃ、我が国を自分のプライドにすることはできません」
……兵団長って、親善試合で会った。ナナーク・ワシヤミアさんだよね。立派なにゃんたまの、氷属性のホワイトタイガー。
いくら複数人いたとしても、未来の王妃候補達にあの人に勝つ能力求めるのは酷だと思うよ。親善試合だったからお互いそこまで本気でなかったけど、いざ実戦となったら俺も苦戦すると思うもん。最終的には、俺が勝つ自信はあるけど。
ちょっとお嫁さんに求めるハードル高過ぎだよな。過酷な嫁姑争いの臭いがする……。王太子に対する評価は、一度遠目で見ただけだから何とも言えないけどさ。
「ですがアストルディアは父と同じ、もしくは父以上の強力な力を持って生まれて来ました。世代が進むにつれて、弱体化してきている獣人にとって、このような事例は非常に珍しい。あの子は、セネーバに生きる全ての獣人にとっての希望なのです」
大げさな、と笑い飛ばすことができないくらい、エルディア女王の声音は真剣だった。そもそも冗談なんて、死んでも言わなそうな人だし。
「ニルカグルやランドルーク家が、どれほどカーディンクルを王にすべきだと主張しても、私は必ずアストルディアを王にします。そのつもりで、幼い頃から王にふさわしい教育を施して来ました。貴方は、その隣に立ち続ける覚悟はありますか」
「…………」
「子を成せた時点で、魔力相性は申し分ないのでしょう。匂いだけでも、貴方がアストルディアの隣に立つに足る強大な魔力を有していることがわかります。親善試合の結果やリシス王国内での評判を聞く限り、貴方はカーディングルのどの妻よりも強い。加えて、母エレナにそっくりなその容姿があれば、セネーバ国民の支持を得るのは容易でしょう。恐らく貴方ほど、アストルディアの隣に立つに相応しい条件を兼ね備えた方はいない。だから、後は貴方の覚悟だけが問題です」
「……たとえアストルディアが王になったとしても、彼の隣りに立ち続ける覚悟はあります」
覚悟は、ある。けれど、それでも譲れないものもある。
「アストルディア自身が王になると決めたならば、私は彼を全力で支えるつもりです。それでも私は、自分の故郷であるネルドゥース辺境伯領以上に、彼を優先することはないでしょう。私は故郷が戦火に晒されることがないように、彼との婚姻に応じました。アルデフィア王の為に、故郷を捨てたエレナ姫のようにはなれません」
たとえそれが、女王の機嫌を害す答えであっても。
そしてそのほとんどが、俺そっくりのエレナ姫が隣に寄り添っていた。
……孫のアストルディアはともかく、エレナ姫と俺は遠い血縁でしかないのに、ここまで似てると怖いな。
コスプレした俺とアストルディアの絵が混ざってても、これ絶対気づかれない奴。
「あの子は、私以上に父に似てます。……その力さえも」
建国の英雄アルデフィアが単独で描かれた数少ない作品を、そっと指先でなぞりながら、エルディアナ女王は目を伏せる。
「獣人は、力が全てです。どれほど有能で頭が良い人物であっても、力がなければ侮られる。父アルデフィアは、妻が力なき病弱な人間だと言う不利な要因があってなお、補って余りあるほどの強さがあった。私は父ほどの力はありませんでしたが、番であるニルカグルの助力があって足りない部分を補えた。……けれど、カーディンクルは、たくさんの力ある番がいてなお、王になるに足るだけの力はありません」
女王はため息を吐いて、その刺すような黒い眼差しを俺に向けた。
「あの子の番は、皆が皆中途半端。集団での連携はそれなりに取れているようですが、全員が集ってもなお、王宮兵団長一人に敵わない。そもそもカーディンクル自体が、力がなさ過ぎるのです。普段は雌側が戦闘の中心になる獅子獣人とは言え、いざと言う時に自らの群れであるプライドを守るのは雄の役目です。ただヘラヘラと守られることを当然としているあの子じゃ、我が国を自分のプライドにすることはできません」
……兵団長って、親善試合で会った。ナナーク・ワシヤミアさんだよね。立派なにゃんたまの、氷属性のホワイトタイガー。
いくら複数人いたとしても、未来の王妃候補達にあの人に勝つ能力求めるのは酷だと思うよ。親善試合だったからお互いそこまで本気でなかったけど、いざ実戦となったら俺も苦戦すると思うもん。最終的には、俺が勝つ自信はあるけど。
ちょっとお嫁さんに求めるハードル高過ぎだよな。過酷な嫁姑争いの臭いがする……。王太子に対する評価は、一度遠目で見ただけだから何とも言えないけどさ。
「ですがアストルディアは父と同じ、もしくは父以上の強力な力を持って生まれて来ました。世代が進むにつれて、弱体化してきている獣人にとって、このような事例は非常に珍しい。あの子は、セネーバに生きる全ての獣人にとっての希望なのです」
大げさな、と笑い飛ばすことができないくらい、エルディア女王の声音は真剣だった。そもそも冗談なんて、死んでも言わなそうな人だし。
「ニルカグルやランドルーク家が、どれほどカーディンクルを王にすべきだと主張しても、私は必ずアストルディアを王にします。そのつもりで、幼い頃から王にふさわしい教育を施して来ました。貴方は、その隣に立ち続ける覚悟はありますか」
「…………」
「子を成せた時点で、魔力相性は申し分ないのでしょう。匂いだけでも、貴方がアストルディアの隣に立つに足る強大な魔力を有していることがわかります。親善試合の結果やリシス王国内での評判を聞く限り、貴方はカーディングルのどの妻よりも強い。加えて、母エレナにそっくりなその容姿があれば、セネーバ国民の支持を得るのは容易でしょう。恐らく貴方ほど、アストルディアの隣に立つに相応しい条件を兼ね備えた方はいない。だから、後は貴方の覚悟だけが問題です」
「……たとえアストルディアが王になったとしても、彼の隣りに立ち続ける覚悟はあります」
覚悟は、ある。けれど、それでも譲れないものもある。
「アストルディア自身が王になると決めたならば、私は彼を全力で支えるつもりです。それでも私は、自分の故郷であるネルドゥース辺境伯領以上に、彼を優先することはないでしょう。私は故郷が戦火に晒されることがないように、彼との婚姻に応じました。アルデフィア王の為に、故郷を捨てたエレナ姫のようにはなれません」
たとえそれが、女王の機嫌を害す答えであっても。
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